微睡む太陽 第十五話 涙する宇宙 笑う地球(1)

  • 2017.05.19 Friday
  • 09:58

JUGEMテーマ:自作小説
地球人は宇宙人相手にどこまで戦えるのだろう?
俺は優二に連れられて、兎羽山に来ていた。
ここに琴音さんの妹が捕えられているのだ。
兎の形をした大きな岩があって、その下の亜空間に幽閉されている。
しかし兎の岩は、悪い宇宙人のUFOだった!
俺は恐竜の牙を振るい、そのUFOと戦った。
敵はビームを撃ってくる。
俺はビームサーベルと化した恐竜の歯で、それを叩き斬る。
眩い光が炸裂し、思わず目を閉じた。
・・・その瞬間、敵のビームが俺を貫いた。
《しまった!》
真っ赤なビームが胸を貫通する。
これで死んだ・・・・。
そう思ったが、なんのダメージもなかった。
《なぜだ?》
不思議に思っていると、優二がこう答えた。
《忘れたの?今の兄ちゃんは幽霊なんだよ。肉体から意識だけ分離してるんだ。》
《そうか!これなら物理攻撃は無効ってわけだな!》
《でも気をつけて。奴らは色んな攻撃を使ってくるから。油断してると負けちゃうよ。》
兎のUFOは巨大な歯を見せる。
優二は《あれに噛まれちゃダメだ!》と叫んだ。
《なんでも噛み砕く歯なんだ!幽霊も真っ二つだよ!》
《心配するな。》
俺はビームサーベルを構え、UFOの一撃を迎え打った。
居合に構えた状態から、真一文字に剣を振る。
すると敵の横面にヒットした。
《ぎゃお!》と叫んで、大きく仰け反る。
《トドメ!》
ダッシュして勢いをつけ、一回転しながら斬り払う。
兎のUFOは大ダメージを受けて、よろよろ後退した。
その時、UFOの下から空間の渦が現れた。
《兄ちゃん!あれが亜空間への道だよ!》
《よし、早く妹さんを助けないと!》
《気をつけて!中にはいっぱいウシガエルの宇宙人がいるはずだから!》
《平気だ、これがあるからな。》
光り輝く剣を振って、渦の中に向かう。
《優二!UFOは任せたぞ!》
《うん!》
優二はグレイ型の宇宙人。
力ではレプティリアン型の宇宙人に負ける。
しかし文明はグレイ型の方が上だ。
傍には仲間のUFOもいるし、きっと負けないだろう。
地上の敵は優二に任せ、俺は亜空間を進んでいった。
《なんとも奇妙な場所だな・・・・。》
亜空間の中は不思議な所だった。
銀河のように星々が煌めいて、その隙間に闇が滲んでいる。
それに重力がないので、ふわふわと辺りを漂うばかりだ。
《なんて場所だ・・・・こんな所に琴音さんの妹は幽閉されているのか。》
ここは宇宙そのものといっても過言ではない。
きっと空気もないだろう。
《幽霊の状態で来てよかった。もし肉体のまま気ていたら、呼吸が出来ずに死んでいただろうな。》
宇宙は地球とは違い、底なし沼より過酷な世界である。
地球で進化してきた人間にとっては、美しくはあっても、生きていける環境ではないのだ。
《妹さんは大丈夫だろうか?》
だんだんと心配が強くなっていく。
するとその時、遠くに大きな星が見えた。
それは太陽のように輝いていて、直視できないほど眩しい。
そしてその星の周りには、オーロラが広がっていた。
最初は風にそよぐカーテンのようだったが、やがてうねる大蛇のごとく、四方八方に伸びていった。
《すごい!ヤマタノオロチみたいだ!》
頭が八つある怪物が、七色の光をまとって、亜空間を包んでいく。
周りはどこもかしこも七色に輝いて、小さな星々が見えなくなってしまった。
《なんだこれは!?》
逃げ場を塞がれた!そう思った。
《おのれウシガエルめ・・・琴音さんの妹と一緒に、俺も幽閉しようというのか!?》
もしここで俺が負けたら、人類の存続に関わる。
しかし俺の武器は光の剣だけ。
さすがにこれでは分が悪い。
《敵は空間を操る能力を持っているんだな。さすがは超文明の宇宙人だ。》
科学力では遥かに負ける人類。
この凶悪な宇宙人に勝つには、人類にも宇宙人の力が必要だ。
《優二!早く来てくれ!》
じたばたしながら亜空間を漂っていく。
でも優二は来てくれなくて、俺は大きな星の方へ流されていった。
《クソ!ウシガエルめ・・・・。》
目を細めながら、大きな星を睨む。
するとそこに、巨大なウシガエルのシルエットが映った。
《なんて巨大な・・・・あれが親玉か!?》
どうやら敵のボスが出てきたらしい。
俺は光の剣を構えた。
気分はダースベイダーに挑むルークだ。
《来るなら来い!》
玉砕覚悟で睨み付ける。
大きな星にだんだんと近づき、巨大なウシガエルの姿が露わになる。
それを見た瞬間、俺は絶句した。
「・・・・・・・・。」
戦う気が失せる。
剣を構えていることすら忘れそうになって、呆然とした。
「なんだこれは・・・・。」
それはウシガエルではなかった。
シルエットだけ見るとカエルだが、中身が違う。
《恐竜・・・・?》
それはトリケラトプスを平たくしたような、大きな角を持つ怪物だった。
カエルみたいに足を折り曲げ、カエルみたいに四つん這いになっている。
だけどカエルじゃない。
どう見てもトリケラトプスだ。
《お前が宇宙人か?》
そう尋ねると、何も答えずに背中を向けた。
《おい!琴音さんの妹を返せ!》
我に返って、剣を向ける。
するとトリケラトプスの宇宙人は、大きな角を振ってきた。
《うおッ・・・・・、》
慌てて防御する。
角の一撃は強力で、剣が粉々になってしまった。
《なんてパワーだ・・・・。》
こいつはこの歯の持ち主の宇宙人を滅ぼした奴だ。
普通に考えれば、この剣で勝てないのは当たり前だった。
武器もない、この空間から出ることも出来ない。
俺は《負けだ・・・・》と俯いた。
《やっぱり宇宙人には勝てない・・・・俺の力じゃ・・・・、》
《宇宙人ではない。》
トリケラトプスが口を開く。
それは何重にも響く、やまびこのような声だった。
《宇宙人はお前だ。》
《なに?》
《この星は、かつて私たち恐竜の世界だった。それを人間どもが奪ったのだ。》
《何を言ってるんだ?》
《恐竜は文明を築いていた。今の地球人よりも、高度な文明だ。
しかしそこへ宇宙からの生命体がやってきた。お前たち人類の祖先のな。》
《なんだって!?》
《奴らはとても高い文明を持っていた。しかし母星を失い、この星へ逃れてきた。
我ら恐竜族は、最初は友好的に迎えた。
それなのに、奴らは戦いを挑んできた。この星を自分たちのものにせんと。》
《恐竜と人類の祖先で、戦争をしたっていうのか?》
《そうだ。とても激しい戦いだった。そして我らは負けた。
恐竜族の文明はほとんど失われ、同胞の多くが死に絶えた。
わずかに残った同胞は、鳥に変わって生き延びている。》
《それなら知っている。恐竜は鳥に進化したってな。》
《わずかに残った文明の方は、現在ではオーパーツと呼ばれている。》
《オーパーツ・・・・人類の文明を遥かに凌駕する、超文明の産物だな。》
《激しい戦いの末、恐竜族の文明は滅んだ。しかし敵もまた痛手を負った。
母船を失い、多くの仲間を失い、ボロボロの状態だ。》
