蝶の咲く木 第十六話 これが夢なら(2)

  • 2018.01.21 Sunday
  • 12:15

JUGEMテーマ:自作小説

終わりよければ全て良しというけど、中途半端な終わり方をした時はどうなんだろう?
天国に行くわけでもなく、地獄に落とされるわけでもなく、死後に違う星へ来るというのは、どう受け止めたらいいのか私には分からなかった。
私は今、子供の国という星にいる。
最初は天国かと思ったけど、傍を飛んでいる蝶が話しかけてきて、そうじゃないことを知った。
ていうか蝶が喋った時点で驚きだけど、『あんたも一緒だよ』と言われて、自分の身体を見た。
・・・・私は少しの間だけ気絶した。
あれだけ毛嫌いしていた虫に変わってしまうなんて・・・・。
地獄に落ちた方がマシだったかもしれない。
だけどこれは蝶に似ているけど蝶じゃあない。
正確に言うなら宇宙人モドキらしい。
ヴェヴェっていうこんな姿の宇宙人がいて、そいつとよく似た姿になってしまったというのだ。
いったい何がなんだかサッパリだけど、一つハッキリしていることがある。
もう私は人間じゃないってこと。
私の他にも宇宙人モドキはいる。
蝶みたいにその辺を飛び回っている。
そしてその中に混じってたくさんの子供がいた。
さっきの宇宙人モドキによれば、この子たちは不幸な死に方をした子供らしい。
虐待されたり、変態に殺されたり。
ヴェヴェってやつが、そんな子供たちをここへ連れて来るのだという。
《じゃあなんで私が来たわけ?全然子供じゃないんですけど・・・・。》
子供の国なのに大人が来てもいいのかな・・・・なんて考えながら、周りの景色を見渡した。
とんでもなく大きな木が連なっていて、下には雲海が流れている。
まるで神話のような世界だ。
《なんでこんな所に来ちゃったんだろう。》
忙しなく羽を動かしながら、空を飛ぶのも悪くないもんだなんて、妙に楽しい気持ちになってくる。
もしこれが夢なら、もう少し続いてくれてもいいかなと思った。
《まあじっとしててもどうしようもないもんね。どっか飛んでってみるか。》
せっかく羽を手に入れたのだ。
うじうじ困るくらいなら、ちょっと探索でもしてみよう。
これは夢か幻か?
どっちか分からないけど、全ては私の頭の中で起きている妄想のような気がした。
あの旦那と一緒にいるうちに、私もそういうクセがついてしまったのかもしれない。
まあいいさ、考えようによっては、こんな楽しいアトラクションはないんだから。
夢だろうが妄想だろうが、日常じゃ経験の出来ないことだ。
不倫で憂さ晴らしするよりよっぽど良い。
見上げた空は青く、あの向こうには何もない気がする。
《下へ行ってみるか。》
巨木の根を流れる分厚い雲海、こっちには何かありそうな気がした。
《ワクワクする!こんな気持ち久しぶり。》
童心が蘇ってくる。
まだ子供の頃、男の子たちに混じって、秘密基地やら山を探検したことを思い出す。
あの延長だと思えば・・・・うん、やっぱり楽しいアトラクションだ。
パタパタと羽を動かして、雲海を目指していく。
不思議なもので、空を飛ぶ能力を手に入れると、高い所がまったく怖いと思わなくなっていた。
とんでもなく高い木から飛び立ったのに、恐怖なんて一つもなかった。
《虫みたいな身体なんて嫌だと思ったけど、案外悪くないかも。》
住めば都、慣れれば天国。
虫には虫の良さがあるんだななんて思いながら、どんどん雲海へと近づいていった。
《すご・・・・まるで海みたい。》
木の根を流れる雲海は、日本海の荒波よりも波立っていた。
モコモコと膨れ上がったかと思うと、鳴門の渦潮みたいにうねっている所もある。
《う〜ん・・・近くで見るとちょっと怖いなあ。》
もし流されたりしたら、いったいどうなってしまうんだろう。
飛び込むにはちょっと勇気がいる。
《・・・ま、いっか。どうせ夢か妄想なんだし。死ぬことはないでしょ。》
