不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十三話 愛のカカト落とし(1)

  • 2017.07.25 Tuesday
  • 10:29

JUGEMテーマ:自作小説
ここは南極。
ウィルスさえ死滅する極寒の世界。
そんな世界の地中に、古代都市が広がっていた。
今、ここでミスコンが開かている。
古代人一の美少女VS現代人の空手美女。
ティムティム女王と由香里君の戦いは、序盤から白熱した。
お互いにそれぞれの持ち味を活かし、ガッチリと観客の心を掴んだ。
俺の見た感じでは、序盤戦はほぼ互角だ。
しかしまだまだミスコンは始まったばかり。
あと二つの審査を乗り越えなければ、由香里君に勝利は訪れない。
《頑張れよ由香里君!俺がついてるぞ!》
ステージの最前列で、熱狂的なオタクのごとく応援する。
ペンゲンたちもますます盛り上がり、雷鳴のような歓声が響き渡った。
『序盤から素晴らしい戦ぶりだあ!みんな!この先も大いに盛り上がってくれ〜!』
司会がマイクを向けると、『イエ〜イ!!』と拍手が沸いた。
『さあて、お次はそれぞれの特技をアピールしてもらうぜえ!歌、ダンス、手芸、落語、魔術、武術、お色気!
ジャンルも方法も一切問わない!自分が最も自信のあるパフォーマンスを魅せちゃってちょうだい!』
そう言ってガバっとステージに手を向ける。
すると空から巨大な埴輪が降ってきて、ドスン!とステージに降りた。
「あれはティムティム女王か・・・?」
息を飲んで見守っていると、埴輪からボムっと煙が上がった。
そして案の定ティムティム女王が現れた。
『だしょ〜!』
杖を掲げると、ペンゲンたちが『女王様〜!』と沸いた。
『だしょだしょ。』
可愛く手を振りながら、ステージの上に浮かぶ。
『わらわは魔術が得意だしょ。今からマジックショーをするだしょ!』
『うおおおおおお!』
熱い声援に応えるように、女王は最高の笑顔を振りまく。
『ではティムティムのマジックシー、始めるだしょ!』
クルクルっと杖を回すと、いきなり10人に分身した。
その10人が杖を回すと、今度に100人に増えた。
ステージ上はティムティム女王で埋め尽くされる。
《なんて不気味な光景だ・・・・。》
いくら可愛かろうが、同じ人間が100人というのはちょっと気持ち悪い。
しかしペンゲンたちは嬉しそうに拍手を送っていた。
『お次は巨大化するだしょ!』
100人の女王が一斉に杖を掲げる。
するとスライムみたいに溶けて、グニョグニョっと混ざり合った。
《これまた不気味な・・・・。》
ステージ上に汚い泥粘土がうごめている。
それはだんだんと人の形に変わっていって、やがて巨大化したティムティム女王が現れた。
その大きさはゆうに50メートルはあるだろう。
初代ウルトラマンとほぼ同じ身長だ。
《もはや可愛いとは言いがたいな。》
巨人と化した女王は、腰に手を当ててポーズを取る。
何匹かのペンゲンがスカートの中を覗き込んでいた。
『・・・チ!』
『スパッツ穿いてやがる・・・・。』
男というのは、古代人であっても煩悩の塊らしい。
不届き者のペンゲンたちは、『天罰!』と蹴り飛ばされた。
『ぎゃああああ・・・・、』
『うぎょおお・・・・・、』
『これはストリップショーじゃないだしょ。エロオヤジはいらんだしょ。』
不機嫌そうに言ってから、俺の方を睨んだ。
『お前にも手伝ってもらうだしょ。』
「え?俺?」
女王はクイっと杖を動かす。
すると俺の身体が宙に浮かび上がった。
「うおおおお!何をする・・・・、」
『今から釣りをするだしょ。』
「釣りだと?」
ティムティム女王は不敵に笑う。
そして『てい!』と指を振った。
するとどこからともなく大きな魚が現れた。
体長は10メートルほどもあり、頭が鎧のような装甲に覆われている。
大きな口をしていて、切断機のような鋭い歯が並んでいた。
その姿はなんとも恐ろしく、しかも空中をスイスイと泳いでいた。
「なんだこいつは!?」
『古代魚だしょ。』
「古代魚?」
『ドゥンクレオステウスというんだしょ。』
「ドゥ・・・・なんだって?」
『デボン紀最強の生物だしょ。別名サメ殺しだしょ。』
「なッ・・・サメ殺しだと!」
『動きも速いし、力も強いだしょ。』
「なんでそんな危険な魚を呼び出すんだ!?」
『だから釣りをする為だしょ。』
「釣りって・・・・まさか・・・・、」
『お前が餌になるんだしょ。』
「やめろおおおおお!」
女王はクイっと杖を動かす。
俺は釣り糸にくっついたゴカイのごとく、古代魚の前に運ばれた。
「うおおおおお!」
目の前に切断機のような歯が迫る。
「おいコラ!俺を殺す気か!?」
『だしょ?』
「こんなデカイ歯で噛みつかれたら死んじまうぞ!」
『その魚に歯はないだしょ。』
「いや、ちゃんとあるじゃないか!」
『それは骨が変化したものであって、歯じゃないだしょ。
だから獲物を切り裂くことは出来ても、噛み砕くことは出来ないから安心するだしょ。』
「できるか!」
咄嗟に念動力を使って、魚の攻撃をかわす。
しかしクルっと向きを変えて、また襲いかかってきた。
『ほ〜れほれ、美味しい餌だしょ。』
「だからやめろ!」
こいつの頭はどうかしてる・・・・。
悪女を通り越して悪魔だ。
「あっちいけこの野郎!」
念動力で弾き飛ばそうとするが、硬い鱗に覆われているので、あまり効かなかった。
『あ、ちなみにわらわの魔術でパワーアップしてるだしょから、生半可な攻撃は効かないだしょ。』
「な、なんだと・・・・。」
『たっぷり魔力を与えてあるから、こうして空だって飛べるんだしょ。』
女王の言う通り、古代魚は悠々と空を泳いでいる。
こんなもの、もはや化け物でしかない・・・・。
『ほらほら、じっとしてると食われるだしょよ。』
「お前なあ!これはミスコンだろう!なんでこんな危険なことをするんだ!!」
『危険な方が盛り上がるだしょ。』
そう言って『だしょ〜!』と観客に手を振った。
『女王様〜!』
『現代人なんてやっつけちゃってください!』
『そいつら地球を汚すクズどもです!』
ペンゲンたちから拍手が上がる。
どうやら現代人を快く思っていないらしい。
「ちくしょう!いったいどうすれば・・・・って、ぬおおおおお!」
また目の前に襲い掛かってくる。
《このままでは食われてしまう!》
俺は咄嗟に瞬間移動を使った。
しかし・・・・何も起きなかった。
『わらわに操られてるから逃げられないだしょ。』
「そんな!」
女王は不敵に笑う。そしてクイっと杖を動かした。
そのおかげで間一髪攻撃を免れる。
古代魚は悔しそうな顔をしながら、再び襲いかかってきた。
「NOおおおおおお!」
死ぬ・・・・本当に死んでしまう・・・・。
この女王、予想以上にイカれた奴だ。
しかしその時、「やめなさい!」と誰かが叫んだ。
「こんなのミスコンでもなんでもないじゃない!」
ステージの上で由香里君が叫んでいる。
「今すぐ久能さんを下ろして!」
『嫌だしょ。』
「あなたねえ・・・・好き勝手するにも程があるでしょ!」
由香里君は怒っている。
しかし相手はウルトラマンに匹敵する巨人。
いくら彼女が強かろうが何も出来ない。
『うるさい小娘だしょね。』
足を持ち上げ、由香里君を踏み潰そうとする。
「きゃああああ!」
「いかん!」
念動力を使い、由香里君を宙へ飛ばした。
それと同時に、女王の足がステージを踏み砕く。
ズズン!と地鳴りが響いて、辺り一帯が揺れた。
「大丈夫か!?」
「な、なんとか・・・・、」
宙に浮かびながら、「悔しい!」と叫んでいる。
「魔術なんて卑怯よ!正々堂々と戦いなさい!」
『正々堂々と戦ってるだしょ。』
「どこがよ!魔法でインチキばっかりじゃない!」
『魔法のどこがインチキだしょか?』
「だってこんなの何でもアリじゃないの!全然ミスコンと関係ない!」
『何言ってるだしょか。これは特技をアピールする審査なんだしょ。だったら得意の魔術を使って何が悪いんだしょか?』
「ぐッ・・・それは・・・・、」
