不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜 最終話 オカルト編集長の陰謀(3)

  • 2017.07.31 Monday
  • 10:21

JUGEMテーマ:自作小説

古代人の事件から一週間後、事務所でタバコを吹かしていた。
茂美からギャラをふんだくってやろうと思ったのに、なぜか奴は姿を見せない。
上の階にある出版社にも行ったけど、ここ数日は出勤してないとのことだった。
編集長が出勤しないで雑誌が作れるものなのか?
色々不思議に思ったが、内容なんてないに等しい雑誌なので、特に問題ないのだろう。
もしこのまま奴が現れなければ、それはそれで喜ばしいことだ。
ギャラはもらえなくなるが、今後一切のあの女の関わらないですむというのなら、それは何よりの報酬になる。
そんな事を考えながら煙を吐き出していると、コンコンのノックが鳴った。
「はいはい。」
由香里君がドアを開けに行く。
そして「成美さん!」と叫んだ。
《チッ・・・・戻ってきやがったか。》
椅子を回し、背中を向ける。
茂美は「久能さんいる?」などと、わざとらしく尋ねた。
「ええ、いますけど・・・・でもどうしたんですか?その格好は。」
「ああ、これ?面白いでしょ?」
「面白いっていうか・・・・なんで?っていうか。」
由香里君が驚いている。
《茂美の奴、いったいどんな格好をしているんだ?》
興味はあるが、振り返る気分にはなれない。
目を合わしたら最後、また余計な依頼を持ちかけられるのだ。
この際ギャラは諦めて、自腹で旅行に行くしかない。
「ふふふ、久能さんったら。また私のこと警戒しちゃって。」
背中越しに不敵な笑みが伝わってくる。
コツコツとヒールの音を響かせながら、「久能さん」と近づいてきた。
「この前はお疲れ様。」
「ああ。」
「大変な仕事だったわね。」
「まったくだ。どっかの誰かさんが余計なことをしてくれるから。」
「怒らないで。その分のギャラを持ってきたんだから。」
そう言って俺の目の前に紙切れを振った。
「なんだこれは?」
「小切手よ。」
「・・・・ほう、いいのか?こんなに貰って。」
「今回の事件は私にも原因があるからね。」
「あんた以外に原因が思い当たらないぞ。」
「それに色々と危険だったから。」
「なら貰っておくよ。」
小切手には700万の数字が。
これならかなり良い所へ旅行に行ける。
「わざわざ払いに来てもらってすまんな。じゃあ帰ってくれ。」
羽虫でも追い払うように、シッシと手を振る。
するとその手を掴まれて、何かを握らされた。
「ん?なんだこりゃ?」
「見れば分かるでしょ?」
「ああ、ただの石ころだ。」
「お礼よ。」
「お礼?なんの?」
「ティムティム女王から。」
「なんだって?」
「この前彼女が会いに来たのよ。」
「会いにって・・・・あんたにか?」
「彼女ね、今は土星の近くに住んでるの。」
「・・・・・・・。」
「新しい住処が見つかって、無事に暮らせるようになったわけ。だからお礼を言いに来てくれたの。」
「ちょ、ちょっと待て!」
慌てて話を止める。
「由香里君。」
チョイチョイと手招きをすると、「なんですか?」と面倒くさそうに言った。
「いま事務所のホームページの更新で忙しいんです。」
「実はタバコが切れてしまってね。買って来てくれないか?」
「自分で行って下さい。」
「そうしたいけど、茂美さんと仕事の話をしてるんだ。ちょっと手が離せなくてな。」
「ほんとに!また依頼を持って来てくれたんですか?」
嬉しそうに立ち上がる。
俺は「そういうわけなんでちょっと頼む」と千円を渡した。
「すぐ行ってきます!帰って来たら私にも聞かせて下さいね!」
「もちろんさ。あ、あと釣りはいらないから。アイスでも買いたまえ。」