怖い怖いと思いつつも、雲海へと近づいていく。
そしてあと数メートルいう所まで来た時、どこからか『入っちゃダメ!』と聴こえた。
『そこに飛び込んだら死ぬよ。』
『え?誰?』
キョロキョロ辺りを見渡すと、『ここここ』と後ろから声がした。
『大きな木の根元。根っこが突き出てる場所。』
『・・・・ああ!』
振り向けば、木の根が丘のよう突き出ている場所があった。
そしてその上には・・・・、
『何あれ・・・・?』
まるで電車みたいに大きなイモムシがいる。
大きな牙を動かしながら、ガシガシと木の根を齧っていた。
『・・・・・・。』
また気絶しそうになる・・・・。
だってこんなデカいイモムシ見たことない・・・・。
全身が茶褐色で、鳥よけの目玉みたいな模様がたくさん付いている。
頭からは半透明のオレンジ色の触覚みたいなのが出ていて、気味悪く揺らいでいた。
『こっちに来て。』
イモムシが言う。
私は『無理・・・・』と後ずさった。
あんな大きなイモムシに近づいたら、ひと口で食べられるに決まってる。
いくら妄想の中の出来事だからって、虫に食われるのはゴメンだ。
『じゃ。』
クルっと背中を向けて逃げ出す。
さっきいた枝の上に戻ろう。
すると『待ってよ』と声が追いかけてきた。
『いやあ!来ないで!!』
きっと私を食べる為に追いかけてきたんだろう。
あの大きな身体で、せっせと木を登っているに違いない。
《追いつかれたら殺される!》
右に旋回して、木から離れて行く。
だけど『待ってってば!』と声は追いかけてきた。
《嘘でしょ!まさか空を飛べるっていうの!?》
あの巨大なイモムシに羽があって、私を追いかけて飛んで・・・、
想像しただけでも吐きそうになって、『来ないでよおおおお!』と叫んだ。
『イモムシの餌になんかなりたくない!』
『誰も食べたりなんかしないって!』
『嘘!だったらなんで追いかけてくんのよ!』
『危ないからよ!上に戻ったら殺されるよ!!』
『殺しにきてるのはアンタでしょ!』
『違うってば!上に戻っちゃダメなの!ヴェヴェが来たら殺される!』
『イモムシに食われるくらいなら、宇宙人に殺された方がマシよ!』
『だからあ〜・・・・私はイモムシじゃないってば!』
後ろから迫ってくる気配は、だんだんと距離を縮めてくる。
そして・・・・ポンと私の羽を掴んだ。
『イヤああああああ!食べないでえええええ!』
思いっきり腕を振り回して暴れまくる。
誰か大人しく食われてやるもんか!
『イモムシの分際で・・・・人間を舐めんなよ!』
そう言って暴れまくっていると、『私も人間よ』と返ってきた。
『はあ!?イモムシが人間なわけが・・・・、』
『だからイモムシじゃないって言ってんでしょ!こっち見ろ!』
羽交い絞めにされてから、グイっと頭を振り向かされる。
そこにはいたのは・・・・、
『イヤああああああ・・・・って、あれ?』
『だから言ったでしょ、イモムシじゃないって。』
『私とおんなじ姿・・・・。』
『そうよ。私は元人間、柚子さんと同じ。』
『なんで私の名前知ってんの!?』
『旦那さんから聞いたから。』
『へ?旦那?』
『円香拓さん、オカルト雑誌の記者。あなたの夫でしょ?』
『・・・・・ごめん、全然状況が飲み込めない。』
追いかけて来たのがイモムシじゃなかったことはホっとしてる。
だけど別の意味で頭がこんがらがってきた。
『え?ちょっと待って・・・・なんであんたが旦那のこと知ってるの?』
『取材を受けたから。』
『はい?』
『あの大木の所で取材を受けたの。』
『取材って・・・・まさか・・・・、』
『それと死にそうなになってるのを助けてあげた。ステルスをヴェヴェに見破られて、頭を切り落とされてたわ。
それで雲海へ捨てられたの。私はさっきのイモムシの近くにいたから、急いで助けに行ったわけ。』
