微睡む太陽 第五話 光の国へようこそ(1)

  • 2017.05.09 Tuesday
  • 13:53

JUGEMテーマ:自作小説
ウルトラマンは光の国からやってきた。
M78星雲という遠い星から。
つまりは宇宙人ってことだ。
そして今、目の前にその光の国がある。
ちょっと汚れたアーチに、『光の国へようこそ!』と書いてある。
傍にはウルトラマンをパクったようなキャラがいて、スペシウム光線をパクったポーズをしている。
おばさんは手を向け、「どう?」と笑った。
「ここなら宇宙人がいるかもしれないわよ。」
「ここはなんですか?」
「光の国よ。」
「大きなアーチがありますね。その奥には四角い建物があります。屋根のあれは星ですか?」
「子供向けのプラネタリウムがあるのよ。」
「ここはどういう場所なんですか?」
「だから光の国よ。天体望遠鏡とか、それにロケットの模型があるのよ。」
「なるほど。子供が校外学習で来るような所ですね。」
「そうよ。」
「ここがおばさんの言っていた宇宙人の出そうな場所ですか?」
「なんたって宇宙のことを集めた場所だもの。」
そう言って「行きましょ」と入って行く。
俺もアーチを潜り、じっと中を見渡した。
屋根にある星の傍に、UFOの模型があった。
「あれは・・・・、」
映画、メン・イン・ブラックを思い出す。
あの映画のラストでは、模型のUFOが実は本物のUFOだった。
そのUFOで悪い宇宙人が逃げようとしていたのだ。
「もしかしたらあのUFOも・・・・。」
ゴクリと息を飲む。
子供向けの施設になんて興味はないけど、あのUFOは怪しい。
ふらふらにそっちに向かうと、陸翔君が「どこ行くの?」と呼んだ。
「入り口はこっちだよ。」
「その建物に用はない。」
「じゃあ何に用があるの?」
「UFOだ。」
「ああ、あの模型。」
「模型に見せかけた本物かもしれない。ちょっと調べてくる。」
俺は建物の傍のフェンスに登って、そこから木に飛び移る。
そして屋根の上まで来ると、UFOの模型をつついた。
「近くで見ると大きいな。」
直径二メートルくらい。
恐らく小型の宇宙人が乗るのだろう。
「危ないよ!」
陸翔君が叫ぶ。
俺は「平気だ」と答えた。
「中から宇宙人が出てきたらどうすんの!」
「魔法使いも回復要因もいる。問題ない。」
まじまじとUFOを調べていく。
すると「な?」と陸翔君が言った。
「マジでおかしいだろ?」
「ていうか可哀想な人じゃん。」
「病院とか行った方がいいんじゃない?」
陸翔君の友達が俺を見て笑う。
「UFOの人!先に中に行ってるからね!」
「ああ。」
軽く手を挙げて、UFOの観察を続ける。
「これは見事なもんだな。」
UFOは金属で出来ていた。
普通こういう模型は、もっと軽い素材で出来ているはずなのに。
手で叩くと、ペチンペチンと鳴った。
「叩いた感触からすると、中は空洞だな。もしこれが本物なら、どこかに入り口があるはずだ。」
しゃがんで下を覗く。
でも入り口らしきものはない。
上も横も調べたが、中に入れそうな場所はなかった。
「やっぱりただの模型なのかな?」
もしやと思ったのに、空振りだったようだ。
すると下の方から「何してるの!」と声がした。
「勇作君!そんな所に登っちゃダメよ!」
「おばさん。これただの模型のようです。」
「降りてきなさい!」
「本物じゃないなら用はありません。」
屋根の縁に立って、ピョンと飛び降りる。
「ああ!」
おばさんは悲鳴を上げる。
俺は「ここは何もなさそうです」と言った。
「やっぱり廃トンネルに行きましょう。」
「何やってるの!」
「UFOを調べてたんですよ。」
「なんで飛び降りるの!怪我したらどうするの!」
「平気です。高い所は慣れてるんで。」
UFOを探すのにしょっちゅう高い所に登るから、鳶職人なみに身が軽くなった。
次の副業は鳶にしようかな。
「帰りましょう。」
そう言って歩き出すと、「見ていかないの?」と言われた。
「せっかく来たのに。」
「偽物に興味はありません。」
「でも楽しいわよ。陸翔たちは喜んでるわ。」
「俺は子供じゃありません。」
「でも中で陸翔が待ってるわよ。UFOの人まだ?って言って。」
「なら陸翔君も一緒に廃トンネルに行きましょう。そっちの方が楽しい。」
「そこは入っちゃダメな場所でしょ。」
「そういう場所こそ怪しいんです。もしかしたら誰かが宇宙人を匿ってるのかも。」
