微睡む太陽 第十四話 遠い故郷(2)

  • 2017.05.18 Thursday
  • 09:06

JUGEMテーマ:自作小説

俺はUFOに乗った。
失われた記憶も復活し、弟にも会った。
俺は・・・・もう充分だった。
両親が殺されてから今まで、ずっとUFOを追いかけていた。
いつか乗れるはずだと信じて。
その夢は今日叶った。
だからこれ以上は何も望まない。
あとは人並みを人生を歩いて行くだけだ。
しかし俺ではない誰かのことは気掛かりだ。
陸翔君と琴音さん。
この二人の抱える問題を、俺は解決しないといけない。
幸い陸翔君の方はどうにかなりそうだ。
優二が弟か妹をプレゼントしてくれるのだから。
離婚した親は元に戻らないが、彼は新たな家族を得る。
悲しみは消えなくても、喜びが癒してくれるだろう。
だから・・・・問題は琴音さんの方だ。
彼女の妹を連れ戻すには、悪い宇宙人と戦わないといけない。
俺は病院のベッドの上で、琴音さんにそのことを説明した。
UFOに乗ったこと、記憶を取り戻したこと、そして優二から聞いた話を。
「琴音さん、俺はあなたの味方です。妹さんは必ず助けてみせます。」
ガシっと肩を掴んで、「希望は捨てちゃいけません」と言った。
すると琴音さん、困った顔をしながら、隣の陸翔君を見つめた。
「これって・・・・、」
「前より頭がおかしくなっちゃったね。」
二人は俺の話を信じない。
まあ仕方ないだろう。UFOに乗った人間でなければ、UFOに乗った人間の言葉は信じられない。
琴音さんは眉を寄せながら、「あのですね・・・」と言った。
「実は謝らないといけないことが・・・・、」
そう前置きして、何かを話しだそうとした。
しかしおばさんがそれを遮る。
「ちょっと待って。先に私の話をさせてちょうだい。」
そう言って俺の前に座る。
「勇作君、どうしてあなたが病院にいるか話したわよね?」
「ええ。」
「あなたは溺れたのよ。あの骨を追いかけて、その先にある川に落っこちたの。
その時に頭を打ったみたいで、気絶してたのよ。」
おばさんは俺の頭の包帯を撫でた。
「琴音さんがすぐに助けを呼んでくれたからよかったけど、そうじゃなきゃ死んでたわ。」
ため息交じりに俯き、「ねえ?」と尋ねる。
「その・・・・一度精神科を受診してみない?」
「どうして?」
「勇作君がUFOを信じてるのは分かる。だけどね、それが行き過ぎて死にかけるなんて・・・・おばさん心配なのよ。」
「俺は溺れていたんじゃありません。UFOに乗っていたんです。」
「そうね・・・。そうかもしれないけど、それは勇作の夢かもしれないわよ?」
「夢じゃありません。俺はあの骨を追いかけ、そして悪い宇宙人に殺されかけたんです。
そこを優二が助けてくれたんですよ。」
そう、俺は優二に会ったのだ。
弟に、宇宙人に。それは紛れもない真実だ。
でもおばさんは首を振る。
困った顔をしながら、琴音さんを振り返った。
「あの・・・・、」
琴音さんは戸惑いながら口を開く。
「勇作さんは本当に溺れたんです。あの骨を追いかけて、その先にある川に落ちて。
浅い川だけど、落ちた時に気絶してたみたいで・・・・。」
「違う、俺はUFOに乗っていたんだ。」
「・・・あの骨の周りには、たくさんウシガエルがいたんです。
そこに私たちが来たもんだから、慌てて川の方へ逃げ出したんですよ。
骨はそれに引っかかって動いてただけなんです。
あの廃村には、今は警察が来てます。色々調べてるみたいだけど、宇宙人なんて見つけてないですよ。」
「だからあのウシガエルが宇宙人なんだ!悪い奴なんだ!琴音さんの妹をさらった奴らなんだ。」
「・・・・・・・。」
琴音さんは俯く。
するとおばさんが「正直に言いなさい」と彼女の肩を叩いた。
「もう分かったでしょ?勇作君は本当にUFOを信じてるの。これ以上嘘をついてたら、あなたの為に危険なことをしちゃうわ。
もしそれで死んだりしたら、あなたは責任が取れる?」
そう言って、陸翔君の車椅子を掴んだ。
「ちゃんと話をして謝りなさい。いいわね。」
険しい顔を向けながら、陸翔君と一緒に病室を出ていく。
琴音さんは腕をさすりながら、「あの・・・」と怯えた。
「その・・・・謝らないといけないことがあるんです。」
そう言って俺の前に座る。
「私は嘘をついてました。」
「嘘?」
「私に妹なんていないんです。アメリカに住んでたこともないし、UFOを見たこともありません。」
「何を言ってるんです?」
俺は顔をしかめる。
琴音さんは俺よりも顔をしかめた。
「勇作さんはよく近所の銭湯に行きますよね?あのボロっちい。」
「ええ。」
「あれって私のおばあちゃんがやってるんです。」
「そうなんですか!?あの番台のおばあちゃんが?」
「はい。それで前から聞かされてたんですよ。変わった人が来るって。
UFOUFOっていつも言ってて、この前は屋根に登ったって。
それを友達に話したら、みんな面白がって・・・・。」
「知らなかった、琴音さんがあの銭湯のお孫さんだったなんて。」
世間は狭いもんだ。
こうして彼女と出会ったのも、何かの運命かもしれない。
となると、なんとしてでも妹を連れ戻してあげないと。
「大丈夫ですよ、俺が必ず妹さんを見つけてあげます。」
「いや・・・だからそれは嘘で・・・・、」
「記憶を消されてるんですよ、宇宙人に。きっとあのウシガエルの宇宙人がやったんだ。」
「違うんです、そうじゃなくて・・・・、」
膝の上で手を組み、もじもじする。
そして申し訳なさそうな顔でこう言った。
「賭けをしていたんです。」
「賭け?」
「ゼミの友達に勇作さんのことを話したら、みんなすごく面白がって。
だから勇作さんのことを面白がって、誘惑してやれって言ってきたんです。」
「誘惑?何を?」
「・・・・その勇作って奴は、頭のおかしい社会不適合者で、ロクな仕事もないだろうし、女にもモテないだろうって。
だからUFOとか宇宙人を信じて、現実逃避をしてるんだって。」
「・・・・・・・・・・。」
「俺らもそういうの好きだけど、でも本気で信じてるわけじゃないって。
その勇作ってやつも、本気で信じてるんじゃなくて、そうすることでしか現実から逃げられないんだろって。
だから誘惑してやれって言ってきたんです。
もし彼女が出来れば、UFOとか宇宙人とかなんて、一瞬でどうでもよくなるだろうって。」
「・・・・・・・・・・。」
「だから佐原、お前が誘惑してやれよって。変人が好きなんだから、お前ならいけるだろって。
・・・・私は最初、断りました。確かに変わった人は好きだけど、そこまで変な人は嫌だから。
それにそんな賭けなんてする気になれないし。」
「・・・・・・・・・・。」
「だけどもし落とすことが出来れば、一緒に卒業旅行に連れて行ってやるって言われて・・・・。」
「卒業旅行?」
「私の家、そこまで裕福じゃないんです。だから学費を出してもらうので精一杯で。
でも周りはお金持ちが多いんです。みんな将来に不安がないから、考古学なんて役に立たないゼミで遊んでる感じで・・・・。
でもお金はあるから、卒業旅行は良い所に行こうってことになったんです。
だけど私は行けない・・・・。仲の良い子は、私の為に安い所でいいじゃんって言ってくれたけど、最終的にはヨーロッパを巡ることになって。
そうなると、せっかく四年間一緒に過ごしてきた友達なのに、卒業旅行に入れてもらえないんです。」
「・・・・・・・・・・。」
