不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十二話 ミスコン大会開催!(2)

  • 2017.07.24 Monday
  • 10:38

JUGEMテーマ:自作小説

『よく来ただしょな。』
宮殿の前にティムティム女王がいる。
周りにはペンゲンたちがいて、怖い顔で睨んでいた。
「女王陛下、タムタムとモリモリが危ない。どうか助けてやってくれ。」
消えかかるタムタム、薄汚れたマネキンに変わり果てたモリモリ。
二人に手を向けると、『だしょ』と頷いた。
『助けるのはいいけど、これ以上逆恨みされちゃ困るだしょ。』
「逆恨みと思ってるのはあんただけだ。」
『どう思おうとわらわの勝手だしょ。』
「助ける気はないということか?」
『条件付きでなら助けてもいいだしょ。』
「条件?」
『これ以上わらわに恨みを抱かないこと。それを約束してほしいだしょ。』
「それは俺が決めることじゃない。この二人が・・・・、」
そう言って目を受けると、二人の魂は天へ昇ろうとしていた。
「まずい!茂美さん!」
「任せて。」
UFOを飛ばし、サッと二人の魂を掴む。
素手で霊魂を掴むこの女は、すでに人間離れしている。
「あれがモリモリの本当の姿か。」
霊魂となったモリモリは、本来の美少女の姿に戻っていた。
温和な表情、ボーイッシュなショートヘア、とても優しそうな子だ。
手には杖を持っていて、先っぽに付いているイモムシがモゴモゴと動いていた。
そしてサイババとアリババを足して、2で割ったような格好をしていた。
「このままではいつ昇天するか分からない。早く助けてもらわないと。」
ティムティム女王を振り向き、「頼む!」と叫んだ。
「どうかあの二人を!」
『だから恨みを捨てるって約束するなら助けてあげるだしょ。』
「しかしあの二人は死にかけている。とても喋れる状態じゃない。」
『条件が飲めないなら、助けることはできないだしょ。』
「あんたなあ・・・・それでも一国の女王か!だいたい元はと言えばあんたが原因で・・・、」
指を向けながら近づくと、ペンゲンたちが襲いかかってきた。
「痛!つつくな!!」
『その子達はわらわの味方だしょ。下手な真似をすれば、その子たちの胃袋に収まるだしょ。』
「あんたいい加減にしろよ!かつての友達が死にかけてるんだ!助けてやってもいいじゃないか!!」
『女王は常に命を狙われる身だしょ。恨みを捨てないというのならば、助けてやることはできないだしょ。』
「クソ!なんて意地っ張りな・・・・、」
いったいどうすればこのアホを説得出来るのか?
あの二人はいつ死んでもおかしくないというのに。
何もできずに悔しがっていると、突然由香里君が叫んだ。
「ティムティム女王!!」
『なんだしょ?』
「私と勝負して下さい!」
『勝負とな?』
「もし私があなたに勝ったら、あの二人を助けてあげてほしいんです。」
『う〜ん・・・ではお前が負けたらどうするだしょ?』
「その時は・・・・ここの守り神になります。」
『守り神?』
「この古代都市を守る為に、人形神が必要なんでしょう?だからペンゲンたちが私をさらった。」
そう言って王冠をかぶったペンゲンを睨んだ。
「そのペンゲンが頭から火を噴くと、泥人形が出てきますよね?」
『だしょ。あれに人間の魂を入れると、古代都市を守る人形神に変わるだしょ。』
「だったらもし私が負けたら、あの泥人形の中に私の魂を入れてください。」
『本気だしょか?』
「もちろんです。だけどその代わり私が勝ったら・・・・、」
言いかける由香里君を遮って、「よすんだ!」と止めた。
「何を馬鹿なことを言ってるんだ!」
「だけどこれしか方法がありません。」
「あのな・・・相手は古代ムー大陸の女王だそ?君が強いのは知っているが、さすがに相手が悪すぎる。」
「彼女の力は知っています。まともに戦ったって、私は勝てないでしょうね。」
「だったらどうしてそんな提案を・・・・、」
「まともに戦っても勝てないなら、戦い方を変えればいいんです。」
「・・・どういうことだ?」
「ちょっと耳貸して下さい・・・・。」
由香里君はヒソヒソと耳打ちをする。
「・・・・ね?」
「なるほど・・・それなら勝てるかもしれないな。」
「成美さんにも協力してもらいましょう。」
「ああ、このこ作戦にはUFOが必要になる。」
「でも一番の鍵は久能さんです。」
「俺の超能力が勝敗を左右するな。もし失敗したら・・・・、」
『何をボソボソ言ってるだしょか。』
ティムティム女王が不機嫌そうに頬を膨らませる。
俺たちとは距離があるので、心の中を読むことは出来なかったらしい。
『お前たち・・・・まさかわらわの暗殺など企んではいないだしょうな?』
「俺たちはそんな悪者じゃないさ、なあ由香里君?」
「ええ。まっとうま勝負をするつもりです。」
『ほんとだしょかあ・・・?』
疑わしそうな目を向けるティムティム女王。
俺は一歩前に出てこう宣言した。
「ティムティム女王!!」
『なんだしょ?』
「もう一度ミスコンをやらないか?」
『ミスコン?』
「そうだ。あんたと由香里君、この二人のどちらが美少女が競うんだ。」
『ふ・・・何を言うだしょか。わらわは古代人一の美少女なんだしょよ?そんな現代人の小娘など相手にならんだしょ。』
「自信たっぷりだな。」
『だいたいミスコンをするって言ったって、何をどうやるんだしょ?ここにいるのはわらわの僕のペンゲンたちだけ。
投票なんかしたって、お前たちに入れる者などおらんだしょ。』
「そんなのはやってみないと分からないぞ?」
『・・・・何か企んでるようだしょね。』
怪訝な顔をしながら、俺たちの前に下りてくる。
《クソ!心を読むつもりか・・・・。》
近づかれたら心を読まれてしまう。
そうなればこの作戦は失敗して・・・・、
「はいそこで止まって。」
『ぬわわ!なんだしょ?』
茂美のUFOが、俺たちと女王の間に割って入る。
「相手の心を盗み聞きするなんてルール違反よ。」
そう言ってUFOの上からビシっと指を差した。
「勝負は公平なものでなければならない。盗聴は反則よ。」
この女に公平だの反則だのと言われたくないが、こういう時は心強い味方になる。
女王は『むむう・・・』とUFOから離れた。
『さすがに宇宙人の文明を相手にするのは分が悪いだしょ。』
「さすがは女王陛下、身を弁えてらっしゃる。」
高らかに笑う茂美。
俺はUFOの中を覗いて、爺さんにこう尋ねた。
「このUFO、敵と戦ったりできるのか?」
「うんにゃ。基本的に飛ぶだけじゃ。」
「じゃあ武装は一切していない?」
「古代人と戦ったら一撃で負けるじゃろうな。」
「茂美はそのことを・・・・、」
「知っとるはずじゃぞ。」
「・・・・・・・・・。」
あの女、ハッタリをかましてティムティム女王を牽制するとは・・・・。
《こういう状況だと本当に頼りになるな。》
ティムティム女王は明らかにUFOを警戒している。
茂美はタムタムとモリモリの霊魂を握りながら、不敵に微笑んでいた。
《う〜ん、茂美の方が悪人に見える。》
もしこの女が古代に生まれていたら、確実にムー大陸とアトランティスを統一していただろう。
恐ろしい女だ。
「久能さん、さすがは茂美さんですね。」
「ああ、今のうちに茂美にも作戦を伝えよう。」
UFOによじ登って、ヒソヒソと耳打ちする。
「なるほど・・・上手くいけばこの二人は助かるわね。」
「協力してくれるか?」
「いいわよ。でもその代わり・・・・、」
「なんだ?」
「ウチの雑誌を定期購読してくれるかしら?」
「・・・・・・・。」
「あら、嫌そうな顔。」
「金を払うのはいいんだが、あの雑誌がウチに届くのはちょっと・・・・、」
「ならお金だけ振り込んで。雑誌は届けないから。」
「それは購読とは言わないだろう。」
「じゃあ届いたら捨てればいいじゃない。どうせ読む価値もない雑誌なんだから。」
「編集長がそれを言ったらおしまいだぞ。」
どうやら雑誌の売上にしか興味がないらしい。
商魂はあっても、クリエイター魂は持ち合わせていないようだ。
「いいさ、月間ケダモノを定期購読する。」
「ほんとに!?」
「だから手を貸してくれ。でないと・・・・、」
「OKよ、お得意さんは大事にしないとね。」
そう言ってニコリとウィンクを飛ばした。
「由香里君、OKだ。」
グッと親指を立てると、彼女も頷いた。
『だから何をコソコソ話してるだしょか!』
女王はかなり苛立っている。
もし茂美のハッタリがなければ、俺たち全員南極の底に沈められているかもしれない。
「すまない、ちょっと打ち合わせを。」
『なんの打ち合わせだしょか?』
「だからミスコンさ。あんたとウチの由香里君、どっちが美人か決めようじゃないか。」
『・・・・・・・・・。』
怪訝そうな顔で睨んでいる。
俺たちの企みを警戒しているようだ。
「受けるのか?それとも受けないのか?」
『・・・・・・・。』
「あんたは古代人一の美少女なんだろう?だったら現代人の小娘に怯えてどうする?」
『誰も怯えてなんかいないだしょ。ただお前らがコソコソ何かを企んでるから・・・、』
「女王陛下ともあろう者が、現代人のコソコソ話を警戒するなんてな。情けない。」
『侮辱は許さないだしょ!』
「プライドが高い分、挑発に乗りやすくて助かる。」
『むうう〜・・・・喧嘩を売ってるだしょか?』
「ああ、ミスコンでな。」
『わらわは古代人一の美貌の持ち主だしょ。天地がひっくり返ろうが、そんな小娘ごときに負けないだしょ。』
そう言ってビシっと杖を突きつけた。
「だそうだ。由香里君、君に勝つ自信は?」
「相手はしょせん子供ですからね、手を抜いてもいけるかなって。」
『なんだしょと!?わらわは子供じゃないだしょ!!お前たちの何万倍も生きてるだしょよ!』
「年は上でも、中身が子供じゃないですか。」
『そんなことないだしょ!精神年齢もわらわが上だしょ!』
顔を真っ赤にしながら、ゴソゴソと何かを取り出した。
『見るがいいだしょ!このDVDを!!』
そう言って深夜アニメのDVDを掲げた。
『ついこの前までアンパンマンを見ていただしょが、最近とうとう深夜アニメの面白さに気づいただしょ。
これでも子供だと言うだしょか!?』
《これを子供じゃないならなんだと言うんだ・・・・。》
ツッコミたい気分を我慢して、「だったら勝負しようじゃないか」と言った。
「あんたは勝つ自信があるんだろ?」
『当然だしょ。』
「だったらあんたが勝てば、由香里君はここの守り神になる。古代都市はお引っ越ししなくてもすむんだぞ。」
『でもわらわが負けたら・・・・、』
「タムタムとモリモリを助けてもらう。あんたなら出来るだしょ?」
『朝飯前だしょ。』
「なら勝負を・・・・、」
『いいだしょ、そこまで言うなら受けてやるだしょ!』
御年225万歳でも、やはり心は子供。
安易な挑発に乗ってくれて助かる。
『じゃあ用意をするから待ってるだしょ。』
そう言って王冠をかぶったペンゲンに何やら話しかけていた。
それから30分後、宮殿はミスコンのステージに変わっていた。
華やかなイルミネーション、天井にはミラーボール、床にはスモークが焚かれている。
そして宮殿の前には大勢のペンゲンが駆けつけた。
みんなワイワイとミスコンを楽しみにしている。
やがてステージの上に王様ペンゲンが現れて、マイク片手に司会を始めた。
『数千年の時を超えて、ここに再び伝説のミスコンが蘇る!!
かつて古代ムー大陸とアトランティスを沸かしたあの伝説のイベント!
今宵ここにいられることを、君らは感謝するか!?』
マイクを客席に向けると、『イエ〜イ!!』と歓声が返ってきた。
『OKOK、みんな盛り上がってるな!これからこの舞台に二人の美女が登場する。
一人は我らが女王陛下、ティムティム様だあああああ!!』
そう言ってステージを振り返ると、イルミネーションが派手に輝いた。
スモークの量も増して、舞台が煙に覆われていく。
《いよいよ始まるな。》
・・・・煙の中から、光り輝く美少女が現れた。
バっと杖を掲げ、スモークを切り裂く。
『だしょ〜!!』
ミスコンの為にドレスアップした女王が、軽やかにジャンプしながら登場した。
「女王様のやつ・・・えらいめかしこんでるな。」
インドの民族衣装、サリーみたいな服を着ている。
スカートの丈を短くして、その美脚を披露していた。
しかも縞々のニーソを穿いて、ご丁寧に絶対領域を作っていた。
「なんて派手な衣装だ。こりゃあ明らかに男ウケを狙ってるな。」
ペンゲンのオスどもが歓喜に湧く。
女王が投げキスを飛ばすと、一斉にフラッシュが焚かれた。
《現代人でも古代人でも、男の考えることってのは変わらんのだなあ。》
しみじみと感慨に浸っていると、司会が次なる美女を紹介した。
『さあて!我らが女王陛下に挑もうという現代人の美女!それを今から紹介するぜえええ!!』
『ブウウウウウウ〜!!』
歓声が一気にブーイングに変わる。
しかしこれは仕方ない。
ここは女王の仕切る古代都市。
誰だって彼女の味方をするだろう。
《完全なアウェイだな。だけどウチの由香里君だって負けていないぞ。》
由香里君はかなりの美人だ。
空手のおかげか、スタイルも抜群に良い。
それにステージの用意が整うまでの間に、しっかりと衣装を選んだ。
和服、チャイナドレス、ナース服、意表をついてミリタリーという手も考えた。
由香里君は『空手着で出ます!』なんて言っていたが、これは空手の試合ではない。
だからその案は却下して、慎重に、厳正に議論を進めて選んだ。
そしてある一つの民族衣装に決定したのだ。
《あの衣装ほど由香里君の良さを引き立てるものはない!》
俺が勧めた民族衣装を、由香里君も気に入ってくれた。
こういう事に関して俺たちの意見が一致するのは珍しい。
それだけ彼女に似合っているということだ。
・・・・あ、ちなみに衣装はペンゲンたちが用意してくれた。
せっかくミスコンをやるのだからと、こちら側にもある程度協力してくれたのだ。
しかし敵に塩を送るその行為は、女王の絶対的な勝利を疑っていない証拠。
俺たちは見下されているわけだ。
《いいさ、格下だと思ってくれた方がやりやすい。》
強敵から勝利をもぎ取るには、油断させるのが一番。
ペンゲンたちは由香里君を舐めているわけだから、その期待を裏切った時の効果はデカイ。
司会のペンゲンが『挑戦者の登場だああああ!!』と叫ぶ。
再びもくもくとスモークが焚かれて、ステージの上を覆い尽くす。
するとその中に一人の女のシルエットが浮かんだ。
女は高く足を持ち上げて、「せりゃあ!」とカカト落としを放つ。
そして・・・・、
『おお!』
ペンゲンたちから歓声が沸く。
スモークの中から由香里君が現れ、その美貌を見せつけた。
「よし!みんな一気に食いついた。」
ステージ上では由香里君が勇ましく立っている。
気の強そうな目、短い黒髪、美しく整った顔立ち。
それに何より、ベトナムの民族衣装であるアオザイが、彼女のスタイルの良さを引き立てていた。
色っぽく、かといってエロ過ぎず、品のある美しさを醸し出してくれるのがアオザイだ。
由香里君は健康的な色気を持っているので、これほど似合う衣装はない。
《いいぞ由香里君!みんな見惚れている。》
顔だけで考えるなら、アイドル顔をしているティムティム女王の方が有利だろう。
可愛いは正義、強力な武器になる。
しかしスタイルは完全に由香里君の圧勝だ。
アオザイをまとった彼女を見て、ティムティム女王の表情に少しばかりの焦りが浮かんでいた。
二人の美女は中央に立ち、その美貌を衆目に見せつける。
司会のペンゲンが拍手を煽ると、会場は一気にヒートアップした。
『おおおおおおおお!!』
『どっちも可愛い!!』
『現代人の姉ちゃんもやるじゃねえか!』
鳴り止まない歓声。
司会のペンゲンが『静粛に!』と手を叩いた。
『これより古代人VS現代人のミスコンテストを始めます!!
ルールは簡単!まずはそれぞれにステージ上を歩いてもらい、好きなポーズ、好きな表情で、チャームポイントをアピールしてもらいます。
その次に特技を一つだけ披露してもらいます。これもなんでも構いません。
歌でもダンスでも、魔術でも武術でもOK!
そして最後は観客に向けてメッセージを伝えてもらいます。
それが終わると投票の開始!
ステージの前に設置された投票箱に、自分が良かったと思う方の名前を書いて入れて下さい。』
再び歓声が沸いて、某アイドルのジャンケン大会のごとき熱気だ。
『それではいよいよミスコンの開始だあ!』
司会のペンゲンは『ますはティムティム王女から!』と手を向ける。
しかし彼女は『ジャンケンで決めるだしょ』と言った。
『わらわが先攻になってしまったら、こんな小娘のことなんて目に入らなくなるだしょ。
ここは公平にジャンケンといこうだしょ。』
そう言って手を差し出した。
『ほれ小娘、ジャンケンだしょ。』
「・・・・・・・・・。」
由香里君は何も答えない。
無表情のまま女王と向かい合った。
《ありゃ相当怒ってるな。》
ティムティム女王と同じで、由香里君もかなりの負けず嫌いだ。
勝負事になると目つきが変わる。
『んじゃいくだしょよ、ジャンケンぽん!』
ティムティム女王はチョキ、由香里君はパーだ。
《負けたか・・・・。だが先攻が有利とは限らない。インパクトのあるアピールが出来るなら、後攻の方が印象に残るだろうからな。》
ジャンケンに負けた由香里君は、自からステージの脇にはける。
女王はクスっと微笑み、観客に手を振った。
《まさかまた不正をしてジャンケンに勝ったんじゃないだろうな。》
あの女王なら充分にあり得る。
俺は由香里君の傍まで駆け寄った。
「おい由香里君、大丈夫か?いけそうか?」
「・・・・・・・。」
「由香里君。」
「いま集中してるんです。話しかけないで下さい。」
「こりゃすまん。」
目が戦士に変わっている。
心の底から本気のようだ。
司会のペンゲンがマイクを振り上げ、『レディースエンゼントルメン!』と叫んだ。
『まずは我らが女王、ティムティム様の登場だあ!』
いつの間にかステージから消えていたティムティム女王が、神々しい光をまとって、空から降りてくる。
「いよいよね。」
UFOの上で茂美が呟く。
「成美さん、タムタムとモリモリの様子は?」
「今は大丈夫。とりあえず身体に戻ったし、今はUFOの中でお茶を飲んでるわ。ミヤネ屋を見ながら。」
「ふむ、緊張感の欠片もないな。彼女たちの為にやっているというのに。」
「ていうかあの二人の口から『ティムティムへの恨みは忘れます』って言ってくれれば解決なんだけどね。」
「いや、もう無理だろ。ここまで来て中止にしたら、ペンゲンたちが暴動を起こす。」
会場は異様な熱気で、もはや怖いくらいだ。
「じゃあ後は任せるわ。私もみんなと一緒にテレビ見てるから。」
「薄情だな、由香里君が頑張るっていうのに。」
「そんなの見たところで、雑誌のネタにならないもの。」
「また商魂か。」
「それに由香里ちゃんが可愛いのは充分知ってるから。」
そう言って「終わったら呼んでちょうだい」とUFOの中に引っ込んだ。
あいつも緊張感のない奴だと思いながら、ステージを振り返る。
女王は笑顔を振りまきながら手を振っていた。
「ますはステージを歩きながら、ポーズや表情を見せるんだったな。」
ティムティム女王はプロのアイドルかと思うほど、自分の可愛さをアピールするのが上手かった。
あざとい表情、あざといポーズ、だけどその全てが馴染んでいる。
伊達に225万年も生きていないらしい。
ペンゲンたちは大喜びだ。特にオスが。
「由香里君はこういうの苦手だろうからなあ。大丈夫かな。」
いささか不安になってくる。
ティムティム女王はたっぷりと可愛さを振りまき、投げキスを残して去っていく。
ペンゲンたちの興奮は最高潮に達し、気絶する者まで現れた。
『さすがは我らが女王、ティムティム様!!みなさん盛大な拍手を!!』
司会が煽る前から、すでに盛大な拍手が起きている。
まるで雷鳴のような轟だ。
『お次は現代人の美女の登場だあ!名前は本条由香里ちゃん!
空手が得意で、キリっとした目が印象的な美人だああ!』
そう言って『さあど〜ぞ!』と由香里君に手を向けた。
彼女はゆっくりとステージに上がる。
そして観客に向かって深々と一礼。
・・・と、次の瞬間、拳を握って「押忍!」と正拳突きをした。
《おいおい由香里君・・・今は可愛さをアピールする審査だぞ。空手の型をやってどうする。》
心配していたことが的中する。
やはり彼女はこういう事に慣れていないようだ。
ていうかこの次は得意なことをアピールする審査が待っているのに、ここで空手を出してはダメじゃないか。
二回も同じパフォーマンスをやったところで、インパクトは薄れるだけなのに。
しかしそんな俺の心配もよそに、彼女は空手の技を繰り出し続ける。
その動きは見事なもので、観客は黙ったまま見入っていた。
《・・・・いや、これでいいか。この素直さと力強さこそが、彼女の持ち味なんだ。》
下手に可愛さをアピールするなんて、由香里君には向いていない。
凛々しく前を向いて、その時その時を全力投球する。
それが由香里君の魅力だ。
「頑張れ由香里君!あんな女王に負けるな!」
拳を突き上げながら、あらん限りの声援を送った。
由香里君は最後まで空手の型を続ける。
そして「ふう〜」と息を吐きながら、ゆっくりと拳を収めた。
「押忍!」
ビシっと手を交差させて、また深々と一礼。
踵を返し、堂々とした足取りでステージを後にした。
『うううおおおおおお!!』
『あの子カッコイイ!』
『よかったぞ姉ちゃん!』
拍手と声援と口笛が飛ぶ。
由香里君の見せたパフォーマンスは、ガッチリと観客のハートを掴んだ。
そんな様子を空からティムティム女王が見つめている。
ピクピクと眉毛が動き、悔しそうにしていた。
《いいぞ!次もギャフンと言わせてやれ。》
スカっとした気持ちで女王を睨みつけてやる。
するとUFOの中から「よかったらお二人も定期購読いかが?」と茂美の商魂が漏れてきた。
どうやらタムタムとモリモリに勧めているらしい。
本物の古代人にインチキのオカルト雑誌を勧めるとは・・・・。
図太いというかアホというか、やっぱりこいつだけは理解できない。
由香里君、この件が終わったら、事務所の引越しを考えよう。
これ以上こいつに付きまとわれたら、俺たちまで定期購読させられる。
・・・・いや、俺はもう予約済みだった。

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM