勇気のボタン〜タヌキの恩返し〜 第六十五話 戻る者と旅立つ者(3)

  • 2017.06.29 Thursday
  • 14:06

JUGEMテーマ:自作小説

カモンが旅立った夜、俺は光雲和尚に電話した。
アイツを弔ってあげてほしいと頼んだのだ。
和尚は快く引き受けてくれた。
よかったら墓も立てようとまで言ってくれた。
お寺にハムスターのお墓・・・・なんと贅沢な。
きっとカモンも喜んでくれるだろう。
そういえば戒名も欲しがっていたから、それもお願いできないかと尋ねた。
『有川さんの頼みですからな、喜んで付けさせて頂きますぞ。』
俺はお礼を言って、明日には連れて行くと電話を切った。
カモンは小さな箱の中で眠っている。
大好きだった餌、それにホームセンターで買ってきた花を詰めて、綺麗にしてあげた。
カゴの中に付いているクルクルを外して、それも入れてあげた。
これ、かなりのお気に入りだったからな。
最近はめっきり使ってなかったけど、昔はよくこれで走っていた。
あ、ついでにこのブランコも入れてあげないと。
小さな箱にはギッシリ物が詰まって、その真ん中にカモンが眠る。
モンブランはずっと傍に張り付いて、悲しい目で見つめている。
マリナは潤んだ目をしながら、窓の外を見上げている。
マサカリはカモンとの思い出に浸るように、しんみりと座っていた。
チュウベエは「俺がボケたら、天国からちゃんとツッコめよ」と相変わらずだ。
みんなそれぞれの想いを抱えながら、別れの時を惜しんでいる。
俺は少し離れた場所に座って、その様子を眺めていた。
今日は有川家始まって以来の静かな日かもしれない。
・・・・時が経てば、みんな元気を取り戻すだろう。
そしていつもみたいにはしゃぐに違いない。
でもそこには一匹足りない。
いつもと同じ光景は、もう二度と戻って来ないのだ。
そう思うと、少し涙が出てきた。
目が潤んで、グイっと拭う。
さっきまで全然涙が出なかったから、少し不安だった。
俺、カモンの死を悲しんでないのかなって・・・・・。
静かな夜の中、ただ時間が過ぎていく。
マサカリは餌をねだらないし、モンブランは恋バナをしない。
マリナは窓際でウットリしないし、チュウベエは相方を失って漫才を出来ない。
俺は家具のない殺風景な部屋を見渡して、また涙を拭った。
するとその時、部屋のチャイムが鳴った。
立ち上がり、廊下の壁際に行く。
このマンションには良い物が付いている。
チャイムを鳴らしたら、室内にある液晶に外の様子が映るのだ。
今時当たり前のシステムなのかもしれないが、貧乏な俺にとっては無縁の代物だった。
誰が来たのかと液晶を覗き込むと、たまきが立っていた。
玄関に向かい、ドアを開ける。
「こんばんわ。」
たまきはニコリと微笑む。
「どう?気に入ってくれた?」
部屋を見つめて、クスっと首を傾げる。
「ああ、すごく良い部屋だ。俺なんかにはもったいないよ。」
「その割には浮かない顔してるわね?もしかして広すぎて落ち着かなかった?」
「いや、そうじゃないんだ。」
俺は部屋の中に手を向ける。
たまきは「お邪魔します」と上がる。
そして何があったのかをすぐに理解した。
「いつ?」
「俺がこっちに戻って来てすぐ。」
「そう。」
たまきはカモンの傍に行き、膝をつく。
目を閉じ、手を合わせ、弔いの言葉を呟いた。
「今まで悠一の力になってくれてありがとう。」
モンブランはグスっと潤んで、またわんわん泣き出す。
たまきはしばらく手を合わせてから、俺の方へやって来た。
「辛いでしょうけど、別れは避けられないもの。泣いてもいいけど、気を落とさずにね。」
「ああ・・・・。」
グイっと目尻を拭って、鼻をすする。
「ちょっと話があるの。いいかしら?」
そう言って隣の部屋を指差す。
動物たちを残して、二人で隣の部屋に向かった。
何もない部屋に、ほんのりと月明かりが射している。
たまきは窓際に立ち、「いい部屋でしょ?」と尋ねた。
「ああ、恐縮するくらい。」
「これはアンタが自分の力で手に入れたものよ。遠慮なく使って。」
そう言ってニコッと微笑んだ。
「さて、いきなりだけど本題を切り出すわね。」
真剣な顔になって、俺を睨む。
「悠一、あなたは今回の件で、知らなくてもいいことを知ってしまった。」
「・・・・・?どういうこと?」
「前世の記憶よ。」
とても厳しい声で言う。
俺は首をかしげた。
「何度も言うけど、前世は前世。魂は同じでも、イーとアンタは別人よ。
だから・・・・その記憶を消させてもらう。」
たまきの目が紫に光る。
妖しい輝きが全身を包み、俺に向かって手を伸ばした。
「前世の記憶なんて持つもんじゃない。そんなものを持っていたら、これからの人生で必ず支障をきたすわ。」
「・・・・俺の記憶を消すのか?」
「前世に関することだけね。他は覚えてるから大丈夫よ。」
「ホワンが救われたことや、お前の依頼を解決したことは・・・・、」
「残る。」
「なら・・・・イーとイェンのことは?」
「消えるわ。」
「・・・・・・・・・。」
「正確には、あの金印で見た記憶を消すだけ。
前世の追体験によって、あの記憶は自分の一部のように残ってしまったはずよ。」
「・・・・ああ。俺の人生の中で、実際に起きたことみたいに焼きついてる。」
「消すのはそれだけよ。現世において、アンタ自身の目と、耳で知り得たことは残る。だから怖がることはないわ。」
「だけどこれは俺の記憶だ。わざわざ消さなくても・・・・、」
「知らなくてもいいことなのよ。」
「でも依頼を解決するには、前世の記憶が必要だった。これがなきゃ・・・・、」
「もう終わった。」
「だけどお前からの依頼だぞ?お前が頼むから、俺はイーのことを思い出して・・・・、」
「それも分かってる。申し訳ないと思ってるわ。だからこそのこの部屋じゃない。」
そう言って広い部屋に手を向ける。
「あんたは一人前になったし、これからは私と肩を並べて仕事が出来る。
でもね、やっぱり前世の記憶なんて必要ないのよ。」
「・・・・・いや、これは消さない。」
「前世のことを覚えてるなんて、不幸でしかないのよ?今の人生を縛られることになる。」
「でも!これは忘れちゃいけないんだ!だって仙人が言ってたから。俺と藤井には・・・・、」
「呪いが掛かってるって?」
「・・・・・知ってたのか?」
たまきはクスっと頷く。
「あの金印に詰まっていた記憶は全て知っている。」
「そ、そうなの・・・・・?」
「以前にコマチさんが暴走したでしょ?あの時、私は彼女から金印を取り上げた。
その時にね、全部見えたのよ。イーの記憶が。」
「マジかよ・・・・・。」
「まるで激流のように、私の中に流れ込んできた。きっとイーが見せたんだと思うわ。」
「・・・・・・・・。」
「だから全部知っている。私に神獣としての素質がなかったことや、仙人が余計なことをベラベラ喋ったこともね。」
そう言って「あの爺さん、ホントお喋りなんだから」と顔をしかめた。
「今度会ったら、もうちょっと仙人らしくしろって言っとかないと。」
「なら・・・・なんで教えてくれなかったんだ?
あの金印に詰まった記憶を知っていれば、もう少し早くホワンを助けることが出来たかもしれないのに。」
「無理よ。言葉で言ったって、アイツは納得しない。
ギリギリまで追い詰められて、その時にイーの想いを知る必要があった。
そうすることで怨念が晴れるはずと思ったからね。
だけど事前にアンタに言ってしまえば、きっと言葉で説得しようとするはず。
そうなれば確実に依頼は失敗。だから黙ってたのよ。」
「・・・・全部、お前の計算だったのか?」
「怒ってる?」
「・・・・いや、強かな奴だって知ってるから、別に怒ってはないよ。
でもさ、やっぱりこの記憶は消したくない。
だって仙人が言ってたんだ。俺は前世の前世で、神獣を殺してしまったって。
悪意はなかったけど、でもそのせいで罰を受けることになった。
動物と話せる力を使って、一万の魂を救えって呪いを・・・・。」
俺は思い出す。
記憶の中で、仙人から聞いた話を。
今から二千年前、俺は中国にいた。
前世の前世の時の話だ。
その時、俺には恋人がいた。
藤井だ。
アイツも前世の前世で中国にいて、俺と一緒に暮らしていた。
ある時、俺たちの前に神獣がやって来た。
その神獣は炎の鳥で、いわゆる不死鳥ってやつだ。
不死鳥は500年に一度、生まれ変わる。
死んで、でもすぐに蘇って、それで永遠の命を保つのだ。
ではどうやって生まれ変わるかというと、死ぬ前に卵を残す。
そこから生まれたヒナは、あの世から転生した不死鳥。
新たな命ではなく、以前の不死鳥が再び命を吹き返すわけだ。
不死鳥は俺たちの前にやって来て、あることを頼んだ。
『もうじき卵を産むから、それを預かってほしい。』
卵の間は無防備なので、誰かに守ってもらう必要がある。
しかし誰でもいいというわけではない。
もし悪人の手に渡ってしまえば、そいつは永遠の命を手にいれることになるからだ。
この卵を食べてしまえば、そっくりそのまま不死鳥の力が手に入る。
だから預ける相手は慎重に選ばないといけない。
不死鳥は言った。
『お前たちなら大丈夫だろう。悪人でもないし、欲深いわけでもない。
腹が減ったからといって、焼いて食う間抜けでもないだろうし。』
そう言って、俺たちの前で卵を生んだ。
『羽化するまで三日かかる。それまでどうか頼んだぞ。』
不死鳥は火柱となって、そのまま消え去った。
俺たちは大事に卵を預かった。
人に知られてはまずいので、こっそりと家の中に隠しておいた。
だけどその晩、泥棒に入られて、卵を盗まれてしまった。
不死鳥の卵はとても綺麗で、ルビーのように輝いている。
こんな美しい物を、泥棒が放っておくわけがない。
俺たちは慌てて泥棒を追いかけた。
どうにか捕まえることはできたけど、でも卵は返ってこなかった。
なぜならこの泥棒騒ぎを聞きつけたお役人が、卵を奪いに来たからだ。
『これこそは不死鳥の卵!不死の命を得る秘宝ではないか。』
その役人は欲深いやつで、町の者たちからも嫌われていた。
権力をふりかざして悪さをするし、欲の為なら平気で人を殺すような奴だった。
俺たちは困った。
これはえらいことになったぞ・・・・と。
もしあの役人が卵を食べてしまえば、永遠の命を持つことになる。
そうなれば永遠に悪さをするだろう。
どうにか取り返したいけど、普通に行っても追い返されるだけ。
だったら屋敷に忍び込んで、こっそりと奪い返すことにした。
人気のない夜、俺たちは屋敷に向かった。
けど俺たちは忍者じゃない。泥棒のプロでもない。
どうにか侵入したはいいものの、あっさり見つかって捕らえられてしまった。
『賊めが。この卵を奪いに来たか!』
俺たちは処刑されることになった。
けどその前に、役人は俺たちの前で卵を持ってきた。
『いつ賊に奪われるか分からん。とっとと食ってしまおう。』
これみよがしに、俺たちの目の前で食べようとした。
家来に命令して、卵を割るように言う。
もし役人がこれを食べてしまったら、悪人が永遠の命を持つことに・・・・・。
俺たちは一瞬の隙をついて、卵を奪い返した。
家来が襲いかかってくるが、『これがどうなってもいいのか!』と卵を盾にした。
役人は『やめろ!』と家来を止める。
俺たちは屋敷を逃げ出し、深い山の中に逃げ込んだ。
三日・・・・その間だけ守ることが出来ればいい。
預かってから一日経っているので、あと二日、山の中に潜んでいれば・・・・。
そう思ったけど、そんなに甘くはなかった。
次の日、役人は大勢の家来を連れて、山狩りを行ったのだ。
これではいつ奪われるか分からない。
もっともっと深い山に逃げようと、ひたすら走った。
でもその時、恋人の足に矢が刺さった。
敵が追いついてきたのだ。
俺たちは周りを囲まれて、逃げ場を失った。
『さあ、卵を渡せ。』
手を向ける役人。
俺たちは目を見合わせて、コクリと頷いた。
そして・・・・・、
『ああ!何をする!!』
深い深い谷の底に、卵を投げ落とした。
慌てる役人、ざわつく家来。
そして俺たちも谷底に身を投げた。
どうせ捕まったら殺される。
卵を渡そうが渡すまいが、どの道死ぬことになる。
ならばこうするしかなかった。
不死鳥は死ぬが、悪人が永遠の命を持つよりはマシだ。
そして俺たちもまた、自分の命を絶つしかない。
神獣を殺してしまったという罪、そして捕まったら殺されるだけではすまないという恐怖。
散々に拷問を受けて、生き地獄の上に殺される。
それならば、ここで命を絶った方がいい。
俺たちは手を繋ぎ、また来世で会おうと約束して、谷底に沈んだ。
そして約束通り、来世で出会った。
イーという男と、イェンという女に生まれ変わって。
でも俺たちの魂は、呪いを受けていた。
谷底に沈んだあの日、死んだ俺たちの前に、霊魂となった不死鳥が現れた。
『お前たちを信じて預けたのに、生まれ変わることができなくなってしまった。』
俺たちは謝ったけど、不死鳥は許してくれなかった。
『人間が神獣を殺すなど、あってはならない大罪!如何な理由があろうともだ!』
不死鳥は真っ黒な炎に変わって、俺たちの魂を焼いた。
『神獣殺しの大罪、人が償うには重すぎる。その魂を焼き払い、二度と同じ間違いが起きぬようしてやる。』
俺たちはの魂は消えかかった。
灼熱と苦痛に焼かれて、拷問のような苦しみを受けながら。
でもそこへ、龍に乗った仙人がやって来た。
『待て待て、そこまでやるのは可哀想じゃ。』
仙人は不死鳥を説得してくれた。
この者たちはああするしかなかった。
悪人の手から卵を守るには、これしか方法はなかったと。
仙人が説得してくれたおかげで、不死鳥は怒りを鎮めた。
だけど完全には納得してくれなかった。
『仙人の顔に免じて、魂を焼き尽くすことは許してやる。だがその代わり、呪いを受けてもらうぞ。』
不死鳥は黄金色に輝き、俺たちの魂を包んだ。
『お前たちに特別な力を与える。その力を使い、一万の魂を救うのだ。
それが終わるまで、お前たちが結ばれることはない。』
俺たちの魂には呪いが刻まれた。
一万の魂を救うまで、何世代にも渡って続く呪いが・・・・。
この呪いを解くまで、俺たちは永遠に結ばれることはない。
なんと大変な難行・・・・・一万って・・・・・。
すると仙人がこう言った。
『これをくれてやろう。』
首からかけた金印を、俺たちの前に差し出した。
『人の身では、神獣の呪いを解くのは厳しいじゃろ?だからこれを授けよう。』
金印はとても綺麗で、不思議な光を放っていた。
『お前たちは1000年後に生まれ変わる。その時、どちらかの手にこの金印が渡るようにしておく。』
どうやって?と俺たちは尋ねる。
『そうじゃな・・・・生まれ変わったお前たちの先祖にでも預けるか。
そうすれば時を超え、その手に渡るじゃろう。』
仙人は『まあ頑張れ』と肩を叩く。
『お前たちは悪くない。ただ運がなかっただけじゃ。遠い未来、お前たちは結ばれて、必ず幸せになる。この儂が約束する。』
そう言い残し、『ほんじゃ』と去って行った。
不死鳥も羽ばたき、天に昇っていく。
『高い空から見ているぞ。一万の魂を救い、いつか呪いを解く日を。』
大きな翼を羽ばたいて、空に昇っていく。
そこには仙人が待っていて、並んで雲の中に消えていった。
・・・・・これが仙人から聞いた話、俺と藤井が受けた呪い。
それは来世まで続き、そのまた来世まで続いている。
もしもこれを忘れてしまったら、大変なことになる。
「俺はやらなきゃいけないんだ。一万の魂を救い、必ずこの呪いを解く。そうしないと藤井まで辛い目に・・・・、」
そう言いかけたとき、ガシっと頭を掴まれた。
「痛だだだだ!」
たまきは指を立てて、俺の頭を握り締める。
「ちょ、ちょっとッ・・・・・、」
「忘れなさい、全て。」
「待ってくれ!これを忘れたら、いったいいつ呪いが解けるか分からない!
だって一万だぞ!モタモタしてたら、今世で終わらない。来世まで続いて、そのまた来世まで続くかもしれないんだ!」
「いいじゃない。」
「え?」
「続いてもいいじゃない。」
「な、何言ってるんだ!こんな呪い、さっさと解かないと・・・・、」
そう言いかけると、たまきは首を振った。
「今を生きなさい。」
強い目で言う。
その眼光に圧されて、俺は黙り込んでしまった。
「何度も言うけど、前世は前世。そして来世は来世よ。今のアンタには関係ない。」
「関係あるだろ!だって呪いが・・・・、」
「ならその為だけに動物を助けるの?」
「え?」
「アンタは呪いから解放されたいが為に、動物探偵を続けるの?」
「そ、それは・・・・違うけど・・・・、」
「今までは呪いのことなんて知らなくても、その目に映る動物を・・・・・いいえ、困っている者を助けようとしてきた。」
怖い目が柔らかくなって、小さく微笑む。
「呪いなんて関係ないのよ。アンタ自身がそうしたいからそうしてきた。だったら・・・これからもそれでいいじゃない。」
「・・・・でも、それだったら俺と藤井はどうなる?呪いのせいで、永遠に結ばれないままで・・・・、」
「あら?コマチさんと結婚するんじゃないの?」
「へ?」
「彼女のこと愛してるんでしょ?」
「も、もちろんだよ!でもさ、次に生まれ変わったら、その時はどうなるか分からないだろ?だから・・・・、」
「だから今を生きるのよ。」
たまきはまた厳しい目になる。
「次はどうなるか分からない。だったら分からないことを気にしてもしょうがない。
今、目の前にあるアンタの人生を大事にしなさい。仕事を、マサカリたちを、そしてコマチさんを。」
ギュッと指を立てて、メリメリと食い込ませる。
「痛だだだだだだ!」
「前世は前世、来世は来世、例え呪いが続いたとしても、そんなの関係ないわ。」
「ちょ!頭が割れる!!」
「アンタは有川悠一という一人の人間。過去や未来に囚われず、自分の人生を生きればいいのよ。」
「ぎ、ギブ!ほんとに割れる!!」
「そうやって今を大事に生きていれば、いつか必ず光が射す。」
「あ・・・・ああああ・・・・・また・・・・仏さんと天使が・・・・、」
「今というこの時が一番大事だってこと、忘れないで。」
たまきがそう呟いた瞬間、俺の意識は遠のいた。
・・・・頭の中に、紫に光る手が入ってくる。
ゴソゴソと俺の記憶を探って、金印によって追体験した部分を掴んだ。
その瞬間、ふと痛みが治まった。
仏さんと天使は相変わらずで、舌打ちとラッパを投げていく。
・・・・・その時、どこかから俺を呼ぶ声がした。
『よう悠一、また死にかけてんのか。』
『・・・・カモン!』
俺の後ろから龍が飛んでくる。
仙人が乗っていて、その手の上にカモンがいた。
『あ、あんたは!?』
『がはは!1000年ぶりじゃな。』
『なんでアンタがここに!?』
『ジャンケンで勝ったから。』
『は?』
『そこに仏さんと天使がおるじゃろ?だから儂も混ぜておらおうと思って。』
『・・・・・・・・。』
『なんじゃその顔は!儂がお迎えだと不満なのか!』
『・・・・・いや、そいういうわけじゃないけど。なんかイラっとして。』
『ふん!相変わらず儂に敬意をもたん奴じゃな。』
『でも怒ってるぞ、仏さんと天使。』
仏さんは鬼のような顔でメンチを切り、天使はラッパでどついている。
『痛いじゃろうがこの!儂が勝ったんじゃから、儂がお迎えするんじゃ!』
仙人、仏さん、天使の喧嘩が始まって、ボコボコにどつき合う。
龍は迷惑そうな顔をしていた。
しばらく喧嘩が続き、仏さんと天使はキレたまま帰って行く。
仙人は鼻血と青痣でボロボロになっていた。
『はあ・・・・はあ・・・・こっちは年寄りじゃぞ。ちょっとはいたわらんかい・・・・・。』
鼻血を拭きながら、『そういうことじゃから』と言う。
『どういうことだよ・・・・。』
呆れていると、カモンが『よう』と頭に乗ってきた。
『お前も行くか?』
『行くわけないだろ!』
『冗談だよ、本気で怒るな。』
小さな手で、ペシペシと俺の頭を叩く。
『孫の顔が見れないのは残念だけど、まあ仕方ない。』
『・・・・・本当に行っちゃうんだな。』
『まあなあ・・・さすがにこれ以上寿命を伸ばしてもらうのは悪いし。
それにさ、お前はもう一人前なんだろ?なんたってたまきが認めてくれたんだから。』
『・・・・ああ。』
『なら安心して向こうに行ける。これからは桃源郷をエンジョイだぜ!』
ちっこい親指を立てて、ニコっと笑う。
『ほれ、もう行くぞい。』
仙人が手を伸ばすと、カモンはピョンと飛び乗った。
『まあそういうわけで、これでお別れだ。達者でな。』
『カモン!』
思わず手を伸ばす。
すると龍が威嚇してきた。
『うおッ!』
『言っただろ、もう時間なんだよ。』
『でも・・・・でも・・・・やっぱ寂しいよ!
もう二度と・・・・みんなで騒ぐことが出来ないなんて・・・・、』
『泣くな馬鹿。辛気臭いのは嫌だぜ。』
『・・・・・ごめん。』
グイっと目を拭い、顔を上げる。
すると龍は空に昇っていくところだった。
『カモン!』
『悠一!俺は幸せだったぞ!お前やみんなと一緒にいられて!』
高い空から、小さな手を振る。
また涙が出てきて、まっすぐ上を向くことが出来なかった。
『だからお前も幸せになれ!コマチやあのバカ共と一緒に、楽しく生きろ!』
『カモ〜ン!』
『じゃあな。いつかまた。』
龍は空の中へ消えて行く。
カモンは見えなくなるまで手を振っていた。
『カモン・・・・・。』
四年間一緒に過ごした、大事な家族。
幸せだったと言ってくれて、何よりも嬉しい。
アイツは立派に生きた。
与えられた命を全うし、桃源郷へと旅立っていった。
俺はカモンが消えた空に手を振る。
またいつか、きっと会えると信じて。
『またな、カモン・・・・・。』

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