ダナエの神話〜星になった神様〜 第百十八話 遠い空の彼方に(3)

  • 2017.04.17 Monday
  • 17:15

JUGEMテーマ:自作小説

邪神は気配だけをちらつかせる。
怒ったダナエは「それならこっちから見つけてやるわ」と言った。
大きな蛾の羽を羽ばたき、灰色の鱗粉を飛ばした。
それは嵐のように吹き荒れて、黒い景色を覆っていった。
ダナエはじっと目を凝らす。
悪魔の姿になれば、目は虫の複眼のように変わる。
何かが動けばすぐに気づくのだ。
「・・・・・そこね!」
後ろを振り向き、槍を振る。
すると何者かに止められた。
「ふふふ・・・見つかったか。」
「邪神・・・・。」
人の姿に戻った邪神が、不敵に笑う。
「あんたやっぱり死んでなかったのね。」
「当然でしょ。お前らに殺されるようじゃ、銀河の支配なんてとても出来ないわ。」
「だったらもう一度勝負よ!今度は逃がさない!」
槍は邪神に握られている。
しかしダナエはお構いなしに斬りかかった。
「たああああああ!」
悪魔の姿になると、槍の形状も変化する。
刃はノコギリ状になって、チェーンソーのように回転するのだ。
槍を握っていた邪神の手は、ズタズタに切り裂かれた。
「真っ二つしてやる!今度こそ終わりよ!」
このまま頭まで切り裂こうとした時、邪神はサッと槍をかわした。
「逃がさない!」
オレンジ色のレーザーを撃って、邪神を射抜く。
これに撃たれれば魔力が衰えるが、邪神には効かなかった。
「無駄よ、月の魔力のないお前じゃ手も足も出ない。」
「そんなのやってみなきゃ分からないわ!」
「ふふふ・・・じゃあやってみなさい。」
ダナエは高速で斬りかかる。
ノコギリのような槍は、邪神を真っ二つに切り裂いた。
「お見事。でも残念、私を殺すには力が足りないわ。」
頭から股の間まで真っ二つにされたのに、邪神は平然と笑っている。
「両断されても死なないなんて・・・・まさかこれは幻術?」
「そんなチンケな術は使わないわ。これは本物の私。」
「ならどうして死なないのよ!」
「知りたければ私に勝つことね。」
邪神は瞬く間に元通りになる。
そして長い髪を伸ばして、ダナエを絡め取った。
「くッ・・・・、」
「その悪魔の姿じゃ、大した力は出せないでしょ?」
「ふざけんな・・・・あんたなんかすぐにやっつけて・・・・ごほッ!」
邪神の拳が腹にめり込む。
「他の姿に進化したら?」
「ごほ・・・・げほッ・・・・、」
「まあ無理か。そんなことしたら、たちまちこの景色の中に飲み込まれるから。」
周りに広がる黒い染み。邪神は手を広げ、「綺麗でしょ」と微笑んだ。
「真っ暗な虚無の闇。ここには何もない。」
そう言いいながら、またダナエを殴る。
「あがッ・・・・・、」
「あら、ごめんなさい。勢い余って鼻づらにブチこんじゃった。」
「うう・・・ぐうッ・・・・、」
「鼻血まみれよ。綺麗な顔が台無しね。」
「邪神んん・・・・ああああ!」
今度は腕を殴られる。強烈な一撃がめり込んで、ボキリと折れてしまった。
「ああ!ああああ・・・・・、」
「何もない闇の中は気持ちのいいものよ。だってここから全てが始まるんだから。
余計なものは消え去って、新しいモノが生まれる。
星も、生命も、それに宇宙だって。」
「な、何を言って・・・・・ぎゃああああ!」
「人の話は黙って聞くものよ。」
「あ・・・・がッ・・・・、」
指で喉を突かれ、ダラリと血を吐く。
「もし・・・・もしもこの宇宙を消し去ることが出来たら、私が新たな創造神になれる。
この私が新しい宇宙を生み出して、全ての上に君臨できるわ。
だけど残念ながら、私にそれだけの力はない。
なにせ宇宙は広すぎるからね。一個人でどうにか出来る物じゃないわ。」
「うう・・・ごほッ・・・・、」
「だから私は妥協することにした、宇宙が無理なら、せめて銀河の支配者になろうと。
でも銀河だって相当な大きさよ。
これを支配するとなると、骨が折れるわ。」
「だ・・・・だったら・・・・諦めれば・・・いいじゃない・・・・。」
「あら?まだ喋れるのね。大した根性だわ。」