「いいから来なさい。」
おばさんは俺を引っ張る。
そして建物の中に押し込んだ。
「ほら、ロケットの模型があるでしょ?月へ行ったやつの模型らしいわよ。」
「ロケットは地球人の乗り物です。UFOじゃありません。」
「ならプラネタリウムを見ましょ。小さいけど楽しいわよ。」
「本物の夜空には敵いません。空に見えるあの星々のどこかには、きっと宇宙人がいるんです。
でもプラネタリムには・・・・、」
「いいからいいから。」
おばさんは俺をプラネタリウムのホールへ押していく。
「陸翔、入るわよ。」
友達と一緒に図鑑を見ていた陸翔君は、「UFOの人!」とやって来た。
「あれ本物だった?」
「いや、偽物だ。」
「残念だったね。」
「そう簡単に見つかるもんじゃないからな。」
顔をしかめていると、陸翔君の友達もやって来た。
「俺賢者。」
「私武道家。」
「おお!みんなちゃんと職業があるのか。」
「UFOの人は?」
「俺は勇者だな。」
「でも怪人に負けたんだろ?」
「遊び人の方がいいんじゃない?」
二人はゲラゲラ笑う。
陸翔君が「あんまからかうなよ」と言った。
「でも面白いじゃん。」
「ねえ?マジでUFOとか信じてるの?」
「信じるとか信じないとか、そういう話じゃないんだ。UFOは確実にいる。宇宙人もな。」
「そりゃいるでしょ。地球人だって宇宙人だし。」
「じゃあロケットとかスペースシャトルもUFOね。」
「視点を変えればそうなるな。でも俺は地球外生命体に会いたいんだ。きっと米軍が匿ってるに違いない。」
そう答えると、可笑しそうに笑った。
「面白いなこのおっちゃん。」
「めっちゃからかい甲斐がある。」
「だからからかうなって。本人は真剣なんだから。」
「いや、からかってもいいぞ。そんなのは慣れっこだからな。」
俺は背中を向け、「君らにもいつか分かる」と言った。
「この広い宇宙、生き物が地球にしかいないんなんてことはない。文明だって他の星にもある。」
外へ出て、UFOの模型を見上げた。
もしあれが本物なら、すぐにこの子たちを納得させてやれるのに。
しかし現実な酷なもので、あのUFOは飛ばない。
だから光の国を出て、廃トンネルに向かうことにした。
「どこ行くの?」
陸翔君が追いかけてくる。
「仕事だ。」
「拗ねた?」
「何が?」
「あいつらにからかわれて。」
「慣れっこだ。そして君らにもいつか分かる日がくる。この広い宇宙、人類は一人ぼっちじゃないってな。」
「じゃあ僕も行くよ。」
「危ないぞ?」
「いいって。ここにいるより面白そうだし。」
そう言って光の国へ戻っていく。
そしておばさん達と一緒に出てきた。
「お前らも廃トンネルの方がいいよな?」
「でもあそこ・・・出るって噂だぞ?」
「私も聞いたことある。お姉ちゃんの友達が、学校に行くのにそのトンネルを使ってたんだって。
それで部活で帰りが遅くなって、夜にそこを通った時に、誰かに肩を叩かれたって。」
「マジで?」
陸翔君の顔が引きつる。
「幽霊かあ・・・・」と呟き、「UFOの人はどう思う?」と尋ねた。
「幽霊は人間の意識を抜き出したものだ。宇宙人の機械でな。
だから幽霊のいる場所には、宇宙人がいるはずなんだ。」
「だったらお墓とかも?」
「いるだろうな。今度掘り返してみようと思う。」
そう答えると、おばさんが「ウチの墓地はやめてよ」と言った。
「あれはお寺さんから預かってるものなんだから。」
「その坊さんは宇宙人かもしれない。」
「それっぽい所はあるけど、良い人よ。」
そう言って深くため息をついた。
「どうしてもトンネルに行きたいの?」
「仕事ですから。」
「お巡さんに怒られるかもしれないわよ?」
「平気です。逃げますから。」
「・・・・・・・・。」
おばさんは首を振る。
「何を言っても無駄ね」と言って、車に向かっていった。
「いいわ、行ってみましょ。」
「ようやく理解してもらえましたか。」
俺は車へ走って行く。
陸翔君もついて来て、「ワクワクするね」と言った。
「危険もあるけどな。でもこれだけパーティーが揃ってるなら大丈夫だろう。」
勇者の俺、魔法使いの陸翔君、賢者と武道家の友達、そして回復要因のおばさん。
ムドーくらいまでの強さなら戦えるはずだ。
でも残念ながら、事はそう上手く運ばない。
友達二人が行くのを嫌がったのだ。
「俺いいや。」
「私も。」
陸翔君が「ビビんなよ」と言った。
「誘った時は行くって言ったじゃん。」
「そうだけど・・・・、」
「呪われたら怖いし。」
「なんだよ。UFOの人をからかったクセに、幽霊は信じるのかよ。」
「だって幽霊の方が実際にいそうじゃん。」
「現実味があるし。」
「僕はUFOの方が現実味があると思う。ねえUFOの人?」
「どっちも実在するぞ。そして裏で全ての糸を引いてるのは宇宙人だ。」
俺は車に乗り込む。
「行きたくない者は行かなくていい。危険だからな。」
「じゃあ俺パス。」
「私も。」
「ていうか陸翔ん家でゲームやろうぜ。」
「私もそれがいい。」
「いいや、僕は行く。怖いならお前ら帰れよ。」
子供たちの言い争いは続く。
俺は光の国を振り返り、UFOの模型を見上げた。
「待ってろよ本物のUFO。今俺が行くからな。」
この思いはラブレターであり、そして挑戦状だ。
愛と戦いは表裏一体で、だからこそ好きなものには本気になれる。
俺は廃トンネルを思い浮かべる。
真っ暗な通路の中、ひっそりとたたずむ宇宙人。
それは美して怖くて、不気味で可愛くて、何もかも内包した究極の存在だ。
全てを備えた完全無敵の超人、それが宇宙人である。
・・・・そう考えた時、ふと何かが頭を過ぎった。
《宇宙人は・・・・無敵の超人・・・・。》
アイスランドにいる頃、弾けるオーロラを見たあの瞬間を思い出す。
あの時、俺の傍に誰かがいた。
親じゃない、犯人でもない。
もう一人確かにいたんだ。
そいつは俺より小さくて、俺の手を握っていた気がする。
その手は柔らかく、指は折れそうなほど頼りない。
「勇作君?」
おばさんに呼ばれて、「はい?」と顔を上げる。
「また泣いてるけど・・・・、」
「・・・ほんとだ。」
拭った指は湿っていて、「なんですかね?」と言った。
「なんか思い出そうとすると泣くみたいなんです。」
「そりゃ辛いことがあったんだもの。泣くのは仕方ないわ。」
「いえ、両親のことじゃないんです。」
「じゃあなんで泣くの?」
「思い出せない誰かがいるんです。」
「誰?」
「分かりません。」
おばさんからハンカチを借りて、目を拭う。
するとコンコンとノックの音がして、「乗せて」と陸翔君がいった。
「ああ、すまん。」
車から降りて、陸翔君を抱える。
そして後部座席に座らせようとした時、身体を支える為に俺の手を握ってきた。
「・・・・似てる。」
「何が?」
「弾けるオーロラを見たあの時、こんな感じの手を握ってたような気がするんだ。」
「ほんと?」
「・・・・もしかしたら・・・、」
「泣いてるの?」
「・・・・他にも家族がいたのかもしれない。」
俺より小さく、そして柔らかな手。
もしかしたら、俺には弟か妹がいたのかもしれない。
しかしもしそうだとしたら、どうして今はいないのか?
どうして今まで忘れていたのか?
「そんなわけはないか。」
手を離し、ドアを閉める。
どうやら友達二人は帰るようで、おばさんの車で送って行った。
「賢者と武道家が抜けてしまったか。かなりの戦力ダウンだな。」
おばさんの車に揺られながら、廃トンネルへ向かって行く。
すると陸翔君が俺の手を握ってきた。
「こうやってたらなんか思い出す?」
「・・・・無理だな。今は何も。」
「UFOの人には弟か妹がいたのかもね。」
「そうかもしれないけど、そうだとしたら事件が増えることになる。」
「事件?」
「あの日、俺の両親は殺された。そして弟か妹も殺されたことになる。
そうじゃなきゃ、弟か妹が、今ここにいないことに説明が付かない。」
「じゃあ知ってる人に聞いてみれば?」
「いや、聞いても無駄だ。もし弟か妹がいたなら、俺を育ててくれた親戚が教えてくれるはずだからな。」
「じゃあ誰を忘れてるのさ?オーロラが弾けた時にいたのは誰?」」
「分からない。」
そう、分からない。
いくら考えても無駄なのだ。
確かなのは、あの弾けるオーロラを見た瞬間に、UFOに興味を持ち始めたことだけ。
どうしてそうなってしまったのか、それも分からない。
《・・・・よくよく考えれば、気にすることでもないか。世の中なんて分からないことだらけだ。
でも宇宙人なら、俺よりは遥かに多くのことを知っているはずだ。なんたって無敵の超人だからな。》
窓から空を見上げる。
幻日はいつの間にか消えていた。

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