「でも勇作さんを落とすことが出来たら、旅費を持ってくれるって言ったんです。
交通費と宿泊費だけは出してやるって。それなら一応はみんなと一緒に行けるから・・・・・。
だから賭けに乗るこにしたんです。それで勇作さんに声を掛けることにしたんです。」
「・・・・・・・・・・・。」
「本当は銭湯で声を掛けようと思ってました。だけどたまたま勇作さんも同じバイトをしてたから、あの山で声を掛けたんです。
・・・・最初は怖くて戸惑ってたけど、斎藤さんが先に声を掛けちゃって。
あ!あの人は何も事情を知らないですからね!さすがに定年した人が、そんな賭けに乗るわけがないから。
だけど斎藤さんが話しかけて、それで友達が「ほらいけ!」ってせっついて。
それで・・・・その・・・・今に至るというわけです。」
申し訳なさそうな顔で言って、申し訳なさそうな顔で俯く。
長い間俯いていて、「ごめんなさい」と呟いた。
「私には妹もいないし、両親も離婚なんかしていません。アメリカだって行ったことないし、UFOなんて見たこともありません。
ただ勇作さんを騙す為に嘘をついて・・・・・。」
そう言って顔を上げて、「でも!」と叫んだ。
「勇作さんと一緒にいるうちに、この人は本当にUFOを信じてるんじゃないかって思ったんです。
演技とか、現実逃避とかじゃなくて、根っから信じてるんだって。
それに勇作さんの過去を知ったら、こんな賭けなんかしていいのかなって迷うようになって・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「辛い過去があって、本気でUFOを信じて・・・・そんな人を騙してまで、みんなと旅行に行っていいのかなって・・・・。
そうやって迷ってるうちに、こんな事になって・・・・・。」
「こんなこと?」
「だって死にかけたじゃないですか!まさかこんなことになるなんて・・・・。」
青い顔をしながら、「マジで焦った・・・」と首を振る。
「普通あそこまでしませんよ。骨とカエルを追いかけて、川に落ちて死にかけるなんて。
でもその時分かったんです。この人は本気でUFOとか宇宙人を信じてるんだって。
どうしてそこまで信じてるのか分からないけど、それだけは間違いないって。」
「・・・・・・・・・・・。」
「すぐに救急車を呼んで、それで病院に運ばれるまでの間、おばさんも陸翔君もすごく心配してました。
陸翔君のお父さんだって「しっかりしろ!」って励ましてて。
あの時、私は震えるしかなかったんです。これで勇作さんが死んだら、私はみんなから恨まれるって。
だからおばさんに話したんです。嘘ついて勇作さんを落とそうとしてるって。」
琴音さんはまた「ごめんなさい」と謝る。
「本気でUFOを信じてるんですね、勇作さんは。」
「信じるもなにも、ついさっき乗ったばかりです。」
「・・・・・怒ってますよね?」
「何を?」
「私が嘘をついてたこと・・・・。」
「いえ。」
「いや、怒ってるでしょ?酷い女だって。」
「全然。でも迷ってるんです。」
「何をですか?」
「琴音さんの言うことを信じてもいいのかどうか?」
「はい?」
「もし琴音さんの言ってることが真実なら、俺は肩の荷が降りるんです。だって妹を見つけなくてもいいから。」
「・・・・・・・・・。」
「だけど宇宙人に記憶を消されている可能性もある。
琴音さんは自分の記憶を正しいと思っているかもしれないけど、そうじゃない可能性もあるんです。
だから優二から連絡が来るのを待つしかありません。」
「連絡って?」
「あのUFOの破片を調べてくれているんです。金属にも記憶があるらしくて、その記憶を調べているんです。」
「・・・あの・・・・、」
