微睡む太陽 第十話 宇宙からの使者(2)

  • 2017.05.14 Sunday
  • 08:02

JUGEMテーマ:自作小説

廃村に行った翌日、琴音さんを連れて病院に行った。
エレベーターに乗り、三階で降りて、渡り廊下を歩いていく。
向かうは小児病棟。
渡り廊下を抜けると、騒ぐ子供たちが出てきた。
パジャマ姿で鬼ごっこをしている。
「可愛いですねえ。」
琴音さんはニコリと笑う。
「私子供好きなんですよ。」
「俺もです。子供は純粋だから。」
騒ぐ子供たちの間を縫って、陸翔君の病室に向かった。
「おはよう。」
手を挙げると、「UFOの人!」とベッドから起き上がった。
「何を読んでるんだ?」
「これ?矢追純一って人の記事。」
「・・・・東スポじゃないか。UFOが載ってるな。」
「UFO見つけたんだって。」
「どれ。」
俺は紙面を覗き込む。
確かにUFOを見つけたと書いてあった。
「すごいよね!」
「・・・・・・・・・。」
「どうしたの?」
「東スポは娯楽性の強い新聞だ。果たしてどこまで信用していいのか・・・・。」
じっと記事を読んでいく。
果たして写真のUFOは本物か?
東スポは日付以外は誤報と言われるくらいだから、注意してかからねばならない。
「・・・・分からないな。これは本物なんだろうか?」
「どっちでもいいじゃん。面白いから。」
「ダメだ。事実を検証する必要がある。このUFOが本物なら、宇宙人の存在が公に発表されたことになるんだからな。
裏で米軍や日本政府が絡んでいる可能性もある。」
「相変わらずだね。」
陸翔君は可笑しそう笑う。そして俺の後ろに目を向けた。
「その人誰?彼女?」
「仲間だ。佐原琴音さんという。」
新聞を読みながら紹介する。
「彼女じゃないの?」
「違う。」
「なんだつまんない。」
本当につまらなさそうな顔をしている。
琴音さんが俺の彼女だと、この子にメリットがあるんだろうか?
「こんにちわ。」
琴音さんが挨拶する。
陸翔君も「こんにちわ」と返した。
「あの・・・・、」
琴音さんはゴニョゴニョと口籠る。
「変な人だと思わないでね。」
「なにが?」
「実は私もUFOに遭遇したことがあるの。」
「マジで!?」
「子供の頃にね。陸翔君よりまだ小さな頃。」
琴音さんは自身の体験を話す。
陸翔君は興味深そうに聞いていた。
「そうなんだ・・・・妹はまだ帰ってこないの?」
「うん。だからUFOを探してるんだ。」
「それでUFOの人と友達になったわけか。」
「昨日は廃村に行ってきたんだよ。」
「UFOの人がいかにも好きそうな場所だね。」
「でも何もいなかったんだけどね。だけど今度の土曜にまた行くの。」
「なんで?なんにもなかったんでしょ?」
「そうんなんだけど・・・・、」
そこから先は俺が説明した。
「琴音さんは天才なんだ。なぜなら俺では思いつかなかった、斬新な宇宙人論を思いついた人だからな。」
「何それ?」
「宇宙人は微生物の可能性がある。そして他の生き物の脳や中枢神経を乗っ取り、思い通りに操っているんだ。」
「おお!また新しい妄想を思いついたんだね。」
「妄想じゃない。新しい理論だ。あの廃村は怪しい、きっと宇宙人が潜んでいるはずだ。」
俺は新聞を置き、「なあ?」と見つめた。
「陸翔君に質問しなきゃいけないことがある。」
「なに?」
「君は宇宙人か?」
「うん。」
「やっぱりか!」
なんてことだ・・・・恐れていたことが真実だったなんて。
「なら陸翔君はもう宇宙人に乗っ取られて・・・・、」
「嘘だけどね。」
「嘘?」
「僕は人間だよ。」
「・・・・・・・・。」
「なにその怪しそうな目?」
「本当は宇宙人なんだろう?」
「うん。」
「ほらやっぱり!このままじゃ君の肉体は完全に乗っ取られる。」
どうにかしてこの子を助けないと。
しかし普通の医学では無理だろう。
だったら・・・・、
「すぐにNASAに手紙を書かないと!」
この子を助けられるのはNASAしかいない。
ペンと手紙を買う為に、売店へ走り出した。
するとエレベーターの手前でおばさんと出くわした。
「あら!おはよう勇作君。」
大きなバッグを抱えながら「またお見舞いに来てくれたの?」と言った。
「大変です!陸翔君は宇宙人だったんです!」
「まあ。」
「このままじゃ何もかも乗っ取られてしまいます!早くNASAに手紙を出さないと!」
急いで売店に向かう。
ペンと紙を買い、急いで戻って来ると、病室には誰もいなかった。
「どこ行った!?」
さっきまでいたはずだ。
まさか・・・・・、
「UFOに連れ去られたのか!?」
頭の中が真っ白になる。
これは・・・・俺のせいだ!
俺が陸翔君の正体を見破ってしまったが為に、陸翔君を乗っ取る宇宙人が、みんなをさらっていったのだ。
そして頭の中にチップを埋め込み、記憶を消すつもりに違いない。
「・・・・いや、記憶を消されるだけでは済まないかもしれない。最悪は人体実験をされて・・・・、」
こうなってはNASAに手紙を書くどころではない。
人類に友好的な宇宙人を見つけて、みんなを助けてもらわないと。
「なんてこった!えらいことだ!」
病室から駆け出し、階段を駆け下りる。
そして病院の庭に出ると、「勇作君」と声がした。
「おばさん!」
「勇作君も一緒にやらない?」
「なんですかそれは?」
「バトミントンよ。」
「UFOにさらわれたんじゃないんですか?」
そう尋ねると、「あはは!」と笑われた。
「ほんとによく次々に思いつくわねえ。感心しうちゃうわ。」
「頭にチップは!記憶は大丈夫なんですか?」
「平気平気。それより勇作君も一緒にやりましょ。」
おばさんはラケットを振る。
その後ろでは、陸翔君と琴音さんがバトミントンをしていた。
「みんな無事だったか・・・・。」
どうなることかと焦ったが、取りこし苦労だったようだ。
「いいですよ、やりましょう。」
ラケットを受け取り、みんなでバトミントンをする。
「それ!」
「ほい!」
「はい勇作さん!」
バトミントンの羽がポンポン飛び回る。
陸翔君は車椅子にも関わらず、とても上手かった。
さすがは怪人の血を引いているだけある。
「ねえUFOの人。」
「ん?」
「今度の土曜、僕も連れて行ってよ。」
「いいぞ。」
「ほんと?」
「でもおばさんの許可が必要だ。前回のような危険があるからな。」
「お母さん、今度の土曜に・・・、」
「ダメ。」
「なんで?前はOKしてくれたじゃん。」
「お父さんとの約束だから。勇作くんと友達でいることは許してくれたけど、UFO探しはダメだって。」
「黙ってれば分からないよ。」
「そんなこと出来ないわ。あの人が陸翔のお父さんだってことは、これからも変わらないもの。
だから約束を破るなんてできないの。」
「ケチ。」
「ケチでけっこう。」
「なら一緒に来てよ。」
「イヤよ廃村なんて。」
「前はついて来てくれたじゃん。」
「前は仕方なかったから。でも今回はダメ。」
陸翔君はつまらなさそうにラケットを振る。
それからしばらくバトミントンをして、病室に戻った。
「じゃあね、陸翔君。」
琴音さんが手を振る。
俺も「また来るから」と言った。
陸翔君は浮かない顔で窓を見ている。
おばさんが「ごめんね」と言った。
「入院が退屈なのよ。だから外に行けなくて拗ねてるだけだから。」
「本当に行かないんですか?廃村。」
「それは無理だわ。あの人との約束があるから。」
「怪人は意外と息子思いなんですね。」
「そうよ。だって良い怪人だもの。」
ニコっと笑い、「また来てね」と手を振った。
「はい。じゃあこれで。」
ペコっと会釈して病室を出る。
すると「UFOの人!」と陸翔君が呼んだ。
「お願いがあるんだ。廃村の写真撮ってきて。」
「いいぞ。」
「約束だよ。」
「ああ。」
「でも心霊写真があったら見せないでね。怖いから。」
「分かった。」
俺は頷き、「早く怪我を治せよ」と言った。
「うん!」
「それじゃあな。」
病院を後にして、車に乗り込む。
俺は遺跡発掘のバイトへ、琴音さんは大学へ行かないといけない。
だから駅まで彼女を送っていった。
車の中、琴音さんは何かを考え込んでいた。
「どうしたんです?」
「陸翔君って寂しがってるんですね。」
「ええ、親が離婚するから。」
「あの子は本気でUFOなんて信じていないと思います。だけどそういうものに興味を持つことで、辛いことを忘れようとしているような・・・、」
「・・・・・・・・。」
「勇作さんの言う通り、あの子は私を変人扱いしませんでした。
だけどきっと、私の言ったことは信じていないと思います。」
「ショックですか?」
「いえ、それが普通だと思います。だけどこのままだったら、陸翔君はもっと寂しい思いをして、ふさぎ込んでしまうかもって思って。」
「だからこそ早くUFOを見つけないといけないんです。宇宙から地球を眺めれば、些細な悩みなんて忘れますよ。」
「そうだけといいけど・・・・。」
琴音さんは後ろを振り返る。
陸翔君を心配するように。
やがて駅に着いて、彼女は「ありがとうございます」と降りていった。
「じゃあまた土曜に。」
「はい。勇作さんもバイト頑張って下さい。」
ペコっと頭を下げて、駅の中へ消えていく。
「出来れば陸翔君も連れていってあげたいな。」
琴音さんの言う通り、陸翔君は寂しがっている。
気を紛らわすものを必要としている。
だけど俺は、あの子が本当にUFOを信じていないとは思っていない
なぜならあの子自身が宇宙人なのだから。
そしてあの子の助けるには、人類に友好的な宇宙人の協力が必要だ。
「それも含めて、早く宇宙人を見つけないとな。」
ハンドルを切り、バイトに向かう。
その日はやたらと暑くて、汗が止まらないほどだった。
秋だっていうのに、今日だけ夏が戻ってきたみたいだ。
でも俺は手を止めない。
せっせと土を掘り、壺の破片だの瓦だのを発掘していった。
今日は平日で、学生たちがいない。周りはじいさんとばあさんばっかりだ。
みんな働いているように見せかけて、もう飽きている。
期日の二か月後には、半分も残っていないだろう。
最近の若いモンはどうとかいうが、若いモンの方がしっかりしていると思う。
俺は休憩中も穴を掘り続けた。
カロリーメイトでエネルギーを補給し、ポカリで水分をチャージする。
そうやってせっせと穴を掘っていると、奇妙な物を見つけた。
「なんだこれは?」
陶器の破片や瓦に混じって、プラスチックとも金属ともつかない、何かの破片が出てきた。
叩くとカンカンと音が鳴るが、軽石みたいに軽い。
土を払って綺麗にすると、ピカピカの銀色に輝いた。
表面には幾何学模様の溝があって、とても不思議なデザインだ。
「これはUFOの破片だ!」
興奮して大声が出る。
みんなこっちを向いて、主任さんまでやって来た。
「どうしたの?」
「・・・・・いえ、なんでもないです。」
「なんか叫んでたじゃない。」
「空にUFOがいたんです。」
「・・・・どこにもいないぞ。」
「なら見間違えでしょう。すいません。」
そう謝ると、「何か見つけたんじゃないの?」と言った。
「勝手に持って帰ったらダメだよ。」
「はい。」
「何を見つけたの?」
「・・・・これです。」
俺はちょっと変わった模様の壺を見せた。
UFOの破片より前に出てきたやつだ。
「・・・・おお!これは・・・、」
「すごいやつですか?」
「これ縄文土器だよ!ほら、この燃え上がるような造形、すごいでしょ。」
「いや、特に。」
「詳しく調べてみないと分からないけど、おそらく間違いない。」
主任さんは興奮している。
「他にもあるかもしれない。これはえらいことだぞ・・・・。」
そう言ってどこかに電話を掛けていた。
《なんか分からないけど、UFOの破片のことはバレなかったな。》
俺はこっそりとポケットにしまう。
こんなすごいお宝を渡すわけにはいかない。
・・・・その翌日、遺跡発掘のバイトは急に打ち切りになった。
なぜなら考古学者やら歴史学者やらが、ワラワラと兎羽山にやって来たからだ。
昨日見つかった土器は、学術的にかなりの価値があるそうで、素人のバイトなんかに任せておけないってことになったのだ。
新聞にまで載るほどだったので、相当な発見なのだろう。
でも俺はそんなことよりも、UFOの破片が見つかったことが嬉しかった。
これがあるということは、あの山にはかつてUFOが着陸したということ。
ということは、この付近に宇宙人がいるということだ。
だから兎羽山に向かった。
土器が出た周辺は封鎖されていたけど、コソコソっと侵入して、コソコソっと土を掘り返していった。
見つかるとマズイので、忍者のように隠れながら。
幸い隠れる場所はいくらでもある。
ここは山なんだから、岩の後ろとか、木立の陰とか。
そうやってコソコソしながら調査をしていくと、ある物を見つけた。
「なんだこれ?」
それはバナナのような形をした石だった。
よく見るとノコギリみたいにギザギザが付いている。
「妙な石だな。UFOに関係がある物かもしれない。」
せっせと掘っていくと、また同じ物が出てきた。
それも三本も。
さらに掘っていくと、太い棒が現れた。
それは湾曲していて、規則正しく何本も並んでいる。
まるで・・・・そう、肋骨のように。
「あれ?これって・・・・・、」
せっせと掘っていくと、人の足音が近づいてきた。
「マズイ!」
慌てて岩陰に隠れる。
茂みの向こうから、二人の男が現れた。
「教授、この辺はまだまだ色々出てきますよ。」
「そうだな。今日だけで四つも土器が出てきた。」
「上手くいけば、縄文時代の定説がひっくり返るかもしれません。
それくらいに価値のある物ばかりですよ。じっくり調査して・・・・、」
そう言いかけて、何かに躓いていた。
「なんだこれ?」
膝をつき、そして悲鳴を上げる。
「きょ・・・・・教授!」
若い男が指をさす。
ヒゲの男は「ぬうあ!」と驚いた。
「これは・・・・すごい発見だ!」
「縄文土器どころじゃないですよ!」
「恐竜の化石・・・・それも大型の・・・・。」
「しかも肉食っぽいですよこれ。・・・・ああ!これ歯じゃ・・・・、」
「バナナ型でノコギリのような溝があるな。これは・・・・、」
「ティラノサウルスと同じです!」
「・・・・この辺鄙な山に、Tレックスと同じような大型肉食恐竜がいたというのか・・・・。」
二人はプルプル震えている。
そして「誰か来てくれ!」と叫んだ。
「とんでもない物を見つけた!早く来てくれ!」
発狂したように興奮して、茂みの向こうへ走り去っていった。
「・・・・・・・・。」
俺は岩陰から出て、恐竜の化石を見つめた。
「やっぱりそうか。昔に博物館で見たのと似てる。」
こんな山でティラノサウルス類の化石が見つかったら、さぞ大騒ぎだろう。
「まずいな・・・・これじゃUFOが探せなくなる。」
俺はがっくりと肩を落とす。
恐竜は興味があるが、それよりもUFOが大事だ。
さっき見つけた歯を握りしめ、トボトボと家路についた。
・・・・その日、琴音さんから電話がかかってきた。
『さっき教授から電話があったんです!兎羽山で恐竜の化石が見つかったって!それも大型肉食類の!』
「知ってます、それ俺が見つけたやつですから。」
『ええ!?』
「家にそいつの歯があります。いちおう持って帰って来たけど、別にいらないからあげますよ。」
『本当ですか!!』
琴音さんはすぐに家に来ると言った。
俺はゴロンと寝転び、UFOの破片を見つめた。
「土器だの化石だの・・・・そんなのいらないんだよ。UFOを見つけたいのに。」
今この手にあるUFOの破片。
これは宇宙からの使者のものだ。
果てしなく広い宇宙から、この星へやってきた未知の使者。
「UFOはいる。宇宙人もいる。俺は見つけてやるぞ。」
じっと破片を見つめていると、いつの間にか時間が経っていた。
コンコンとノックの音がして「佐原です!」と声がした。
「恐竜の歯、見せて下さい!」
声が弾んでいる。
興奮と喜びを隠せないようだ。
「琴音さんもUFOより恐竜の方がいいのかな。」
みんなどうしてUFOの価値が分からないのか?
こんなバナナみたいな歯よりも、UFOの破片の方が何億倍も価値があるというのに。
俺はよっこらしょっと腰を上げた。

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