微睡む太陽 第九話 宇宙からの使者(1)

  • 2017.05.13 Saturday
  • 08:52

JUGEMテーマ:自作小説
子供の頃にUFOと遭遇してから、25歳の大人になるまで、一人も理解者に出合うことはなかった。
誰もかれもが俺の頭をおかしいと言う。
病気だとか可哀想な奴だとか。
最初は傷ついたけど、今ではすっかり慣れた。
きっとこの先も俺の理解者は現れない。
それならそれでいいと思っていた。
例え俺一人でも、UFOや宇宙人を探し続けると。
だけど今日、一人の理解者が現れた。
遺跡探しのバイトで知り合った、考古学の学生だ。
名前は佐原琴音さんという。
彼女は子供の頃アメリカに住んでいた。
そしてUFOに遭遇した。
夜、家で寝ていると、窓の外にUFOがやって来た。
そして一緒にいた妹を連れ去っていった。
琴音さんはそれ以来ずっとUFOを探している。
いなくなった妹を連れ戻す為に。
だけどそれは茨の道だった。
なんと親も教師も、それに友達も知り合いも、「お前に妹なんていないだろ」と言ったのだ。
この世で妹がいたことを知っているのは琴音さんだけ。
きっと宇宙人が記憶を消したのだ。
頭にチップでも埋め込んで、彼女の妹の記憶を消したのに違ない。
だから琴音さんは、子供の頃から今まで、たった一人でUFOを探し続けてきた。
考古学をやっているのだって、UFOを探す為だ。
歴史や遺跡を調べていれば、UFOの痕跡が見つかるかもしれないから。
そんな琴音さんと俺は、今日運命の出会いを果たした。
同じ使命を持ち、同じ体験を持つ、貴重な仲間。
お互いに言葉を交わし、一緒にUFOを探す約束をした。
出会って間もないが、俺たちの間には同志ともいうべき絆が芽生えた。
だから今、夜の廃村に来ている。
宇宙人を探す為に。
懐中電灯を照らしながら、人のいなくなった村を歩き回る。
ボロボロになった民家、ガラスの割れた商店、倒れた墓石。
草だらけの道路、誰もお参りしなくなった神社。
なかなかノスタルジーに溢れていて、新鮮な光景だ。
《こういう場所なら、政府の手が及んでいない宇宙人がいるはずだ。》
全ての宇宙人が米軍や政府の管理下にあるわけではない。
きっと誰にも知られずに、ひっそりと暮らしている宇宙人だっているはずなのだ。
民家の中に入り、ライトを照らす。
押入れ、風呂場、台所、便所、あらゆる場所を探していく。
でも全然見つからなくて、ちょっとガッカリした。
「クソ・・・もう別の場所へ移動したのかな?」
今は廃村とか廃墟とかがブームらしいから、こういう場所にも人が来るのかもしれない。
だとしたら別の場所に身を隠したとしても、おかしくはないだろう。
廃村を見渡し、落胆のため息をつく。
すると神社の中から琴音さんが出てきた。
「いましたか?」
俺は首を振った。
「こっちもです。神社もお墓も商店も見回ったんですけど、誰もいません。」
「ならもうこの村には・・・・、」
ここは小さな村だ。
もう探す場所はない。
そう思った時、琴音さんが「でも一つだけ気になる所が」と言った。
「どこです?」
「お墓の傍に蔵があったんですよ。扉を開けてみたら、地下に階段が続いていました。」
「そこはまだ探してないんですか?」
「さすがにあそこは一人だと怖くて。」
「なら行きましょう。」
俺たちは蔵に向かう。
傍には倒れた墓石があって、人によってはこういうのを怖いと思うんだろう。
でも幽霊を怖がることはない。
あれは宇宙人の機械によって抜き取られた、人の意識なんだから。
俺は蔵の扉を開けて、中を照らした。
すると脇の方に、地下へ続く階段があった。
かなり急な階段で、しかも狭い。
ライトを向けても奥まで見えない。
「これは怪しいな。」
宇宙人がいるとしたらここしかない。
俺はすぐに階段を降りた。
後ろから琴音さんもついてくる。
「急だから気をつけて下さい。」
「はい・・・・。」
どうやら怖がっているらしい。
しかし大丈夫、ここににいる宇宙人は、きっと悪い奴じゃない。
もし暴力的な奴だったら、人類を侵略しているはずだから。
狭いを階段をゆっくり下りていく。
すると物置のような場所に出た。
広さはプレハブ一個分くらい。
古びた箪笥や桶、それに壺や掛け軸が散乱している。
ライトを向けると、ピョンとカマドウマが逃げていった。
「なんかいますか・・・?」
琴音さんが後ろから覗く。
「怖いですか?」
「地下って苦手なんです。お墓も神社も平気だけど、こういう場所は苦手で・・・・。」
「平気ですよ、ここにいる宇宙人はきっと大人しい。」
「そうじゃなくて、地下って怖いじゃないですか。地震とか来たら崩れて埋められて・・・・、」
「もしかして閉所恐怖症ですか?」
「逃げ場のない所が嫌なんです。」
「なら外にいますか?」
「・・・・いえ、ここにいます。」
そう言ってギュっと俺の背中に張り付く。
・・・・なんだろう?今不思議な感じがした。
まだ俺が子供の頃、今と似たような事があったような・・・。
俺より小さな誰かが、ギュッと俺の背中にしがみつく。何かに怯えるように。
《この感覚は陸翔君の手を握った時と同じだ。》
あの子の手を握った時にも、同じような感覚があった。
ずっと昔に、誰かの小さな手を握っていた感覚が。
《デジャブってやつだな。》
デジャブは既視感という錯覚だ。
初めて来た場所、初めて会う人、なのに懐かしさを感じることがある。
それは過去に似たような場所に来ていたり、会っているのに忘れていたりといった時に起きる錯覚だ。
《陸翔君や琴音さんにデジャブを感じるということは、過去にも似たような人物がいたってことか?
手を握ったり、俺の背中に張り付いていたり。》
まだハッキリしない記憶。
そこに秘密があるのかもしれない。
《弾けるオーロラの中に現れたUFO。あいつが連れ去った人物が、このデジャブの原因かもしれないな。》
ギュッとしがみつく琴音さんの手は、遠い昔の誰かを思い出させる。
それが誰かは分からないが、確かにこれと似たような経験があったはずなんだ。
しかし今は過去を思うより宇宙人だ。
狭い地下室をくまなく探していく。
でも誰もいなくて、「ダメだな」と首を振った。
「ここにはいないみたいだ。」
そう言って「帰ろう」と引き返した時、ライトの先にカマドウマが飛んだ。
「どうしたんですか?」
「・・・・・・・・。」
「何か見つけたんですか?」
「俺はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。」
「何がです?」
「宇宙人だからといって、人の姿をしているとは限らないってことだ。」
カマドウマに近づくと、ピョンと逃げていく。
こいつはただの虫だ。
虫は宇宙から来たという説もあるが、でも宇宙人じゃない。
文明を持つ知的生命体ではない。
しかし・・・・・、
「琴音さん。」
「なんですか?」
「あなたは言いましたね、宇宙人は目に見えるとは限らないって。」
「ええ。」
俺は思い出す。
車の中で彼女が語った宇宙人論について。
「俺は琴音さんのような発想はなかった。
宇宙人は微生物のように小さいんじゃないかなんて発想は。」
「私はあり得ると思うんです。だってこれだけUFOの目撃例があるなら、宇宙人の目撃例があってもいいはずなんです。
なのにほとんどないでしょう?だったら宇宙人って、人間の目には見えない姿をしてる可能性がありますよ。
透明になれるとか、目に見えないほど小さくなれるとか。
そう考えると、細菌とかウィルスみたいに小さいんじゃないかって。」
「だけどそこまで小さいと、周りは敵だらけになってしまう。
だってこの空気中にですら大量の微生物がいるんです。
そうなれば四方八方は敵だらけで、とてもこの地球では生きていけない。
微生物のいない宇宙空間ならともかく、地上での生活は無理です。
だけど・・・・・、」
「だけど?」
「別の生き物に宿れば、それも可能かもしれない。」
「別の生き物?」
「目に見えないほど小さいなら、生物の体内に侵入することは簡単です。
そして脳や中枢神経を乗っ取り、ロボットのように操っているんです。」
「それこそ無理じゃないですか?そんな簡単に乗っ取るなんて・・・・、」
言いかける彼女の言葉を遮り、カマドウマにライトを向けた。
「こいつはカマドウマって虫です。でも便所コオロギって呼ばれることもある。」
「知ってます。」
「ゲジゲジやムカデと並んで、みんなから嫌われる虫です。」
「あんまり可愛い虫じゃないですからね。私は平気ですけど。」
「じゃあ人が一番気持ち悪いと思う虫はなんでしょう?」
「そりゃゴキブリじゃないですか?私もあれは嫌いなんです。
外で見る分には平気だけど、部屋に出たら絶叫しそうになります。」
「俺は平気です。」
「あの・・・・さっきから何が言いたいんですか?」
琴音さんは怪訝な顔をする。
俺は「ゴキブリはね」と答えた。
「ハチに乗っ取られることがあるんですよ。」
「ハチ・・・・ああ!エメラルドゴキブリバチ?」
「ええ。そのハチは毒によってゴキブリの神経を支配し、自分に都合よく動かすんです。」
「そういう生き物は他にもいますよ。ロイコクロリディウムって寄生虫で、カタツムリを乗っとっちゃうんです。
完全に自分の思い通りに動かして、最後はわざと目立つ場所に行って、鳥に食べられちゃうんですよ。」
「知っています。だったらね、宇宙人だって同じことが出来るかもしれない。
地球の虫が出来るのに、高度な文明を持つ宇宙人に出来ないわけがない。」
飛び跳ねていくカマドウマを見送りながら、「もう一度探しましょう」と言った。
「宇宙人は別の生き物を乗っ取って、人気のない場所に暮らしている可能性がある。
だからもう一度くまなく探すんです。この廃村を。」
「もう一度ですか・・・・。」
「怖いですか?」
「いや、そうじゃなくて・・・・それなら明日の方がよくないですか?こんな夜だと探すのは難しいですよ。」
「でも明日はバイトです。」
「なら今週の土曜は?」
「それなら休みです。」
「じゃあその日にもう一度来ましょうよ。明るい方が探しやすいはずだから。」
「・・・・・・・・。」
「どうしたんですか?」
「ひっそりと身を隠す宇宙人が、明るいうちから動き回るだろうか・・・・。」
「宇宙人って夜行性なんですか?」
「可能性はあります。」
「だとしても、やっぱり夜は探しにくいですよ。明るい時にしませんか?」
そう言って早くここから出たそうにする。
かなり怖いみたいだ。
「・・・・分かりました。とにかくいったん車に戻りましょう。」
地下室を出て、廃村を後にする。
茂みに停めていた車に乗ると、琴音さんは「はあ・・・」と息をついた。
「怖かった・・・・。」
「狭い所は苦手なんですね。」
「はい・・・・それに夜だし・・・・。もし崩落とかしたら、救助が来るのだって時間がかかるじゃないですか。」
「じゃあ次からは、狭い所は俺だけ入ります。」
「そうしてくれますか?私は別の場所を探しますから。」
怖がる琴音さんを乗せて、廃村から離れていく。
宇宙人は人の目に見えるとは限らない。
俺では思いつかなかった、斬新な意見だ。
琴音さんは天才かもしれない。
《この事実を陸翔君にも伝えてやらないとな。それと新しい仲間が出来たことも。》
俺は「琴音さん」と言った。
「あなたを陸翔君に紹介したいんです。」
「それって相棒の子のことですか?」
「ええ。明日一緒に病院へ行きましょう。」
「別にいいですけど・・・・、」
「どうしました?不安でも?」
「その子・・・・私のこと笑ったりしないですかね?」
「笑う?」
「変人だって。」
「平気です。陸翔君はそういうのに理解があるんです。そもそもあの子自身が宇宙人の可能性が・・・・、」
そう言いかけて「ああああ!」と叫んだ。
「どうしたんですか!?」
「もしかしたら・・・・あの子も乗っ取られている可能性が・・・・、」
宇宙人は人間の体内に入り、思い通りにコントロールしている可能性がある。
だったら陸翔君も・・・・、
一気に不安になる。
「あの・・・・顔色悪いですよ?」
「陸翔君は乗っ取られているかもしれない・・・・。」
「よかったら運転代わりましょうか?」
運転席を譲り、助手席で頭を抱える。
宇宙人には会いたい。
でもあの子が乗っ取られているなんて、そんなのは絶対に嫌だった。
《陸翔君!君は宇宙人か?それとも乗っ取られているのか?頼むから人間であってくれ!》
今日、初めて宇宙人に対して恐れを抱いた。

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