「心配しなくても大丈夫です。優二は良い宇宙人だし、頼りになる弟ですから。」
俺は胸を張って言う。
きっと優二が真実を突き止めてくれる。
それまでは待つしかないのだ。
琴音さんは黙り込んでしまって、俺と目を合わせようとしない。
そこへおばさんと陸翔君が戻ってきた。
「琴音ちゃん、話はもう終わった?」
おばさんが尋ねる。
「はい・・・・。」
「勇作君はいつも通りだったでしょ?」
「はい・・・・。」
「そういう子なのよ。純粋だし真面目だし、他人想いなの。
だからもう構わないであげて。卒業旅行に行きたい気持ちは分かるけど、それは自分でどうにかしてちょうだい。
勇作君を巻き込まないでほしいの。」
「すいません・・・・。」
琴音さんは立ち上がる。
俺に頭を下げて、「騙しててごめんなさい」と言った。
「もう会いに来ません。ほんとうにごめんなさい。」
そう言い残し、病室を出て行った。
陸翔君が「なに話してたの?」とキョトンとする。
おばさんが「大人の話よ」と言った。
「あ、もしかして痴話喧嘩?もうそういう関係になってたの?」
「コラ!子供がそんなこと言わない。」
去ってしまった琴音さん。
でもまた会うことになるはずだ。
優二が真実を突き止めてくれたら、彼女にも伝えないといけないから。
卒業旅行に行くのは、それからでも遅くないだろう。
「ねえUFOの人。」
「ん?」
「なんの話してたの?」
陸翔君は興味津々だ。目が輝いている。
俺は「彼女の記憶の話だ」と答えた。
「なにそれ?」
「俺と同じなんだ。彼女も正しい記憶じゃないのかもしれない。」
「そうなの?付き合うとか別れるとか、そういう話じゃなかったの?」
「違う。」
「ふ〜ん・・・。でもあの人、UFOの人のこと好きそうに見えるけどなあ。」
「そうだとしても、俺は誰とも付き合うことは出来ない。これが終わったら、優二と宇宙へ行かないといけないからな。」
「じゃあ僕も連れて行ってよ。」
「ダメだ。」
「なんで?前はUFOに乗せてくれるって約束したじゃん。」
「陸翔君にはお父さんもお母さんもいる。それに近い将来に弟か妹が出来るはずだ。」
「それさっき言ってたね。出来るなら弟にしてくれないかな?」
「いいぞ。優二にそう言っておく。」
「絶対ね。」
「ああ。」
陸翔君は嬉しそうに頷く。
俺は窓の外を見て、琴音さんのことを心配した。
《彼女は記憶を操作されている可能性がある。ただ俺を騙すだけなら、二人で廃村へ行けばよかったはずだ。
なのにわざわざ陸翔君を呼んだのはなぜだ?》
さっき琴音さんはこう言っていた。
私の両親は離婚なんてしていないと。
しかしそれだと辻褄が合わなくなる。
彼女が陸翔君を呼んだのは、自分と同じように親が離婚して、それに同情していたからだ。
だからこそ陸翔君を可哀想だと思い、廃村へ誘った。
辛い現実から目を逸らさせようと。
でも彼女の両親が離婚していないというのなら、その理屈は通らない。
ならばなせ呼んだのか?
《どうも引っかかるな。同情で連れ出したんじゃないとしたら、他にどんな理由がある?
俺たち二人だけで廃村へ行ったら、都合の悪いことでもあったのかな?》
琴音さんの記憶が確かだろうと、そうでなかろうと、これは疑問だ。
陸翔君に接する琴音さんは優しかった。
なのにどうして車椅子の陸翔君を連れ出そうとしたのか?
《・・・・宇宙人か?もしかしたら脳内に埋め込まれたチップで、宇宙人によって操作されているのかもしれない。
ということは、あの廃村にいた宇宙人は俺や琴音さんではなく、陸翔君に用があったってことになるな。》
俺は陸翔君を見つめる。
優二は言った。陸翔君は宇宙人に乗っ取られてはいないと。
ではこうは考えられないか?
