微睡む太陽 第二話 UFOはどこに(2)

  • 2017.05.06 Saturday
  • 09:13

JUGEMテーマ:自作小説

誰にだって生まれてきた意味があるはずだ。
サッカー選手になるとか、ミュージシャンになるとか。
俺はUFOに乗る為に生まれてきた。
だから何がなんでもUFOに乗らないといけない。
しかしこれを見つけるのが大変で、正直なところ、俺一人の手には余るかもしれない。
米軍が協力してくれたら助かるんだけど、奴らは絶対に手を貸さないだろう。
だってすでに宇宙人と接触している可能性があるからだ。
だったら絶対にそれを公表するはずがないし、手伝ってって手紙を書いても無視されるだろう。
「ズルいなあいつら、独り占めして。」
ヒラリーもトランプもきっとUFOに乗ったことがあるに違いない。
アメリカが一番に隠蔽したいのは、宇宙人がすでに地球に来ているという事実なのだ。
「もうちょっと勉強してたら、NASAに入れたかな。」
今からでも遅くない。
ちょっと宇宙のことを勉強して、NASAを目指してみようか。
そんな事を考えながら、今日はいつもとは違う山を目指していた。
いつも行くのは兎羽山。
今日はその隣にある滝尾山に行く。
朝の道路は空いていて、グングンスピードをあげた。
でも警察がネズミ捕りをしていたので、慌ててブレーキを踏んだ。
「こういうことばっかりに精出して。この星には宇宙人が来てるっていうのに・・・・。」
もっとやるべきことがあるだろうと思いながら、コソコソとパトカーの横を通り過ぎた。
その先には交差点があって、それを左に曲がると滝尾山に着く。
赤信号で足止めを喰らい、ちょっとイライラしながら周りを見渡した。
すると交差点の右手に、少し変わった家を見つけた。
「洋館?」
田舎っぽい民家が並ぶ中で、ポツンと西洋風の家が建っている。
まるでオペラ座の怪人でも出て来そうな家だ。
庭はすごく広くて、植え込みは綺麗に手入れされている。
その庭の中に、家まで続く長い道が伸びていた。
「目立つ家・・・・・怪しい。」
こういう場所にはきっと何かいる。
宇宙人はいないだろうけど、未確認生物とか怪人とか、そういうのが棲みついている可能性がある。
でも今日はUFOを探しに行かないといけないので、その家を調べるのは見送った。
交差点を左に曲がり、大きな道を真っ直ぐぬけて、工場地帯に差し掛かる。
そこも抜けて、滝尾山の入り口に着いた。
ここを登るのは初めてで、ちょっと緊張する。
「・・・・行くか。」
リュックとスコップを背負い、まだ見ぬ未開の地へ足を踏み入れた。

            *

結論から言おう。
滝尾山にUFOは来なかった。
頂上に大きな電波塔が建ってるから、もしやと思ってやって来たけど、とんだ無駄足だった。
「やっぱり米軍の協力が必要かなあ。」
本気で手紙を書こうか考える。
それか勉強してNASAに入るか。
空はすっかり暗くなっていて、ヘッドライトが闇を切り裂く。
車はぜんぜん通っていなくて、スイスイと飛ばしていった。
そして交差点に差し掛かった時、あの洋館が目に入った。
「まだ電気が点いてる。」
時刻は午後11時半。
田舎じゃ消灯時間だ。
でも洋館だけは電気が点いていた。
窓からオレンジ色の光が漏れている。
周りの民家は電気が消えているのに・・・・。
「これは怪しいな。」
俺は路肩に車に停めて、こっそりと洋館に向かった。
広い庭に、家まで続く道が伸びている。
周りは真っ暗で、外灯だけが足元を照らしていた。
「こっそり入ればバレないはず。」
身を屈め、コソコソと家に近づく。
その時、窓の近くを人影が過ぎった。
「ヤバッ!」
慌てて植え込みに身を隠す。
ちょっとだけ顔を出して、様子を窺った。
「おっさんが歩いてる。」
オレンジに灯る光の中、一人の男が歩いていた。
その後ろには車椅子に乗った少年がいた。
「ますます怪しいな。」
この家には絶対に何かある!
俺はコソコソと近づいて、家の壁に張り付いた。そして窓のすぐ下に身を隠す。
「あの車椅子の少年は、怪人に誘拐されたんだろうなあ。きっとあのおっさんが怪人だな。」
顔を上げて、また窓を覗く。
その時、いきなり窓が開いて、「何してんだ?」とおっさんが出てきた。
「怪人!」
「は?」
「なんだお前!?」
「それはこっちのセリフだろ。何やってんだお前?」
おっさんは窓を閉めて、玄関から出てきた。
けっこう良いガタイをしてる。やっぱり怪人に違いない。
「あの車椅子の少年を放せ!」
「ああ?」
「お前怪人だろ!?」
「なんだお前?頭イカれてんのか?」
おっさんは顔をしかめる。
でもイカれてるのはこのおっさんの方だ。
「ここは怪人の館だな!」
「・・・・・・・。」
「あの車椅子の少年をさらって、生贄にするんだろ!」
「お前・・・・、」
おっさんはヅカヅカ近づいてくる。
でも大丈夫、俺は少林寺拳法三級の腕前だ。
筋トレだって毎日してるし、こんな卑劣な怪人に負けるはずがない。
「死ね!」
思いっきり殴りかかると、思いっきり顎に入った。
でもおっさんはビクともしない。
ポリポリと顎を掻いて、「それ本気か?」と笑った。
「本気だ!」
「なら好きなだけ殴れ。その後俺が殴るから。」
どうやら相当肉体に自信があるみたいだ。
俺は助走をつけて何度も殴った。
顎、腹、それに足と腕も。
でも怪人はビクともしない。
どうやら物理に強いらしい。
《残念だ。俺は魔法が使えない・・・・。》
悔しくなって、拳を下ろす。
「終わりか?じゃあ一発いくぞ。」
怪人は拳を上げる。
「ガードしろ。」
「え?」
「顎割れるぞ。」
怪人が踏み込んでくる。
俺ははじめの一歩で見たクロスアームブロックをした。
どんなパンチでも防げる最強のガードだ。
でも防げなかった。
怪人はとんでもないパンチ力の持ち主で、ガードごと俺を吹っ飛した。
「あぎゃッ!」
腕が折れそうなほど痛い・・・・。
ガードしても衝撃が伝わってきて、頭の中がグワングワンする・・・・。
《負ける・・・・せめて補助魔法でも使えたら・・・・、》
悔しいけど、この怪人に挑むにはレベルが足りなかったようだ。
俺は膝をつき、「殺せ!」と叫んだ。
「ああ?」
「お前の勝ちだ!でもあの少年は逃がせ!俺を生贄にしろ!」
負けたからといって、心まで挫けては情けない。
根性を振り絞って、「殺せ!」と手を広げた。
「お前病気か?」
怪人はバカにした目で睨む。
「病気じゃない!」
「どこぞの精神病院から抜け出してきたか?」
「バカはお前だ!この怪人!」
「やっぱり病気だな。」
怪人はスマホを取り出して、「もしもし?警察ですか?」と言った。
「頭のおかしい奴が家に侵入したんです。すぐに来てもらえ・・・・、」
そう言いかけた時、家の中から誰かが出てきた。
「勇作君!」
「あ、どうも。」
それは墓地の家のおばさんだった。
「あんた何やってんの!?」
「怪人と戦ってるんです。おばさんも逃げて下さい!」
「怪人?」
おばさんはビックリしている。
まあ当たり前だろう、誰だって怪人は怖いに決まってる。
でも俺には正義があるから、逃げ出すわけにはいかなかった。
「そこのおっさんは怪人なんです!少年をさらってるんです!」
「・・・・・・。」
おばさんは怪人を見つめる。
そして「ぶふッ!」と吹き出した。
「違う違う!これ怪人じゃないから。」
「でも車椅子の子供をさらってるんですよ!すごい怪力だし。」
「それは私の息子。それでこっちは旦那。」
おばさんは怪人に近づく。
「ああ、危ない!」
「平気平気。」
怪人からスマホを取り上げて、プチっと電話を切ってしまった。
「おい!何して・・・・、」
「大丈夫、この子危ない子じゃないから。」
「はあ?どう見ても危ないだろ。頭おかしいぞコレ。」
「そんな言い方しないで。純粋なだけだから。」
おばさんは俺に近づいて、「大丈夫?」と言った。
「大きな音してたけど、まさか殴られたとか・・・・、」
「すごいパワーですよ、その怪人。でも俺は負けないんです。例え死んでもね。」
「そうね、勇作君は正義と信念だけは人一倍だもんね。」
「でも出来ればUFOに乗るまでは死にたくありません。」
「人生の仕事だもんね。」
おばさんは可笑しそうに笑って、「立てる?」と支えてくれた。
でも怪人のパンチ力は絶大で、まだダメージが抜けない。
「すいません、回復魔法を使えないもので・・・・、」
「誰も使えないから謝らなくていいのよ。」
おばさんは「手当するから中に入って」と言った。
「ちょっと口元が切れてるから。」
「平気です。回復力には自信がありますから。」
「私も手当てには自信があるのよ。昔は看護婦だったから。」
「回復要因ですか?」
「なんかよく分からないけど、回復させるのは得意よ。」
俺はおばさんに支えられて家に入っていく。
すると怪人が「おい」と止めた。
「そんなもん家に入れるな。」
「平気だって。この子が例のUFOの子だから。」
「・・・・しょっちゅう山に登るってあの青年ことか?」
「そうそう。変わってるけど悪い子じゃないの。ね?」
「俺は正義の味方です。」
「正義の味方がコソコソ人の家に入るかってんだ。」
怪人は舌打ちする。
おばさんは「はいどうぞ」と玄関の中に入れた。
すると車椅子の少年が出て来て、じっと俺を睨んだ。
「大丈夫か!?」
「え?ああ・・・・、」
「もう助かったからな!」
「何が?」
「怪人はやっつけた。後で警察に行こう。ご両親が待ってる。」
こんな家に閉じ込められて、さぞ怖かっただろう。
俺は安心させるように笑いかけた。
少年はおばさんを見上げ「この人ちょっと・・・」と切ない顔をした。
「うん、そうよ。でも口に出して言ったらダメ。」
「そうだ。下手なこと喋ると、怪人を怒らせる。大人しくしといた方がいい。」
「・・・絡みづらいな。」
少年は面倒くさそうな顔をする。
なぜ?
せっかく助けに来たのに。
そこへ怪人がやって来て、「ほんとに家に上げるのか?」と言った。
「警察に来てもらえよ。」
「でもあんたも殴ったんでしょ?この子怪我してるからあんたも悪くなるわよ?」
「俺は何発も殴られてるっての。だいたい不法侵入だろそいつ。」
「あんたは空手の先生じゃない。素人怪我させたんだから、何もなしってわけにはいかないんじゃない?」
「ああ、はいはい。なら好きにしろ。その代わり変な真似したらシバき倒すからな。」
怪人は恐ろしい顔で睨んでくる。
やっぱりこいつは人間じゃない。
「それじゃ上がって。」
おばさんは俺の背中を押す。
「お邪魔します。」
靴を脱ぎ、前向きに揃える。
その時、ドアの向こうの夜空が見えて、何かがピカリと光った。
「UFO!」
俺は一目散に駆け出す。
「ちょっと!」
「UFOが!」
「どこ!?」
「そこ!」
「何もないじゃない。」
「ピカっと光ったんです!」
「・・・・・・ああ、あれ。」
おばさんはなぜかため息をつく。
夜空を指さし、「よく見て」と言った。
「あれパチンコ屋さんのライト。」
「何言ってるんです!あれはUFOですよ!だってさっきまであんなのなかったから!」
「さっきは雲がなかったからね。でも今は雲がかかってるでしょ?だから反射してよく見えるだけ。」
「いえ、あれはUFOです。俺はあれに乗らないといけないんです。」
今、千載一遇のチャンスが巡ってきた。
ようやく生まれてきた意味を果たす時がきたのだ。
「おばさん、怪人はお任せします。俺にはやらなきゃいけないことがあるので。」
「う〜ん・・・でもねえ、もうじき消えると思うわよ、あの光。」
おばさんは壁にかかった時計を見る。
時刻は午前0時を指して、ピヨピヨピヨとひよこのオモチャが出てきた。
すると不思議なことに、UFOの光がピタっと消えた。
「なんで?飛び去ったか!」
「違う違う。営業時間が終わったの。」
「UFOはずっと光ってます。年中無休です。」
「UFOはね。でもパチンコ屋さんは営業時間があるのよ。だから今日はもうお終い。」
そう言って俺を家に押し込む。
「おばさんはUFOが気にならないんですか!?」
「気になるわよ、本物なら。」
「あれは本物です!」
「・・・・あのね、前から聞きたかったんだけど、どうしてそこまでUFOに興味があるの?」
「仕事だからです。」
「そうよね、その為に生まれてきたんだもんね。でもその理由を教えてほしいのよ。」
「理由はありません。強いて言うなら、それが俺の存在意義です。」
「ならその存在意義を聞かせてよ。」
グイグイと背中を押して、家に入れる。
バタンとドアを閉じて、「はいはい」と中に上げた。
《やっぱりこの付近にはUOが出るんだな!収穫があったぞ!》
よっしゃ!とガッツポーズをする。
車椅子の少年が「可哀想・・・」と呟いた。
「俺もそう思う。せっかくUFOが現れたのに乗れないなんて。」
「そういう意味じゃないって。その・・・・こっちが。」
そう言って頭を指さす。
「けっこう痛いっていうか・・・・、」
「陸翔(りくと)!」
おばさんが怒鳴って、少年はビクっとする。
「そういうことは言わない。」
「ごめん・・・・。」
少年はキイキイと車椅子を動かしていく。
おばさんも「ほらほら」と俺を押した。
「痛いってどういう意味ですか?あの子、怪人に何かされたんじゃ・・・・、」
「平気平気。」
今日はとても不思議な日だ。
怪人が現れ、なぜかこのおばさんが現れ、そしてUFOが現れた。
これはいよいよ俺の運命が動き出しているのかもしれない。
《UFOに乗る日もそう遠くないな。》
またガッツポーズをする。
近いうち、必ず宇宙人が俺の前に現れるはず。
NASAに就職するのはやめることにした。

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM