不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十話 古代の怨念(2)

  • 2017.07.22 Saturday
  • 09:58

JUGEMテーマ:自作小説

人形たちとの死闘は、いよいよクライマックスにさしかかっていた。
由香里君は人形の群れを相手にしている。
敵の数は圧倒的だが、今の彼女はティムティム女王からもらった古代服を着ている。
そのおかげでちょっとした超人なみにパワーを発揮していた。
銅像の拳を素手で受け止め、回し蹴りで遠くのビルまで吹っ飛ばしている。
そして茂美もまた活躍してくれていた。
ほんの一瞬の隙をついてUFOに入り込み、爺さんと婆さんを連れ出した。
歩道にちゃぶ台を置いて、三人仲良く茶を飲んでいる。
一見遊んでいるように見えるが、これでも立派に戦っているのだ。
ああやってほっこりと和ませることで、土偶の洗脳を解こうとしている。
そしてあわよくば自分が洗脳をかけて、UFOをわが物にしようと企んでいるに違いない。
恐ろしい女だ。
だがこういう場面では頼りになる。
由香里君、茂美がそれぞれの敵を引き付けてくれているおかげで、俺は一対一で土偶と向かい合うことが出来るのだから。
「土偶よ、もう終わりだ。」
『何を言う!追い詰められているのは貴様の方だ!』
「強がりを。周りを見てみろ。」
俺は周囲を指差す。
由香里君は人形の群れをなぎ倒し続け、茂美は爺さんと婆さんを丸め込んでいる。
このままいけば、土偶が一人になるのは時間の問題だ。
「大人しく人形塚に戻るんだ。そうすれば手荒な真似はしない。」
『ググ、人間風情が偉そうに。』
「そういうお前だって、元は古代人なんだろ?俺たちの仲間みたいなもんじゃないか。」
『吐かせ!誰が貴様らのような低劣な現代人と同じものか。
そもそも私は世界の覇権を握るはずだったのだ。ティムティムさえ邪魔しなければ・・・・。』
土偶は悔しそうに目を光らせる。
「大昔にティムティム女王と戦ったんだってな?」
『ああ。人形同士の戦争が起きた。しかしそれ以前にも奴とは因縁があるのだ。
まだ私たちが古代人だった頃に・・・・。』
「そういえばえらくティムティム女王を恨んでいたな。あれは人形戦争だけが理由じゃないのか?」
『違う。私と奴はそれ以前にも戦っているのだ。』
「ふうむ・・・お前はアトランティスの古代人。そしてティムティム女王はムー大陸の人。そのことと何か関係があるのか?」
『大ありだ。アトランティスとムーは仲が悪かったのだ。』
「そうなのか?同じようなもんだと思っていたが。」
『全然違う!ムー大陸の連中は、綺麗事が大好きな平和ボケした民族だ。
それに対してアトランティスは、いつだって革新的なことに挑戦する、闘志溢れる民族だった。
ゆえに二つの民族は対立関係にあったのだ。』
「平和を望む民族と、戦いを望む民族ってことだな?」
『誤解のないように言っておくが、アトランティスの民は決して野蛮人ではないぞ。
ただムー大陸の連中のように、頭が平和ボケしていないだけだ。』
「なるほど、要するにアトランティスの方から喧嘩を吹っかけたってことだな?」
『逆だ。先代のアトランティス王は、ムー大陸と友好関係を築こうとしていた。
いつまでもいがみ合っていても仕方ないと言ってな。
反対派も大勢いたのに、それを無視して政策をすすめたのだ。
ムーの連中は喜んで友好関係を築こうとしたが、私は我慢ならなかった。
だから先代の王を蹴落として、私が新たな王となったのだ。』
「なに!お前って王様だったのか?」
『そうだ。先代を失脚させ、私は王となった。そして友好条約の交渉を白紙に戻した。
だが反対派がデモを起こし、ムー大陸の連中からも批判の嵐だ。
せっかく仲良くなろうとしていたのに、余計なことしやがってと・・・毎日のように呪いの手紙が届いた。』
「そりゃそうだろう。誰だって平和な方がいいに決まっているからな。」
『私は嫌だ!平和を否定するわけではないが、ムーの連中と対等だなんて我慢ならない!
特にあのティムティムと同列に扱われるなんて・・・・。』
土偶から殺気が溢れる。
かなりご立腹のようだ。
「よかったら聞かせてくれないか?どうしてそこまでティムティム女王を恨む?」
『さっきも言ったはずだ。世界の覇権を握ろうとした私を、奴が邪魔したのだ。
それさえなければ、今頃この地球はアトランティスの物になっていたのに。』
また殺気が溢れる。
かなりの恨みを抱いているらしい。
「なあ?お前の怒りようを見ていると、ふと思うことがあってな。」
『なんだ?』
「お前の恨みはムー大陸とかアトランティスなんて関係なしに、もっと個人的なものじゃないのか?」
『なんだと?』
「もっと言うなら、ティムティム女王だけに恨みを抱いているように思える。
それも世界の覇権を邪魔されたからではなく、もっと別の理由からきているように感じるんだ。」
『知ったことを!お前に何が分かる?』
「話しぶりからそう思っただけさ。お前の恨みはティムティム女王だけに向けられている。
民族とかアトランティスなんて関係なしに、もっとプライベートな問題なんじゃ・・・、」
『黙れ黙れ黙れ!現代人風情が偉そうに!!』
また氷柱を浮かばせて、弾丸のように飛ばしてくる。
しかし今の俺には効かない。
なぜなら超能力が復活したのだから。
ティムティム女王からもらったエネルギーで、念動力を発動させる。
その威力は絶大で、たった一撃で氷柱の嵐を粉砕してしまった。
ついでに土偶も地面に叩きつけてやった。
『グブニュッ!』
メキョっと地面にめり込んで、『おのれ・・・』と這い出てくる。
『許さん・・・よくも私に傷を・・・・、』
土偶は頭が割れていた。
どこからか接着剤を取り出し、必死に塗り塗りしている。
『ここまで私をコケにしたのは、ティムティム以外ではお前が初めてだ。
もう絶対に・・・・許さないわあああああ!!』
「え?女の声?」
男とも女ともつかない機械的な声だったのに、急に若い女の声に変わった。
いや、若いよいうより、幼いといった方が正しい。
『人間よ!今こそ見せてやる!私の究極奥義を!!』
そう言って『ミャアアアアアア!!』と叫ぶ。
まるでサカリのついた猫みたいに。
すると遠い空からあの便器が飛んできた。
「それはアトランティスの秘宝の便器!」
『この技だけは使いたくなかったけど、もう我慢ならない。全てトイレの向こうへ流してやる!』
土偶はグルグルと回転する。
便器もグルグルと回転する。
そして『合体!』と叫ぶと、土偶と便器が本当に合体してしまった。
ていうか顔だけが便器になっている。
これは合体というより、たんに頭に装着しただけだ。
「なるほど、確かに使いたくない技だ。ものすごく恥ずかしい。」
『黙れ!この姿になったからには、お前らに勝目などない!』
便器から水が溢れてくる。
それはたちまち洪水となり、辺り一帯を飲み込んでしまった。
「おいコラ!どんだけ小便してるんだ!」
『小便じゃないわ!こんなに出るわけないでしょ!』
「じゃあこの水はなんだ!?」
『この便器の中は地下水脈と繋がってるの。いくらでも出てくるわよ。』
「便器の中から地下水が・・・・。ならば意外と綺麗というわけだな。」
よかった、衛生面を心配する必要はなさそうだ。
だがこのままでは街全体が飲み込まれてしまう。
そうなる前になんとかしなければ。
「・・・・瞬間移動で水だけ飛ばしてみるか。」
ティムティム女王から授かったこの力。
今まで移動にしか使わなかったが、物を運ぶのにも使えるかもしれない。
・・・もしそうだとしたら、水よりもこの土偶を飛ばした方が早いかも。
「物は試しだ、やってみるか。」
眉間に意識を集中させて、人形塚を思い浮かべる。
《この土偶を飛ばせ・・・・人形塚まで・・・・。》
頭に人形塚を思い描き、強く念じる。
しかし・・・・何も起きなかった。
「クソ!やっぱり無理か・・・・。」
『馬鹿め!私を瞬間移動で飛ばそうとしたな?』
「残念ながら不発に終わった。」
『不発じゃない。元々無理なのよ。瞬間移動は移動用の技、物を動かす技じゃないんだから。』
「そうらしいな。だったら移動の為に使おう・・・・お前を抱えてな。」
『何!?』
慌てる土偶。
俺は念動力で奴を引き寄せた。
『ああ、やめて!』
「一緒にお墓まで行こうじゃないか。」
『嫌よ!あんな山の中で眠りたくない!』
「便器をかぶって洪水を起こすよりマシだと思うぞ?」
ニヤリと笑い、引き寄せた土偶を掴む。
「じゃあ行こうか。」
『嫌だ!離せ!!』
土偶は暴れまくる。
何がなんでもあそこへは行きたくないらしい。
すると由香里君が「久能さん!」と叫んだ。
「こっちは片付きました!そっちはどうですか?」
由香里君は大勢の人形を全てノックアウトしていた。
いくら古代服の力があるとはいえ、さすがとしか言いようがない。
「久能さん、こっちも片付いたわ。」
茂美がUFOの中から手を振る。
「お爺さんとお婆さん、私の説得で洗脳が解けたわ。」
「新しい洗脳にかかったの間違いだろ?」
「しかも月間ケダモノのファンになってくれたの。これからは定期購読してくれるそうよ。」
「そうかい。まだ土偶に洗脳されてた方がマシかもな。」
あんな三流雑誌を定期購読させられるとは・・・茂美の話術は洗脳以上かもしれない。
「みんなのおかげで敵は減った。残りはこいつだけだ。」
暴れる土偶を「もう観念したらどうだ?」と宥める。
「仲間もUFOもいなくなったぞ?これ以上まだ戦うつもりか?」
『うるさい!私こそが世界の王に相応しいんだ!』
「まだそんなこと言ってるのか。もうお前には何もない。いい加減諦めるんだな。」
土偶、絶体絶命のピンチ。
悔しそうにしながらも、ガクッと項垂れた。便器の頭が。
『グググ・・・・ならばせめて・・・せめて憎き敵に鉄槌を・・・・。
貴様と・・・・ティムティムだけは道連れにしてやる!』
土偶から黒い煙が溢れる。
嫌な予感がして、急いで瞬間移動しようとした。
しかし・・・間に合わなかった。
土偶から溢れる黒い煙は、モクモクと人の形に変わっていく。
そして・・・・、
「なんてこった・・・お前も美少女だったのか。」
土偶はなんとも美しい少女へと変貌した。
『私は32代目アトランティスの王、タムタムであるもす!』
タムタム王はなんとも勇ましい少女だった。
キリっとつり上がった目、まっすぐ通った鼻筋、燃えるように真っ赤な髪はお団子に結ってある。
右手にはコウモリの形をした杖を握っていた。
そして楊貴妃と小野小町を足して、2で割ったような格好をしていた。
「これが土偶の正体か。でもタムタムって名前はなんとも卑猥な・・・・、」
『てい!』
「痛ッ!」
『誰が金玉もす!』
「え?」
『貴様、今こう考えたもす?金玉・・・チンタマ・・・タマタマ・・・・タマタム・・・・タムタムと。』
「お前も心が読めるのか!?」
『表情で分かるもす!天罰!!』
「ぎゃああああ!!」
コウモリの杖から雷を落とされる。
宇宙服がなければ死んでいただろう・・・・。
《古代人たちはどうしてこうも乱暴なんだ・・・・。》
プスプスと煙を上げながら、チリチリになった髪を撫でる。
「大丈夫ですか!?」
由香里君が駆け寄ってくる。
「ああ、どうにか・・・・。」
「私も一緒に戦います!」
そう言って拳を握る。
しかしタムタム王は杖から鎖のような物を伸ばして、由香里君を縛り上げてしまった。
「ああああああ!」
「由香里君!」
『こんな小娘に用はないもす。どっか行ってろ!』
ブンっと杖を振って、そのまま遠くへ投げ飛ばしてしまう。
「久能さああああああ・・・・、」
「由香里くうううううん!」
ベーブルースのホームランのごとく、彼女は景色の彼方へと消え去ってしまった。
「貴様ああああ!」
怒りが燃えて、眉間に熱が集まる。
今までで最高のパワーを使って、念動力を発動させた。
「もう許さんぞ!このまま人形塚まで弾き飛ばしてやる!!」
眉間に集まった熱を解放する。
タムタム王の周囲の空間が歪んで、凄まじい衝撃波が起きた。
「うおおおッ・・・・、」
あまりの威力に俺自身が吹っ飛ぶ。
「どうだ!このパワーなら人形塚のある山まで吹っ飛んだだろう!!」
『残念ながら無理もす。』
「ぬお!」
いつの間にかバックを取られていた。
「まさか・・・お前も瞬間移動が?」
『この姿になれば可能もす。』
「そんな・・・だったらどんな攻撃もかわされてしまうじゃないか!」
『今の私は無敵もす。だけど残念ながら、この姿になるにはすべてのエネルギーが必要もす。
私はもう・・・・・、』
そう言って悲しそうに目を伏せる。
『だけどお前とティムティムだけは道連れにしてやるもす!』
杖を掲げ、怪しげな文字を飛ばしてくる。
それは俺の股間に張り付いて、えも言えぬ快感が走った。
「うおおおお!なんだこれは!?」
『お前のパワーの源は煩悩にあるもす。だから股の間が枯れ果てればどうなるか?』
「ま、まさか・・・・、」
『種無しになるもす。』
「やめろおおおおお!!」
命懸けの戦いの最中だというのに、何度も絶頂を迎えてしまう。
恥ずかしいやら情けないやら・・・。
いや、そんなことよりもだ!
このままでは種無しになってしまう。
それだけはなんとしても避けないと!
「茂美さん!手を貸してくれ!」
「ごめんなさい、今忙しくて。」
彼女は爺さんと婆さんに定期購読の契約書を書かせていた。
「そんなモンは後にしろ!」
「ダメよ。契約は取れる時にとっておかないと。でないと後からキャンセルなんてことになりかねないわ。」
「そりゃあんたの雑誌ならそうなるだろうな。でも今は俺を助けてほしいんだ。でないとい種無しになってしまう。」
「そんなこと言われてもねえ。だってそのタムタム王って人、無敵なんでしょ?だったら私ごときが太刀打ちできる相手じゃないわ。」
そう言って「じゃあ次はここにサインを」と勧めていた。
「こちらが五年分、こちらが十年分、こちらが生涯分の定期購読になります。
今ご契約いただきますと、亡くなられた後も墓前にお供えして・・・・、」
「死んだ後に読めるか!」
ダメだ、こいつは当てにならない。
この商人魂は素晴らしいが、今は発揮してほしくなかった。
『ぬふふ、お前はもう終わりもす。種無しになるもす。』
「嫌だ!」
『きっとあの小娘にも嫌われるもす。』
「ゆ、由香里君にも・・・?」
『だってあの小娘、お前に好意をもってるもす。出来るなら一生一緒にいたいと思っているもすよ。』
「そんなまさか。」
『私は心は読めないもすが、感情を読み取ることはできるもす。あの小娘、間違いなくお前に惚れているもす!』
「・・・由香里君が・・・俺に・・・・、」
『しかしお前は種無しになってしまうもす。そうなれば・・・・どうなるもすかなあ?』
なんとも嫌味な顔で笑いやがる。
いや、それよりもだ。
由香里君が俺に惚れていたなんて・・・。
《なんてこった・・・・全然気づかなかった。》
俺はバカだ、マヌケだ、ウスラトンカチだ。
《由香里君!それならそうとどうして言ってくれない!?
俺はもうじき種無しになってしまうというのに・・・・。》
もっと早くこのことを知っておけば、彼女と○○したり××したり、○○○を×××しながら、○○できたというのに!
しかし種無しになってしまえば、それらの行為も虚しくなる。
《クソ!このまま種無しになってしまうのか!》
『お前・・・この期に及んでまたイヤらしいこと考えてるもすな。』
はあっとため息をついて、『呆れた煩悩もす』と首を振られた。
『ていうか本当ならとうに種無しになっているはずもす。なのに・・・・お前は何回イケば枯れるもすか!!』
「そんなこと言われてもだな・・・・、」
『いい加減こっちのパワーが限界もす!』
「俺もけっこう辛くなってきたところだ。このままいけば、一時間後には確実に枯れ果てて・・・・、」
『こっちのエネルギーがもたないもす!』
ブツブツ言いながら『いったいどんな夜を過ごしてるんだか・・・』と呆れられた。
『もういいもす。このままではティムティムに復讐する力がなくなっちゃうもす。』
「おお、なら許してくれるのか?」
『種無しは勘弁してやるもす。その代わり・・・・お前の性癖を変えてやるもす!』
「な、なんだと!?」
タムタム王は杖を掲げる。
そして『コックローチ、コックローチ・・・・』と怪しげな呪文を唱え始めた。
と、次の瞬間!
どこからか不気味な音が響いてきた。
《これは・・・・虫の羽音か?》
『探偵、久能司!』
「は、はい!」
『お前の性癖を変化させるもす!』
「ど、どんな風に・・・・?」
『ゴキブリに欲情するようになるもす。』
「やめろおおおおおお!!」
考えただけでもおぞましい・・・・。
そんな性癖になるくらいだったら、まだ種無しの方がマシだ!
『ぬふふ、いい顔で焦ってるもすなあ。』
「頼むからそれだけはやめてくれ!」
『嫌もす。』
「だっていくらなんでもそりゃないだろう?これからゴキブリしか愛せなくなるなんて・・・・、」
『愛は人間にも感じるもす。しかし性欲はゴキブリにしか向かないようになって・・・・、』
「それが嫌だって言ってんのさあああああ!!」
タムタム王は『憐れな奴もす』と嘲笑う。
『来い!コックローチキング!!』
虫の羽音が近くなる。
「これ・・・まさか・・・。」
背中に冷や汗が流れる。
羽音がする方を見上げると、人の倍はありそうな巨大ゴキブリが飛んできた。
「ひいいいやああああ!」
ショックのあまり気絶しそうになる・・・・。
『こいつは私のペットもす。その名もコックローチキング!略してコロチン!』
「名前なんてどうでもいい!そいつを近づけるな!」
『お前はこいつと合体するもす。』
「嫌だ!絶対に嫌だ!!」
『そうすれば頭から触覚が生えて、脂ぎった艶々の身体になるもす。』
「やめろ!」
『そして雌ゴキブリのフェロモンにしか欲情できなくなるもすよ。』
「そんなの死んだ方がマシだ!!」
なんて恐ろしいことを考えつくのか。
今まで出会った中で最悪の敵だ・・・・。
俺は念動力を使い、巨大なゴキブリを潰そうとした。
しかし思いのほか頑丈で、大したダメージを与えられない。
『ぬふふ、コロチンはそんなことでは死なないもす。』
「く・・・・。」
かなりのピンチだ・・・・。
しかしまったく手がないわけじゃない。
瞬間移動を使えば逃げることは出来るのだから。
だが・・・・そんな事をすれば、由香里君やオカルト編集長を見捨てることになる。
最悪オカルト編集長は置いていってもいいが、由香里君を残して逃げることだけは出来ない。
「・・・このまま・・・ゴキブリにしか息子が反応しなくなってしまうのか。」
もしそうなったら、俺はどう生きればいいのだろう?
部屋に出て来るゴキブリを見て、胸がトキメクのだろうか?
もしそうなったら、ゴキブリのエロ本を読んで興奮するのだろうか?
いや、そもそもそんな本は売っているのだろうか?
《・・・・図鑑・・・か。昆虫図鑑なら多少はゴキブリの写真が・・・・、》
そんなことを悩んでいる間に、コロチンの触覚に捕まってしまった。
「うおぽおおおお!」
目の前に巨大ゴキブリが迫る。
黒光りした身体、長い触覚、小さな毛に覆われた足。
そして若干コオロギに似た、逆三角形の不気味な顔。
俺は失禁した。
《もうダメだ・・・・俺はゴキブリ相手にしか息子が反応しなくなるんだ・・・・。》
久能司、ここに人間をやめる。
もしゴキブリに欲情するようになってしまったら、茂美に頼んでそういう雑誌を作ってもらうしかない。
・・・そう諦めかけたとき、またまた股間が熱くなった。
「なんだ?」
目を向けると、またしても息子からティムティム女王が召喚された。
「女王陛下!」
『最悪だしょ・・・・またこんな場所から・・・・。』
げんなりするティムティム女王。
彼女は南極に帰ったのではなかったのか?
「ティムティム女王・・・どうしてまたそんな所から?」
『ちょっとお届け物を。』
そう言って『よいしょ』と大きな荷物を下ろした。
「それは?」
『見れば分かるだしょ。』
「マネキンだな。」
南極からわざわざこんな物を持ってきたらしい。
《いったいなぜ?》
不思議に思っていると、タムタム王がいきなり泣き出した。
『モリモリ・・・・・。』
「モリモリ?」
『そんな・・・・どうしてこんな所に貴女が・・・・。』
口元を抑え、『モリモリ!』と抱きつく。
「なんなんだいったい・・・・。」
呆気にとられていると、ティムティム女王が『てい!』と杖を振った。
するとコロチンは『あうふ!』と叫んで、遥か遠くの空まで吹き飛ばされた。
『ゴキブリがペットだなんて・・・相変わらず趣味が悪い奴だしょ。』
はあっとため息をついて、タムタム王を見下ろす。
『タムタム、もう終わりにするだしょ。』
『黙れ!お前が・・・・お前がモリモリを奪いさえしなかったら・・・・、』
『奪った覚えなんかないだしょ。そいつが勝手に私の所へ来たんだしょ。』
『嘘を言うな!モリモリは・・・私の親友だったのに!!』
大声で『うわああああああん!』と泣き崩れる。
《なんなんだいったい・・・・。》
呆然としながら見つめていると、「久能さ〜ん!」と声がした。
「由香里君か!?」
街の向こうから由香里君が走ってくる。
遥か彼方まで吹き飛ばされたのに、自力で戻ってくるとはさすがだ。
「はあ・・・はあ・・・大丈夫ですか?」
「こっちのセリフさ。よく無事だったな?」
「空手やってますから。」
「ふむ、何の答えにもなっていないけど、とにかく無事でよかった。」
「それより・・・どうしたんですかこれ?なんかよく分からない状況になってますけど。」
マネキンを抱きしめるタムタム王。
先ほどとは打って変わって、子供のように泣きじゃくっている。
いったいこのマネキンはなんなのか?
モリモリとは誰のことなのか?
謎が謎を呼ぶが、きっと大した事じゃないんだろうなと、冷めた目で見る自分がいる。
「やった!やったわ!来世の分まで定期購読の契約が取れたわ!」
茂美のアホっぷりの方がよっぽどインパクトがあった。

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