「私は・・・・前から聞きたかった・・・・。」
「何を?」
「あんたは・・・・どうしてそんなに・・・・支配に・・・こだわるんだろうって・・・。」
「それで?」
「あんたが・・・・強いのは・・・・誰もが・・・認めるわ・・・・。
地球の悪魔で・・・さえ・・・あんたには・・・・怯えてる・・・・。」
「地球なんてスケールの小さいこと言われてもね。
しょせんは銀河の端にある、ちっぽけな星よ。
もちろんそこに巣食う者達だって一緒。人も悪魔もね。」
「でも・・・・みんな真剣に生きてるわ・・・・。
限られた時間の中を・・・・精一杯・・・・、」
「そうかしら?地球の自殺者ってラシルより多いのよ。
それにこの星の生命だって寿命は限られてる。
だったら地球よりもマシな星だと思うけど?」
「・・・私は・・・・地球が嫌い・・・・。いつでも・・・戦ってばかりで・・・、」
「そういう星よ。クズが集まるクズの星。
あの星の人も神も悪魔も、近いうちに滅ぼすつもりよ。」
「・・・・だけど・・・それでも・・・私は・・・あの星が気になる・・・・。
ラシルとも・・・月とも違う・・・・煌めく輝きがある・・・・・。
戦ってばかりだけど・・・・でもその中でも・・・・必死に生き抜こうとしているから。」
ダナエは顔を上げ、邪神の目を睨む。
「私は・・・妖精だから・・・寿命がない・・・・。
だけど・・・永遠なんてほしいと思わない・・・・。
地球の生命みたいに・・・・苦しい中でも・・限られた時の中で生きてみたい・・・。」
「それで月の魔力を手放したってわけね。アホすぎて物も言えないわ。」
「限られた時間の中を・・・・真剣に生きる・・・・そこに・・・・喜びや幸せがある。
そんな気がするから・・・・・私は月の魔力を手放した・・・・。」
ダナエは思う。もし月の魔力を手放していなかったら、きっと邪神を倒していただろうと。
しかしそれでもあの力を手放したことに後悔はない。
なぜなら大きすぎる力は、いつか身を滅ぼすと分かっていたからだ。
自分だけでなく、周りも巻き添えにして。
邪神にいたぶられるのは悔しいが、それでも後悔はなかった。
「あんたを倒さないと・・・・ラシルも地球も平和にならない・・・。」
「もう諦めることね。月の魔力がないんじゃどうしようもないでしょ。」
「・・・どうして・・・・、」
「ん?」
「どうしてそんなに・・・・支配したがるの・・・・?」
「欲しいから。」
「何を・・・・?」
「全てを。」
「・・・・・・・・・。」
「本当はこの宇宙の全てが欲しい。でもそれが無理だから銀河で妥協した。
でも銀河の支配も相当に難しいわ。
だからね、私はこの銀河をゼロに戻すことにしたの。」
「ゼロ・・・・?」
いったい何を言っているのか、ダナエには分からなかった。
邪神はニコリと笑い、こう答えた。
「全てを黒く塗り潰して、何もかもゼロにする。
その後に銀河を再建するのよ。この方が手っ取り早いでしょ。」
「それって・・・つまり・・・・、」
「この銀河にあるものは、全て破壊する。もちろんラシルも地球も。」
「・・・・・・・・・。」
「その後に星を生み出し、辛抱強く生命が誕生するのを待つわ。
そして私こそが銀河の支配者であり、創造神だと教え込む。
これならお前たちみたいに、刃向う者も出てこないでしょうから。」
邪神はクスクスと笑う。ダナエは顔を歪め「最低・・・」と呟いた。
「気に入らないからって、全部壊すなんて・・・・。
その後に、自分の都合の良いように創りかえるなんて・・・・、」
「最低だから邪神と呼ばれてるのよ。今さらでしょ。」
「許さない・・・・・そんなこと絶対にさせない・・・・、」
「残念ながら、もう始まってるの。この黒い染みはどんどん広がる。
やがてラシルを飲み込み、地球も飲み込み、銀河全体を覆うわ。
その時、何もかもが黒く塗り潰される。ゼロに戻るのよ。」
「もういい・・・もう・・・・・、」
ダナエは邪神の髪を掴み「これほどけ・・・」と命令した。
「お前を粉々に砕いてやる・・・・でなけりゃ銀河の外までブッ飛ばしてやる。」
「怖い顔、そういえば前にもそんな顔を見せたことがあったわね。」
顎に指を当てながら、「あれは・・・」と思い出す。
「確か初めてお前らと会った時。もう一人の妖精のガキを握り潰した時ね。」
「・・・・・・・・・。」
「あの時のお前は、今と同じ顔をしていた。
殺すだの八つ裂きにしてやるだの、散々私を罵ってたわね。」
「・・・・・・・・・。」
「大事な友達が殺されて、完全にキレてたわ。
でもね、だからってお前には何も出来なかった。
途中でニーズホッグが助けに来なかったら、お前は私の奴隷となっていたはずよ。」
「・・・・・・・・・。」
「あの時とまったく似たような状況ね。
あんたは怒ってるけど、でも何も出来ない。
そして今度ばかりは誰も助けに来てくれないわ。」
それを聞いたダナエは、「あんたまさか・・・・」と目を血走らせた。
「まさか・・・・またコウを殺したんじゃ・・・・、」
「コウを、じゃない。コウも、よ。」
「・・・・・・・・・。」
「お前の仲間は皆殺し。今頃虫の餌にでもなってるんじゃない。」
「・・・・ぐッ・・・・ぎいいいいッ・・・・・、」
ダナエの胸に殺気が溢れる。
ドス黒い感情で満たされて、怒りと憎しみで我を忘れそうになる。
そんなダナエを見て、邪神はゲラゲラと笑った。
「冗談。」
「・・・・・は?」
「お前の仲間は手にかけていない。」
「まだ生きてるの?」
「さあね。この黒い染みに飲み込まれてなければ、生きてるんじゃない?」
「・・・・・・・・。」
「本当は首でも落として持って来ようかと思ったんだけど、こっちもそこまでの余裕はなくてね。
なんたって私のことを粉々にしてくれたから。」
「みんな・・・まだ生きてる・・・・。」
「死ぬわ、もうじき。」
「・・・・死なせない。」
「死ぬ。みんな死ぬの。あんたもここで。」
邪神はダナエの顔を思い切り殴る。
嫌な音が響いて、醜く歪んだ。
「いい顔、もっとへこましてあげるわ。」
何度も何度も殴りつけ、ダナエの顔が変わっていく。
見るも無残に腫れあがり、鼻も歯もボロボロに折れてしまう。
それでもダナエの目は死なない。
邪神を睨みながら、「させない・・・・」と呟いた。
「何もかもゼロに戻すなんて・・・・そんなことさせるもんか・・・・。」
目を閉じ、闘志を燃やす。
邪神はゲラゲラと笑って、「もういい」と睨んだ。
「次は脳ミソをぶちまけてやるわ。」
そう言って拳を握り、力を溜めた。
「さよなら、おバカな妖精。」
邪神の拳が頭にめり込む。
しかしダナエの頭は砕けなかった。
「あら?」
「・・・・今度はこっちの番。」
そう言ってニヤリと笑うダナエ。
その姿は先ほどとは変わっていた。
「悪魔の姿じゃなくなってる。今度は・・・・蜂?」
邪神は首を傾げる。
蜂の姿になれば、身体はとても硬くなる。
だから邪神の拳を防ぐことが出来た。
「言ったでしょ、今度はこっちの番だって。」
ダナエは邪神の胸に槍を刺す。
マーブル模様がグルグルと回って、邪神の血を吸っていった。
そして強力な毒に作り変える。
「あんたの血を返すわ。」
毒に変わった血が、邪神の体内に戻っていく。
「ぐッ・・・・・、」
ビリビリと痛みが走って、辛そうに顔をゆがめた。
「面白い技ね。でもこんなのじゃ勝てないわよ?」
「でしょうね。ならもう一発毒をお見舞いしてやる!」
そう言って尻尾の毒針を突き刺した。
邪神の体内に二つの毒が注れて、激しい痛みが走った。
「痛いし痺れる。不愉快だわ。」
邪神は辛そうに歯を食いしばる。
ダナエはその隙に、自分を縛る邪神の髪を切り払った。
そして槍を向け、こう叫んだ。
「邪神!アンタはあの暗い雲の中に隠れてたんでしょ!?」
「・・・・・・・。」
「粉々にしたアンタは、本物のアンタじゃなかった。あれも兵隊だったんでしょ!」
「ふふふ・・・・。」
「何がおかしいのよ!」
「私はあの雲の中に隠れてたんじゃない。あの雲が私なの。」
「なんですって?」
「言ったでしょ?この銀河を黒く塗り潰すって。」
邪神は不敵に笑う。
その顔は狂気に歪んでいて、ダナエはぞっと青ざめた。.
「まさか・・・・自分が黒い染みになって、銀河を塗り潰すつもりだったの?」
「そうよ。私自身の手でゼロに戻す。その方が確実でしょ?」
「だったら!だったら・・・・結局あの雲をどうにかしない限りは・・・・、」
「私は消えない。いくら倒しても無駄なのよ。」
そう言って手を広げる邪神。
するとダナエの周りにたくさんの邪神が現れた。
「そんな!」
「だから言ったでしょ。もう諦めなさいって。」
数十人の邪神が、一斉に襲いかかる。
拳を握り、ダナエを殴り回した。
「ぐうううッ・・・・・、」
いくら硬い蜂の姿でも、さすがに限界がある。
それに黒い染みに侵されて、また身体が黒く染まり始めた。
ダナエはどうにか邪神の群れから抜け出して、もう一度悪魔の姿になった。
「何やっても無駄よ!」
邪神の群れが襲いかかる。
ダナエは羽ばたき、灰色の鱗粉を巻き散らした。
辺り一面に嵐のように吹き荒れて、邪神の群れを飲み込んだ。
「こんなのじゃ私は倒せない。いい加減足掻くのはやめなさい。」
「そうじゃないわ、これは私の為よ。」
「あんたの為?」
「悪魔の姿じゃないと、すぐに黒い染みに侵される。
でもこの姿じゃあんたには敵わない。」
「だから言ってるでしょ、もう諦めなさいって。ほんと馬鹿ね。」
「私は絶対に諦めない!あんたなんかに屈しないわ!」
そう言ってもっともっと羽ばたいて、たくさんの鱗粉をばら撒いた。
灰色の嵐は大きくなって、巨大な竜巻のように吹き荒れる。
「灰色の鱗粉は邪悪な力よ。
だから嵐の中にいれば、黒い染みを防げるはず!」
ダナエは両手を上げ、「来い!」と叫ぶ。
するとどこからともなく蝶の精霊が現れた。
ダナエは蝶の精霊と融合し、また天使のような姿に変わる。
「この嵐があれば、悪魔の姿じゃなくても戦える!」
「なるほどね。なら戦いなさいよ。何やっても無駄だけど。」
邪神はクスクスと笑いながら、ステルス機のような巨大な虫の姿に変わった。
「まともにやっても勝ち目はない。だけど手がないわけじゃないわ。」
羽を無色に変えて、バタバタと羽ばたく。
ダナエは身体だけ亜空間へ逃がして、邪神の攻撃をかわした。
しかしこのままではこちらからも攻撃できない。
だからすぐに元の次元へ戻ってきて、反撃を開始した。
羽をオーロラに変えて、強力な磁場を発生させる。
そして雷の魔法を唱えた。
雷は磁場に包まれ、大きな雷球に変わる。
それを見た邪神は「無駄よ」と言った。
「そんな攻撃はいくらでも反射できる。」
「誰もあんたにこれを撃つなんて言ってないわ。」
「なら何をするつもり?」
「こうするのよ!」
磁場を操作して、雷球を高く飛ばす。
そしてある程度の高さまで飛ばした時、磁場を消し去った。
雷球は一気に膨れ上がり、凄まじい稲妻を放つ。
真っ暗な景色に閃光が走り、耳をつんざく轟音が響いた。
「もう一発!」
また雷球を生み出して、同じ場所で炸裂させる。
すると真っ黒な景色の中に、小さな穴が空いた。
「しまった!」
邪神はダナエに飛びかかる。
しかしそれより早く、ダナエは穴の空いた場所へ羽ばたいた。
《真っ黒な染みに覆われてから、まだそう時間は経っていないわ。
ならラシルの全てが黒い染みに覆われたわけじゃない。
外へ出れば、きっとみんながいるはず!》
雷球を炸裂させたのは、黒い染みの中から抜け出す為だった。
そしてダナエの読み通り、まだラシルは真っ黒には染まっていなかった。
この黒い染みの外には、ちゃんと大地と海が広がっていたのだ。
「みんなはどこに・・・・?」
辺りを見渡していると、黒い染みの中から邪神が迫ってきた。

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