《でも今はたくさんの人間がいるぞ。文明も栄えてる。》
《奴らはじっくりと時間をかけて、今の世界を築いた。
元々地球に存在していた、魚、両生類、爬虫類のDNAを取り込むことで、現在の人間のような姿へと変わっていった。
元の姿はグレイ型の宇宙人だ。》
《なんだと!だったらグレイは人類の祖先だというのか!?》
《お前の傍にいる優二という弟、奴らがそうだ。》
《な・・・・・なんだってえええ!?》
驚きのあまり白目を剥いた。
《優二が俺たちの祖先だと!?》
《悪い宇宙人は奴らの方なのだ。》
《嘘を言うな!優二はそんな奴じゃない!》
《このままでは、我ら恐竜族は滅ぼされる。だからこの星を旅立つことにした。》
《旅立つ?》
《新たな母星を探す。この星はグレイと人類にくれてやる。好きなだけ汚して、好きなだけ破壊するがいい。
いつかこの星に住めなくなり、人類は滅びる。》
《待て!ならどうして兎羽山で見つかった、ティラノサウルス型の宇宙人を滅ぼした?あれはお前たちの仲間だろう?》
《彼らを滅ぼしたのは、グレイ型の宇宙人だ。》
《優二たちがやったというのか!?》
《そうだ。》
《そんな馬鹿な・・・・・、》
《人間よ、せいぜい夢の中に生きているがいい。何も知らず、幻想の中でいつまでもはしゃいでいろ。》
トリケラトプスは大きな遠吠えをあげる。
するとどこからかたくさんのウシガエルが集まってきた。
《いつの間にこんなにたくさん・・・・・、》
辺りを埋め尽くすウシガエル。
そして兎の岩のUFOまでやって来た。
《あれは優二と戦っていたやつ!》
ボロボロになっているが、どうにか飛んでいる。
トリケラトプスもウシガエルも、UFOの中に吸い込まれていった。
《お前ら!逃げる前に琴音さんの妹を返せ!》
《我らは何もしていない。悪さをしているのはグレイ型の宇宙人だ。》
《嘘をいうな!優二は俺たちの味方だ!そんなことはしない!》
《世界中で悪さをしている。優二も、車椅子の少年の親も。》
《車椅子の・・・・。それってまさか・・・・、》
《髪の薄い浮浪者も、お前を保護した警官も。》
《そんな・・・・なんてこった!》
《お前はグレイ型の宇宙人に囲まれているのだ。》
《俺の周りは、みんな宇宙人だってのか!?》
《みんなではない。琴音と車椅子の少年は違う。》
《あの二人は人間なのか?》
《そうだ。》
《ということは・・・・あの子はおばさんの本当の子供では・・・・、》
《違う。そして真実を知らないのはお前だけだ。お前の両親を殺したのも奴らだ。》
《なッ・・・・・・・、》
《両親を殺した男は、奴らが操っていた。》
《なんでそんなことを!?》
《お前の両親は、優二の正体に気づいていた。だから殺されたのだ。》
《嘘だ!誰がそんなことを信じるか!》
優二の言う通り、こいつは悪い宇宙人だ。
しかし武器がない今では倒せない。
《そうやって嘘をついて、たくさんの人を騙してるんだな?》
《信じるかどうかはお前が決めればいい。》
トリケラトプスはUFOから上半身を出して、真上を指さす。
左右、真下も指さして、《このオーロラは壁だ》と言った。
《壁?》
《お前は周りから変人扱いされているだろう?》
《誰も俺の言うことを信じてくれない。俺は真実を言っているのに・・・・。》
《このオーロラは、地球と宇宙を遮る壁だ。》
《・・・・・何が言いたいんだ?》
《その目で見て、手で触れて、そこに存在するものだけを信じるか?
それともまだ見ぬ遠い世界の存在を信じるか?
どちらを見るかで、このオーロラの中にいるか、外に出るかが決まる。
もしお前が答えを間違うなら、永遠にこの空間に閉ざされるだろう。》
《大丈夫だ、優二が助けに来てくれるからな。》
俺はニヤリと笑う。
しかしトリケラトプスは首を振った。
《優二は逃げた。》
《なんだって!?》
《我らの宇宙船が撃退した。》
《何を言ってる!優二の方がお前らよりも強いんだぞ!》
《強いのは強いが、憶病で狡賢い連中だ。たかがお前ひとりの為に、命を懸けたりはしない。》
《俺を置いて逃げたっていうのか?》
《お前は利用されているのだ。我らレプティリアンを絶滅させる為に。》
《そんなのは信じないぞ!》
俺は必死に否定する。
しかしトリケラトプスは鼻で笑った。
《この空間から出たいなら、オーロラを超えて見せることだ。》
《どうやって!?》
《さっきも言った通りだ。答えは自分で出すがいい。》
UFOは遠ざかっていく。
大きな星の向こうへ消えていく。
《待て!》
《ヒントをやる。》
《ヒント?》
《宇宙は泣いている。地球は笑っている。》
《なんだそれは?》
《宇宙が流した涙が、地球になったのだ。》
それだけ言い残し、UFOは光のごとく飛び去った。
俺は一人残されて、宇宙のような亜空間を漂う。
周りはうねるオーロラに包まれて、これを超えないと出られないらしい。
《なんだあの宇宙人は・・・・。わけの分からないことばかり。》
優二は悪い宇宙人で、しかも陸翔君と琴音さん以外はみんな宇宙人。
そして真実を知らないのは俺だけ。
《どうなってるんだいったい・・・・。》
俺は途方に暮れるしかなかった。
頭を抱え、海面を漂う昆布のように、へなへなと流されるばかり。
《ずっとここにいたらどうなるんだろう?》
辺りを見つめ、《別に出なくてもいいんじゃ・・・・》と考える。
人生の目的はすでに果たした。
UFOに乗るという目的は。
琴音さんと陸翔君のことは気掛かりだが、これ以上俺に何が出来よう。
《・・・・・いや、ダメだな。あの二人は放っておけない。それに妹さんだって助けないといけないし。》
やっぱりここから出ないといけない。
しかしその為には・・・・・、
《トリケラトプスは言っていたな。
目で見て、手で触れて、そこに存在するものだけを信じるか?
それともまだ見ぬ遠い世界の存在を信じるか?》
俺は亜空間を包むオーロラを見上げる。
《これは宇宙と地球を遮る壁だと言っていた。ということは、この外には宇宙が広がっているということか・・・?
いや違うな。この外に地球が広がっているんだ。でないと、このオーロラを超えても地球へ戻れない。
ということは、この亜空間が宇宙ってことになるな。》
そう考えて、《妙だな》と頭を掻いた。
《この外に地球があるなら、地球は宇宙よりも広いことになる。
でもそんなのはおかしい。地球は宇宙に浮かんでいるはずだから。》
何がなんだかわからなくて、への字に口を曲げた。
《去り際にヒントを言っていたな。
宇宙は泣いて、地球は笑うって。
そして宇宙が流した涙が、地球になったと。・・・・・分からない。》
昆布のように漂いながら、いつまで経っても答えが出ない。
優二が助けに来てくれないかと期待したが、全然そんな気配はなかった。
《困った・・・・どうすれば・・・・。》
別にここにいても死ぬわけじゃない。
でもここから出ないといけない理由がある。
俺の為でなく、友達の為に。
考えながら、ふわふわと漂い続ける。
・・・・その時、ふとある疑問が蘇った。
《そういえばどうして琴音さんは、陸翔君をあの廃村に連れて行ったんだろう?》
病院で浮かんだ疑問が、再び頭をもたげる。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・ん?」
今、ふと思うことがあった。
《・・・・守ろうとしたのか?この俺を・・・・。》
トリケラトプスは言っていた。
周りは宇宙人だらけで、人間なのは陸翔君と琴音さんだけ。
そしてそのことを知らないのは俺だけだと。
《あの二人は知っているんだ。みんなが宇宙人だってこと。
となると・・・・俺を守ろうとしたのか?人気のない廃村へ行くわけだから、悪い宇宙人に狙われないように・・・・。》
俺は恥ずかしくなった。
俺だけが真実を知っていると思っていたのに、俺だけが真実を知らなかったのだ。
《なんてこった・・・・・とんだ赤っ恥だ!一人相撲だ!俺は阿呆だ!》
頭を抱え、むう〜と悶える。
大きな星を見つめ、眩しく目を細めた。

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