勇気のボタン〜タヌキの恩返し〜 第六十六話 タヌキの恩返し(1)

  • 2017.06.30 Friday
  • 10:18

JUGEMテーマ:自作小説
カモンは旅立って行った。
幸せだったと言い残し、手を振りながら空に消えた。
俺はしばらく見送っていたけど、急に意識が朦朧とした。
何も見えなくなって、何も聴こえなくなる・・・・。
夜の海に抱かれているような、夜空を飛んでいるような、不思議な感覚だった。
しばらく真っ暗な中を漂う。
でもどこかから光が射してきて、「うん・・・・」と目を開けた。
「・・・・・・・・。」
辺りは明るくなっていた。
夜だったはずなのに、朝みたいに眩しい・・・・・。
すると誰かが目の前にやって来た。
「おはよう。」
「マイちゃん!」
「よく寝てたみたいだね。」
「寝る・・・?」
俺はベッドの上にいた。
布団がかけてあり、「なんで?」と顔をしかめる。
「それ、たまきさんが持って来たんだよ。」
「たまきが?」
「悠一君、疲れて寝ちゃったでしょ?だからたまきさんが持って来てくれたの。だって全然家具がないから。」
マイちゃんは殺風景な部屋を見渡す。
新しい部屋なので何もないのは当然だが、すごく寂しく感じる。
「俺、朝まで寝てたんだな。」
「もうお昼前だよ。」
「マジで!」
俺は慌てて飛び起きる。
「動物の餌やらないと!それにマサカリの散歩!」
「それもたまきさんがやってくれた。」
「アイツが・・・・?」
「悠一君の目が覚めたら、よろしく言っといてって。」
「そうか・・・・・。」
ベッドに腰掛け、「ああ〜・・・・」と頭を押さえる。
「なんか気分悪い・・・・。」
「大丈夫?」
「うん・・・・。けど変な感じなんだ。記憶の一部がすっぽり抜けてるような・・・・。
昨日ここへたまきが来た。それで・・・・何か話した後に、いきなり頭を掴まれたんだ。
その後気を失って、それで・・・・夢を見たんだ。なんか仙人みたいな爺さんが出てくる夢を・・・・・、」
そこまで思い出した時、頭の中に電気が走った。
「ああ!」
「どうしたの?」
「カモン・・・・・。」
そう、昨日カモンが旅立った。
帰って来たら、もうお迎えが来ていた。
そしてその後たまきが来て、それで・・・・・、
「・・・・そうだ、夢の中にカモンが出てきたんだ。龍に乗った仙人みたいな爺さんと一緒に。」
おぼろげに記憶がよみがえる。
詳しいことは思い出せないけど、でもカモンに会ったことだけは覚えている。
じっと頭を抱え込んでいると、「悠一君」とマイちゃんが呼んだ。
「辛かったね、カモンのこと。」
「・・・・・ああ。でも最後にお別れを言えたから。」
「え?だって悠一君が帰って来た時、カモンはもう・・・・・、」
「夢の中に出て来てくれたんだよ。それで・・・・幸せだったって言ってくれた。
俺やマサカリたちといられて、楽しかったって。」
あの時、カモンは本当に幸せそうな顔をしていた。
ただの夢だけど、でも・・・・本当に会いに来てくれたんだと思う。
最後のお別れを言う為に。
「俺にも幸せになれって言ってくれたよ。マイちゃんやマサカリたちと一緒に、楽しくやれって。」
「・・・・・・・・・。」
マイちゃんはじわっと涙ぐむ。
そこへ動物たちもやって来て、「それ本当か?」とマサカリが言った。
「アイツ・・・・本当にそう言ってたのか?」
「ああ。ただの夢かもしれないけど、でも俺は本当に会いに来てくれたんだと思う。」
「そうか・・・・。そう言ってくれるなら、悪い気はしねえよな。」
マサカリは嬉しそうに頷く。
モンブランは目が真っ赤で、一晩中泣いていたようだ。
「私にも会いに来てよ!カモンのバカ!」
マリナも切ない顔で「ほんとにねえ」と言った。
「でも・・・・これ以上悲しむのは良くないかも。だって泣いてたらカモンに馬鹿にされちゃう。
天国から毒舌が飛んでくるわ。」
チュウベエも「だな」と頷く。
「悠一、そろそろ弔ってやろう。あのちっこいネズミを。」
「そうだな。光雲和尚の所に行こう。」
カモンは昨日と変わらず、箱の中で眠っている。
綺麗な花と、好きだった物に囲まれて。
俺たちはみんなで手を合わせてから、そっと箱を閉じた。
そしてお寺に行って、和尚に御経を上げてもらった。
ちゃんと焼香も用意してあって、みんなで念仏を唱えた。
葬式が終わり、火葬に入る。
和尚の奥さんのヨモギさんが、庭に穴を掘って火葬場を作ってくれていた。
そこへカモンを寝かせて、薪を並べていく。
俺は先っぽの長いライターを持ち、付け火用の紙に火を灯す。
メラメラと燃え上がって、煙が昇っていった。
みんな神妙な顔で炎を見つめる。
やがて薪は燃え尽き、火が小さくなっていく。
棒でたたいて残り火を消し、穴の中の灰を掬った。
アイツは小さいので骨は残らない。
代わり灰を小瓶の中に入れた。
それを和尚に渡して、「お願いします」と頭を下げた。
「お任せ下さい。今日中に墓を作りますでな。」
お礼を言って、お寺を後にする。
帰りの車の中、誰も喋らなかった。
なんだか気が抜けたみたいに、みんな空を見上げている。
・・・しばらくこんな日が続くだろう。
でもいつか、また馬鹿みたいに騒げる日が来る。
その時、本当の意味でカモンを弔えるようが気がした。
寂しさを抱えながら、家に戻る。
すると部屋の前にたまきがいた。
周りには何かの業者らしき人達がいて、その人たちにお金を渡していた。
「毎度!」
そう言って業者はこちらに歩いて来る。
俺たちの脇をすり抜けて、エレベーターに消えていった。
「なんだあの人たち?」
じっと睨んでいると、「お帰り」とたまきが言った。
「お葬式は終わった?」
「ああ。ていうかさっきの人たちは?」
「引越し業者よ。」
「引越し・・・・?」
「家具を運んでもらってたの。」
そう言って「ほら」と中に手を向ける。
「・・・・・おお!」
タンス、テレビ、冷蔵庫、こたつ、ソファ、他にも色んな家具が揃っている。
動物たちは興奮して「すげえや!」と駆けこんだ。
「おい見ろ!このソファふかふかだぜ!」
「あ、このクッション私専用ね。」
「おい、これブルーレイ内蔵のテレビだぞ!しかもデカイ!」
「大きな冷蔵庫ねえ。いっぱい餌が入りそう。」
ウキウキしながらはしゃぐ動物たち。
俺は「これ・・・まさかお前が?」と尋ねた。
「ええ。」
「いや、悪いよこんなの。」
「いいのよ。些細なお礼。」
「些細って・・・・豪華過ぎるだろ。」
「そう思うなら、この部屋に負けないくらい仕事をすればいいわ。だってここは事務所でもあるんだから。」
たまきは玄関の傍にあるドアを開ける。
中には事務用の机と椅子、それにパソコンやプリンターが揃っていた。
「・・・・・すご。」
「良い感じでしょ?」
「良い感じ過ぎるよ・・・・・。なんでここまでしてくれるんだ?」
「アンタに期待してるから。これからも頑張ってくれるって。」
クスっと肩を竦めて「たまに私にも使わせてね」と言った。
「お前も?」
「いいでしょ別に。」
「いや、構わないけど・・・・・でもお前って普段は何してるんだ?ていうかどうしてこんなに金持ってるんだよ?」
「秘密。」
クスクス笑って、「まあそのうち分かるわ」と言った。
「さて、今日はこれで帰るわ。」
「なんか悪いな・・・・・色々と良くしてもらって。」
「いいのよ。また大きな仕事を持ってくるから。」
「え?」
「来週の火曜は空けといてね。依頼を持ってくるから。」
「ま、マジで!?」
俺は喜ぶ。
マイちゃんも「やったね!」と手を叩いた。
「悠一君!特大の顧客が出来たね!」
「ああ!たまきが常連になってくれたら、食いっぱぐれることもない!」
喜んでハイタッチする。
でも次にたまきが言った一言で、俺たちは固まった。
「今度は人食い狼の捕獲ね。」
「へ?」
「え?」
「ヨーロッパから渡ってきた魔獣なの。すでに何人かの犠牲者が出てるみたい。」
「ま・・・・、」
「魔獣・・・・。」
「魔獣は恐ろしいわよ。化け猫なんかより遥かに残忍だからね。きっと命懸けの仕事になるわ。」
遠い目をしながら、「無事に終わればいいけど」と呟く。
「まあそういうことだから、来週の火曜は空けといて。」
そう言って「それじゃまた」と去って行く。
「おい待てよ!なんだよそれ!?」
慌てて追いかけると、たまきはマンションから飛び降りた。
「うわあ!」
「きゃあ!」
俺は引きつる。マイちゃんは目を閉じる。
「・・・・・・・。」
恐る恐る見下ろすと、平気な顔で歩いていた。
「ここ九階だぞ・・・・・・。」
さすがはたまき。
いったいどこをどう見て、俺と対等なんて言ったんだろう?
一生頑張っても、アイツの足元にも及びそうにない。
「まあ・・・・いいか。仕事をくれるっていうんだから、頑張ればいいだけだ。」
人食い狼とは恐ろしいが、俺一人で相手にするわけじゃあるまい。
たまきがいればどうにかなるだろう。
「おい悠一!お前ここ座れよ!ふかふかだぞ!」
マサカリがソファの上で寝転んでいる。
モンブランはクッションを抱きしめ、チュウベエはテレビをいじっている。
マリナは冷蔵庫を見上げ、勝手に野菜室を開けていた。
「ほらほら、私たちも入ろ!」
マイちゃんに背中を押されて、新居に入る。
「すごいな・・・・。本当にこんな所に住んでいいのかな。」
そわそわして落ち着かない。
あまりに良い部屋、あまりに良い家具、それに仕事場まで用意してもらって、なんだか窮屈な思いがした。
「どうしたの悠一君?あんまり嬉しそうじゃないけど。」
「ちょっとね・・・・・。」
「・・・・ごめん、まだ喜べないよね。だって昨日の今日で・・・・・、」
「いや、カモンのことじゃないんだ。
なんていうのかな・・・・・・・なんて言うんだろう?」
なんか釈然としない。
だってこんなに贅沢なもの、本当に貰ってもいいんだろうか?
そりゃ嬉しくないわけじゃないけど、でもなあ・・・・・なんか違う気がする。
《たまきは報酬だって言ってたけど、これは明らかに報酬の範囲を超えてるよ。》
高級分譲マンションに、立派な家具がたくさん。
・・・・・・うん、やっぱりこれは報酬とは言えないよな。
「みんな!ちょっと聞いてくれ。」
先生みたいにパンパンと手を叩く。
「んだよ?この幸せを邪魔すんなよ。」
「そうよ。悲しいことがあったんだから、幸せに浸らせてよ。」
「おい悠一!チュタヤに言ってブルーレイ借りようぜ。この大きなテレビで見たい。」
「私は冷蔵庫の中をいっぱいにしたいわ!お肉、野菜、それにお肉!もうぎゅうぎゅうのパンパンにするの!」
みんなウットリしながら言う。
嬉しさ半分、悲しみを誤魔化すの半分ってところだろう。
「あのさ、俺から一つ提案があるんだけど。」
「このソファは俺のだぜ。」
「このクッションは私のよ。」
「これは俺のテレビだ。」
「この冷蔵庫は私の。」
「俺はどれもいらない。だからこの部屋を返そう。」
動物たちの目が点になる。
『このバカ何言ってんだ?』
そんな感じの目だ。
「おい悠一!そりゃいったいどういうことでい!」
「そうよ!せっかくもらったのに、なんで返すなんて言うの!?」
「俺はこれでテレビが見たい!」
「みんな!落ち着いて!悠一は悲しみでおかしくなっちゃったのよ。だから温かい目で見守ってあげましょ。」
動物たちはぎゃあぎゃあと喚く。
俺はもう一度手を叩いた。
「はい注目。」
「みんな注目してるってんだ!」
ぎゃんぎゃん吠えるマサカリを無視して、先を続けた。
「もう一度さ、あの町に戻らないか?」
「あの・・・・、」
「町・・・・・?」
みんな首を傾げる。
俺は「龍名町」だよと言った。
「前に住んでた町だ。」
「んなとこ戻ってどうすんだよ?」
「そうよ。前のボロいアパートはもうないのよ?」
「またどこか借りるさ。俺の給料で払える所を。」
「おいおい・・・・こんなに良い部屋なんだぞ?それを捨てるって言うのか?」
「せめてこの冷蔵庫だけでも持って行かない?」
「いいや、全部返す。」
部屋の鍵を握って、「これはいらない」と呟いた。
「こんなのもらったら、きっと俺はダメになる。
いくらたまきの気持ちだって言っても、これは俺の人生なんだ。
こんな贅沢がしたいなら、自分の手で掴んでいかないと。」
報酬は報酬でも、度を超えた報酬はもらわない。
それだってプロの流儀だろう。
青臭いかもしれないけど、でも俺はそう思う。
動物たちはいっせいに「え〜・・・・」とブーイングを飛ばす。
飛ばすけど、本気で嫌がっているようには思えなかった。
散々文句を言った後に、しょうがないかと納得してくれた。
「まああの町に戻るのも悪くねえかもしんねえな。
あそこの川原の土手は、お気に入りの散歩コースだし。」
「ていうかまたカレンに会えるわ!マサカリだってコロンに会えるじゃない。」
「う〜ん・・・・あの辺のミミズは美味いからなあ。悪い話じゃないか。」
「高い建物が少ないから、お日様もよく当たるしね。」
みんなうんうんと頷いて、「付き合ってやる」と偉そうに言った。
「なんでふんぞり返ってんだよ・・・・・。」
「だってお前のワガママだし。」
「ねえ?振り回される私たちの身にもなってほしいわ。」
「こいつはアホなんだよ。たまきからお墨付きをもらったって、それは変わらない。」
「悲しいわあ・・・・アホの飼い主なんて。・・・・あらヤダ!カモンみたいな毒舌が出ちゃった。」
「ならみんなOKってことだな。」
「まあな。でも引っ越すまではこの部屋を堪能しようぜ。」
「そうよ。それくらいならバチは当たらないでしょ。」
「おい悠一!チュタヤ行くぞ!ブルーレイでミミズを見るんだ。」
「それより肉よ!この冷蔵庫にいっぱい詰め込みましょう!」
うん、ちょっと普段らしくなってきた。
俺はマイちゃんを振り返り、「いい?」と尋ねた。
「え?」
「だって一年後にはマイちゃんだってここに住む予定だったんだから。
それがボロいアパートに変わるかもしれないけど・・・・・いいかな?」
「うん、それはいいんだけど・・・・、」
「どうしたの?」
「ちょっと・・・・気になることがあって。」
急に暗い顔になって、俯いてしまう。
「マイちゃん?何か悩んでるの?」
肩を抱きながら、顔を覗き込む。
するとサッと離れていった。
《なんだ・・・・?いつもなら骨が折れるくらい抱きついてくるのに。》
不思議に思っていると、マイちゃんは急に笑顔になった。
「ごめんごめん!私もちょっと寂しくなっちゃって。」
「寂しい?」
「だってカモンが亡くなったんだもん。それに・・・・、」
「それに?」
「ノズチ君、またどっか行っちゃったんだ。」
「・・・・・・ああ!そういえば忘れてた。」
影のたまきにホームランをかまされてから、まったく見ていない。
「アイツあれからどうなったの?」
「一度家に戻って来たんだけど、すぐ出て行っちゃった。『全部ホームランなんて悔しい!山で鍛え直す!』って。」
「ノズチ君らしいね。」
クスっと笑うと、マイちゃんはまた暗い顔になった。
《なんだ?いったいどうしたんだ?》
心配していると、頭にチュウベエが飛んできた。
「おい悠一!チュタヤ行くぞ!」
「今からかよ?」
「当たり前だろ。この部屋返すんだから、今のウチに楽しまないと。」
「へいへい・・・・付き合いますよ。」
チュウベエを乗せて出かけようとすると、「俺も行く!」とマサカリがついて来た。
「お前もかよ。何も買わないぞ。」
「べらんめえ!散歩だ散歩!」
そう言ってリードを咥えてきた。
「たまきのやつ、こんなモンも買ってくれたのか?」
マサカリは「これ気に入ってんだ」と笑う。
「ピンクだけどオシャレだ。これ付けてくれ。」
かなりお気に入りなようで、ウキウキしている。
《意外と派手な柄が好きなんだな、コイツ。まあこれくらいなら貰っといてもいいかな。》
カチっとリードを付けてやると、「私も!」とモンブランが飛んできた。
「お前もかよ!」
「たまにはみんなでお出掛けもいいじゃない。マリナも行こ。」
「そうねえ。今日はお日様も出てるし、外に出ようかしら。」
「へいへい、分かりました。そんじゃ揃ってお出掛けしますか。」
マリナを首に巻き、モンブランを抱え、頭にチュウベエを乗せ、手にはマサカリのリード。
なんちゅうフル装備だ・・・・・。
「おい悠一、スマホにアイツの写真があっただろ?」
チュウベエはパタパタと羽ばたく。
「アイツって・・・・カモンか?」
「あれ壁紙してやれ。遺影代わりに。」
「嫌な言い方するなよ・・・・・。」
スマホを取り出し、カモンのドアップの写真を壁紙にする。
チュウベエと喧嘩して、顔を蹴られて歪んでいる写真だ。
《これはこれで面白い写真だけど、遺影には向かないな。
もっと良いのがあったはずだから、落ち着いたら遺影を作ってやるか。》
画面の中のカモンに笑いかけ、「ほんじゃ行くか」と出かける。
「マイちゃんも一緒に行こうよ。」
そう言って振り返ると、「私はいい」と首を振った。
「どうして?こんなにいい天気なのに。」
「ええっと・・・・お留守番してる。」
「でも明日になったら帰っちゃうんだろ?そうしたら一年後まで会えないのに。」
「う、いや・・・・そうだけど・・・・ほら!水を差しちゃ悪いから!」
「水?」
「今日は悠一君とマサカリ達で楽しんできなよ!」
そう言ってニコッと笑う。
お尻から尻尾が出て来て、フリフリと揺れた。
《なるほど・・・・気を遣ってるのか。》
相変わらず優しい子だ。
「分かった。じゃあお留守番お願いね。」
「うん!みんなで楽しんできて。」
笑顔で見送ってくれるマイちゃん。
俺は「変な奴が来ても入れちゃダメだよ」と言った。
「平気平気。そんじょそこのら悪い人には負けないから。」
「それもそうだな。それじゃちょっと行ってくる。」
靴を履き、外に出る。
マイちゃんは「いってらっしゃい」と手を振った。
パタンとドアが閉じて、オートロックの音が鳴った。
「そんな気を遣わなくていいのに。俺たちは結婚するんだから。」
ドアを見つめ、「でもマイちゃんらしいか」と呟く。
マサカリが「行こうぜ」とリードを引っ張る。
モンブランは「コマチさんの為に何か買って来てあげましょ」と言う。
チュウベエが「良いミミズ獲ってやる」と頷き、マリナは「もうちょっとマシなもんにしなさいよ」とツッコんだ。
エレベーターを降り、外に出ると、一気に陽射しに包まれた。
「ほんとに良い天気だな。」
最近は大変なことばかりだったので、ホッと気持ちが和らぐ。
それはみんなも同じで、ホッとしたように表情が緩んでいた。
「気持ちいい〜・・・・・。」
「このままどこかでお昼寝したい気分ね。」
「それよりまずチュタヤだ!ミミズのブルーレイ借りるぞ。」
「生のやつ見とけばいいでしょ。もうちょっと面白そうなの借りましょうよ。」
《なんて立ち直りの早い奴らだ・・・・。でもまあ・・・それがコイツらのいいところか。》
俺はスマホを取り出し、画面の中のカモンを見つめた。
《こっちは楽しくやってるぞ。お前はどうだ?桃源郷で楽しくやってるか?
お盆でもお正月でもいいから、たまには帰ってこいよ。》
空を見上げ、旅立った家族を思い浮かべる。
動物たちのお喋りを聞きながら、街へと繰り出していった。

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