微睡む太陽 第十六話 涙する宇宙 笑う地球(2)

  • 2017.05.20 Saturday
  • 13:37

JUGEMテーマ:自作小説

太陽はいつまで燃え続けるのだろう?
いちおう寿命はあるらしいが、何十億年も先のことだ。
その頃、俺は生きてはいないだろう。
遥か遠い未来、命溢れる地球は、ただの岩に変わるのだ。
・・・ちなみに地球も燃えている。
大地の下にはマントルが流れ、灼熱をたくわえながら、常に旅をしている。
しかし地球の炎は太陽とは違う。
太陽は自分で燃えているが、地球は過去の熱が残っているだけなのだ。
大昔、地球にたくさんの隕石が降り注ぎ、その炎が今も燃えている。
大地や海は、炎の上に乗っかる薄い皮のようなもの。
地球誕生から46億年が経って、ようやく皮膚が冷えてきただけなのだ。
しかしいつかは芯まで凍る。
自ら燃えることの出来ない地球は、常にエネルギーを放出し、寿命へと近づいているからだ。
・・・・今、俺は亜空間を漂っている。
トリケラトプスの宇宙人によって、ここへ閉じ込められてしまったのだ。
俺は自ら燃えることが出来ない。
このままここにいたら、いつかエネルギーが枯れ果てて、魂の芯まで凍り付いてしまうだろう。
目の前には大きな星があり、太陽のように輝いている。
直視できないほど眩しくて、思わず目を逸らした。
大きな星の反対側には、オーロラの幕が広がっている。
いや、星の反対側だけではない。
この亜空間全てを包み込んでいる。
それは七色に輝くヤマタノオロチのようで、美しくも恐ろしい怪物に思えた。
・・・・トリケラトプスの宇宙人は言った。
この亜空間を出るには、オーロラを超えるしかないと。
そしてあのオーロラは、宇宙と地球を隔てる壁らしい。
いったどうやったらあのオーロラを超えることが出来るのか?
大きな星に照らされながら、じっと考えた。
《ヒントはある。だけどヒントの意味が分からない。》
俺は思い出す。
トリケラトプスが言っていたことを。
目で見て、その手で触れられるものだけを信じるか?
それともまだ見ぬ遠い世界を信じるか?
宇宙は泣き、地球は笑う。
宇宙がこぼした涙が、地球になった。
・・・・分からない。
《なんなんだろうなあ・・・・。》
口をへの字に曲げながら、どうしたものかと悩んだ。
大きな星は、過剰なほど光を振り撒く。
誰に求められるわけでもないのに。
《・・・・もしこの星が消えたらどうなるんだろう?》
この亜空間は、宇宙に似た場所だ。
ああやって大きな星があるということは、どこかに地球に似た星があるかもしれない。
この亜空間は、本物の宇宙のように、無数の星々が輝いている。
だけど広がるオーロラのせいで、小さな星の光は見えなくなっていた。
・・・・いや、見えなくはないか。
見えづらいといった方が正しい。
強い光に紛れているだけで、消えたわけではなさそうだ。
俺はふわふわと漂いながら、地球に似た星がないか探した。
すると意外なほどあっさりと見つかった。
大きな星から少し離れた所に、地球によく似た星があったのだ。
青く、白く、緑に輝いている。
俺は手足をじたばたさせて、亜空間を泳いでみた。
・・・・どうにか進めるようだ。
でも水の中を泳ぐように、スムーズにはいかない。
スカスカの真空を、水のように掻くことは出来ない。
だけど進むことは進むので、地道にかんばり続けた。
そしてどうにか地球に似た星へ近づくと、驚くことが起こった。
《これは・・・・、》
地球もどきの星の表面に、七色の光が駆け巡ったのだ。
《これはオーロラだ!》
オーロラを宇宙から見ると、光のカーテンが星の上を走っているように見える。
この地球モドキにも同じ現象が起きていた。
磁石が引き合うように、俺はじっと目を寄せる。
星の上の部分、オーロラが走っている所。
そこはかつて俺が住んでいた、アイスランドという国がある。
幼い頃なので、あまり記憶はない。
鮮明に残っているのは、両親が殺された時のこと、そしてUFOと優二のことだけである。
あの時、オーロラが弾け、中からUFOが現れた。
・・・もしかしたら、この地球モドキにも同じことが起こるんじゃないか?
そう思って、噛みつくように凝視した。
オーロラは絶え間なく波打ち、もだえる蛇のよう。
その光は綺麗で神秘的だ。
だけど不気味で恐ろしくもある。
今にも地球を食い尽すのではないかと、獰猛ささえ感じた。
オーロラはしばらくうねり、そしてパチンと弾けた。
《あ・・・・、》
思わず声が出る。
なぜなら弾けたオーロラの中から、UFOが現れたからだ。
そのUFOはアイスランドへ向かい、すぐに上昇した。
そして地球モドキから飛び出して、俺のいる方へと飛んできた。
《・・・・・・・・。》
無意識に手を伸ばす。
いや、UFOの方が俺を捕まえようとしているのか?
・・・・・どっちか分からないが、俺たちの距離は縮まった。
その時、UFOの中が見えた。
窓の傍に二つの人影が立っている。
一つは琴音さん、そしてもう一つは陸翔君だった。
《なんで・・・・・。》
言葉を失う。
あの時、UFOで運ばれていったのは、優二ではないのか?
呆気に取られていると、また地球モドキからUFOが飛んできた。
《もう一つ!?》
また中を覗く。
そこには一つの人影が。
《優二!そんな!これはどういうことだ!?》
俺は震える、青くなる、漏らしそうになる。
《あの夜・・・・UFOは二つ来ていたのか?・・・・しかもなんで琴音さんと陸翔君が・・・・、》
二つのUFOは飛び去っていく。
そしてオーロラを超えて、亜空間から出ていった。
《おお!ここから出ていった!》
亜空間の空を見上げ、《やるなあ》と呟く。
《俺はこんなに困ってるのに、あっさりと出ていった。さすがはUFOだ。》
そこまで考えて、ピンときた。
《そうか!俺もUFOを手に入れればいいんだ!》
地球モドキを振り返り、またUFOが出てこないか待つ。
しかしいくら待っても出てこなかった。
《今ので最後なのか?・・・・いや、そんなはずはない!UFOはもっとたくさんあるはずだ!》
そう信じたけど、出て来てくれなかった。
でも俺は待つ。
UFOはもっとたくさんいるはずなのだ。
この広い宇宙から、たくさんの宇宙人が地球へ来ているはずだ。
だから待った。
ずっと待った。
そしてその甲斐あってか、またUFOが飛び出してきた。
《よし!》
俺は慌てて手を伸ばす。
するとUFOの方から近づいて来てくれた。
中に人影が見える。
なんとそこには、殺された両親が乗っていた。
《お父さん!お母さん!》
《勇作。》
《こっちへおいで。》
UFOの蓋が開いて、長いマジックハンドが出て来る。
俺はそれに捕まって中に入った。
《久しぶりだな勇作。》
《大きくなって。》
《・・・・・・・・・・。》
目が潤む・・・・言葉に詰まる。
目の前に死んだ両親がいるなんて、とても信じられなかった。
《幽霊になったの?》
そう尋ねると、二人とも頷いた。
《宇宙人のおかげでな。》
《今は宇宙を旅してるのよ。》
《そうか・・・・幸せそうでよかった。》
《勇作はどうだ?》
《幸せに暮らしてる?》
《そうだな・・・・よく分からないな。でも今は困ってる。ここから出られなくて。》
《勇作は昔から夢見がちな性格だったな。》
《ここじゃないどこかを見てるような目をしてたわ。》
《・・・・・・?》
《でもそれでいい。そうじゃなかったら、お前はとうに死んでたかもしれない。》
《あんな小さい頃に、目の前で私たちが死んで・・・・。普通ならショックで立ち直れないわ。》
《お前はここではないどこかを見ている。だから生きて来られたんだ。》
《でもね、自分が立っている足元は忘れないで。遠い世界を見ていても、今立っている場所を。》
《お父さん、お母さん、俺はここから出たいんだ。じゃないと友達が危険なんだ。》
《友達は大事だ。すぐ傍にある大事なものだ。》
《足元を見るって、そういうことよ。それを知った上で、勇作が歩く道を決めなさい。》
《ここじゃない遠い世界は宇宙そのものだ。果てしなく広いが、果てしなく寂しい。》
《だけど目で見て、手で触れられるものがあれば、寂しさは消えるわ。》
《宇宙が黒いのは、いつだって泣いているからだ。》
《地球が青いのは、宇宙が涙したから。この星には目に見える大事なものがある。
それを忘れない限り、笑っていられるわ。》
《空を見る道を選んでも、足元は大事にな。》
《お父さんとお母さんは、遠い宇宙の果てから見守ってるからね。》
長いマジックハンドが動いて、俺をUFOから降ろす。
《お父さん!お母さん!》
《じゃあ勇作、またな。》
《元気でね。》
《行かないでくれ!俺も一緒に連れてってよ!》
必死に追いかけるが、父と母は去ってしまった。
さようならと手を振りながら。
《・・・・・・・連れてってよ。》
みんなどこかへ去ってしまった。
陸翔君も、琴音さんも、優二も父も母も。
俺はどうしたらいい?
宇宙のような亜空間の中で、何をどうすればいい?
《みんな行かないでくれ!戻って来てくれ!》
その時、地球モドキからまたUFOが出てきた。
そして俺の前でピタリと止まった。
《・・・・・・・・・。》
中には誰も乗っていない。
ハッチが開いて、マジックハンドが出て来る。
俺はそれを掴んで中に入る。そして窓から外を見つめた。
《俺にもついに専用のUFOが・・・・・。》
飛び上がるほど嬉しくて、傍にあるレバーを握った。
UFOはヒュンヒュン飛び回って、飽きることなく俺を楽しませる。
蠅のように俊敏で、ハヤブサのように速くて、ハチドリのようにホバリングできる。
こんな乗り物はどこにもない。UFO以外には。
《これは俺のUFOだ!俺が飛ばすんだ!》
しばらく亜空間を飛び回って、《これなら・・・・》と頷く。
《みんなを追いかけられるはずだ。オーロラを超えられるぞ!》
UFOは超文明の産物、行きたい所があれば、どこへだって行けるはずだ。
俺は外に出たい。
地球に戻り、琴音さんと陸翔君を助けないといけない。
・・・・しかし、
《これ、どっちに行けばいいんだ?》
みんなはオーロラの外に出ていった。
だけど出て来たのは地球モドキからだ。
《この地球モドキにもオーロラがある。そして亜空間の周りにも・・・・。》
トリケラトプスは言っていた。
ここから出たいのなら、オーロラを超えろと。
でもどっちのオーロラを超えたらいいのか分からない。
外へ向かうオーロラか?
地球モドキへ降りるオーロラか?
俺は激しく迷った。
迷ったが・・・・・父と母の言葉を思い出し、行き先を決めた。
《地球モドキへ行こう。》
ここへ戻っても誰もいない。
だけど外へ行ってもいないはずだ。
なぜならここは亜空間。
本当の世界じゃない。
さっき出会った人たちは、きっと幻なのだ。
宇宙に似たこの空間、ここには何もない。
とても寂しい場所だ。
父が言った言葉、宇宙は果てしなく広いけど、果てしなく寂しい。
だから外へ出ても悲しみが広がるだけのような気がした。
でも地球モドキならばそれもないだろう。
ここは俺の知っている星だ。
兎羽山があり、廃村があり、銭湯があり、母の言っていた足元がある。
それはきっと、俺が立つべき場所なのだ。
宇宙が涙したのは、笑える場所が欲しかったからに違いない。
それが地球だ。
ここへ行けば、きっと・・・・・。
トリケラトプスが言ったことは全て信用は出来ない。
優二が悪い宇宙人かどうかは、まだ分からない。
だけど陸翔君と琴音さんには会わないといけない。
もしも悪い宇宙人が俺たちを囲んでいるのなら、俺はそれを見過ごすことは出来ない。
レバーを握りしめ、地球モドキへ降りていく。
目の前にオーロラが迫る。
獰猛なヘビのようで、思わず身構える。
でも進んでいく。
俺はここへ降りなければいけないのだ。
ここにこそ、俺の立つ足元があるのだから。
UFOはゆっくりとオーロラに近づく。
そして二つが交わった瞬間、眩い光が炸裂した。
それはヤマタノオロチのごとく荒れ狂い、亜空間を食い尽していく。
亜空間を覆っていたオーロラさえも、瞬く間に食い尽してしまった。
俺は目を閉じる。
瞼越しでも光が射して、眼球が焼かれそうなほどだ。
強烈な光は暴れ狂う。
でもじょじょに治まって、俺は目を開けた。
最初に飛び込んできたのは空。
それも薄い雲が広がる、晴れているのか曇っているのか分からない空だ。
その向こうには太陽がある。
薄い雲に遮られ、鈍く輝いている。
そして太陽のすぐ傍に、もう一つ太陽があった。
・・・・あれはいつか見た光景。
そう、おばさんが言っていた幻日だ。
どちらかが本物で、どちらかが幻。
宇宙か地球か?
宇宙人か人間か?
分かれる二つの太陽には、きっとそれぞれ異なるものが詰まっているはずだ。
本物はどっちか?幻日はどっちか?
あの日の光景を思い出し、「きっとこっちだ」と頷く。
空を見上げながら、幻日の方に手を伸ばした。

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