『うん、いや・・・ごめん。ほんと話が見えなくて・・・・、』
『頭を切り落とされても即死するわけじゃないわ。だからまだほんの少しだけ生きてた。
私は羽から繭を出して、慌てて円香さんの頭を包んだの。
それを屋敷のお爺さんのとこまで持っていって、あとはあの人に任せたわ。
幸いどうにか助かったみたいでよかったね。』
『・・・・・・そうね。』
思わず頷いてしまったが、何一つ理解出来なかった。
呆然とする私に向かって、『大丈夫?』と見つめてくる。
『大丈夫に見える・・・・?』
『全然。』
『じゃあ聞かないで・・・・。』
『あのね、円香さんはどうにか助かったけど、そこまで長くは生きられない。まずはそれを知ってほしいの。』
『へ?』
『首から下はクローンだから。もって10年、早いと3年で死んじゃう。』
『クローンって・・・・何言ってんの?』
『可哀想だけど仕方ない。あのお爺さんが余計なことするから・・・・。
この星のこと知ってもらおうとしたんだろうけど、ステルスくらいじゃヴェヴェの目は誤魔化せないのに。』
悔しそうに顔を歪めて、辛そうに首を振っている。
『だけど円香さんにいま死なれちゃ困るの。あの人にはこの星のことを記事にしてもらわないと。
それで地球に根を張るのを防いでもらわないといけないから。』
・・・・何度も言う。
さっきからまったく話が見えない。
いったいコイツは何を言っているんだろう?
話が見えないんじゃ質問のしようもないし、ていうか・・・・そろそろ夢から覚めてほしい。
『ごめん、旦那が病院で待ってるんだ。そろそろ起きてもいいかな?』
『気持ちは分かるけど、これは現実だから。』
『そうね、あんた達にとってはね。でもここは私の頭の中でしょ?
昨日から色々あってロクに眠れなくて・・・・車の中で居眠りしてるんでしょ?』
『ううん、ちゃんと起きてる。そもそもあなたをここへ連れて来たのは私だし。』
『はい?あんたが・・・・?』
『円香さんに手を貸してあげてほしいの。一人じゃ無理だろうから。』
『・・・・何を?』
『だからここの巨木が地球に根を張るのを。それを説明する為に連れて来たんだけど、さっきのイモムシが触覚で思いっきりあなたのことを叩き飛ばしちゃったの。
それで上の枝まで行っちゃったってわけ。幸いヴェヴェがいなかったから殺されずにすんだみたいだけど。』
とんでもないことをサラっと言う。
こいつが私をこんな場所へ連れてきた犯人?
もしそうだとするなら、今すぐにでも元の場所へ帰してほしい。
そう言おうとしたら、『ヤバ!』と慌て出した。
『ヴェヴェが来た!』
私の手を引いて、イモムシの方へ飛んでいく。
『ちょっと!』
『ステルス使うからじっとしてて。』
そう言って羽から糸を出し、私たちを包んでいく。まるで繭みたいに。
すると次の瞬間、その繭が弾けて、息が出来なくなっていた。
《え!え!何!?呼吸が出来ない!!》
このままでは死んでしまう・・・・。
どうにかしてよと叫ぼうとしたが、息ができないんじゃ声も出ない。
宇宙人モドキは私の手を引っ張り、どんどんイモムシの方へ連れて行く。
《ちょっと!離して!!》
ジタバタ暴れていると、ふと頭上の景色が目に入った。
《なにあれ・・・・・・。》
私たちによく似た生き物がこっちへ迫っている。
遠く離れているのに、背筋がゾワゾワっとするような、嫌な雰囲気を感じた。
《怖い・・・・。》
素直にそう思った。
あれは私たちに似てるけど、まったく同じじゃあない。
何かこう・・・・私たちが一般人だとするなら、あれは凶悪な犯罪者のような不気味さがあった。
《・・・・もしかしてあれがヴェヴェ?》
なんとなくそう思ったが、きっと間違っていないはずだ。
アイツは私とは違うし、私の手を引っ張ってるコイツとも違う。
枝の上にいたたくさんの宇宙人モドキとも違う気配を放っている。
なんていうかな・・・・とにかく近寄りたくないし、関わりたくないと思うような怖さがあった。
