不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 第二十八話 オカルト編集長の陰謀(2)

  • 2017.07.30 Sunday
  • 09:33

JUGEMテーマ:自作小説

便所と便所を繋ぐワームホール。
そこは長く暗い穴だった。
《臭い!》
とんでもない臭いが充満している。
だけどしばらく我慢していると、突然どこかに放り出された。
「ぐはあッ!」
ケツから落っこちて、ブっと放屁してしまう。
「久能さん!」
由香里君が走ってくる。
俺の傍に膝をつき、「よかった・・・」とため息をついた。
「なかなか出てこないから心配してたんです。」
「途中でちょっと詰まってしまってな。」
「詰まるような場所なんてありましたっけ?」
「運動不足のせいさ。」
腹の肉を掴んでみせると、「じゃあ私と一緒に空手をやりましょうよ」と言われた。
「引き締まるし強くなるし、一石二鳥ですよ。」
「気持ちだけもらっとくよ。」
ポンと由香里君の頭を叩いて、よっこらっしょっと立ち上がる。
「おお、本当に人形塚だ。」
周りは木立に囲まれる山。
手前には小さな古墳があって、その上に便器が建っていた。
「なんであんな場所なんだよ。もうちょっと他にあるだろ。」
不満を言いつつも、とりあえず帰って来られてほっとした。
「さあて、これで古代人の事件は終わりだ。事務所へ帰ろう。」
「ですね。早くお風呂に入りたいし。」
便所のワームホールを通ったせいで、まだ臭いが残っている。
色々なことがあった事件だが、終わりよければ全てよし。
今の俺たちに必要なのは休息だ。
「じゃあみんな、帰るか。」
俺たちは山を降りる。
しかし麓まで来た時に、ほぼパンツ一丁だったことを思い出した。
「まずいな・・・この格好で歩いたら捕まる。」
上は短い毛皮のコート。
下はパンツ。
これで街を歩いたら、パトカーに乗せられること請け合いだ。
「由香里君、悪いが君の宇宙服を貸してくれないか?」
「嫌ですよ、私までお巡りさんに捕まるじゃないですか。」
「でも水着を着てるだろ?」
「だから嫌なんです。」
「平気さ。君みたいな美人が水着で歩いていたら、むしろ歓迎されるよ。」
「歓迎するのは久能さんみたいな人だけです。」
「冷たいな。だったら俺はどうすればいいのさ。」
どこからどう見ても変態の格好をしているのに、街へ出るのは恥ずかしい。
どうしたもんかと困っていると、爺さんが「これ持ってけ」と何かを差し出した。
「それは?」
「儂の股引じゃ。」
「・・・・・・・・。」
「何があるか分からんから、いつも予備を持ち歩いとるんじゃ。」
「・・・・そうか、では・・・・、」
何もないよりはマシ。
そう思って受け取ると、今度は婆さんが「これもやる」と何かを差し出した。
「それは?」
「ブラジャーじゃ。」
「なぜそんな物を・・・・、」
「もしもの時の為に、予備を持ち歩いとる。」
「・・・そうか。なら使わせてもらうよ。」
なんの予備かは分からないが、好意を無駄にするのは悪い。
爺さんの股引を穿き、婆さんのブラジャーを胸に着けた。
「どうだい由香里君?似合ってるかな?」
「こっち向かないで下さい!」
ガバっとコートを広げてみせると、思いっきりカカト落としをくらった。
「ごはあッ・・・・、」
「ほんっとにそういう所は治りませんよね。小学生レベルのイタズラですよ。」
「少年の心を持っていると言ってくれ。」
「変態の間違いでしょう?」
由香里君の目は冷たい。
でもそれが快感だった。
「お楽しみのところ悪いんだけど・・・・、」
茂美が口を開く。
「先に帰るわね。」
「あんたはいいな。スーツのままだ。」
「私ならパンツ一丁でも気にせず帰るけどね。」
「あんたほと神経が太くないんでな。」
「ふふふ、いつでも平静がモットーなの。」
クスクス笑いながら街へ向かっていく。
「ついでにお爺さんとお婆さんも送っていくわ。」
「ああ、頼む。」
茂美は街へ向かっていく。
爺さんと婆さんは「世話になったな」と言った。
「また家に来い。採れたての野菜を食わせてやるから。」
「普通の野菜にしてくれよ。UFOはもうゴメンだ。」
二人は手を振りながら去っていく。
由香里君が「また遊びに行きますね〜!」と手を振り返した。
「いいお爺ちゃんとお婆ちゃんでしたね。」
「変わり者っていった方が正しいだろ。」
「それを言うなら、今回の事件そのものが変わったことばかりですよ。」
「確かにな。まさか本物の古代人に会うとは。」
「ちゃんと新しい住処が見つかるかなあ。」
由香里君は心配そうに空を見上げる。
《平気さ。宇宙のどこかに新しい家を建てるだろうから。》
新たな住処は月か火星か?
どこへ住むにせよ、今後俺たちと会うことはないだろう。
《達者でな、古代人たちよ。》
空に向かって呟くと、由香里君が「何か言いました?」と振り返った。
「達者でなと言っただけさ。」
「みんな幸せに暮らしてくれるといいですね。」
「ああ。それよりも・・・・これはどうにかならんものか。」
上は短いコートとブラジャー、下は股引。
これでは新手の変態にしか見えない。
「なあ由香里君、どこかで服を買ってきてくれないか?」
「無理ですよ、財布なんて持ってないし。」
「う〜む・・・・困った。」
「ていうか私だって宇宙服のままなんですからね。これもけっこう恥ずかしいんですよ。」
「じゃあ代わりに俺が着てあげよう。君は水着で・・・・、」
「けっこうです。」
「冷たいな。」
「じゃあタクシーでも拾いましょうよ。事務所まで帰ればお金があるでしょ?」
「おお、その手があったか。」
俺たちはコソコソと街へ出る。
なるべく物陰に隠れながら、通りゆくタクシーに手を振った。
しかし二人してこんな格好では停ってくれない。
「全然ダメだな。」
がっくりと肩を落とすと、由香里君が「こうなったら・・・」と呟いた。
「どうした?」
「・・・・・・・・。」
「おい!いきなり何を・・・・、」
彼女は宇宙服を脱ぎ捨てる。
エロくて健康的な水着姿となって、俺の息子が反り返った。
「ちょっと待ってて下さい。」
そう言って迫って来るタクシーに手を挙げた。
「・・・・・おお!停った。」
ガチャリとドアが開き、「久能さん、早く!」と手招きする。
俺はそそくさとタクシーに乗り込んだ。
運転手のおっさんがルームミラー越しに由香里君を見つめている。
彼のあそこも反り立っていた。
「ええっと・・・・どこまで?」
思いっきり鼻の下が伸びている。
由香里君は宇宙服で身体を隠しながら「神戸まで」と答えた。
「いやあ、助かったよ由香里君。」
「だってこうしないと誰も停ってくれないから。」
「さすがはミスコンの勝者、男なんてイチコロだな。」
「そういう意味で水着になったんじゃありません。宇宙服よりはマシだと思っただけです。
それにミスコンはノーコンテストだし。」
「いや、君の方が勝っていたさ。」
「そんなの分からないですよ。ティムティム女王は手強かったし。」
「いいや、君の方が可愛い。」
「ほ、ほんとですか・・・?」
嬉しそうに頬を赤くする。
しかし俺の息子を見て、「一気に萎えたました・・・」と目を逸らした。
「下心が丸見えですよ。」
「正直が俺のモットーさ。」
「我慢も覚えて下さい。」
「ま、いずれはね。」
「そんなこと言うんだったら、茂美さんの所に就職先を替えようかなあ。」
「それはダメだ。あいつの所へ行くくらいなら、君が所長をやってもいいからウチにいてくれ。」
「え?ほんとに?」
「本当に茂美の所へ行くつもりならな。」
「ふふふ、冗談ですよ。」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
嬉しそうに笑っている。
「なあ由香里君。」
「なんですか?」
「今回の依頼、茂美からギャラをふんだくるつもりだ。」
「ちゃんと払ってくれますかね?」
「元はと言えばあいつのせいだから。何がなんでも払わせてやるさ。」
こんな珍事に巻き込まれ、定期購読までさせられたのだ。
それなりの見返りを貰わないと割に合わない。
「それでさ、もしたんまりとギャラが入ったら、二人で旅行でも行かないか?」
「それさっきも言ってましたね。」
「君にはいつも助けられてる。ここは所長として労わないとと思ってね。」
そう言って肩を竦めると、「別にいいですけど・・・」と怪訝な顔をした。
「ほんとにただの旅行ですよね?」
「ん?」
「またエッチなこと考えてるんじゃないかと思って。」
「考えてるさ。」
「なッ・・・・堂々と言い切りましたね。」
嬉しそうにしていた顔が、また鬼のように変わる。
「久能さん!今日という今日は言わせてもらいます!いい加減そのセクハラまがいのことはやめて下さい。
私は久能さんのことをよく知ってるからいいけど、もし依頼人にそんな態度を取ったら訴えられて・・・、」
「セクハラじゃないさ。」
「はい?」
「下心だけならそうなるだろう。でもそれだけじゃなかったとしたら?」
「ど、どういうことですか・・・?」
急にうろたえる由香里君。
俺は「そのまんまの意味さ」と笑った。
「君が事務所を離れている間、俺は気づいたんだ。やっぱり俺には君が必要だと。」
「またそんなこと言って。エッチな本ばっかり見てたんでしょう?」
「いいや、君がいないのに読んでもつまらない。」
「なんですかそれ?ああいうのって一人で読むものなんじゃ・・・、」
「君がいつもカカト落としをしてくれる。いつだって正拳突きをかましてくれる。
そういうのがないと張り合いがなくてさ。」
そう言って肩を竦めると、「要するに構ってほしいんですね」と笑われた。
「そうさ。君がいない事務所は寂しくて仕方ない。だから傍にいてほしいのさ。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、私は久能さんのお母さんじゃありませんからね。
あんまり甘えてばっかりいると、いつまで経ってもまともな仕事なんか来な・・・・、」
「君がいればいいさ。」
「はい?」
「君が隣にいてくれればそれでいい。」
「・・・・・・・。」
「二人で久能探偵事務所、そうだろ?」
「久能さん・・・・。」
「今までも、そしてこれからも二人で探偵をやっていこうじゃないか。
古代人が相手でもUFOが相手でも、どんなアホな依頼でも君と二人なら楽しめるさ。」
我ながら臭いことを言ってしまった。
少々恥ずかしくなり、「ううん!」と咳払いする。
「まあ・・・なんだ。旅行でも行って、嫌なことはパーっと忘れよう。だからどうか茂美の所へ行くのだけは・・・、」
「いいですよ。」
由香里君は小さく頷く。
「エッチだしちゃらんぽらんな所長だけど、やる時はやる人ですから。
だからこれからも傍にいてあげます。」
そう言ってクスっと笑った。
「由香里君・・・・・。」
彼女の手を握り、「二人で朝陽を眺めよう」と言った。
「一つのベッド、そこで朝を迎える俺たち。君の肩を抱きながら、水平線から昇りゆく朝陽を・・・・、」
「それ下心なしで言ってます?」
「もちろんさ。・・・いや、エロい心はもちろんある。しかしだね、そういう気持ちだけで言っているわけでは・・・・、」
「また下半身が膨らんでますけど?」
「・・・・ぬうあ!」
いつもの3倍くらい膨張している。
「鎮まれ!」と叩いていると、「はあ・・・」とため息が聴こえた。
「危うく騙されるところだった。」
「いやいや!今のは本心だよ、うん。何もエロい気持ちだけじゃ・・・・、」
「旅行に行くのはいいですけど、部屋は別々で。」
「そんな!」
「あ、しぼんだ。」
「え?・・・・おいコラ!なんて分かりやすい反応をするんだ!出来の悪い奴め!」
呆れる由香里君、焦る俺。
いい加減息子を躾けないと、また就職先を替えるなんて言い出しかねない。
「ま、まあ・・・アレだ。とにかく今は家に帰って休もう。その後は茂美からギャラをふんだくらないと。」
「そうですね。私ももう一度就職のことを真剣に考えないと。」
「そんな!」
「だから冗談ですって。この世の終わりみたいな顔しないで下さい。」
「なら二人で朝陽を・・・・、」
「別々の部屋でね。」
「だけど俺たちは付き合いが長いんだよ?お互いのことをよく知っているわけだし、もうそろそろ下半身が交わっても・・・・、」
「くたばれ!」
「うごうッ!」
タクシーの中なのにカカト落としがめり込む。
驚く運ちゃん。
彼の息子もしぼんでいった。

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