勇気のボタン〜タヌキの恩返し〜 第五十九話 タヌキと猫の大喧嘩(1)

  • 2017.06.23 Friday
  • 10:10

JUGEMテーマ:自作小説
スマホのアラームが鳴っている。
俺はもそもそと手を伸ばし、アラームを解除した。
服を着替え、マサカリの散歩に行き、霜の降りた川原を眺める。
家に帰ると、みんなで朝食を食べた。
いつもならワイワイとはしゃぐのに、誰も口を開かない。
空は晴れているのに、家の中は暗かった。
飯を食べ終えると、こがねの湯に電話した。
アカリさんが出て、今日は出勤できないことを伝える。
すると『また休みい?』とイライラした声が返ってきた。
でも理由を伝えると納得してくれた。
『たまきには去年の夏に助けてもらったからね。彼女の依頼で忙しいなら仕方ないわ。』
ありがとうございますと言って、電話を切る。
ほんとなら昨日言えばよかったんだけど、色々とありすぎて、つい忘れていた。
スマホをしまいながら振り開けると、動物たちが一列に並んでいた。
「今から行くんだろ?たまきのとこ。」
マサカリが言う。
「ああ。」
「じゃあ俺らも行くぜ。」
「分かってる。これがみんなでやる最後の仕事になるだろう。
だから・・・その・・・・・アレだ。頑張ってくれ。」
「無理してカッコつけんなよ。」
マサカリは動物たちを睨んで、「テメエら気合入れろよ!」と叫んだ。
「今度の仕事は危ないぜ。下手したら命を落として・・・・、」
「はいはい、さっさと行きましょ。」
「真っ先に死にそうなのはこのデブだよな?」
「もし何かあったら、俺は飛んで逃げる。後のことはよろしく。」
「その時は私も運んで。」
「イグアナは重いから無理だ。そこのハムスターなら行けるけど、でもどっちみち死ぬわけだからなあ。だから俺だけ逃げるわ。」
チュウベエは堂々と逃亡宣言をする。
みんなに罵られていたけど、でもまったく気にしてない。
「さあお前ら!いつまでも漫才やってないで、猫神神社に向かうぞ。」
「おお〜!!」
動物たちは勇ましく叫ぶ。
その後ろでマイちゃんも叫んだ。
「悠一君!私・・・・・戦うからね!」
「ああ。でも・・・・本当に大丈夫?」
「平気平気!この金印があれば、影のたまきさんにだって勝てるよ。」
「いや、それが心配なんだよ。もしまたあの時みたいに死にかけたら・・・・、」
「その時は悠一君を信じる。」
「え?」
「私が死ぬ前に、この金印を取ってくれるって。」
「マイちゃん・・・・。」
「今度は仕事は危険だよ?だからお互いに信じてなきゃ上手くいかない。
私は悠一君を信じるから、悠一君も私を信じて。」
「・・・・そうだな。ならマイちゃん・・・・戦いは頼むよ。」
「任せて!」
拳を握り、シュッシュとシャドーボクシングをする。
「じゃあ行くか。」
家を出て、みんなで車に乗り込む。
朝の早い時間は道が空いていて、スイスイ進んでいける。
みんな緊張した面持ちで、ただ前を睨んでいた。
しばらく走り、猫神神社に着く。
階段を上り、鳥居の前までやって来た。
「たまき〜!来たぞ〜!」
白い息を吐きながら、たまきを呼ぶ。
「お〜い!いないのかあ〜!?」
全然返事がなくて、「変だな」と首をかしげた。
「今日の朝来るって言っといたのに・・・・。どっかに出かけてるのかな?」
「しばらく待ってみようか。」
「そうだな。」
境内に入り、石段に腰掛ける。
スマホをいじったり、お喋りをしたり、緊張を誤魔化しながら待ち続けた。
「・・・・・来ないな。」
一時間ほど待ったけど、たまきは現れない。
「おかしい。」
立ち上がり、鳥居の向こうを見つめる。
「アイツは約束を破るような奴じゃないのに。」
ボリボリと頭を掻きながら、「もうちょっと待ってみるか」と戻った。
するとその時、マイちゃんが「これ・・・・」と何かを見つけた。
「どうしたの?」
「これ・・・・たまきさんの煙管じゃない?」
「ほんとだ・・・・昨日アイツが咥えてたやつにそっくりだ。」
「たまきさんって、煙管をポイ捨てするようなことしないよね。」
「しないよ。だいたいここはアイツの神社だし、自分で汚すようなことはしないだろ。」
「ならどうして・・・・、」
マイちゃんはじっと煙管を睨む。
すると胸の金印が光って、「熱ッ!」と叫んだ。
煙管を落とし、手をふーふーしている。
「だ、大丈夫!」
「うん・・・・。」
「まだ火種が残ってたのか。」
「ううん、そうじゃない。金印が光った後に熱くなったの。」
「・・・そういえば一瞬だけ光ってたな。でもなんで急に・・・・、」
そう言いかけたとき、モンブランが「こっち来て!」と叫んだ。
「どうした?」
「神社の裏が荒らされてるの!」
「なんだって!」
慌てて神社の裏に回る。
すると・・・・、
「なんだこりゃあ・・・・。」
山の木々が倒れ、地面が抉れていた。
「まるで爆撃でも受けたみたいだ。どうしてこんな事に・・・・・、」
呆然としていると、マサカリが「むう!」と唸った。
「臭いが残ってる・・・・。」
「臭い?」
「二つの臭いが地面に残ってる。一つはたまき、もう一つは・・・・、」
スンスンと鼻を動かし、「こりゃアイツのじゃねえか!」と叫んだ。
「これもう一人のたまきの臭いだぞ!」
「なにいいいいい!?」
マサカリは臭いを嗅ぎながら「間違いねえ」と頷く。
「あの野郎、ここに来てたみたいだぜ。」
「そんな・・・・だってアイツは九女御霊神社にいるはずだぞ!マイちゃんのお母さんに封印されて・・・・、」
そう言いかけて、ハっと口を噤んだ。
「・・・・・・・・。」
恐る恐る振り返る。
するとマイちゃんの顔が目の前にあった。
「あッ・・・・、」
「今なんて言ったの?」
「え、あ、いや・・・・・、」
「いま・・・・私のお母さんって言った?」
「・・・・・言ってない。」
「ウソ!言ったよ!」
マイちゃんはググっと顔を近づける。
《しまったあ・・・・・つい口を滑らせて・・・・。》
マイちゃんにはお母さんのことは言ってない。
あの手紙に言うつもりはないって書かれていたから、お母さんがこの世にいることは内緒なのだ。
「ねえ教えて。お母さんはまだ生きてるの?」
「い、いやあ・・・・それはその・・・・、」
「どこ?どこにいるの?」
怖いほどの目で睨んで、「ねえ?」と尋ねる。
「悠一、もう話すしかないんじゃない?」
モンブランが言う。
他の動物たちも頷いた。
「コマチだけ真実を知らないのは可哀想だぜ。」
「いや、でもなあ・・・・、」
「だけど言わないとコマチさんは納得しないわよ。そうなれば仕事も進まなくなるわ。」
「そうだけど・・・・、」
「もう誤魔化すのは無理だろ。お前のせいで。」
「そうそう、ほんとに間抜けなんだから。」
「コマチ、泣きそうだぜ?」
「・・・・・・・。」
なんてこった・・・・俺がアホなせいで・・・。
でも口走ってしまった以上、もう誤魔化せないのは確か。
俺は「分かったよ・・・・」と頷いた。
「マイちゃん・・・・実はね・・・・・、」
ゴクリと息を飲み、お母さんのことを話そうとした。
でもその時、俺の声を遮るように誰かが叫んだ。
「たまきさん!いますか!?」
神社の表の方から、大きな声が聞こえる。
「アイツが・・・・アイツが逃げちゃったんです!今朝社を見たら、どこにもいなくなっていて・・・・。」
それを聞いた俺は、「まさか・・・・」と唸った。
「アイツ・・・・また自力で抜け出したのか?」
抉れた地面を睨み、「ならこれは・・・・戦いの痕か?」と呟いた。
「アイツ・・・・社を抜け出してここへ来たんだ・・・・。そしてたまきと戦いになったに違いない!」
アイツはもう一人のたまきと一つになりたがっている。
そして神獣の力を手に入れて、彼への愛を全うしようとしている。
ならばきっと、ここで激しい戦いがあったに違いない。
「こうしちゃいられない!早くたまきを捜さないと!」
もしたまきが乗っ取られてしまったら、それこそ大変なことになる。
アイツは神獣の力を手に入れて、より手の付けられない怪物に・・・・。
「行こうみんな!たまきを捜しに!」
俺は慌てて駆け出す。マサカリたちもそれに続いた。
でもマイちゃんだけはその場に立ち尽くす。
カっと目を見開いて、ギュッと拳を握って。
その目からはスっと涙がこぼれていた。
「マイちゃん・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
どうして彼女が泣いているのか、俺には分かる。
なぜならさっき叫んでいた声、あれは間違いなくあの神主だからだ。
遠い昔に別れた母の声、死んだと思っていたのに、すぐそこまで来ている。
マイちゃんは立ち尽くし、ゴクリと息を飲んだ。
「・・・・・こうなったらもう隠せない。行こう。」
そう言って手を差し出す。
しばらく迷っていたけど、やがて俺の手を掴んだ。
俺はマイちゃんの手を引きながら、神社の表に回る。
そこにはあの神主がいた。
相変わらず死んでいるのか生きているのか分からないようか表情だけど、かなり焦っているみたいだった。
「ワラビさん!」
「ああ、悠一さん!大変です!もう一人のたまきさんが逃げてしまって・・・・、」
そう言いながら走って来て、ピタリと固まる。
「あ・・・・・、」
短く叫んで、目を見開く。
「・・・・・お母さん。」
「・・・・・・・・・。」
二人はじっと見つめ合う。
そして・・・・、
「お母さん!」
マイちゃんはダっと駆け出す。
ワラビさんに抱きついて、「うわあああああん!」と泣いた。
「死んだと思ってた!ずっと死んだと思ってた!」
わんわんと泣きながら、ギュッと抱きつく。
お尻から尻尾が生えてきて、嬉しそうに揺れた。
「うああああああ!お母さあああああん!」
「マイ・・・・・。」
ワラビさんもマイちゃんを抱きしめる。
うっすらと涙を浮かべながら「ごめんね・・・」と呟いた。
「会いに来れなくてごめん。」
「会いたかった!ずっと会いたかった!」
「私も会いたかった。でも・・・・それは出来なかった。だって私はもう死んでるから。」
そっとマイちゃんを離して、頭を撫でる。
「お母さんはもう死んでるの。だから・・・・生きている家族に会うことは出来なかった。」
「どうして!?こうして生きてるじゃない!」
「これは仮初の肉体。本当はとうの昔に死んでるのよ。」
「でもまだこの世にいるじゃない!だから・・・・もうどこにも行かないで!傍にいてよ!」
「それは出来ないの。死者は生きている者に関わるべきではないから。」
「でもッ・・・・・、」
「私が会い行けば、余計にマイやお父さんを辛くさせてしまうだけ。
本当なら・・・・二度と会うことはなかったはずなのに・・・・。」
そう言いながら俺を見る。
「マイが婚約したって聞いて、いてもたってもいられなくなった。
いったい相手はどんな殿方なんだろうって・・・・それをこの目で確かめたかったの。」
ワラビさんは小さく笑う。
マイちゃんの頭を撫でながら、「良い殿方だわ」と頷いた。
「優しくて、動物想いで、ちょっと気の弱い所はあるけど、でも芯は強い。
この方なら、マイを預けても大丈夫だわ。」
「ワラビさん・・・・。」
そんな風に言われて、嬉しくないわけがない。
マサカリたちはニヤニヤしながら俺を見上げていた。
「お母さん・・・・私は悠一君と結婚する。だから・・・・傍にいて。
私がお嫁さんになるところを、その目で見てほしい。」
「・・・・そうね。こうして会ってしまった以上、もう隠れることは出来ない。
マイが大事な人と結ばれる瞬間・・・・私も見てみたいわ。」
「お母さん!」
マイちゃんはまた抱きつく。
ワラビさんは幼い子供をあやすように、よしよしと頭を撫でた。
「マイ、嬉しいのは分かるけど、今は大事なことがあるでしょ?」
「・・・・うん。」
涙を拭い「たまきさんのことだよね?」と尋ねる。
「今日の明け方、いつものように社に祈りを捧げようとしたの。
でもまったくもう一人のたまきさんの気配を感じなかった。
もしやと思って、社の中を覗いてみたわ。そうしたら・・・・消えていた。
しっかりと封印しておいたはずなのに、どこにもいなかった。」
眉間に皺が寄って、不安そうにする。
「昨日の夜まではいたのよ。だからきっと逃げ出したんだと思って、辺りを探したわ。
でも全然見つからない・・・・。
カラスや野良猫にも手伝ってもらったけど、もう近くにはいないみたいだった。
だったら考えられることは一つしかない・・・・。」
「たまきの所へ向かったわけですね?」
俺はワラビさんに近づき、「どうやらここへ来ていたみたいです」と言った。
「やっぱり!」
「神社の前にこれが落ちていました。」
「煙管・・・・?」
「ええ。金印の光を受けて熱くなったので、邪悪な力が宿っていたんだと思います。
となると、これはもう一人のたまきが落としていった物でしょう。」
「・・・・・・・・・。」
「それに神社の裏が荒らされていました。ここでたまきと戦ったんだと思います。」
「そんな!ならたまきさんは・・・・本物のたまきさんは無事なんですか?」
「いえ、二人はここにいません。」
「なら・・・・いったいどこへ・・・・、」
「分かりません。今から捜しに行くところだったんです。」
ワラビさんの顔から血の気が引く。
元々死人みたいな顔だけど、さらに幽霊みたいになった。
「お母さん!」
「ああ・・・・そんな・・・・。私のせいで・・・・こんな大変なことに・・・。」
引きつった顔をしながら、「もっとちゃんと封印していれば!」と叫んだ。
「私が不甲斐ないせいで、もう一人のたまきさんを逃がしてしまった・・・・。
これでもし最悪な結末になったら、私はどう罪を償えばいいのか・・・・。」
「お、お母さん!大丈夫?」
ワラビさんはどんどん薄くなっていく。
陽炎のように揺らいで、今にも消えそうだった。
「しっかりして!」
「ごめんねマイ・・・・。これは霊力で作った仮の肉体だから・・・・気持ちが揺らぐと保てないの。」
「大丈夫だよ!私と悠一君で、あの二人を見つけ出すから!そして・・・・必ず依頼を果たす!」
そう言って「そうでしょ?」と俺を振り返った。
「困ってる動物を助けるのが動物探偵だもん。たまきさんだって動物だから、私たちが助けないと。」
「ああ、その通りだ。」
ワラビさんはもはや幽霊同然で、地面に足がついていない。
それだけ不安になっているんだろう。
「ワラビさん、ここは俺とマイちゃんに任せて下さい。」
「悠一さん・・・・・。」
「マイちゃんの言う通り、俺たちは困ってる動物を助けるのが仕事なんです。
それが普通の動物であれ、化け猫であれ。」
そう言ってマイちゃんを振り向くと、ニコっと頷いた。
「お母さん、私たちは今までにたくさんの依頼を解決してきたんだ。
だから今回だって必ず解決してみせる!」
「マイ・・・・・。」
「お母さんは心配しないで待ってて。必ずたまきさんを助けて帰るから。」
さっきまで泣いていたのに、今度はワラビさんを励ましている。
「マイ・・・・もう立派な大人になったのね。」
その顔は嬉しそうでもあり、ちょっと寂しそうでもあった。
「出来るなら・・・マイが大人になっていく姿を見たかった。」
手を握り、「お願い」と頷く。
「もう一人のたまきさんを見つけ出して。」
「うん!必ず!」
俺も動物たちを振り向き、「行くぞ!」と叫んだ。
「行くぞ!って言ったって、どこを捜すんだ?」
「そうよ。ここにもいない。九女御霊神社にもいない。他に心当たりはあるの?」
「え?いや・・・・それはあ・・・・・、」
「んだよ、勢いだけかよ。」
「場の空気に乗せられて、カッコつけてみたかったんだろ。」
「はあ・・・・こんなんで本当に捜せるのかしら?」
「・・・・・まあ・・・お前らの言うことはもっともだ。」
せっかく気合を入れようとしたのに、逆に萎れてしまう。
《コイツらの言う通り、たまきの居場所なんて分からない。
こうなったらもう・・・ウズメさんの手を借りるしか・・・・、》
そう思いかけた時、ワラビさんが「私も手伝います」と言った。
「え?いやいや、それは無理ですよ。今にも消えそうになってるのに。」
「でもこうなってしまったのは私の責任です。だから力にならせて下さい。」
そう言って、空に向かってパンパンと手を叩いた。
目を閉じ、お参りするみたいに一礼する。
するとたくさんの動物たちが集まってきた。
空からは鳥が、山の中からは鹿や猪が。
そして階段の向こうからは、たくさんの野良猫たちが。
「な、なんだこりゃあ・・・・。」
「私が呼んだのです。」
「ワラビさんが?」
「この動物たちにも手伝ってもらいましょう。」
ワラビさんは手を広げ、「化け猫を捜してちょうだい!」と叫んだ。
「一人は猫神、もう一人は禍神。二人の化け猫がどこかにいるはず。
もし見つけたら、すぐに私に知らせて。」
動物たちは頷き、一斉に散っていく。
空に、山に、そして街に。
「悠一さん。もし何か分かったら、鳥を飛ばせて知らせます。」
「ワラビさん・・・・大丈夫なんですか?顔色が悪いですけど・・・・。」
「平気です。娘とその婚約者が頑張っているのに、私だけじっとしていられませんから。」
ニコリと頷き、「行って下さい」と言う。
「あの二人を助けられるのは、悠一さんとマイだけです。」
「・・・・それはそうなんですが、でもどこを捜せばいいのか・・・・、」
当てもないのに、捜しようがない。
するとワラビさんは「これがあるじゃないですか」と金印を指さした。
「これはもう一人のたまきさんが大事にしていた物。そして彼女の愛する殿方の形見です。
これを使えば、彼女の元へ導いてくれるかもしれません。」
「この金印が・・・・?」
「マイ、ちょっとそれを貸して。」
ワラビさんは金印を持ち、強く握りしめる。
すると一瞬だけ眩く光った。
「今、この金印に力を込めました。」
そう言ってマイちゃんの手に返す。
「マイ、その金印を握りしめて、たまきさんを思い浮かべてみなさい。」
「うん。」
マイちゃんはじっと目を閉じる。
すると金印が光って、「熱い!」と目を押さえた。
「目が焼けちゃう!」
瞼を押さえながら、ゆっくりと目を開ける。
すると瞳が金色に染まっていた。
「マイちゃん、目が・・・・・、」
「え?目がどうかしてる・・・・?」
「金色だ。まるで力を解放した時みたいに・・・・。」
「ウソ!」
アイちゃんはパチパチ瞬きする。
ワラビさんはクスっと笑って「心配いらないわ」と言った。
「マイの中に眠ってる力が、瞳に集中しているの。
その状態でたまきさんを思い浮かべてみなさい。
きっと何か分かるはずだから。」
「う、うん・・・・。」
マイちゃんは眉間に皺を寄せて、ギュッと目を細める。
すると・・・・・、
「あああ!」
「どうした!?」
「見える・・・・・紫色の光が・・・・。」
「紫の光?」
「これ、きっとたまきさんの光だ・・・・。遠くに向かって伸びてる。」
そう言って俺たちの街がある方を指した。
「きっと向こうへ行ったんだよ。」
「なるほど・・・アイツの通った跡が見えるってわけか。」
「でも・・・・目が熱い!もう限界・・・・。」
金印から手を離し、ギュギュっと瞼を押さえる。
「これ・・・何度も使えない。目が見えなくなっちゃう・・・・。」
「無理しなくていいよ。とにかく光が伸びてる方に向かおう。」
俺はワラビさんを振り向き、「行ってきます」と言った。
「必ず連れ戻して来ますから。」
「たまきさんのこと、そして・・・・マイのことをよろしくお願いします。」
「任せて下さい。」
俺は鳥居に向かって駆け出す。
マイちゃんは「お母さん・・・」と見つめた。
「ここで待っててね。後で絶対に戻ってくるから。それで・・・・私がお嫁さんになる姿を見て。」
ワラビさんはニコリと頷き、「行ってきなさい」と俺に手を向けた。
「じゃあね、お母さん。また後で。」
俺たちは階段を駆け下り、車に乗り込む。
「光は俺たちの街へ伸びてたんだよね?」
「うん。でもそこから先は分からない。街まで戻ったら、またこれを使って捜すよ。」
「金印か・・・・。でも目は大丈夫?あんまり無理したらまた酷いことに・・・、」
「あと一回くらいなら平気だよ。」
「分かった。でも無理はしないでね。」
車を走らせ、街に向かう。
なんだか予想もしない急展開で、ちょっと混乱してきた。
それは他のみんなも一緒で、硬い表情をしている。
《たまき・・・・すぐ行くからな!今度は俺がお前を助ける番だ!》
陽が高くなり、車も多くなる。
信号待ちにイライラして、「クソ!」とクラクションを叩いた。

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