あのウシガエルの宇宙人は、これから陸翔君を乗っ取ろうとしていたと。
《きっとそうに違いない!なんてこった・・・・陸翔君まで危険に晒そうというのか!》
俺は気が滅入る。
琴音さんと陸翔君。
この二人を凶悪な宇宙人から守れるだろうか?
「ねえお母さん、UFOの人またぶつぶつ言ってる。」
「日増しにひどくなってくわね。これは無理にでも精神科の先生に診てもらった方がいいかもしれないわ。」
二人は能天気な会話を交わしている。
《みんな分かってない!人類は今、侵略の危機に晒されているというのに・・・・。》
宇宙人は狡賢い。
人類に気づかれることなく、着々と侵略の準備を進めているのだ。
もしも優二みたいな良い宇宙人がいなかったら、俺たちはウシガエルの奴隷になっているだろう。
《米軍も日本政府も、宇宙人と癒着している。きっと手は貸してくれない。
ならどうすればいい?どうすればこの危機を乗り切れる!?》
滅びの危機はいつだって傍にある。
その真実を知ってしまった今、俺は冷静ではいられなかった。
「ちょっと出かけてきます。」
ベッドから下りて、外へ走り出す。
「勇作君!」
おばさんが追いかけて来る。
俺は必死に走ったが、頭が痛くなって、フラフラとよろけた。
「クソ・・・・頭を打ったのは本当らしいな。でもこんな怪我で負けていられない!」
手すりにつかまり、階段を降りていく。
「勇作君!ダメよ!まだ寝てなきゃ!」
おばさんが俺の手を掴む。
俺はその手を振りほどき、人類を守る為に駆け出した。
「誰か!その子を捕まえて!」
近くにいた看護師たちが、俺に飛びかかってくる。
医者も駆け付けて、病室へ戻されてしまった。
「まだ安静にしてて下さい。」
医者は無理矢理に俺を寝かせる。
「地球が危ないんだ!人類が滅びる!」
「ちょっと暴れないで!」
「人類が危険なんだ!このままじゃウシガエルの奴隷になってしまう!」
俺は必死に叫ぶ。人類を、この地球を守る為に。
「早く!早く悪い宇宙人を倒さないと!」
「暴れるな!」
医者も看護師も、必死の形相で俺を押さえつける。
「誰か鎮静剤!」
看護師がどこかへ走り出し、その数分後に、俺は注射を打たれた。
意識が朦朧としてきて、強烈な睡魔が襲ってくる。
「頼む・・・・行かせてくれ・・・・。じゃないと・・・・みんな宇宙人の奴隷になってしまう・・・・。」
真実を知らないというのは、恐ろしいことだ。
誰もかれもが俺を変人だと思っている。
でもそうじゃない。
真実を知っているのは俺だけで、だからこそ焦っているというのに。
《クソ!なんで分かってくれないんだ!このままじゃ本当にウシガエルの奴隷になってしまうのに・・・・・、》
叫びたいのに声が出ない。
瞼は重く、指さえ動かせなくなる。
しかしその時、頭上から眩い光を感じた。
《兄ちゃん。》
《優二!》
《あの破片の記憶を読み取ったよ。》
《本当か!それで結果は!?》
《琴音さんの妹はまだ生きてる可能性があるよ。》
《それはよかった!じゃあすぐに連れ戻さないと!》
《兎羽山って知ってるよね?あそこの亜空間に幽閉されてるんだ。》
《兎羽山か。今は恐竜の化石が見つかったせいで封鎖されてるな。》
《じゃあ滝尾山から行けばいいよ。あの山は尾根で繋がってるから。》
《無理だ。あそこも封鎖されていると聞いた。熱心な恐竜マニアが、尾根を越えて入って来るらしいからな。》
《そっか・・・・じゃあもう一回僕のUFOに乗る?それで兎羽山まで行こうよ。》
《もちろんだ!早く妹さんを助けないと。》
《なら光の国に来て。》
《光の国?あの子供向けの施設か?》
《あそこの屋根にUFOがあるでしょ?あれが僕たちのUFOなんだ。》