悔しそうに口元を噛む由香里君。
しかしこればっかりは女王の方が正しい。
そもそも不利を承知でミスコンを持ちかけたのはこっちなんだから。
「由香里君・・・すまない。どうやら俺たちはここまでのようだ。」
「そんな!諦めないで下さい!」
「ティムティム女王は強すぎる。さすがはムー大陸の覇者だけある。」
「久能さん!そんな弱気でどうするんですか!負けてもいいんですか!!」
由香里君の目に悔し涙が溜まっている。
負けず嫌いの彼女は、こんな時でも闘志に溢れていた。
「せめて君だけでも逃げたまえ。」
由香里君をUFOの傍へ飛ばす。
「オカルト編集長に定期購読の約束をしろ。きっとすぐに街まで返してくれる。」
「嫌です!私だけ逃げるなんて!」
拳を構え、ステージへ走っていく。
するとそこへ古代魚が襲いかかった。
「何よこんな魚くらい・・・・ブッ飛ばしてやる!」
「よせ!逃げろおおおおお!」
大きな歯が由香里君を食い千切ろうとする。
俺は咄嗟に念動力で由香里君を逃がした。
しかし古代魚はそれを追いかけていく。
《クソ!何か・・・・何か弱点はないのか!》
この魚はやたらと硬い。
しかし生き物である以上、必ずどこかに弱点があるはずだ。
透視能力を使って体内を探ってみた。
すると・・・・、
「こ、これは・・・・・、」
古代魚は由香里君に迫る。
彼女は「久能さああああん!」と悲鳴を上げた。
「心配するな由香里君、そいつは何も出来ない。」
「え?」
驚く由香里君。
そこへ古代魚が迫ったが、スルリとすり抜けてしまった。
「あ、あれ・・・?」
「な。」
「どうして・・・・、」
「幻なのさ。」
俺はティムティム女王に目を向ける。
「古代魚なんてもんはいない。そして・・・・あんたも巨大化なんてしないない!」
そう言ってビシっと指さすと、『バレただしょか』と笑った。
『さすがは超能力者、わらわの魔術を見抜くとは。』
女王はチョイっと杖を振る。
すると古代魚は消え、女王も元の大きさに戻った。
「久能さん・・・これはいったい・・・・、」
呆気に取られる由香里君に「俺たちはからかわれていたのさ」と言った。
「からかう?」
「全ては幻だ。女王の魔術にまんまとハマっていたようだ。」
ギロっと睨んでやると、『うふ』と笑いやがった。
『いくらわらわでも、ミスコンで人の命は奪わないだしょ。』
悪びれる様子もなく、あっけらかんとしている。
魚も巨大化も全てはまやかしで、踏み潰したはずのステージにも傷一つなかった。
女王は観衆に向かって、ペコリとお辞儀をする。
『以上、女王のマジックショーだしょた。』
『うううおおおお!』
『女王最高!!』
『現代人どもマジで焦ってやんの!』
『ダサ〜イ!』
ゲラゲラと笑い声が響く。
由香里君が「どういうことですか!」と駆け寄ってきた。
「幻っていったい・・・・、」
「さっき透視能力を使った時に気づいたんだ。あの魚の中には何も見えなかった。」
「そんな・・・・、」
「女王も同じだ。彼女を透視したら、小さな少女のままだった。」
「・・・・私たち・・・遊ばれてたってことですか?」
「そのようだ。」
「・・・・・・・・。」
目に溜まっていた涙が、溢れんばかりに大きくなる。
頬は赤くなり、キっと女王を睨みつけた。
「子供だからって我慢してたけど・・・・もう許さない!」
「おい待て!」
「離して下さい!」
「ここで手を出したら失格負けになる。そうなればタムタムとモリモリは助からないんだぞ!」
「でもッ・・・・・、」
「悔しいのは分かる。しかし殴った所でなんにもならない。」
「・・・・・・・。」
「ミスコンで勝つしかないんだ。」
「・・・・分かってます、そんなの・・・。」
ギリっと歯を食いしばって、ステージの中央へ歩いていく。
「司会のペンゲンさん。次は私の番ですよね?」
『ウィイ。』
「じゃあ私の特技・・・・みんなに披露します。」
涙を拭き、まっすぐに観衆を見つめる。
司会がマイクを振り上げ『ありがとうティムティム女王様!』と叫んだ。
『素晴らしいパフォーマンスでした!みんな盛大な拍手を!』
ペンゲンたちは興奮のあまり、足踏みをしながら拍手をした。
地鳴りを響き、辺りが揺れる。
《これか、ステージが破壊された時の揺れは。》
幻なのに地震が起きて、おかしいと思っていた。
《どうやら幻だと知らなかったのは俺たちだけのようだな。》
ここまでコケにされては黙っていられない。
由香里君を振り返り、「頑張れよ!」と手を振った。
「今度はこっちの番だ!女王も観衆もギャフンと言わせてやれ!」
「任せて下さい!」
強気な目でビシっと親指を立てる。
『ふふふ、わらわ以上のパフォーマンスなんて無理に決まってるだしょ。まあせいぜい頑張るだしょ。』
女王は余裕の笑みで去って行く。
司会が再びマイクを掲げ、由香里君に手を向けた。
『お次は本条由香里ちゃんの番だあ!空手が得意な彼女だが、いったい何を披露してくれるのか!?』
司会が煽ると、『瓦割りなんてつまんねえことすんなよ!』とヤジが飛んだ。
『もう空手の型も見飽きたぞ!』
『バット折りでもやるんじゃな〜い?』
『それもつまんね。もっと面白いことやってくれよ〜!』
ゲラゲラガハハと笑いが飛んで、誰もが彼女を馬鹿にしている。
しかし由香里君は動じない。
得意の空手が通用しないというのに、まったく焦りを見せなかった。
《由香里君・・・君はいったい何を披露するつもりなんだ?》
こうなったら息を飲んで見守るしかない。
由香里君は目を閉じ、精神を集中させている。
そして・・・・、
「なッ!」
思わず声が漏れる。
なんと観衆の前でアオザイを脱ぎ出したのだ。
『いいぞ姉ちゃん!』
『やることないからってお色気かよ。』
『最低〜!』
オスたちは歓喜し、メスたちはブーイングを飛ばす。
しかし由香里君は止まらない。
上を脱ぎ、下を脱ぎ、とうとうアオザイを脱ぎ捨ててしまった。
「おい由香里君!」
彼女は決してお色気で人目を惹くような子じゃない。
なのにどうして・・・・、
「どうして水着になんか・・・・。」
アオザイの下には水着を着ていた。
シンプルなデザインのビキニで、健康的なエロさがある。
「そんな・・・君はどうしてしまったんだ・・・いったいいつからそんな子になってしまったんだ!」
俺は悲しくなってくる。
だけど息子は元気になってきて、「馬鹿野郎!」と叩いた。
「今はそんな場合じゃないんだよ!反応するんじゃない!」
てい!てい!と叩いていると、由香里君はステージのすぐ前までやって来た。
抜群のプロポーションに、オスたちの目がハートになっている。
しかしメスの受けはよくないようで、『卑怯者!』とヤジが飛んできた。
『そんなので票を集めようとするなんて最低!』
『帰れ!下品な現代人め!』
『サノバビッチ!』
《いかん!いかんぞ由香里君!お色気戦法は逆効果だ!》
ただでさえアウェイなのに、会場の半分を埋めるメスたちを敵に回しては勝てない。
「今からでも遅くない!服を着るんだ!」
「いいえ、これでいいんです。」
「なんだって?」
自信満々に言う。
いったいこれの何がいいというのか?
いや、俺は嬉しいんだが、このままでは確実に負けてしまう。
「久能さん、ステージへ上がって来て下さい。」
「え?俺が?」
「早く。」
言われるままステージに上がる。
すると由香里君は、ニコッと笑って腕を組んできた。
「おい!」
胸を押し付けられて、息子が反応する。
「むお!イカン!イカンぞ衆目の前で!」
てい!てい!と叩いて叱る。
しかし由香里君はまた色気で攻めてきた。
「久能さん・・・・。」
とろけるような目をしながら、ギュッと抱き付いてくる。
「あおうふ!」
慌てて腰を引く。
しかし由香里君はさらに抱きついてくる。
「おい!いったいどうしたんだ!こんなの君らしくないぞ!」
「だってもうこれしか方法が・・・・。」
そう言いながら、そっと俺の手を取った。
それを自分の胸元にもっていき、二つの柔らかい膨らみの間に押し付けた。
「ふうおううッ!」
なぜだ!どうして自分からこんなことを!
いつもなら「シバきますよ!」とブッ飛ばされるのに・・・・。
「久能さん・・・どうですか?」
「どうって・・・何が?」
「言わせないで下さい・・・。」
頬を赤らめながら俯く。
これは・・・もしや誘ってるのか?
《そんな・・・まさか!こんな衆目の前でモーションをかけるなんて・・・・、》
由香里君は断じてそんな子ではない。
そんな子ではないが・・・・もしもそうだとするなら、断ったら恥を掻かせることになる。
女性がここまでアピールしているのだ。
それを無碍にするなんて、男として最低の行為であろう。
《据え膳食わぬは武士の恥!由香里君・・・・俺は君を抱く!》
衆目など知ったことか!
最愛の相棒がここまでしてくれているのだ。
無視するんて俺には出来ない!
「由香里君!!」
シャツをはだけ、ズボンに手を掛ける。
・・・・と、その時だった。
俺の股間が眩く輝いた。
「な、なんだ!?」
息子が熱い・・・・。
身体中のエネルギーがここへ集中している・・・。
「うおおお!どうなってんだこれは!?」
抗いようのないエネルギーが、俺の息子を屹立させる。
もう・・・自分でも止めようがない!!
「由香里く〜ん!!」
飛びかかったその時、息子の中から誰かが現れた。
『だしょ!』
「ティムティム女王!」
俺の息子から飛び出してきて、ドサっと倒れ込む。
『最悪だしょ!またこんな所から召喚されるなんて!』
「それはこっちのセリフだ!なんであんたが出て来る!?」
予想外の出来事に、シュンと息子が項垂れる。
「ふふふ。」
「ゆ、由香里君・・・・?」
「思った通り、まだ召喚の儀は残ったままだったようですね。」
「な、何を言ってるんだね・・・?」
「簡単なことですよ。ティムティム女王は、久能さんに召喚の儀ってやつを掛けてたんでしょう?
土偶との戦いでピンチになった時、股間から現れて助けてくれた。」
「ああ。でもそれがなんだっていうんだ?」
「久能さんの煩悩が最高潮に達した時、女王はその汚らわしい場所から召喚されるんです。」
「あの術・・・まだ俺にかかったままだったのか?」
「考えてみて下さい。久能さんは今でも超能力がパワーアップしたままなんです。それに瞬間移動だってまだ使えるはずでしょう?」
「ああ、さっきは女王のせいで上手くいかなかったが。」
「ということは、召喚の儀だってまだ掛かったままなんじゃないかと思って。」
「なるほど!しかし彼女を召喚してなんの意味が?」
「こんな意味があります。」
由香里君はニヤリと観客に手を向ける。
すると一斉に大爆笑が起きた。
『だははははは!股間から女王様が!!』
『なんであんな所から出てるの!あはははは!』
『チンチンからティムティム様が出現!』
『チンチン、チンティン、ティンティン、ティンティム。ティムティムってか!』
ペンゲンたちは笑い転げる。
女王は顔を真っ赤にしていた。
『いよ!チンチン女王!』
『ぎゃははははは!』
『うるさいだしょ!チンチンっていうな!』
恥ずかしさのあまり涙目になっている。
これぞまさかに屈辱の極み、もはや女王の威厳は台無しだ。
「どうですか女王陛下?」
由香里君はニコリと詰め寄る。
「からかわれるって嫌でしょう?」
『お前・・・わざと恥をかかせただしょな?』
「さっきはこっちが恥をかかされたからね。」
『お前・・・意外と根に持つタイプなんだしょな。』
グイっと目尻を拭う女王。
すると由香里君、笑顔を消してこう答えた。
「人の痛みも分かんない子供に躾をしただけよ。」
『なッ、わらわに躾とな!・・・・現代人の小娘が偉そうに!!』
「平気で汚い手を使ったり、わざと相手に恥をかかせたり・・・・一国を治める人がする事とは思えない。」
『生意気言うなだしょ!わらわはお前の何万倍も生きてるんだしょ!口の利き方を気をつけ・・・・、』
そう言いかけた時、由香里君のカカト落としが炸裂した。
『だしょ!!』
咄嗟に頭を庇うティムティム女王。
由香里君のカカト落としは、女王のすぐ目の前にめり込んだ。
『・・・・あ・・・危ないじゃないだしょか!』
怒って詰め寄るが、由香里君は表情を崩さない。
「あなたのせいで辛い思いをしている友達がいるわ。」
そう言ってUFOを指差した。
「自分が勝ちたいからって、友達があんな風になるまで追い込むなんて・・・・。
私より何万倍も生きてるなら、それが酷いことだってどうして分からないの!」
また足を持ち上げると、『ひえ!』と怯えた。
『ぼ、暴力はイカンだしょ!ちょっとでもわらわに当てたら、即失格だしょ!!』
「当てる気なんてないわ。私だって暴力は嫌いだもの。」
『だ、だったらその足下ろすだしょ!』
「じゃあもう下らない手は使わないって約束する?」
『だ・・・だしょ?』
「もし次にさっきみたいな事したら、私は許さない。」
『え、偉そうに・・・・。わらわが本気になれば、お前みたいな小娘ごとき・・・・、』
「簡単に倒せるでしょうね。」
『だったら偉そうに言うなだしょ!』
「だったら正々堂々と戦ってよ。」
『む、むむう・・・・。』
「魔術を使うのは構わない。だけどそれで人を傷つけたり、嫌な思いをさせるのはやめて。
でないと・・・・本当に誰からも嫌われるわよ。」
そう言ってペンゲンたちに手を向ける。
みんな腹を抱えて、まだ笑い転げていた。
「女王の威厳がなくなったら、いったい誰があなたを尊敬するの?」
『・・・・・・・。』
「みんながあたなを女王だと認めてる。だからワガママも許してくれる。
だけどもしも女王と認めてもらえなくなったら・・・・、」
『言うなだしょ。』
ティムティム女王の顔つきが変わる。
目の奥に険しい殺気が宿った。
『そこまで言うなら本気で相手をしてやるだしょ。』
「望むところよ。」
二人は鼻が触れそうな距離で睨み合う。
漫画なら背景に稲妻のスクリーントーンが貼られているだろう。
『え、ええっと・・・・、』
司会が困った顔でマイクを握った。
『こ、これにて第二審査は終わり!次はいよいよラストだあ!!』
ペンゲンたちから歓声が沸く。
由香里君と女王はまだ睨み合っていて、殺気がヒシヒシと伝わってくる。
「・・・・ふん!」
『・・・・だしょ!』
プイっとそっぽを向き、それぞれ反対方向へステージを降りていく。
「久能さん!」
「なんだ?」
「女王を本気にさせちゃいました。」
「だな。」
「油断をついて勝つつもりだったのに・・・・ごめんなさい。」
「どうして謝る?」
「だって・・・これじゃ勝つ見込みが無くなります。」
申し訳なさそうに言う由香里君。
俺は小さく肩を竦めた。
「でも後悔はしてないんだろう?」
「はい。」
「じゃあいいさ。」
「怒ってないんですか?」
「怒るわけないだろう。君の言ったことは正しいんだから。」
「久能さん・・・・。」
「それに俺だって良い思いをさせてもらった。」
「良い思い?」
首を傾げる由香里君に、「こういう思いさ」と手を伸ばした。
「きゃあ!」
「まさか自分から胸の谷間に触らせてくれるなんて・・・・。しかも水着姿まで披露してくれるなんて・・・。
もうね、俺も息子も大感激さ!」
「くたばれ!」
鼻面にカカト落としがめり込む。
「うぎゅおおッ・・・・、」
「好き好んでこんなことしたんじゃありません!」
「ぬうおお・・・・鼻の骨があああ・・・・、」
「ただ女王を負かすにはこれしかないと思って・・・・、」
「ど、どういう意味だ・・・?」
「だってもしお色気で来られたら、こっちもお色気で対抗しようと思って。」
「だから水着を着てたのか?」
「ほんとはこんなこと嫌だけど、向こうがそれで来るなら対抗してやろうと思ったんです。
別の形で役に立っちゃいましたけど。」
そう言って俺の息子を睨んだ。
「君は・・・そこまでの覚悟で戦いに臨んでいたんだな。」
「当然です。負けたらタムタムもモリモリも助からないじゃないですか。」
「そりゃそうだ。」
「それに勝負は負けたくないんです。あんな生意気な子に負けるくらいだったら、水着くらいなんだって話ですよ。」
ふん!と鼻息を飛ばし、バッファローのごとき足取りで去って行く。
逞しいその背中を、俺は息子と共に見つめた。
数秒後にはお尻に視線がいったけど。
「いい尻だ・・・・なあ息子よ。」
ググっと膨らんで、息子も頷いてくれた。

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