「子供みたいに言わないで下さい。」
由香里君は上着を羽織り、千円をポケットにつっこんで出ていった。
「・・・・さて、詳しく聞かせてもらおうか。」
灰皿を消し、茂美を振り返る。
「・・・・あんた、その格好はなんだ?」
「ふふふ、似合ってるでしょ?」
「それ宇宙服じゃないか。」
全身タイツに宇宙人のアップリケ。
これは間違いなくあの宇宙服だ。
「なんでそんな物を着て・・・・・、」
言いかける俺の口を、茂美は指で止めた。
「ふふふ、優しいわね久能さんは。」
「何が?」
「だって女王との約束なんでしょ?由香里ちゃんには何も話さないって。」
「ああ。そしてその事を知ってるあんたも、俺と同じく女王の真意を知っているということだな?」
「まあね、順を追って話すわ。」
茂美はデスクに腰掛ける。
ピッチリタイツの宇宙服が、そのエロいボディを引き立てていた。
「すぐ息子さんが元気になるのね。ほんとに若いこと。」
「いつか躾けるさ。それよりあんたの話を詳しく聞かせてくれ。」
手にした石を見つめながら、「お礼ってなんのことだ?」と尋ねた。
「ふふふ、実はね、今回の事件はティムティム女王が私に依頼してきたのよ。」
「・・・・・はい?」
「人形塚の土偶が目覚めたのは、私が古文書を取ったから。だけどそうするように頼んできたのはティムティム女王なのよ。」
「話が見えん。どういうことだ?」
不穏な雲行きになってきた。眉間に皺が寄る。
「あのね、古文書の封印の力は元々弱まっていたの。このままではいずれ土偶は復活してしまう。
そうなれば人形が支配する世の中になってしまうわ。」
「実際にそうしようとしていたからな。」
「それを阻止する為に、ティムティム女王が私に会いに来たの。」
「なんであんたに会うんだ?」
「だって私はオカルトに詳しいもの。今までに散々ムー大陸やアトランティスのネタを扱ってるわ。
内容はほとんどがデタラメなんだけど、稀にそうじゃないこともあるの。
以前に一度だけ「呪われた人形」ってタイトルで特集を組んだことがあるのよ。
その時に人形塚の取材をしたわけ。」
「よくあんな所へ取材に行ったな。呆れる神経だよ。」
「その時にね、ティムティム女王が私のことを見ていたらしいの。
そしてこの女は使えるかもと思って、後日に声を掛けてきたわけ。」
「ほんとかよ?女王に責任をなすりつけようとしてないか?」
「いいから最後まで聞いて。女王は土偶が復活することを心配していたの。
そうなれば再び人形戦争が起きてしまうから。」
「それを阻止する為に、あんたに協力してくれと頼んできたと?」
「ええ。だけど私はか弱い女子だから、大したことは出来ないって答えたの。」
「あんたほど図太い神経の落ち主はいないと思うがな。」
「だから知り合いの探偵を紹介してあげるわって言ったのよ。
今までに幾つもの難事件を解決してきた腕利きの探偵を。」
「おい待て、ちょっと話がおかしくなってきたぞ。」
思わず立ち上がる。
動悸と目眩がして、台所で水を一杯飲んだ。
「あんたが俺を紹介したって?」
「ええ。」
「ということは、あんたが俺たちを巻き込んだってことだな?」
「巻き込むなんて人聞きの悪い。仕事を紹介してあげたんじゃない。」
「アホかお前は!こんな事件になるって分かってたら、最初から断ってたぞ!」
「でもいつもは危ない仕事がしたいって言ってるじゃない。」
「それはそうだが・・・・いや、しかしだな!古代人だのUFOだの、そんなオカルトじみた危険はゴメンだ。」
「そんなに怒らなくても。」
「怒るに決まってるだろ!なんでそういう大事なことは最初に言わない?」
「最初に言ったら断られると思って。」
「確信犯じゃないか!」
頭が痛くなってきた・・・・。
やっぱりこの女に関わるべきじゃなかった。
「要するにだ・・・・あんたは最初から全てを知っていたわけだ?
土偶が暴れ出すことも、女王がそれを鎮める為にミスコンを開くであろうことも。」
「ええ。」
「今回の事件、一から十まであんたの手の平の上だったわけだな?」
「そういう言い方しないで。この作戦は女王と私で考えたんだから。」
「嘘つけ!絶対にお前のアイデアだろ。」
「シナリオの99パーセントは私が考えたわね。」
「主犯だろうがそれ!」
「でも残りの1パーセントはティムティム女王よ。」
「どの部分だ?」
「ミスコンでどんな衣装を着るかって部分。」
「オシャレしたいだけじゃないか!どっか他でやれ!」
「だからそう怒らないでってば。事件はもう終わったんだし、みんな無事だった。それでいいじゃない。」
「タムタムとモリモリはあの世へ逝ってしまったんだぞ。みんな無事なわけないだろ。」
「でもそれは古代人同士の問題だから。私たちがどうこう言うことじゃないわ。」
「ぐッ・・・・こういう時だけまともなこと言いやがって。」
怒りを通り越して呆れてくる。
タバコを咥え、「帰ってくれ」と手を振った。
「もうあんたの顔は見たくない。」
「なんでそんなに怒るのよ?」
「怒らない方がどうかしてる。」
「ちゃんと依頼料は払ったじゃない。700万も。」
「割りに合わない気がしてきた。」
「それに私は雑誌の売り上げを伸ばせるわ。」
「定期購読が幾つも取れたもんな。」
「それだけじゃないわ。今回の事件、大々的に特集を組むつもりなの。
なんたって私も事件の中心にいたんだから、リアルな記事が書けるわ。」
「出来上がっても見せには来るな。あんたへの恨みが倍増しそうだ。」
呆れを通り越し、イライラが戻ってくる。
窓を開け、盛大に煙を吹かした。
「あ、ちなみになんだけど・・・・、」
「なんだ?」
「宇宙旅行へ行かない?」
「は?」
「実は今朝まで宇宙にいたのよ。ティムティム女王のUFOに乗って。」
「そうかい。そのまま宇宙の果てまで飛んでってくれればよかったのに。」
「それでね、新しい古代都市が出来たから、ぜひ遊びに来ないかって言ってくれたの。」
「誰が行くか!」
「私は行ってきたわよ。はい、これお土産。」
そう言ってお菓子の箱を置く。
「なんだこりゃ?」
「ムー大陸まんじゅうよ。」
「誰が食うかこんなもん。」
「でも向こうじゃ人気なのよ。火星人も買いに来てるし。」
「そうかい。儲かってけっこうなことだ。でも俺は金輪際関わることはない。
女王だって『もう会うことはない』ってメイトリックスばりに言ってたんだから。」
「そんなこと言わずに行ってあげればいいじゃない。」
「お断りだ。」
「でも彼女は決着を着けたがってるわ。」
「決着?」
「ミスコンよ。由香里ちゃんとの対決はノーコンテストに終わったでしょ?だから次こそはって・・・・、」
「馬鹿らしい。由香里君がそんなのOKするわけが・・・・、」
「やります!」
バン!とドアが開いて、勇ましい女戦士が現れる。
「・・・・由香里君、帰って来てたのか。」
目を釣り上げながら、ズンズン歩いてくる。
「はいこれ。」
ポンとタバコを置いて、「お釣りでアイスを買いました」とレジ袋を揺らす。
「う、うむ・・・・美味そうだな。」
「茂美さん、私行きます。宇宙へ。」
「まあ。」
「私も決着をつけたいと思ってたんです。うやむやなまま終わっちゃったから、ずっと胸に引っかかってて。」
「さすがは由香里ちゃん、話が分かるわ。」
茂美は嬉しそうに手を叩く。
俺は「やめとけ」と言った。
「どうせまたロクなことにならない。」
「でもこのまま終わりたくないんです。」
「君はいつからそんな子になったんだい?ミスコンなんて興味ない子だと思っていたが?」
「ミスコンがどうとかじゃなくて、きっちり決着をつけたいだけです。勝負は最後までやり抜かないと。」
グっと拳を握るその姿は、戦に赴く戦士のよう。
もはやどんな言葉でも止められないだろう。
「で、いつですか?」
「由香里ちゃんの都合の良い時でいいって言ってたわ。」
「じゃあ今から行きましょう。」
「いいの?忙しいんじゃない?」
「どうせ大した仕事はないから。」
そう言って俺を振り返る。
「久能さん、悪いけどちょっと宇宙へ行ってきます。」
「本当に行くのか?」
「ホームページに仕事の依頼が二件入っていました。」
「ほう、どんな?」
「逃げたオタマジャクシを捜してほしいって。」
「そうかい。田んぼに行って新しいのを捕まえてこいって返信しとくよ。」
「それと犬の躾をお願いしたいって。」
「俺は息子の躾で手いっぱいだ。だいたいそれは探偵の仕事じゃない。」
「どっちも久能さん一人でできますよね?」
「一ミリもやる気が起きないな。」
「じゃあ断っておいて下さい。私は女王と戦ってきますから。」
眉間に皺を寄せ、鼻息荒く事務所を出て行く。
「おい由香里君!旅行はどうするんだ?明後日に行く約束だろう?」
「久能さん一人でどうぞ。」
「そんな!ちゃんとゴムも買ったのに・・・・、」
「え?何か言いました?」
「・・・いや、何も。」
人を殺しそうな目で睨むので、一気に息子が萎えた。
「茂美さん、早く行きましょう。」
勇ましい足取りで出て行く由香里君。
もはや誰も止めることは出来まい。
「ふふふ、ほんとに勇ましい子。」
「茂美さん・・・・あんたが来なけりゃこんな事にはならなかったんだ。ほんとに疫病神め。」
「ごめんなさいねえ、よかったらゴム代払いましょうか?」
「馬鹿にしやがって。宇宙でもどこへでも好きなとこへ行ってこい。」
これ以上は付き合いきれない。
この女に関わるくらいだったら、犬にお手を教えていた方がマシだ。
「これ返すよ。」
女王からのお礼を投げ渡す。
「いらないの?」
「そんな石ころいるか。」
「あらそう?不思議な力を持った石なのに。」
茂美は残念そうに言う。
思わず「何か秘密があるのか?」と尋ねてしまった。
「これね、煩悩をコントロールする石なの。」
「なんだって?」
「水に溶かせば煩悩を押さえる薬になるの。」
「それはすごいな。息子を躾できる。」
「逆に油で揚げれば煩悩が増す。」
「ほう、そりゃ面白い。」
「しかも飲んだ相手が惚れてしまうというオマケ付き。」
「な、なんだってええええ!?」
慌てて石を取り返す。
こんな素晴らしい石、誰が返すものか。
「ふふふ、ねえ久能さん。」
「なんだ?薄気味悪い顔しやがって。」
「宇宙にはまだ見ぬ美人がいるかもしれないわ。」
「ん?」
「その石を使えば・・・・ねえ?美人な宇宙人のお嫁さんが見つかったりして。」
「・・・・いや、宇宙人の嫁さんは欲しくないな。」
「じゃあ由香里ちゃんに使えば?」
「なッ・・・・彼女に?」
「だって旅行に行くはずだったんでしょう?そこで一発ヤルつもりだったわけでしょう?」
「下品な言い方をするな。裸の付き合いをした後に、共に朝陽を眺めようとだな・・・・、」
「なら宇宙から眺めればいいじゃない。燦々と輝く太陽を。」
「そ、それは・・・つまり・・・・、」
「由香里ちゃんと宇宙旅行・・・・悪くないと思わない?」
不敵な笑みをしながら顔を近づけてくる。
俺は引き出しを開け、昨日買ったゴムを見つめた。
「・・・・いやいや!そういうのはイカンよ、うん。薬を使ってどうこうしようなんて、そんなのは犯罪者と同じ発想であって・・・、」
「あ、ちなみに好意のない相手には効かないからね。」
「え?」
「もし由香里ちゃんが久能さんに好意を持っていたら、煩悩によってそれが刺激されるわけ。
逆に久能さんのことが好きじゃないなら、何も起こりはしないわ。」
「・・・・・・・・。」
「本当は久能さんが煩悩をコントロールできるようにって、女王から預かった物なの。
だけどあなたに渡した以上、それはあなたの物。どう使おうと勝手よ。」
「・・・・・・。」
「私の見る限り、久能さんは嫌われてないと思うわ。だからそれを使えば・・・・、」
俺は立ち上がり、窓の外に石を投げ捨てた。
「あら。」
「・・・・間違いを起こしそうだ。やっぱりいらん。」
「ふふふ、後悔しない?」
「さあな。」
茂美に背中を向け、投げ捨てた石を見つめる。
車が走ってきて、コツンと弾いた。
コロコロと転がって、ドブの中に流されていく。
「ふ・・・・これでいいのさ。」
若干の後悔はあるものの、あんな物に頼って由香里君をどうこうしようとは思わない。
それはさすがに反則というものだろう。
「というわけで、とっとと帰ってくれ。くれぐれも由香里君が危ない目に遭うことがないようにだけ気をつけてくれよ。」
そう言って振り返ると、ガチャリと手錠を掛けられた。
「おい、何してる?」
「久能さん、ちょっとは成長したわね。」
「はあ?」
「あれはただの石ころよ。」
「はああ!?」
「ふふふ、煩悩に負けてついて来ると思ったのに。まさか捨てちゃうとはね。」
「アンタあ・・・・また騙そうとしたな。」
ほんっとにこの女だけは油断ならない。
思いっきり睨みつけてやったが、まったく悪びれていなかった。
「こうなったら実力行使しかないわ。」
茂美は自分の腕にも手錠を掛ける。
「おい!何をするつもりだ?」
「実はね、また女王から依頼を受けたのよ。」
「依頼?」
「なんでも土星に住む古代人がイチャモンを付けてきてるらしいの。
ここは自分たちの縄張りだから出て行けって。」
「そうかい。なら別の星に住めばいいさ。」
「でも他に住めそうな場所がないのよ。だからね、女王は挑戦状を叩きつけたの。
ミスコンをやって、わらわが勝ったらここに住まわせてくれって。」
「またミスコンか。ほんとに好きだな。」
「敵の大将もかなりの美少女でね。しかも家臣に至るまで美人揃いなのよ。」
「ほう、そりゃすごい。是非とも拝んでみたいけど、俺は行かないぞ。」
「こままミスコンをやれば、女王は確実に負けるわ。」
「なんで?」
「ミスコンはチーム戦で行うの。となると、古代人の方は女王しかまともに戦えないわ。」
「そりゃ他はペンゲンだらけだからな。」
「そこで私たちにお声がかかったってわけ。」
茂美はクスリと笑う。
目の奥には不穏な影が宿っていた。
「おい、あんたまさか・・・・、」
「そう、私たちは助っ人。地球人代表として、女王のチームで参加するの。」
「馬鹿な!なんだそのアホは展開は!」
「女王、由香里ちゃん、そして私でチームを組むわ。」
「あんたも出るのか!?」
「久能さんにも出てほしいの。」
「なんで!俺は男だぞ!」
「男性枠もあるのよ。向こうじゃむさ苦しい男がモテるらしいから、久能さんでも充分戦力になるわ。」
「お断りだ!」
「でも引き受けちゃったから。」
「だからなんで勝手に決めるんだ!?一言くらい相談しろよ!」
「見返りとして100年先まで定期購読してもらうことになったの。だから断れなくて。」
「そん時にはあんたは死んでるだろ!」
「いいえ、どうにか生きてみせるわ。どんな手を使ってもね・・・・。」
「怖いぞお前・・・・。」
茂美は本気のようだ。
こいつなら1000年先でも生きているかもしれない。
「というわけで、今から土星に行きましょ。」
「嫌だ!もうお前に関わりたくないんだ!」
「でも由香里ちゃんが待ってるわよ。」
そう言って窓の外を指さす。
そこには勇ましく空手の型をする由香里君がいた。
「茂美さん!早く行きましょう!!」
「ほら、助手があれだけ張り切ってるのよ。逃げるなんて恥ずかしいと思わない?」
「何を言う!この話を知ったら、由香里君だって断るに決まってる!」
窓から身を乗り出し、「由香里君!」と叫んだ。
「君は騙されてるぞ!この女はまた俺たちを利用しようとして・・・・、」
「はい、それじゃ行きましょう。」
「おいコラ!引っ張るな!」
「ふふふ、今回も良い記事になるわ。」
「なにい!?」
「移住先に土星を勧めて正解だった。あそこには美人の宇宙人が揃ってるからね。
きっとこういう展開になると思ってたのよ。」
「また悪だくみか!」
「商売の為よ。」
「あんた怖すぎるぞ!ていうかなんで土星人がいるなんて知ったるんだ!?」
「コネよコネ。」
「どんなコネだ!?」
「だから宇宙人とのコネ。NASAに知り合いがいてね、その伝手で紹介してもらったの。」
「・・・・オカルト雑誌の編集長なんかやめて、今すぐメンインブラックに入ったらどうだ?」
もはや逆らうまい。
きっとこいつ自身が宇宙人なのだ。
手錠を引っ張られ、外に連れ出される。
「由香里ちゃん、久能さんも行くって。」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。」
「だってミスコンですよ?久能さんは出られないんじゃ?」
「男性枠もあるの。」
「そうなんですか!」
なぜか喜んでいる。
俺の手を握り、「一緒に戦いましょうね!」と叫んだ。
「君はいつだって元気だな。」
「勝負になると燃えてくるんです。」
「そうかい。でも行ったらきっと後悔するよ。」
「そんなの行ってみなきゃ分かりません。ねえ茂美さん。」
「そうよお。助手がこれだけやる気になってるんだから、所長の久能さんが弱気でどうするの?」
「今すぐあんたの頭をカチ割ってやりたい。」
もうどうにでもなるがいい。
人生は水の流れのごとし。逆らわず、刃向わず、大きな流れに身を委ねるに限る。
「久能さん!今度こそ女王をギャフンと言わせてやりましょうね!」
再戦に喜ぶ由香里君・・・・真実を知ったらどう思うだろう?
いや、案外燃えるかもしれないな。
相手が誰であれ、この子は勝負となれば本気になるから。
「まあ・・・なんだ。気楽に行こうじゃないか。」
そう言ってポンと肩を叩いた時、ポケットからアレが落ちた。
「ん?何か落ちましたよ?」
由香里君は膝をかがめ、アレを拾う。
その瞬間、プルプルと震え出した。
「・・・・なんですかこれは?」
「ゴムさ。」
「どうしてこんな物を?」
「そりゃあれだよ、旅行に行くからさ。」
「はい?」
「沖縄への旅行はキャンセルになってしまった。だったら宇宙旅行に切り替えようと思ってね。」
「・・・・・・・・。」
「UFOの中、一つのベッドで過ごす俺たち。目が覚めたなら、君の肩を抱きながら燦々と輝く太陽を見つめるのさ。」
「へえ・・・・。」
「あ、ちなみに下心だけじゃないよ。ちゃんと愛のある夜を過ごそうじゃないか。
俺たちは付き合いが長いんだ。だったらもうそろそろ裸の付き合いをしてもと思ってだね・・・・、」
「また膨らんでますけど?」
「・・・・こりゃ失敬。」
「はあ・・・・ほんとに変わらないんだから。」
さっきまでの勢いはどこへやら。
呆れと憐憫のため息をつく。
「まああれだ。地球へ帰って来る頃には、俺たちは新しい形の関係になっているかもしれない。」
「はいはい、好きなだけ妄想して下さい。」
肩を竦めながら首を振っている。
踵を返し、「さっさと行きますよ」と歩き出した。
「ふふふ、先が思いやられるわね。」
「あんたさえいなけりゃもっと上手くいくんだ。」
「そうかしら?」
馬鹿にしたように笑うので、「見てろ」と言い返した。
「由香里君、そいつを返してくれ。」
「途中で捨てておきます。」
「そう言うな。君はウチに就職するんだ。だったらもっとお互いのことを知らないと。
そろそろこいつを必要とするに仲になってだね、二人で明るい未来を築こうじゃないか。」
極上の笑顔でポンとお尻を叩く。
すると由香里君も極上の笑顔を返した。
「由香里君、同じベッドで朝を迎えよ・・・・、」
「くたばれ!」
鬼神のごとくキレる由香里君。
極上のカカト落としがめり込んだ。

        不思議探偵誌〜オカルト編集長の陰謀〜  -完-

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