《やっぱりあれは本物だったのか!?》
《急いで来て。ウシガエルの宇宙人は、もうこっちの動きに気づいてる。早くしないと妹さんが危ない。》
《分かってる。でも注射を打たれて動けなくて・・・・、》
《・・・・・じゃあ仕方ない。やっちゃいけないことだけど、特別にやってあげるよ。》
《何を?》
《兄ちゃんの意識を抜き取る。肉体を捨てて、僕たちと一緒に行くんだ。》
《どういうことだ?》
《幽霊になるってこと。人類にとってはオーバーテクノロジーだけど、兄ちゃんの為だから特別にやってあげる。》
優二は俺の頭に手を突っ込む。
かつて記憶を封じられた時のように、トコロテンが脳ミソを駆け巡るような感覚だった。
《・・・・これでよし。》
《おお!俺の身体があんな所に・・・・。》
俺は宙を浮いていた。
肉体はベッドに寝たまんまで、医者やおばさんに囲まれている。
《さあ行くよ。》
優二は俺の手を取り、病院から飛んでいく。
向かうは光の国、屋根の上に眠るUFO。
《早く乗って。》
《ああ。》
今日、俺は二度目のUFO搭乗に成功した。
《優二、琴音さんはやっぱり記憶を操作されていたんだな?》
《みたいだね。》
《宇宙人め・・・・なんて酷いことを。》
《レプティリアンは冷酷だから。恐ろしい奴らだから、覚悟してかからないといけないよ。》
《分かってる。これは人類の為の戦いだ。俺は負けない!》
UFOは空に舞い、ピュンと駆け抜ける。そして瞬きするほどの時間で兎羽山に着いた。
俺は窓から山を見下ろす。
せっせと化石を発掘している人達がいて、遠い昔の命を、現代に蘇らせようとしている。
でもあれは恐竜じゃない。宇宙人の骨なのだ。
それもウシガエルに滅ぼされた宇宙人の。
彼らの怒りは未だ消えず、復讐を誓っている。
だからこそ俺を引き寄せた。そして武器を与えたのだ。
・・・・・気がつけば、手にバナナの歯を握っていた。
ノコギリみたいにギザギザのついた歯。
これでもって、ウシガエルの宇宙人の企みを阻止してみせる。
そして琴音さんの妹を連れ戻すのだ!
UFOは山へ下りていく。
化石から少し離れた場所に。
そこにはこの山の名の由来となった、大きな岩がある。
兎の形をしたあの岩だ。
その傍に、一匹のウシガエルがいた。
《じゃあ降りるよ兄ちゃん、準備はいい?》
《いつでも。》
バナナの歯を剣のように掲げる。
ここは地球、悪い宇宙人の好きにはさせない。
俺は近々この星を離れるが、残された人たちが安心して暮らせる星であり続けてほしい。
遠い宇宙に出たって、地球での不安ごとが消えないのは知っている。
銀河の果てに旅立った時、遠い故郷を案じるなんて、そんな暗い気持ちにはなりたくないのだ。
優二が俺の手を掴み、一緒にUFOから降りていく。
するとその瞬間、岩の傍にいたウシガエルが、長い舌で襲いかかってきた。
《この星をお前たちに渡すものか!》
バナナの歯を振ると、ビームサーベルのように光の刃が伸びた。
ウシガエルの舌を斬り払い、返す刀で一刀両断!
すると兎の岩が動いて、ピカリと目を光らせた。
《兄ちゃん!あれが奴らのUFOだよ!》
《これがか!》
《このUFOの下に亜空間があるんだ!そこに琴音さんの妹がいる!》
《任せろ!こんなUFOなんて、俺が叩き斬ってやる!》
俺はビームサーベルを振り上げる。
兎のUFOは目からビームを放ってきた。
ぶつかる二つの光。
眩く炸裂する閃光は、あの夜のオーロラのように弾ける。
人類の存亡を懸けた戦いが始まった。

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