不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十七話 オカルト編集長の陰謀(1)

  • 2017.07.29 Saturday
  • 16:25

JUGEMテーマ:自作小説

探偵・・・それは常に危険と隣り合わせの仕事。
命懸けで依頼を果たし、時には身体を張って依頼人を守りぬく。
そんなシチュエーションに憧れて始めたこの仕事だが、そんな状況になることは滅多にない。
滅多にないのだが・・・・今はその滅多にないことが起きていた。
「パンツ一丁で南極の地下・・・・いったいどうすりゃいいんだ?」
ブルっと震えて、くしゃみが出る。
すると司会をやっていた王様ペンゲンが『これ着てろ』と何かを寄越した。
「それは?」
『ペンゲンの羽毛で作ったコートだ。』
「おお!ありがたい。」
早速着込む。
うむ、温かい。
でもペンゲン用なので裾が短かった。
パンツから下は丸出しだ。
「これじゃ余計に変態に見えるな。」
「元々変態じゃない。」
「成美さん・・・・笑ってる場合か。このままじゃ日本へ帰れないぞ。」
「そうねえ・・・どうしましょ。」
困ったように腕を組むが、全然困っているように見えない。
こいつの神経は出雲大社の注連縄より太そうだ。
「でも久能さん・・・問題はそれだけじゃありませんよ。」
由香里君が不安そうに呟く。
「見て下さい、ペンゲンたちが混乱してます。」
さっきまではワイワイとミスコンを楽しんでいたペンゲンたちが、この世の終わりみたいな顔をしている。
『女王様はどこいったの!?』
『誰がここを治めるんだ!』
『ていうかこのままでここは大丈夫なの?いつかは沈んじゃんでしょ?』
ペンゲンたちの混乱はもっともだ。
指導者を失い、住処まで危険に晒されているのだから。
「女王が言ってましたよね。もうじきここに住めなくなるって。」
「ああ、海底火山やらなんやら、自然現象のせいで沈みかけてるらしいな。」
「それを防ぐには、あの泥人形に魂を入れるしかないんですよね。」
「もしくは引越しするかだ。しかし古代都市の引越しなんてそう簡単にはいかないだろう。」
「ですよね。ペンゲンたちだけじゃどうにも出来ないだろうし。」
「だったらやはり泥人形に魂を入れるしかないわけか。そうなると誰かが生贄にならないといけないわけで・・・・、」
泥人形に魂を入れるということは、すなわち誰かが死ぬということ。
「人間の魂が必要なんだよな。今ここにいる人間は・・・・俺、由香里君、成美さん、そして爺さんと婆さんだ。」
腕を組みながら「さあて、誰に死んでもらうかな」と呟いた。
「俺はまだ探偵を続けたいし、由香里君を生贄に捧げるわけにはいかない。
となると茂美さんか爺さんか婆さんになるわけだが・・・・」
俺としては茂美に生贄になってもらいたい。
そうなればもうこのオカルト編集長と関わらなくてもすむ。
しかし老い先が短い爺さんと婆さんの方が、生贄に適しているか?
「なあアンタら。誰が生贄になるか、三人でジャンケンを・・・・、」
「久能さん!」
思いっきり頭を叩かれる。
「なんてこと言うんですか!!」
「冗談だよ。」
「冗談でも言っていい事と悪いことがあります!」
由香里君は目を釣り上げる。
俺は「失敬」と肩を竦めた。
「でも誰かが生贄にならないと、ペンゲンたちが滅んでしまうぞ?」
「そんなの分かってますよ。でもだからって生贄なんて酷いこと出来ません。」
腕を組んでプリプリしている。
気持ちは分かるが、彼女も良いアイデアは持っておらず、二人して顔をしかめるしかなかった。
「ちょっといいか?」
爺さんが声を掛けてくる。
「なんだ?」
「あんたの話を聞いとったんだが、誰かが犠牲になればすむのか?」
「ああ。」
「なら儂か婆さんがそうしよう。いいじゃろ婆さん?」
「好きにせい。」
「おいおい、さっきのただの冗談だぞ。あんたらを生贄になんて・・・・、」
「じゃあ誰がその役目をやるんじゃ?」
「それが無理だから困ってる。」
「儂らはもう老い先短い。生き甲斐にしようと思っとったUFOもなくなったし、せめて役に立ってから死にたいんじゃ。」
「決断せい、お若いの。年寄りが一人死んであんたらが助かるんだ。気にせんでも恨んだりせん。」
「そういう問題じゃない。人の命を犠牲にするなんて出来ないと言ってるんだ。」
そう答えると、由香里君も「そうですよ!」と頷いた。
「老い先がどうとか関係ないです。だってお爺さんとお婆さんにはお孫さんがいるじゃないですか。
二人が亡くなったらきっと悲しみますよ。」
「なあに、正月と盆にしか会わん孫じゃ。儂らのことなんざすぐ忘れる。」
「そんな・・・・、」
「それに会っても小遣いせびるだけだからな。それでも可愛いからついついあげちまうんだが。」
「だからって生贄なんてダメですよ!そんなの絶対ダメです!」
由香里君は必死に首を振る。
二人の手を掴んで、「そんなの許しませんからね!」と言った。
「ふうむ・・・こうなったらやることは一つしかない。」
俺は後ろを振り返った。
「成美さん、悪いがここで死んでくれ。」
「なんてこと言うのよ。私は嫌よ。」
「5年分定期購読してやるから。」
「命あっての商売よ。死んだら一銭の得にもなりゃしないわ。」
「やっぱりダメか・・・・。」
「そこまで言うなら久能さんが生贄になればいいじゃない。」
「いや、俺がいなくなると由香里君の就職先がなくなるわけで・・・・、」
「ウチで雇ってあげるわ。」
「由香里君をオカルトに染める気か?そんなことは断じて許さん。」
「じゃあ結局誰も生贄は嫌なわけね。」
「ああ。いったいどうしたもんか・・・。」
頭を掻きながら悩んでいると、王様ペンゲンが『俺たちのことはいい』と言った。
「ん?」
『これは元々アンタらには関係のない話だ。』
「そりゃそうだが、あんたたちを見殺しににするのは後味が悪いさ。」
『自分たちでどうにかするよ。』
「出来るのか?もう女王はいないのに。」
『アンタらは甘い。あの人は必ず帰ってくるよ。』
「まさか。宇宙の果てに飛ばされたのに。」
『俺たちは女王のことをよく知ってる。あの程度でどうにかなるような人じゃないんだ。』
「恐ろしいことを言うな・・・・。」
『ま、それはともかく、ペンゲンたちのことは気にしないでくれ。ここを捨てて、どこか他に住める場所を探すから。』
「ほんとにいいのか?」
『辛い道のりだろうが、やるしかないんだ。女王が戻ってくるまで。』
「なんか悪いな・・・・勝手に宇宙へ飛ばしちゃって。」
『気にするな。今までにもこういう事はあったんだ。
悪魔とか死神とかと喧嘩して、マグマの中に落とされたり、月へ縛り付けられたり。
酷い時なんか、地獄の閻魔をブン殴ってこの世に戻ってきた。』
「化け物かよ・・・・。」
『あれでも丸くなった方なんだ。』
「尖った頃の彼女に会わなくてよかったよ。多分俺たちの方が宇宙へ飛ばされてる。」
『まあそういうことなんで、俺たちのことは気にしなさんな。アンタらは自分の国に帰ればいい。』
「それが出来ないから困ってる。何か良い方法はないか?」
『ワームホールがある。』
「なに?」
『ついて来い。』
王様ペンゲンは街の外れに歩いていく。
そこにはプレハブのような小さな建物があった。
「おいこれって・・・・、」
『便所だ。』
「またかよ!」
ペンゲンはドアを開ける。
すると中には和式便器が。
『このトイレは人形塚と繋がってるんだ。』
「そうなの!?」
『あそこの傍にも便所があってな。』
「なんで便所だらけなんだよ・・・。」
『ちなみにこっちからは入れるが、向こうからは入れない。
アンタらが向こうへ帰ったら、この便所は破壊する。
もう二度とあんたらに関わることはないから安心してくれ。』
「そりゃよかった。」
ドアを潜り、便器の前に立つ。
案の定、由香里君は嫌そうな顔をしていた。
「はあ・・・・またトイレの中に入るんですね。」
「古代人の頭は8割ウンコのことを考えてるらしいから。仕方ないさ。」
ポンと肩を叩き、「先に行け」と手を向ける。
「ええ!なんで私が先なんですか?久能さんからどうぞ。」
「いやいや、ここは君に譲るよ。」
「こんなとこで気を遣わないで下さい。久能さんがお先に。」
どっちが先か押し付け合っていると、「儂らが先に行かせてもらうぞ」と爺さんが言った。
「婆さん、便所を通れば帰れるとよ。」
「肥溜めには慣れとる。昔さんざん汲み取ったでな。」
二人は頷き合い、「ほうりゃ!」と飛び込んだ。
「すごいな、なんの迷いもなく行ったぞ。」
「それじゃ私も行くわね。」
「茂美さん・・・あんたも肥溜めを汲み取った経験が?」
「違うわよ、早く帰って今回のことを記事にしたいの。・・・・きっと売れるわよ。」
ニヤリと笑い、便器の中に消える。
「相変わらず逞しい商魂だ。」
あいつはこの世に一人になっても生きていけるだろう。
ある意味古代人以上だ。
「じゃあ・・・私も行きます。」
由香里君も覚悟を決めた。
「気をつけてな。俺もすぐ行くから。」
「じゃあ・・・またあとで。」
泣きそうな顔で便器を見つめる。
目を閉じ、「押忍!」と飛び込んだ。
「みんな行ったな。」
一人残された俺は、ゆっくりと王様ペンゲンを振り返った。
「そろそろ正体を現したらどうだ?」
そう言って睨んでやると、『バレてただしょか』と笑った。
「透視能力が使えることを忘れたか?」
『そういえばそうだっただしょね。』
王様ペンゲンからボワンと煙が上がる。
そして・・・・、
「ティムティム女王、あんたって奴は・・・・、」
『うふ。』
「うふ、じゃないだろ。」
『で、いつからだしょ?』
「ん?」
『わらわがペンゲンに化けてるのを見破ったのは。』
「だから透視能力が使えると・・・・、」
『でも怪しまなかったら使わないだしょ?』
「そうだな。」
『で、いつだしょか?』
「ついさっきだ。」
『さっき?』
「ペンゲンが人形塚のことを知ってるわけがない。」
『どうしてだしょ?』
「どうしてって・・・・ここのペンゲンたちはタムタムやモリモリのことを知らなかったからさ。
あんたがUFOに頭を下げたとき、ペンゲンたちはキョトンとしていた。
いったい誰に謝っているのかと。
そしてあの二人がUFOから出てきた後も、やはり彼女たちが誰だか分かっていなかった。」
『それがなんだって言うんだしょ?』
「人形塚にはタムタム王が眠っていた。土偶の姿となってな。
それを知らないってことは、彼女が封印されていた人形塚の存在も知らないんじゃないかと思っただけさ。」
『なるほど。』
「それにもう一つ気になることが。」
『なんだしょか?』
「あんたはとにかく我が強い。何がなんでも自分が一番じゃないと気が済まない人だ。」
『それくらいじゃないと女王なんて務まらないだしょ。』
「何度も聞いたさ。俺が言いたいのは、そんなアンタがペンゲンたちの目の前で頭を下げるのはおかしいってことさ。」
『どういうことだしょ?』
「ペンゲンたちがタムタムやモリモリのことを知っていたのなら、あんたが衆目の前で頭を下げるのも分かる。
なんたって相手はアトランティスの王と、ムー大陸の大臣だ。
自分に近い身分なんだから、頭を下げたって威信に関わることじゃない。」
『逆だしょ。偉い身分の相手にこそ頭は下げられないだしょ。それこそ威信に関わるだしょ。』
「しかしペンゲンたちは怒っていた。敬愛する女王が、どこの馬の骨とも知れん奴に謝っているんだから。
その結果、暴動にまで発展しかけた。頭の良いアンタなら、この事態を予測できないわけがない。」
『むう・・・結局何が言いたいんだしょ?』
「簡単なことさ。あの時のアンタは本気で謝っていたんだ。」
背筋を伸ばして女王を睨む。
「俺はてっきり演技だと思っていた。だけどそうじゃなかった。
あれは演技に見せかけて、本気で謝っていたんだ。
わらわのせいで辛い思いをさせてしまった・・・申し訳なかったって。」
『そりゃ買いかぶりだしょ。本気謝るつもりなら、とっくの昔にそうしていただしょ。』
「それこそ無理さ。なぜならタムタムは土偶となって封印され、モリモリは重度の引きこもり。謝るチャンスはなかった。
だけどとあるオカルト編集長のせいで、事態は一変したんだ。」
『あのアホが封印の古文書を取ってしまっただしょからね。あの時は呪い殺してやろうかと思ったほどだしょ。』
「そのせいで土偶は目覚め、再び人形戦争が起きようとした。
あんたはそれを防ぐ為に、俺や由香里君を利用したわけさ。」
『利用ってのは言い過ぎだしょ。』
「でも実際にそうじゃないか。俺に瞬間移動能力を与え、ついでに超能力もパワーアップしてくれた。
だけどしょせん俺はただの人間、アトランティスの王に勝てるわけがない。」
『あれだけ力を与えてやったのに、お前はボロ負けだっただしょな。使えん奴だと思っただしょ。』
「このままでは再び人形戦争が起きてしまう。それを危惧したあんたは、わざとあの街から消え去った。
わらわに会いたければ、南極まで来いと書置きを残して。」
『だしょ。』
「その書置き通り、俺たちはここへやってきた。
じゃあなんでわざわざこんな場所に呼び寄せたのかというと、ミスコンを開催する為だろう?」
そう尋ねると、わずかに眉が動いた。
「あんたはタムタムを止める為に、重度の引きこもりであるモリモリまで連れ出した。
きっと激しく抵抗されたと思うが。」
『命懸けだっただしょね。モリモリは一流の魔術師だったから。』
「あんたの目論見通り、モリモリとタムタムを引き合わせたことで、争いは止まった。
しかしこのままではタムタムは死んでしまう。彼女は美少女の姿に戻ると、すべてのエネルギーを使い果たしてしまうから。」
『・・・・・・・。』
「そしてモリモリもまた死のうとした。タムタムと再会したことで、彼女と一緒に心中を図ろうとした。
このままでは二人とも消えてしまう。
そうなれば、心に深い傷を抱えたままあの世へ旅立つことになってしまう。
あんたはそれをどうにか止めたかったのさ。」
女王の眉がまた動く。
俺がいったん口を閉じると、すぐに表情を戻した。
『・・・・・続けろだしょ。』
「あの二人はあんたの友達だった。心を許せる数少ない親友だった。
だけどあんたはとにかく我が強いから、そのせいで二人を深く傷つけてしまった。
しかも今さら謝ったところで傷は消えない。
かといってこのまま消えていくのを見送るのは胸が傷む。
それなばら、もう一度ミスコンを開催するしかない。
そしてあの二人に花を持たせることで、心の傷を取り除いてやろうとしたんだろう?」
『ずいぶん好意的な解釈だしょな。わらわがそんな善人だと思うだしょか?』
「でもそれ以外にミスコンを行う理由が思いつかない。
提案したのは俺たちだが、あれも計算のウチなんだろう?」
『さあ、どうだしょかな。』
「タムタムとモリモリを助けるには、あんたの力が必要だ。
でも俺たちは正面から挑んで勝てない。だったら勝負の方法を考える必要がある。
力で戦うのではなく、もっと別の方法で・・・・、」
『そういうのはもういいだしょ。』
これ以上無駄な説明はいらないという風に、小さく首を振った。
『屁理屈の言い合いしても意味ないだしょ。さっきから色々言ってるけど、結局は何が言いたいんだしょ?』
「だから単純なことさ。あんたはあの二人に謝りたかった。そして心に抱えた傷をどうにかしてやりたかったんだ。
あんたならタムタムに力を与え、命を長らえさせることは出来ただろう。
しかしそれをやってしまうと、さらにあの二人を傷つける可能性がある。」
『タムタムの恨みは200万年も続いているんだしょ。謝ったところでどうにもならないだしょ。
きっと恨みに突き動かされて、また人形戦争を起こしてしまうだしょ。
そうなれば古代人だけの問題ではすまないだしょ。』
「そう、だから助けてやることは出来ない。となれば、せめて心の傷を癒してやることしか出来ないわけが・・・・。
その為のミスコンさ。あんたはあえて悪者を演じ、最後の最後で痛い目に遭うというシナリオを描いた。
そうすればあの二人は溜飲を下げ、心安らかに旅立てるだろうから。」
『・・・・・・・・。』
「そのお膳立てをする為に、またしても俺と由香里君が利用されたわけだ。
あんたの演じる悪役、それにまんまと引っかかって、不正を働くんじゃないかと疑った。
だけどそれでよかったんだ。ああいう展開にもっていけば、会場は混乱する。
ペンゲンたちの敵意は俺たちに向き、それを止めようとタムタムとモリモリが奮闘した。
そしてあんたはUFOに乗って宇宙へGO。
あの二人はあんたの描いたシナリオ通り溜飲を下げたんだ。」
女王は何も言い返さない。
クルリと背中を向けて、街へ歩き出した。
「ティムティム女王。」
呼び止めると、チラリと振り返った。
「あんたは強いな。例え自分に原因があるにせよ、200万年も友に恨まれていた。
それにも関わらず、あの二人をどうにかしてやろうと頑張った。」
『買いかぶりだしょ。』
「それにここにいるペンゲンたち、ちゃんとみんなの面倒を見ている。
行き場を失った古代人たちに居場所を与えてやっている。」
『女王の責任を果たしているだけだしょ。』
「もう一度言う、あんたは強い。」
素直な気落ちでそう言った。
俺としては賛辞のつもりだったのだが、女王は俯いた。
『強いっていうのは、寂しいことでもあるだしょ。対等に話せる相手がどこにも・・・・、』
そう言いかけて口を噤んだ。
『探偵。』
「なんだ?」
『この事はお前の胸にしまっとけだしょ。』
「ベラベラ人に喋ったりしないさ。でも由香里君には知る権利がある。彼女だってこんな珍事に巻き込まれたんだから。」
『ダメだしょ。』
「どうして?」
『あの小娘は優しいだしょ。きっとわらわに同情するだしょ。』
「いいじゃないか、同情だって立派な情けだ。人の情けが幸せだって、日本昔話でも歌って・・・・、」
言いかける俺の言葉を遮るように、女王は険しい目で睨んだ。
『わらわは26代目ムー大陸の女王、ティムティムだしょ。同情などいらんだしょ。』
仁王立ちしながら、大地に杖をつく。
その目は力強く、威風堂々としたオーラを放っていた。
見た目は子供でも、中身は比類なき王。
俺は「悪かった」と頭を下げた。
「この事は誰にも言わない。」
そう答えると、クスっと微笑んだ。
『もう用はないだしょ。さっさと帰るだしょ。』
「もちろん帰るさ。でもその前にもう一つ聞きたいことがある。」
『なんだしょ?』
「ここはダメになるんだろ?本当に行くあてがあるのか?」
『・・・・そうだしょな。地球も古代人にとっては住みづらくなってきただしょから・・・。』
遠い目で空を見上げる。
『今度は火星にでも住むだしょかな。』
そう言って杖を掲げると、カボチャのUFOが飛んできた。
「なあ、まさかとは思うが・・・・、」
『これは宇宙人の乗り物ではなく、古代人の乗り物なんだしょ。』
「やっぱり・・・・。あんたほど頭の良い人が、茂美のハッタリに騙されるのはおかしいと思ったんだよ。」
女王はしきりにUFOを怖がっていたが、あれも演技だったようだ。
ハッチが開き、中から王様ペンゲンが顔を出す。
その傍にはあの宇宙人一家がいた。
「斎藤さんじゃないか!」
「お〜い!」と手を振ると、斉藤さんたちは煙を上げた。
「・・・・ペンゲンに変わった。」
『ちょっと魔術を。』
「あんた・・・宇宙人まで仕込んでたのか?」
『何があるか分からんだしょからね。色々用意しとかないと、不測の事態に対応できないだしょ。』
「じゃあ他にも何か用意してたのか?」
『ネッシーとかミステリーサークルとか、それに雪男とか恐竜とか。
色んな場所に待機させておいただしょ。どれかが上手く引っかかってくれれば、おバカさんをここまで誘導しやすいだしょから。』
「要するに俺みたいな奴を利用する餌ってことだな?」
『だしょ。あのオカルト編集長とか。』
「そこまで手の込んだことをしてたのか。あんた・・・・本当にあの二人の傷を癒してあげたっかったんだな・・・、」
『同情はいらんと言ったはずだしょ。』
「こりゃ失敬。」
女王は杖を振る。
するとどこからともなく無数のUFOが現れた。
カボチャだったりニンジンだったりトマトだったり、どれも野菜のUFOばかりだ。
『これに乗って宇宙へ行くだしょ。新たな住処を求めて。』
古代都市にいたペンゲンたちが、UFOの中に吸い込まれていく。
王様ペンゲンが『女王様もお早く』と手招きした。
『というわけだしょから、ここはもう閉鎖だしょ。』
そう言って杖を掲げると、辺りがグラグラと揺れた。
「お、おい!なんだこりゃ・・・・、」
『海底火山の活動を早めたんだしょ。もうじきここはマグマに飲み込まれるだしょ。』
「そんな!」
『タムタムたちと同じ場所に行きたくなければ、とっとと帰るだしょ。』
そう言い残し、UFOへ飛んでいく。
「女王!またいつか会おう!」
『もう会うことはないだしょ。』
映画、コマンドーのメイトリックスばりに決め台詞を吐く。
古代人たちを乗せたUFOは、ピカピカと点滅する。
そして手品のように一瞬で消えてしまった。
「さらばだ、古代人たちよ。」
誰もいなくなった空に手を振る。
その瞬間、地割れが起きてマグマが噴き出した。
「とっとと帰らないと、俺もマグマの中に沈んでしまうな。」
マグマに飲まれていく古代都市。
ここには確かに古代人たちがいた。
もう二度と会うことはないだろうが、「またな」と呟きかける。
俺は俺で待っている人がいるわけで、早く彼女たちの元へ行かないと。
沈みゆく古代都市に背を向け、便所の穴に飛び込んだ。

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