勇気のボタン〜タヌキの恩返し〜 第六十三話 戻る者と旅立つ者(1)

  • 2017.06.27 Tuesday
  • 11:20

JUGEMテーマ:自作小説
俺の腕に、綺麗な白猫がいる。
流れるような毛並みと、雪のように美しい体毛。
尻尾はフリフリと揺れて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
「イー・・・・・。」
ウットリした顔で呟く。
俺はギュッと抱きしめて、「ホワン」と言った。
「ごめんな、長い間一人ぼっちにしちゃって。寂しかったよな。」
頭を撫で、背中を撫で、喉をくすぐる。
ホワンはゴロゴロと喉を鳴らしながら、「会いたかった」と言った。
「ずっとずっと会いたかった。」
「うん。」
「またあの家に戻って、イーと一緒に暮らしたかった。」
「うん。」
「でもイーはどこにもいない。どこにもいなかった・・・・。」
目を開け、俺を見つめる。
「ずっとずっと寂しかった。こうして抱きしめてほしくても、思い出の中にイーがいるだけ。
だから私は捜した。きっとどこかにイーがいるはずだって。」
「だから会いに来たんだろ?生まれ変わった俺を見つけて。」
「・・・・嬉しかった。でも・・・・。会うのが怖かった・・・・。
素直になれなくて、猫神神社で再会した時も・・・・ひどいことをしてしまった・・・・。
だって私は・・・・悪い化け猫になってしまったから。」
ホワンは俺の腕から飛び降りて、人間に化ける。あの家にいた頃の姿に。
「イー・・・・ごめんなさい。私はずっと誤解していた。
イェンは素晴らしい人だった。彼女が来てくれたおかげで、あなたは短い間だけど幸せを手に入れた。」
「そんなことないよ。お前が傍にいてくれた間、俺はずっと幸せだった。
子猫の時に拾ってきてから、どれだけお前との時間が大事だったか・・・・。」
手を伸ばし、ギュッと抱きしめる。
「また戻って来てくれてよかった。ありがとう・・・ホワン。」
ポンポンと背中を撫でて、よしよしと頭を撫でる。
「イー・・・・・。」
ホワンは何度も「ごめんなさい」と呟く。
「イーの記憶を見て、私はとんでもない馬鹿だったんだって気づいた。
私は・・・なんてことをしてしまったんだろうって・・・・、」
「もういいんだよ。」
「イェンを殺してごめんなさい・・・・。傍を離れてごめんなさい・・・・。」
「いいよもう。こうして戻って来てくれた。それでいい。」
ギュっと抱きしめて、ホワンの目を見つめる。
「俺は駄目な飼い主だったな。お前だって苦しかったのに、何も出来なくて。」
「・・・・・・・・・。」
ホワンはしばらく甘えていた。
お尻からポンと尻尾が生えてきて、また猫に戻る。
「イー・・・・大好き。」
「うん。」
「ずっとずっとこうしていたい。」
「うん。」
「でも・・・・・私は行かなきゃ。」
「どこに?」
「ここじゃない世界。だってもう死んでるから。」
そう言ってニコリと笑った。
「祠の戦いの後、私は死んだ。遼斗から受けた傷が開いて、そのまま海の中に沈んで・・・・・。
でもどうしてもこれで終わりにしたくなかった。
だからまた会いに来たの。イーのことだけを考えて・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「強い執念のおかげで、死んだ後でもこの世にとどまった。
でもそれは・・・・間違いだった。
執念は怨念に変わって、私は悪魔のようになってしまった。
この世に留まる代わりに、化け猫ですらなくなっちゃったわ。」
可笑しそうに笑って、「もしあのままだったら・・・」と俯く。
「イーへの想いを遂げるどころか、あなたを殺していたかもしれない。
そして本当の悪魔になって、延々とこの世を彷徨っていたかも・・・・・。」
後悔するように首を振り、「でもそうならずにすんだ」と頷く。
「もう怨念はない。イーの記憶が、私を正気に戻してくれたから。」
俺の手から飛び降りて、じっと見つめる。
「ありがとう、イー。もう私を縛る物は何もない。」
「ホワン・・・・。」
「イェンへの誤解も解けたし、イーがどれだけ私を大事に想っていてくれたのかも分かった。
それに・・・・最後の最後で、また抱きしめてもらえた。
あのボロっちい家にいた頃みたいに、幸せな時間をもらえた・・・・・。」
ホワンはニコっと笑う。
背後に人間の姿が浮かび、同じように微笑む。
「あなたに拾ってもらえて本当によかった。一緒に暮らせて幸せだったわ。」
「待てホワン!まだ逝くな!」
俺は慌てて手を伸ばす。
でもその手はスルリとすり抜けてしまった。
「今のあなたは新しい人生を歩んでる。動物探偵、有川悠一として。
これからも、たくさんの動物を助けてあげて。」
ホワンはゆっくりと消えていく。
陽炎のように、幻影のように。
「さようなら、イー。」
「待てホワン!せっかく怨念が消えたのに、このまま終わりなんて・・・・、」
いくら手を伸ばしても、ホワンには届かない。
だんだんと薄くなっていて、この世から消えようとした。
《嫌だ!だってそんなの・・・・このままじゃホワンが可哀想過ぎる!》
胸が熱くなって、消えゆくホワンを掴もうとする。
・・・・するとその時、誰かが空から降ってきた。
真っ黒な着物を翻し、ホワンの前に立つ。
「たまき!」
俺に背中を向けたまま、じっとホワンを見つめる。
手を伸ばし、そっと抱き上げた。
「戻りましょ、一つに。」
消えかかったホワンを、強く抱きしめる。
するとパッと弾けて、たまきの中に吸い込まれていった。
「・・・・・・・・・。」
俺は呆気に取られる。
たまきは背中を向けたまま、ポンポンと自分の胸を叩いた。
「お帰り、もう一人の私。」
二つに分かれていたたまきが、今一つに戻った。
一瞬だけ紫に光って、大きな力を感じた。
たまきは振り向き、ニコリと笑う。
「悠一。」
「え?あ・・・・はい。」
たまきは射抜くような視線を向けてくる。
その顔は真剣そのもので、周りの空気まで針のように震えた。
「依頼を果たしてくれてありがとう。感謝します。」
ビシっと手足を揃え、深く頭を下げる。
「あ、いや・・・・・、」
「あなたに頼んでよかった。これで1000年の心配事が消えました。」
顔を上げ、真剣な目で見つめる。
その目はいつもと違う。
俺を叱る時、俺を諭す時、そして俺に勇気を与えてくれる時。
そのどれとも違った、今までにないまっすぐな目だった。
なんていうか・・・・そう、対等に見てくれているような・・・・そんな感じがした。
「見事な仕事ぶりでした。このお礼は必ずさせて頂きます。」
「い、いやいや!お礼なんてそんな・・・・。だって元はと言えば俺だって悪いわけだし・・・うん。
あの時もっとホワンの気持ちを考えてあげていれば・・・・、」
そう言いかけると、たまきは首を振った。
「今のあなたは有川悠一。イーではない。」
「でもイーは俺の前世で・・・・・、」
「前世は前世。例え魂が同じでも、生まれ変わったなら別の人間。」
たまきの声には迫力がある。
でもそれは俺に向けられた迫力ではなく、自分を戒めるものに聴こえた。
「私から生まれたもう一人の私。本来なら、私がケリを着けなければいけなかった。
なのに1000年もの間、アイツをほったらかしにしていた。いや、逃げていた・・・・。
そのせいで、生まれ変わったあなたにまで迷惑をかけてしまった。
本当に・・・・心からお詫び致します。」
そう言ってまた頭を下げる。
「その・・・・なんていうか・・・上手くいってよかったよ、うん。」
どう答えていいのか分からず、ポリポリ頭を掻く。
「あのさ・・・・ホワンはその・・・・救われたんだよな?」
そう尋ねると、たまきは少しだけ表情を動かした。
「あいつはお前の中に戻った。ということは・・・・救われたんだよな?
誤解も解けて、恨みも消えて、一つに戻ることが出来た。
だったら・・・・、」
そう言いかけると、たまきは俺の口を押さえた。
「むぐッ!」
「言ったはずよ、前世は前世。」
「・・・・・?」
「イー、イェン、ホワン、そして私・・・・この四人の因縁は、本当ならばあなたに関係のないことだった。
だから・・・・もう忘れて。」
「いや、でも気になるじゃないか。だってホワンは・・・・可哀想だった。
アイツはただ寂しかったんだ・・・・。居場所を失くして、大事な人も亡くして、長い間寂しがっていた。
だったら最後には救われてほしい!」
そう叫ぶと、たまきは「はあ〜・・・」と首を振った。
「ほんとに・・・・相変わらずのお人好しね、あんたは。」
いつもの顔に戻り、クスっと肩を竦める。
「前世のことなんて首を突っ込むことじゃないのに。」
「でも依頼したのはお前だぞ。」
「・・・・・そうね。偉そうなこと言える身じゃないわ。」
ちょっとだけ俯いて、「ごめんなさい」と言う。
「私のせいで、本当に苦労をかけてしまった・・・・。」
「いいんだよそんなのは。それより・・・・どうなんだ?ホワンは救われたんだよな?」
そう尋ねると、たまきは胸に手を当てた。
目を閉じ、じっと耳を澄ます。
「・・・・・・・・・。」
「たまき・・・・・?」
「・・・・・ありがとう・・・・。」
「え?」
「・・・・・それだけ聞こえたわ。」
「それだけって・・・ならもう消えちゃったのか?」
「いいえ、私の中に戻っただけ。これからはずっとここにいるわ。」
ポンポンと胸を叩いて、小さく微笑む。
「そうか・・・・。なら・・・・良かったんだよな?」
「これ以上ないくらいにね。」
「・・・・・・・・。」
「納得いかない?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、でもやっぱり可哀想だったなあって・・・・。」
「そんなことはない。私は救われた。」
「え・・・・?」
「本人が言うんだから間違いないわ。」
そう言ってニコっと頷く。
「・・・・そうか、そうだよな。ホワンはお前なんだ。ならお前が言うなら間違いないよな。」
アイツが救われたなら、それでいい。
これでようやく1000年の孤独から解放されたんだから。
きっとたまきの中で喜んでるだろう。
「さて、これでようやく1000年越しの心配事が消えた。」
たまきはホッとしたように言う。ポンと俺の肩を叩いて、「お疲れ様」と笑った。
「これでもう立派な動物探偵ね。」
「いやあ・・・まだまだ食えないよ。もっと依頼が来ないことには。」
「それはこれからの頑張り次第よ。道はもう開けた。アンタは間違いなく一人立ちしたわ。」
そう言って「う〜ん・・・」と背伸びをした。
「これで私も楽になる。」
「楽?」
「だってアンタって戦友が出来たから。」
「戦友?」
「もう師弟じゃないわ。肩を並べる対等な存在。」
「いやいや!お前と対等だなんて、まだまだそんな・・・・、」
「困ったことがあったら、ちょくちょく依頼させてもらうわ。」
「い、依頼を!」
俺は飛び上がって喜ぶ。
「お前が俺を認めてくれるなんて・・・・・。しかも仕事までくれるなんて・・・・、」
「嬉しい?」
「当たり前だろ!師匠からお墨付きをもらったんだぞ!喜ばない弟子がいるか!」
ヒャッホウ!と叫んで、「やるどおおおおお!」と叫んだ。
「俺はやる!いまこそ我が人生が始まる時だ!」
ピョンピョン飛び回って、ガバっとたまきに抱きつく。
「ちょっと・・・・、」
「ホワン!見ててくれ!たまきの胸の中から、俺の頑張りを!」
そう言ってじっと見ていると、パチンとおでこを叩かれた。
「人の胸をガン見しない。」
「ご、ごめん・・・・。」
「それとも・・・そういうお礼を望んでるのかしら?」
「へ?」
「別にいいわよ。1000年越しの心配事を解決してもらったんだから。
アンタがそういうことを望むなら・・・・、」
胸元を開いて、色っぽい目で見つめてくる。
「・・・・・・ゴクリ。」
目が釘付けになるけど、《イカンイカン!》と首を振った。
《何を考えてるんだ俺は・・・・・。そんなことをするくらいだったら、前世でホワンと結ばれればよかったわけで、アホか俺は!》
ガツ!っと頭を殴り、自分を戒める。
たまきはクスクス笑って、「冗談よ」と言った。
「じょ、冗談・・・・?」
「あら?がっかりした?」
「いやいやいや!別にがっかりなんて・・・・、」
「気をつけなさいよアンタ。」
「はい・・・?」
「あんた婚約してるんだから、他の女に気を取られてどうするの。」
「と、取られてなんか・・・・、」
「エロい目えしてたじゃない。」
「それはまあ・・・・男の性というか、本意ではないにしろ、やっぱり反応しちゃうというか・・・・、」
「まだチラチラ見ちゃって。」
「いやいや!そんなことは・・・・、」
「人生に誘惑は付き物。浮気したらコマチさんに捨てられちゃうわよ。」
可笑しそうに笑って、胸元を戻す。
「それに彼女には怖いお父さんがいるはず。もしコマチさんを泣かせるような真似をしたら・・・・、」
「・・・・・・・・・。」
モズクさんの顔が思い浮かぶ。
あの迫力、鉄みたいな拳・・・・・もしマイちゃんを泣かすようなことがあれば、多分俺は殺されるだろう。
「ま、まあ・・・・俺はマイちゃん一筋だから、うん。」
バシっと頬を叩いて、エロくなった顔を戻す。
たまきはクスクスと笑った。
するとその時、遠くの空から「悠一く〜ん!」と声がした。
「なんだ?」
空を見上げると、大きな狐がこちらに迫っていた。
恐竜以上に大きくて、尻尾が七本もある。
「ウズメさん!」
風を纏いながら、空を走ってくる。
頭の上にはマサカリたちが乗っていた。
「おお!みんな!」
俺は手を振る。
ウズメさんは少し離れた場所に下りて、ギラっと牙を剥いた。
「そこの化け猫!悠一君から離れなさい!」
龍のような尻尾を動かしながら、怪獣みたいに吠える。
「ひいいいいいッ!」
俺は思わずたまきの後ろに隠れる。
「悠一君!今助けるからね!」
ウズメさんは「グウウオオオオオオ!」と飛びかかる。
でも途中でピタリと止まった。
「・・・・・・あれ?」
首をかしげながら、不思議そうにする。
「あんた・・・・・たまき?」
「ええ。」
「ならアイツは・・・・・・、」
「ここよ。」
たまきはトントンと胸を叩く。
「悠一が見事に解決してくれたわ。」
「そ、そうなの・・・・・・?」
「私たちは一つに戻り、無事解決。ね?」
「え?あ・・・・ああ!もう解決解決!」
俺はコクコクと頷く。
ウズメさんはしゅるしゅると萎んで、人間の姿になった。
「よかったあ〜・・・・心配したのよ!」
ダダっと駆け寄って、「よくやったわ!」と俺の肩を叩く。
「アイツの怨念を晴らすことに成功したのね!」
「ええ。でもそれは俺の前世のかげなんです。イーの想いが伝わったから・・・・、」
「何言ってんの!悠一君が頑張らなきゃ、その想いが伝わることもなかったでしょ。」
ウズメさんは「よかったよかった」とバンバン叩く。
「さすがはたまきの見込んだ男!やる時はやるわね。」
「あ、ありがとうございます・・・・。」
肩が痛い・・・・ていうか折れるよ!
ウズメさんはニコニコ笑いながら、たまきを振り向く。
「たまきい〜・・・・よかったあ無事で。」
目が潤んで、ギュッと抱きつく。
「あんたが大怪我したって聞いて、慌てて飛んできたのよ!」
「ごめんね、心配かけちゃって。」
「なんで私に言ってくれないのよ!」
「だってあんた忙しいじゃない。それにこれは私の問題だし。」
「もう!友達なのに水臭い。」
ツンとおでこをつついて、グスっと涙ぐんでいる。
そこへマサカリたちもやって来て、「悠一!」と叫んだ。
「無事だったかこの野郎!」
「心配だったのよ!これからは誰に餌を貰えばいいんだろうって・・・・。」
「ほんとだぜまったく。まあ俺はもうじき逝くから関係ないけど。」
「俺もミミズを獲るから関係ないけど。」
「ちょっとアンタ達!少しは心配そうな顔しなさいよ!・・・・・まあ私も餌のことは不安だったけど。」
動物たちは「よかったよかった」と肩を抱き合う。
「お前らな・・・・・・心配事は餌だけかよ!」
「当たり前だろバッキャロウ!俺は一日六食食わないと死んじまうんでい!」
「これはもう翔子さんの家にお世話になるしかないと思ったのよ。せめて私だけでも。」
「ならみんなまとめてお迎えに来てもらおうぜ!あの世は極楽一度はおいでってな。」
「行ったら戻って来れないだろ。俺はミミズが食えなくなるなんて嫌だぞ。」
「そういえば朝から何も食べてないわ。悠一、そろそろ餌にしない?」
「・・・・お前らな・・・・・。」
こいつらは頼りになるのかアホなのか分からない。
ツッコむのも面倒くさくなって、プイっとそっぽを向いた。
でも大事なことを思いだし、「お前ら!」と叫んだ。
「マイちゃんは!マイちゃんはどうなった!?」
彼女だけここに来ていない。
「マンションから投げ落とされてたけど、まさか・・・・、」
「無事よ。」
モンブランが答える。
「タヌキのおじさんが間一髪で助けたから。」
「そ、そうか・・・・よかった。」
「でも怪我をしてるから、おじさんと一緒に霊獣の世界へ帰ったわ。」
「また無理してたからな・・・・。」
自分の光に焼かれて、手足が崩れていた。
それでも俺を助けようと、必死に戦おうとして・・・・・。
「ウズメさん!」
まだたまきに抱きついているウズメさんを振り返り、「俺を霊獣の世界へ連れて行って下さい」と言った。
「マイちゃんが心配なんです。無理して大怪我を負ってたから・・・・。」
そう言うと、ウズメさんは「いいわよ」と頷いた。
「私も心配なの。一緒に行きましょ。」
ウズメさんはまた巨大な狐に化ける。
そして尻尾を向けて、「乗って」と言った。
「すぐに向こうまで運んであげる。」
「お願いします!」
俺は尻尾にしがみつく。
でも「ちょっと待って」と飛び降りた。
「どうしたの?」
「アレを持っていかないと。」
俺はゴソゴソと草村の中を探す。
「・・・・・あった!」
金印。
これがないと、マイちゃんは人間の世界で生きていけない。
「待ってろよマイちゃん。すぐに会いに行くからな。」
金印を首に駆け、ギュッと握り締める。
すると・・・・・
「あれ?なんで急に・・・・、」
金印から光が溢れる。
黄金色に輝いて、熱を帯びていく。
「なんだ?いったいどうなって・・・・・・って、なんじゃこりゃあああああ!」
金印は金印ではなくなっていた。
黄金の輝きは失われ、ただの鉄みたいになってしまった。
「なんで!どうして!?」
振っても叩いても元に戻らない。
もう一度握りしめても、もう光らなかった。
「そんな!これ・・・・どうなっちゃったんだ?なんで急にただの鉄みたいに・・・・。」
呆然としていると、たまきが手を伸ばしてきた。
金印を手に乗せ、「これ、力を失ってるわ」と言った。
「え?」
「もう何の霊力も感じない。」
「そんな・・・・・、」
俺は呆然とする。
だってこれがなければマイちゃんは・・・・、
「悠一君、とにかく行きましょう。コマチさんの元へ。」
ウズメさんは尻尾を伸ばす。
俺は金印を睨んだまま「クソ!」と叫んだ。
《どうしてこうなっちゃったんだ!これがないとマイちゃんは人間の世界にいられないのに。》
焦る気持ちを抱えながら、ウズメさんの尻尾を掴む。
すると頭の上に乗せられて、「しっかり掴まっててね」と言った。
・・・・次の瞬間、ウズメさんは弾丸のように駆け出した。
風を纏い、空を走る。
向かうはこがねの湯。
その近くにウズメさんの稲荷神社があるのだ。
ここを通れば、別の場所にワープ出来る。
離れた神社や、霊獣の世界に。
《マイちゃん・・・・すぐ行くからな!》
鋭い風を受けながら、光を失った金印を握りしめた。

 

 

 

     ホワン(たまき)

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