微睡む太陽 第八話 探しものはすぐ傍に(2)

  • 2017.05.12 Friday
  • 08:17

JUGEMテーマ:自作小説

新しく見つかった副業。
それは遺跡の発掘をするというものだ。
二ヶ月だけの短期だけど、そこそこ時給はいい。
しかも仕事場は兎羽山ときている。
これならば遺跡とUFOの発掘、両方できて一石二鳥というわけだ。
周りは定年退職した人が多い。
趣味を兼ねてやっているのだろう。
でも俺は実益も兼ねている。
UFOを見つけ出すという実益を。
兎羽山の中腹辺り、木立の開けた場所で、せっせと土を掘る。
ここは昔に城があったそうで、掘れば瓦や石畳の破片が出て来る。
でも俺はそんなのはどうでもいい。
UFOを見つけたいのだ。
だから誰よりも頑張った。
休憩中でさえ手を止めなかった。
さすがに喉は乾くので、お茶くらいは飲むけど。
「UFOよ、いるなら返事をしろ。俺はお前の味方だぞ。」
願いを込めながらせっせと掘る。
すると一人のじいさんが「精が出るな」と声をかけてきた。
「当然です、仕事ですから。」
「仕事は一生懸命やるもんだよ。まだ若いのにえらい。」
「仕事は人生の使命です。俺はなんとしてもUFOを見つけたいんです。」
「UFO?」
「遺跡なんてどうでもいいんです。宇宙人がここに降り立った証拠が欲しいんですよ。」
「はあ・・・変わってとるねえ。」
じいさんは俺の前に膝をつく。
そこにはたくさんの瓦や土器の破片が積み上がっていた。
「こんな短時間で、よくこれだけ掘れるもんだ。」
「それあげますよ。」
「いや、これはあんたのじゃないから。」
じいさんは可笑しそうに笑って、「ロマンがあるなあ」と呟いた。
「ロマン?」
「儂は歴史が好きでな。定年してから15年、全国各地の城や遺跡を巡り歩いた。」
「UFOはいましたか?」
「UFOはおらんけど、そこには歴史がある。でも見るだけじゃ飽き足りなくなって、今は大学に通っとるよ。
好きなことを勉強するのは、幾つになっても楽しいもんだ。」
「すいません、そこどいてもらえますか?」
「おお、すまん。」
じいさんは立ち上がり、「最近じゃ先生の仕事にもついて行くんだ」と言った。
「発掘の仕事は楽しい。この手で歴史を蘇らせるんだからな。」
「俺はUFOを見つけたいんです。」
「それもロマンだな。あるのかないのか分からないものを求める。男のロマンだ。」
「俺は現実主義者です。無いものを探したりはしません。」
「本気で信じとるんか?UFO。」
「信じるもなにも、あるんです。問題は見つからないことだけで。」
「純粋だなあ、いま幾つだ?」
「25です。」
「うん、まあ・・・・まだ遊びたい年頃だな。」
じいさんは勝手に頷いている。
そこへ何人かの若い男女がやって来た。
「斎藤さん、何してるんです?」
帽子を被った女が尋ねる。
じいさんは俺を指さし、「UFOを探してるんだと」と答えた。
「UFO?」
「根っから信じとるみたいだ。」
「へえ。」
女はじろじろ俺を見る。
「手伝いましょうか?」
「お願いします。」
人手は多い方がいい。
腰に付けた予備のスコップを差し出すと、「自分のありますから」と言った。
俺の傍にしゃがんで、土を掘っていく。
すると周りの若者たちが「また始まった」と笑った。
「琴音さあ、ほんと変人好きだよね。」
「ほんとな。男の趣味がマニアック。」
「前の彼氏もオカルトとか好きだったもんね。」
「うるさいな、ほっといて。」
女はシッシと手を振る。
若者たちは「あっちにいるから」と去って行った。
「すいません、失礼なこと言っちゃって。」
「慣れっこですから。」
女はせっせと手を動かす。
するとじいさんがポンと女の肩を叩いた。
「邪魔しちゃ悪いから、儂もむこうにいるな。」
「そういうのじゃないですよ。」
「いやいや、恥ずかしがらんで。」
じいさんはニヤニヤしながら去っていく。
女は「すいません」と謝った。
「私たち大学のゼミで一緒なんです。考古学の。」
「あのじいさんもですか?」
「はい。定年してから大学に来る人って、ちょくちょくいるんですよ。それもマニアックな学部。
昔に出来なかったことを、定年してから楽しみたいみたいで。」
「そうですか。」
どうでもいいので適当に頷く。
でも手伝ってくれるのはありがたい。
だけど掘れども掘れども、出て来るのは遺跡の破片ばかり。
俺にとっては用のない物なので「これあげます」と言った。
「欲しいけど、持って帰ったら怒られます。」
ニコっと笑って、「UFOが好きなんですか?」と尋ねた。
「仕事です。」
「?」
「UFOに乗るのが俺の仕事なんです。だから見つけないといけないんです。それに相棒もいるから。」
「相棒。」
「人間と怪人の息子です。宇宙人かもしれません。でも両親が離婚するので、心を痛めているんです。
だから宇宙へ行きたがっているんですよ。いや、帰りたがっているという方が正しいか。」
陸翔君は宇宙人の可能性がある。
四日前に見舞いに行ったきりだから、明日にでもまた行って、ちゃんと尋ねてみよう。
女はそれからも色々話しかけてくるが、面倒くさいので無視した。
手伝ってくれるのはありがたいが、邪魔をするなら帰ってほしい。
《人間の相手をしている暇はないんだ。宇宙人なら別だけど。》
時間も忘れ、せっせと土を掘る。
やがて陽が暮れてきて、主任さんが「今日はもう終わり」と手を叩いた。
「明日も朝九時にここへ集合して下さい。足がない人は市役所まで来てくれれば、いつも通りに送迎します。それじゃ解散。」
みんな「疲れた〜」とか「お疲れ」と喋り出す。
俺はリュックを背負い、山を下りた。
すると手伝ってくれていた女が「ちょっといいですか!」と追いかけてきた。
「私たちこれからゼミのみんなでご飯に行くんです。よかったら一緒にどうですか?」
「いえ、仕事がありますので。」
「仕事はもう終わったじゃないですか。」
「さっきのは労働です。UFOを見つけるという仕事も兼ねているけど。
でも今からが俺の本業なんです。お疲れ様でした、失礼します。」
会釈を残して、スタスタ下りていく。
俺は忙しいのだ。
今やUFO探しは自分の為だけではなくなった。
悠長に飯を食っている暇などない。
しかし女はしつこく、「なら明日はどうですか?」と追いかけてくる。
「私もUFO見たことあるんです!だから話を聞きたくて・・・・、」
「なんですって!?」
そうとなれば話は別だ。
「いつ?どこで?UFOの形や色は?」
「子供の頃です。アメリカに住んでたことがあって、夜中に強烈な光を感じたんです。
それで窓を開けたら、真っ白に輝くUFOがいたんです。」
「それでどうなりました!?UFOに乗ったんですか?頭にチップは?」
「いえ、見ただけです。でも誰も信じてくれなくて・・・・。
あの、こんなこと言うと笑われるかもしれませんけど・・・・、」
そう前置きして、「実は」と続けた。
「私が考古学を選考したのもそれが理由なんです。大昔、この地球には人類以外の文明があったんじゃないかって。
それはきっと宇宙から来たんだと思うんです。」
「そうでしょうそうでしょう!そうなんです!奴らはいるんですよ!俺たちより遥かに昔からね。」
「ええっと・・・・そこまでとは思わないけど、でもUFOや宇宙人って、きっとどこかにいると思うんです。
だってこの広い宇宙で、生命が私たちだけっておかしいじゃないですか。
宇宙全体の星の数って、地球上の砂浜の砂粒より多いんですよ。
だったら地球外生命がいない方がおかしいと思うんです。」
「素晴らしい!そうです!そうなんですよ!人類は一人ぼっちなんかじゃないんです!」
「ですよね!絶対そうですよね!でも周りにこれを言うと馬鹿扱いされるんです。
みんなUFOを見たことがないから信じられないだけで・・・、」
「気持ちは分かります。俺だって妄想だの病気だの言われますからね。
でも言いたい奴には言わせておけばいい。そんなの関係ないんです。」
「それに私は変人が好きなわけじゃないんです。私の話を分かってくれそうな人が好きなだけで・・・・。
みんなは変人が好きなんだろ?って言うけど、そうじゃないのに。」
「人間は悲しい生き物です。嘆いても仕方ありません。
でもね、俺はUFOを見たんです。親が殺されたあの日、弾けるオーロラの中に・・・・、」
「え?親を・・・・、」
女は驚く。
毎度のことなので、「子供の頃にアイスランドにいて・・・・」と説明した。
「・・・・そうなんですか。すいません、悪いこと聞いちゃって。」
「別に悪くありません。問題はUFOです。俺はそれを見つけないといけないんです。だからこれで失礼します。」
理解し合える人がいるのはいいことだ。
仕事にもやる気が出て来る。
《さて、ピックアップしといた人気のない場所に行かないとな。》
政府の手が及んでいない宇宙人は、きっと隠れながら生きている。
だからそういう場所を調べておいた。
まず向かうは廃村だ。
調べると意外と近くにそういう場所があった。
怪人の洋館がある場所の、さらに北の山にある。
そこなら絶対にいるはずだ!
期待を込め、山を下りる。
そして空き地に停めていた車に乗り込むと、コンコンとノックされた。
「あの・・・・、」
「はい?」
あの女がついて来ていた。
窓を開け「何か?」と尋ねる。
「その・・・・ご迷惑じゃなかったらなんですけど・・・・、」
「ええ。」
「実は聞いてほしいことがあるんです。」
「なんですか?」
「・・・・さっきちょっとだけ嘘をつきました。」
「嘘?」
「実は・・・UFOを見たのは私だけじゃないんです。」
「どういうことですか?」
「あの時、傍に妹がいたんです。一緒に手を繋いでUFOを見ていました。
それでパッとUFOが光ったかと思うと、妹はいなくなっていたんです。」
「なんですって!?」
「私はすぐに両親を起こしました。摩耶がUFOに連れて行かれたって。
そうしたら父も母も妙な顔をしたんです。『妹なんかいないよ』って。」
「それは・・・・どういう?」
「分かりません。でも両親も友達も、それに学校の先生も、みんな摩耶なんて知らないっていうんです。
私に妹なんかいないだろって。まるで記憶の一部が消されたみたいに。」
「・・・・・・・・・。」
「それだけじゃないんです。妹に関する物が全て消えていたんです。
写真もオモチャも、自転車もベッドも。」
「・・・・・なんてことだ。」
俺は震える。
それは間違いなく宇宙人の仕業だ。
「奴らは超文明の持ち主なんです!だから人間の痕跡を消すなんて、わけないんですよ!」
「私もそう思います。きっと宇宙人が妹に関する記憶とか、それに持ち物も消し去ったんだろうって。」
「あのですね、そういう話ならば、俺も聞いてほしいことがあるんですよ。」
そう言うと、女の顔が引きつった。
「まさかあなたも家族を誘拐されたとか?」
「その可能性があります。でもハッキリしないんですよ。」
俺は話した。
両親を殺されたあの日、誰かの手を握っていたことを。
そしてUFOがこっちに飛んできて、その後にその誰かが消えていたことを。
「ついこの前思い出したんです。でもまだまだハッキリしないんですよ。
これはもしかしたら、俺も記憶を消されているのかもしれない。」
俺は自分の頭を触る。
ここには宇宙人のチップが埋め込まれていて、そいつが俺の記憶を操作している可能性がある。
女は「私と同じじゃないですか!」と叫んだ。
「きっとその時に誰かいたはずですよ。その人はあなたの家族かもしれない!」
「分からないんです。家族かもしれないし、宇宙人かもしれない。肝心な所がハッキリしなくて。」
「あの・・・・よろしければ、詳しく話し合いませんか?
私の話を聞いてほしいし、あなたの話も聞かせてほしいんです。
そこに摩耶を連れ戻すヒントがあるかもしれないから。」
「俺もあなたの話を聞きたいです。そこに記憶を掘り起こすヒントがあるかもしれない。」
ドアを開け、「乗って下さい」と言う。
女は「すいません」と助手席に座って、誰かに電話を掛けていた。
「もしもし?ああ、斎藤さんですか?ちょっと用事が出来たんで、ゼミのみんなと先に行っといてもらえますか?
・・・・いやいや!そういうのじゃないです!ていうかそういうことばっかり言ってると、若い人に嫌われますよ。」
どうやらあのじいさんに電話を掛けているらしい。
俺は車を出して、「廃村に向かうけどいいですか?」と言った。
「え?廃村?」
「今から仕事なんです。」
「え?いや、廃村って・・・・そんなのどこにあるんですか?」
「しばらく走った所にあります。」
「・・・・・・。」
「どうしました?」
「あの・・・・どこかのファミレスとか喫茶店とかじゃダメですか?」
緊張した面持ちで尋ねる。
「廃村は怖いですか?」
「そりゃ怖いですけど、それだけじゃなくて・・・・ねえ?」
「?」
「だって人気がないじゃないですか。だからあなたの話は聞きたいですけど、ちょっと二人でそういう場所に行くのは・・・。」
女はビクビクしている。
なるほど、俺が紳士じゃないと疑っているらしい。
「心配はいりません。襲ったりなんてしませんから。」
「でも・・・・、」
「心配なら話は明日にしましょう。今日は廃村へ行くと決めているんです。」
「・・・・・・・・・。」
女は考える。
俺は早く決めてほしい。
一刻も早くUFOを見つけて、陸翔君と宇宙へ行かなければいけないのだから。
「降りますか?」
「・・・・いえ、その・・・・信用します。」
「なにを?」
「あなたを。」
「紳士だと思ってくれると?」
「はい。」
「じゃあ行きましょう。」
俺は廃村へと車を走らせる。
場所は地図で覚えた。
記憶力は良い方なので、まず迷うことはないだろう。
「じゃあ向こうに着くまでに聞かせて下さい。あなたがUFOと遭遇した時のことや、妹さんのことを。」
「はい。あの後に自分なりに調べたんです。UFOとか宇宙人のこと。それでちょっと気になることがあって・・・・、」
「気になること?」
「笑わないで聞いて下さいね。」
そう前置きして、気になることとやらを聞かせてくれた。
それは俺が考えもしない、目が覚めるような斬新な意見だった。
「あなたは天才だ。」
「そんな大げさな。」
「しかしそうなると、UFOや宇宙人に対する考え方を、180度変えなきゃいけなくなる。」
「あなたはどう思ってるんですか。UFOとか宇宙人のこと。」
「いいでしょう、私の考えをお聞かせします。」
暗い車内で、お互いの考えをぶつけていく。
それはとても有意義な時間で、人と意見を交換するのは大事なんだなと気づいた。
今まではこうして意見を交換できる人間がいなかった。
だから彼女と出会えたことは、ものすごく幸運なのかもしれない。
分かり合える人がいる、話し合える人がいる。
今までに感じたことのない喜びだった。
人はよく言う。
大事なものは傍にあると。
確かにそうかもしれない。
幸せや喜びは傍にあって、ただそれに気づくキッカケがないだけだ。
ということは、UFOや宇宙人だってすぐ傍にあるのかもしれない。
光の射す遠くを見るより、暗い足元を探った方が、気づくことが多いのかもしれない。
他人の考えを知るのは、とても貴重だった。

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