《アレ・・・・絶対に怒ってる。きっと大人の私がここにいるからだ。》
ここは子供の星。
ということは大人はお呼でないはずだ。
どこからか侵入した邪魔者を抹殺する為に、こっちへ迫ってるんだろう。
《怖い!早く逃げて!!》
アレに襲われるくらいなら、イモムシに食われる方がマシかもしれない。
とにかく一刻も早くヴェヴェから離れたかった。
しかし奴は飛ぶのが早く、あっさりと私たちまで追いついた。
《いやあ!》
明らかに怒っている・・・・平然とした表情をしているけど、直視できないほど狂気じみた目をしている。
殺されると思った・・・・今度こそ終わりなんだと。
だけどヴェヴェは私たちの近くで動きを止めた。
グルっと辺りを見渡して、ヒラヒラと触覚を動かしている。
『またステルスか・・・・。』
ボソっとそう呟くのが聴こえた。
顔をしかめ、腕を組み、『どうしようっかなあ』と何かを悩んでいる。
《何を困ってるんだろう?もしかして私たちが見えてないの?》
悩むヴェヴェを置き去りにして、私はどんどん引っ張られていく。
あとちょっとでイモムシへ辿り着く。
きっとこの大きな虫の後ろに隠れるつもりなんだろう。
いくらヴェヴェが怖い奴でも、さすがにこんだけデカい虫には勝てないだろうから。
《早く!》
あれだけ嫌だと思っていたイモムシの傍へ行くことを望んでる。
それくらいにヴェヴェの放つ怖さは異常だった。
《もうちょっと・・・・、》
そう思った瞬間、後ろから羽を掴まれた。
『捕まえ〜た。』
振り向くと、すぐそこにヴェヴェの顔があった。
《・・・・・・・。》
おぞましさと恐怖で声が出なくなる。
元々出ないんだけど、頭の中でさえ悲鳴を上げることが出来なかった。
ヴェヴェの羽は鏡のように光を反射して、私の姿を映し出している。
・・・いや、それだけじゃない。
羽から糸が伸びて、私の腕と足に巻きついていた。
『いやあ!』
今度は叫んだ。
ていうか声が出た・・・・。
さっきまで出なかったのになんで・・・・、
『あなた大人ね?』
そう言ってブチブチっと羽を毟られた。
『痛ッ・・・・、』
『どうやってここへ入り込んだの?』
今度は腕を掴まれる。
その力は万力みたいで、今にも潰れそうなほどだった。
『やめて!千切れる!!』
『質問に答えないなら本当に千切るわよ。』
指を突き刺されて、電気を流されたような痛みが走る。
『いだあああああああッ・・・・・、』
『どうやってここへ入って来たの?』
『そ・・・そこの!そこの宇宙人モドキが・・・・、』
『そこってどこ?』
『だから私の後ろ!手を引っ張ってるそいつ・・・・、』
『誰もいないじゃない。』
『え?そんなこと・・・・、』
言われて振り返ると、本当に誰もいなかった。
ついさっきまで私の手を引っ張ってたのに・・・・。
『あなた嘘ついたわね?』
『違う!ほんとにいたの!嘘じゃないってば!』
『大人は平気で嘘をつくからね。信用できないわ。』
ヴェヴェの目が狂気を帯びて、怒りに染まっていく。
私の腕はグチュっと音を立て、いとも簡単に千切られてしまった。
『ああああああ・・・・、』
『もう一度聞くわね。どうやってここへ入ってきたの?』
今度は頭を掴まれる。
指がこめかみに食い込んで、頭蓋骨が音を立てた。
『いやあ!助けて!!』
『助かりたいなら答えて。』
『だから本当だって!そこのイモムシから声がして、そうしたら私と同じような生き物が出てきたの・・・・。
そいつが自分で言ったのよ!私をここへ連れて来たって!』
ヴェヴェの怪力は私の頭を締め上げる。
あとちょっと力を入れられたら本当に死んでしまうだろう。
『嘘じゃない・・・・お願いだから信じてよ・・・・。』
泣いたのなんて何年ぶりだろう。
この身体、涙は出ないみたいだけど、涙腺があるならきっと泣いている。
結婚して優馬が出来てから、一度も泣いたことなんてなかったのに。
・・・・いや、そんな事はないか。
去年の始め、優馬は喘息の発作で死にかけた。
白目を剥き、痙攣を起こした時は、私の方が生きている心地がしなかった。
幸いどいうにか助かったけど、医者からは奇跡だと言われた。
死んでても全然おかしくない状態だったと。
あの時はさすがに泣いた。
ほんとにもうダメだと思ったから・・・・。
そして今、私自身がダメになろうとしている。
このヴェヴェって奴は、きっと私を殺すに違いない。
何をどう答えても、私の頭はグシャっと握りつぶされて・・・・、
『イモムシ?』
急にヴェヴェの力が緩む。
少しだけ頭が楽になって、ホッと息をついた。
『イモムシって何?』
『え?』
『どこにいるの?』
さっきまでの異常な狂気は消え、代わりにピンと張り詰めた緊張感が漂う。
『どこって・・・・そこにいるじゃない。』
私は丘のような木の根を指差した。
そこにはさっきと同じようにイモムシがいて、ガシガシと根を齧っている。
『・・・・どこ?』
『だからそこ。丘みたいな木の根の所。』
『・・・・・ほんとに?』
『ほんとにって・・・・もしかして見えないの?』
『・・・・・・・。』
ヴェヴェはじっと目を凝らす。
そして鏡みたいな羽を向けて、木の根を映した。
『チクショウ!』
『え!なに・・・・?』
『また涌いてきやがった!』
目に再び狂気が戻ってくる。
そのまま上へと舞い上がり、憎らしそうにイモムシを睨んだ。
《まさか・・・戦う気?》
ヴェヴェの殺気は尋常じゃない。
もし私が人間のままだったら、全身に鳥肌が立っているだろう。
イモムシとヴェヴェの殺し合いなんて見たくない。
きっとしばらく飯が食えなくなる・・・・。
そう思って目を逸らそうとした時、ヴェヴェはくるっと背中を向けた。
そして・・・・、
『あ・・・・・。』
あれだけおっかない奴が、慌てて上の方へと飛び去っていく。
ものすごい速さで逃げるもんだから、瞬く間に見えなくなってしまった。
『・・・・・なんなのいったい?』
ヴェヴェが消えた空を呆然と見つめていると、『大丈夫だった?』と肩を叩かれた。
『ひいッ!』
『私よ私。』
『・・・あんた!』
『危なかったね、大丈夫?』
『大丈夫なわけあるか!一人だけに逃げやがって!』
なんて薄情な奴なのか。
私をここへ連れてきた犯人なら、私を守れっていうんだ。
『危うく殺されるところだったじゃない!』
『ごめん。でも二人とも捕まったらそれこそ終わりだと思って。』
そう言ってイモムシを振り返り、『あの子のおかげで助かったわ』と肩を竦めた。
『あの子がいなかったら、私も柚子さんも殺されてた。』
『あのねえ・・・・こっちは腕を千切られたのよ!のほほんと笑うな!』
『ごめんごめん、でも宇宙人モドキに変わると、腕が千切れたくらいだとそこまで痛くないでしょ?』
『まあ言われてみれば・・・・、』
『人間のままだったらショック死してるよ。』
『そうだけど・・・・そういう問題じゃないでしょ!一人だけ逃げるなんて・・・、』
『だからゴメンってば。すぐ治してあげるから。』
宇宙人モドキは羽から糸を出す。
それを千切れた私の腕に絡めて、『はいこれでよし』と頷いた。
『腕くらいならこれで再生するから。よかったね。』
そう言ってニコッと笑う。
いったい誰のせいでこんな事になったと思っているんだろう。
『あのさ、あんたって・・・・、』
『遠野真鈴。』
『は?』
『私の名前。みんなからはなつって呼ばれてる。柚子さんもそう呼んで。』
私の怒りもよそに、屈託のない顔で微笑む。
もうなんと返事をしていいのか分からない。
ただ一つ言えることは、元の世界に帰りたいということ。
これが夢なら、今すぐ目が覚めてほしかった。

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM