微睡む太陽 第十一話 UFOの秘密基地(1)

  • 2017.05.15 Monday
  • 08:26

JUGEMテーマ:自作小説
土曜日、空は晴れていた。
雲はあるけど、晴天といって差し支えない。
俺は駅前に車を停めて、UFOの破片を見つめていた。
五日前、兎羽山で見つけたものだ。
これと同時に恐竜の骨まで見つけてしまって、今は兎羽山の登山は制限されている。
東京からテレビ局も来ているし、海外の学者もたくさん来ている。
しばらくはあの山へ行けない。
みんな恐竜の骨が出て来て喜んでいるけど、俺は悲しかった。
「見つけるんじゃなかったなあ、恐竜の骨なんて。UFOが探せないじゃないか。」
恐竜に興奮する気持ちは分かる。
だけど宇宙人の科学力をもってすれば、恐竜を復活させるなんて容易い。
恐竜のことを知りたいなら、先にUFOを見つけるべきなのに。
しかし多くの人はそれを理解しない。
阿呆だの病気だのと言って、一蹴されるだけだ。
「まあいいさ。ずっと登れないわけじゃない。」
いつかは恐竜の骨も掘り出され、どこかの博物館に飾られるだろう。
その時、またあの山を調べればいいのだ。
今日はあの廃村へ行く。
琴音さんと一緒に。
俺は破片をポケットにしまって、駅の入り口を見た。
するとちょうど琴音さんが出て来るところだった。
「おはようございます。」
手を振りながら、小走りにやってくる。
「おはよう。」
ドアを開けると「紳士ですね」と笑われた。
「今時こういうことしてくれる男の人って珍しいですよ。」
「そうなんですか?」
「勇作さんってけっこうカッコいいし、モテるんでしょ?」
「彼女は今までに三人いました。でも頭がおかしいと言ってフラれました。」
「う〜ん・・・・それは辛いですね。でも仕方ないですよ、UFOはUFOに遭遇した人じゃないと分かってもらえないから。」
「慣れっこなんで気にしてません。それより早く行きましょう。」
車を駆り、あの廃村へ向かって行く。
今日こそは宇宙人を見つけないといけない。
こうしてUFOの破片も見つかったんだから、きっと見つかるはずだ。
ポケットから破片を取り出し、じっと見つめる。
「あの・・・・前見て下さいね。」
琴音さんは不安そうに言う。
俺は「平気です」と答えた。
「あれから恐竜はどうですか?教授の手伝いをしているんでしょう?」
「はい!もう楽しくって!」
「俺は悲しいです。しばらくあの山に行けないから。」
「それは仕方ないですよ。日本でティラノサウルスと似たような恐竜の化石が出てきたんだから。古生物学者は大喜びですよ。」
「でも琴音さんは考古学なんでしょう?そんなに嬉しいですか?」
「考古学でも発掘はしますからね。だからウチの先生もお手伝いに行ってるんです。
・・・・ていうのは建前で、本当は化石を見たいだけなんですけどね。」
クスっと肩を竦めて、ポケットから恐竜の歯を取り出す。
「これ、ありがとうございました。」
「いえ。」
「先生に見せようかと思ったんですけど、絶対に取り上げられると思って。これは家宝にするつもりです。」
「それがいいです。学者たちはなんでも自分の物にしたがりますからね。
あの山だって誰のものでもないのに、封鎖なんて酷いことしますし。」
「怒ってるんですね。」
「ええ、かなり。」
「でも残念ながら、しばらくはあの山に入れませんよ。」
「どうして?化石が掘り終わったら入れるんでしょう?」
「最近は安易に掘り起こすなんてことはしないんです。
なんでかっていうと、骨の周りについている土には、貴重な物が含まれている場合があるからです。」
「貴重なもの?」
「内蔵や皮膚ですよ。パっと見は土なんだけど、実はそうじゃなかったりするんです。
だから慎重に調べながら掘っていくんですよ。」
「詳しいですね。」
「これでも考古学の学生ですから。」
他愛ない話を続けながら、廃村を目指す。
すると琴音さんが「ちょっと寄ってほしい所があるんです」と言った。
「いいですよ。どこですか?」
「陸翔君が入院している病院があるでしょ?あの近くのマックスバリューに。」
「分かりました。」
何か買い物でもするんだろう。
俺は交差点を曲がり、病院の近くのマックスバリューに向かった。
今日は土曜日のせいか、駐車場は少し込んでいた。
入り口近くの焼鳥屋には、ちょっとした行列が出来ている。
「ちょっと待ってて下さいね。」
琴音さんは降りていって、人混みに紛れる。
そしてしばらくしてから、誰かを連れて戻ってきた。
「UFOの人!」
「陸翔君!」
琴音さんに車椅子を押されながら、こっちへやって来る。
「僕も廃村に行くからね。」
「なんだって!おばさんは許可したのか?」
「黙って来ちゃった。」
「どうしてそんなことを・・・・、」
「私が呼んだんです。」
「琴音さんが?」
「だってすごく寂しそうにしてたから。あの時の陸翔君を見てたら、昔の自分を思い出しちゃって。」
「昔?」
琴音さんは小さく頷く。
「実は私の両親も離婚してるんです。」
「そうなんですか?」
「あの時はすごく寂しかった・・・・。私はお父さんに引き取られたんだけど、仕事が忙しいから、あんまり一緒にいられなかったんです。
だからお母さんに会いにいったら、もう別の人と結婚してて。」
「それは辛いですね。だから陸翔君に同情したと?」
「はい。」
「でもおばさんが心配しますよ。」
「でしょうね。下手したら誘拐で捕まるかも。」
「そこまでして陸翔君を連れて行きたいんですか?」
「この子には現実から目を逸らすものが必要なんです。そうじゃないといつか参っちゃうと思います。
私はUFOのことがあったから、悲しみに潰されずにすんだけど。
だったら陸翔君にだってそういうのが必要だと思うんです。」
琴音さんは「一緒に行こうね」と笑いかける。
「お姉ちゃん気が利くよね。この前こっそり連絡先を渡してくれてさ。」
「だってすごい寂しそうな顔してたから。」
「・・・・・・・・・。」
陸翔君は俯き、そして俺を見上げた。
「一緒に行ってもいいよね?」
「・・・・・・・・・。」
「UFOの人?」
「おばさんが心配する。」
「大丈夫だって。すぐ戻って来るんだから。」
「もう心配してるかもしれない。」
俺は「おばさんの番号を教えてくれ」と言った。
「許可がないなら連れて行けない。」
「なんで!?」
「おばさんも怪人も心配する。」
「なんでそういう所だけ常識があるんだよ・・・・。いっつもみたいに妄想してくれればいいじゃん。
僕は宇宙人で、お母さんも宇宙人で、わけのわからない屁理屈で納得してくれたらいいじゃん。」
「俺は屁理屈なんて言わない。妄想もしない。真実しか言わないんだ。そしておばさんが心配しているのは真実だ。」
陸翔君の前に膝をつき、「番号は?」と尋ねる。
「言わない。」
「ならこのまま病院に連れて帰る。」
「嫌だよ!」
陸翔君は勝手に車に乗ろうとする。
琴音さんが「あの・・・」と戸惑った。
「どうしてもダメですか?陸翔君行きたがってるし。」
「おばさんが心配しますから。」
「でもこのままじゃ陸翔君が可哀想です。親って意外と子供の気持ちに疎いから。
あんまり寂しいのを我慢してると良くないですよ。」
「おばさんに連絡します。」
「勇作さん・・・・。」
俺は「番号を」と陸翔君に詰め寄った。
「僕行くから。」
「許可が出ればな。」
「出なくても行く。」
「ダメだ。」
「なんで?」
「おばさんが心配する。」
「そればっかじゃん!今日だけ真面目ぶんなよ!」
「番号は?」
「・・・・・・・・・。」
「ならこのまま帰ろう。」
俺は車椅子を押す。
「UFOの人!」
「許可が必要だ。」
「僕宇宙人だよ!だから問題ないよ!」
「君は操られている。だから廃村へ行きたいのは、陸翔君本人の意志じゃないかもしれない。」
「なんでそういうとこだけ妄想になるんだよ!」
「真実だ。」
陸翔君はぎゃあぎゃあ喚く。
俺はお構いなしに車椅子を押していった。
琴音さんはオロオロしながらついてくる。
・・・・その時、俺のスマホが鳴った。
知らない番号だったけど、すぐにピンと来た。
「もしもし?」
『勇作君!?』
思った通り、おばさんだ。
『大変なの!陸翔がいなくなって・・・・、』
「ここにいます。」
『ここって・・・・勇作君の所?』
「病院の近くにマックスバリューがありますよね?そこにいます。」
『わ、分かった!すぐ行くから待ってて!』
おばさんは慌てて電話を切る。
それから数分後、ものすごい形相で車から降りてきた。
「陸翔!あんた何してるの!?」
「・・・・・・・・・。」
陸翔君は無言で俯く。
おばさんはガシっと肩を掴んだ。
「病室にはいないし、他の子も知らないっていうし!看護師さんはトイレのはずだっていうし!」
「・・・・・・・・・。」
「お父さんは仕事を抜けて病院に向かってるし。みんな大慌てだったのよ!」
「・・・・・・・・・。」
「警察に連絡しようと思って、でもその前にもしかしたらと思って勇作君に電話したら・・・・案の定じゃない!」
顔は鬼のように怖いが、目には涙が溜まっている。
陸翔君の前に膝をつき「なんでここにいるの?」と睨んだ。
「自分で抜け出したの?それとも・・・・、」
そう言って俺の方を見る。
「勇作君に誘われた?」
「・・・・・・・・・。」
「答えなさい!」
バシン!と車椅子のタイヤを叩く。
陸翔君はビクっとして俺を見上げた。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
俺は小さく頷く。
陸翔君は「UFOの人が・・・・」と答えた。
「今日ここに来たら、一緒に連れて行ってあげるって。」
「ほんとに?」
おばさんの顔が強張る。
すると琴音さんが「ちょっと待って下さい」と前に出た。
「誘ったのは勇作さんじゃなくて・・・、」
「俺が誘いました。」
「勇作さん!?」
「寂しそうにしていたので、一緒に行こうと。」
おばさんの顔がさらに強張る。
「ほんとなの?」
「はい。」
「嘘ついてない?」
「いいえ。」
「・・・・勇作君は常識のある子だもの。夢見がちはところはあるけど、勝手に陸翔を連れて行くような子じゃないわ。」
「俺が誘いました。」
「陸翔を庇ってるんじゃないの?」
「違います。」
おばさんは険しい顔をする。
そして「陸翔」と呼んだ。
「ほんとに勇作君が誘ったの?」
「・・・・うん。」
「ちゃんと目を見て答えなさい。勇作君が誘ったの?」
「・・・・・・・・。」
「陸翔。」
おばさんはかなり怒っている。当然だろう。
陸翔君はまた俺を見上げた。
「UFOの人、僕は・・・・・・、」
「一緒に廃村へ行こう。」
「え?」
驚く陸翔君。おばさんはもっと驚いていた。
「勇作君、今はそんなこと聞いてるんじゃないのよ。なんで陸翔がここにいるか聞いてるの。」
険しい顔がさらに険しくなる。
俺は「それが陸翔君の為なんです」と答えた。
「この子は寂しがっているんです。おばさんと怪人が離婚をするから。」
「だから勝手に連れ出したの?」
「はい。人は大きな悲しみを抱えた時、何かで目を逸らそうとするんです。
陸翔君もそうしたかったんでしょう。」
そう話すと、「あの!」と琴音さんが叫んだ。
「あの・・・・誘ったのは私で・・・・、」
「みんなで行けばいいんです。それで廃村に宇宙人がいなかったら、俺を警察に突き出して下さい。」
「勇作さん!」
琴音さんは「そんなのダメですよ!」と首を振る。
だけど俺は続けた。
「あそこに行って何もなかったら、俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれたらいいです。
でもこれは、今の陸翔君には必要なことなんです。陸翔には・・・・・優二には・・・・・、」
そう呟くと、「優二?」と琴音さんが首を傾げた。
「誰ですかそれ?」
「え?」
「いま優二って言いましたよね?それ誰ですか?」
「・・・・そんなこと言った?」
「ハッキリ言いましたよ。陸翔君を見つめながら。ねえ?」
琴音さんが尋ねると、陸翔君も頷いた。
「優二・・・・誰だそれ?」
「自分で言ったんじゃないですか。」
「・・・・優二・・・・優二?」
腕を組み、そんな知り合いがいたかな?と思い出す。
するとおばさんが「勇作君」と呼んだ。
「はい?」
「もし本当に君が連れ出したんなら、これ以上陸翔に会わせるわけにはいかないわ。」
「申し訳ありません。連れ出したのは俺です。」
「・・・・・そっちのお嬢さん。」
「え?あ・・・・はい!」
「本当に勇作君が連れ出したの?」
「いえ!連れ出したのは私で・・・・、」
「UFOの人だよ!」
「ええ、俺です。」
「なんで私を庇うんですか!?」
琴音さんは納得いかないようだ。
でも俺と陸翔君はこれで押し通すつもりでいた。
なぜなら琴音さんが犯人だとバレたら、陸翔君は確実に連れ戻される。
しかし俺のせいということにしておけば、陸翔君は廃村へ行けるかもしれないのだ。
俺は頭がおかしいと思われている。
これを逆手にとって、屁理屈(俺にとってはそうではないが)を並べ立てれば、おばさんは以前のように付き合ってくれるかもしれない。
そして何より、陸翔君は俺の友人だ。
この子の悲しみを癒してあげたい。
だから・・・おばさんに理解してもらうしかない。
俺の無茶と、陸翔君のワガママを。
黙って連れて行くのは良くないが、ワガママを通して同行してもらうなら、心配をかけることはあるまい。
迷惑ではあると思うが。
俺も陸翔君も、同じ思いでおばさんに訴えかける。
「廃村に行きましょう。」
「行ってもいいでしょ?」
「陸翔君にはそれが必要なんです。」
「僕、UFOを信じてるんだ。この目で見てみたい!」
俺たちは必死に訴える。
果たしておばさんに届くだろうか?
今も険しい顔をしていて、間違いなく怒っている。
この怒りの奥に、いったいどんな感情を抱いているのか?
俺と陸翔君は答えを待った。
するとおばさんは「ごめんね」と呟いた。
「ごめんね、お父さんとお母さんのせいで、陸翔に辛い思いをさせて・・・・。」
涙ぐみ、「ごめんね」と抱きしめる。
「でも無理なのよ・・・・。あんたにはまだ分からないだろうけど、親子の愛と夫婦の愛は違うものなの。
お母さんもお父さんも、ずっと陸翔のことが大好きよ。それは間違いない。
でもお父さんとお母さんはそうじゃないの。夫婦の愛っていうのは、途切れることがあるの。
でも陸翔にそんなの関係ないのに・・・・・ごめんね。」
おばさんはケータイを取り出し、誰かに掛けていた。
話しぶりからして、おそらく怪人だろう。
「うん、うん・・・・大丈夫、陸翔は無事だから。ちょっと外に出たくなったみたいで。
全然平気よ。・・・・違うわ、勇作君は関係ない。どっちかっていうと私たちのせいね。陸翔が寂しがって・・・・。
だから今日は先生に許可をもらって、出かけようと思うの。・・・え?あなたも来るって?」
おばさんは俺を振り返る。
目で「いい?」と訴えかけた。
俺は頷く。
おばさんは「いいわよ」と電話に話しかけた。
「病院の近くのマックスバリューに来て。うん、いいわよゆっくりで。気をつけて。」
電話を切り「怪人も来るって」と笑った。
「構いません。」
誰が来ようと、宇宙人の捜索に変わりはない。
しかし陸翔君は違った。
「お父さんも来るの!」
「そう、三人で行きましょ。」
陸翔君は俺を振り向き、「UFOの人!」と笑った。
「よかったな。」
「うん!」
宇宙人に乗っ取られているとはいえ、陸翔君はまだ子供だ。
子供らしいその笑顔は、俺を和ませた。
それは琴音さんも同じようで、「よかったですね」と頷く。
「でもいいんですか?私のせいなのに・・・・、」
「構わない。そんなことよりも宇宙人が見つかるかどうかだ。」
そう、それこそが最も重要なことだ。
一人頷いていると、琴音さんが「あの・・・」と尋ねた。
「さっきの優二って誰なんですか?」
「分からない。」
「・・・・前に言ってましたよね、ハッキリしない記憶があるって。もしかしたら、そこに優二って人の記憶があるんじゃ・・・。」
「かもしれない。」
「・・・・もしかしたら勇作さんの弟かもしれませんよ?」
「そうかもしれないな。でもまだ何も分からない。なんでそんな名前が出てきたのか。」
俺には弟がいたかもしれない。
しかしあの時俺の傍にいた誰か、それが人間とは限らない。
優二という名前の宇宙人の可能性もあるのだ。
「分からないことだらけだ。」
曖昧な記憶を探るのは、地図のない森を歩くがごとし。
むやみに考えても、かえって迷うだけだ。
《とにかく今日は廃村だ。そこに宇宙人がいるかどうかだ。》
地球外生命体は必ずいる。
俺には確信がある。
なんたってUFOの破片を見つけたんだから。
まだ見ぬ真実に向かって、少しずつ進んでいる気がした。

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