勇気のボタン〜空っぽの賽銭箱〜 第十六話 獣達の思惑(3)

  • 2018.04.07 Saturday
  • 11:23

JUGEMテーマ:自作小説

冬の水は冷たい。
特に山の渓流は身も凍るほどだ。
「うう・・・寒い・・・・。」
俺は自分の身体を抱きながら、渓流の傍でブルブルと震えていた。
ちなみに今は素っ裸である。
だから余計に寒い・・・・・。
「・・・・えっくしょ!」
ついにくしゃみが出る。明日は間違いなく風邪だろう。
するとその時、急にぼんやりと背中が暖かくなった。
振り返るとチェリー君が焚火を起こしてくれていた。
「これでちっとは温まるだろ。」
「おお!ありがとう・・・・。」
砂漠にオアシスとはこのことだ。
焚火の熱は救世主のように寒さを吹き飛ばしてくれた。
「身体が温もったら仕事再開だぞ。」
「ああ。このまま引き下がれるか。」
俺とチェリー君は目を見合わせて頷いた。
・・・今から20分ほど前、俺は崖の下に投げ落とされた。
ツクネちゃんの手で。
迫る岩肌、スローモーションに変わる景色。
もうここで死ぬんだと諦めた。
しかし俺は生きている。
なぜならチェリー君が間一髪で助けてくれたからだ。
彼も崖の下で気を失っていたのだが、モンブランとチュウベエが駆け付けたおかげで気を取り戻した。
パッと目を開けた瞬間、崖から俺が落ちてくるのが見えたらしい。
彼はヒーローのごとく颯爽と飛び上がり、ギリギリのところでキャッチしてくれたのだ。
「ありがとう、君は命の恩人だよ。」
そう言うと、彼はやや黄ばんだ歯を見せつけながらニカっと笑った。
ちなみに彼も裸である。
俺と同じく沢に落ちていたから。
しかしなぜか真っ赤なマフラーだけは巻いていた。
裸にこんなモンを着けてたらただの変態にしか見えない。
まあとにかくお互いに無事でよかった。
けど・・・・、
「まさかなあ・・・ツクネちゃんが操られてたなんて。」
崖の上の見上げ、洞窟の中にいるであろう彼女を思い浮かべる。
チェリー君も同じように見上げて、「迂闊だったぜ」とぼやいた。
「元々凶暴なところはあるけど、あんなに凶暴になるなんておかしいと思ったんだ。
あんたはともかく、実の弟まで崖に投げ捨てるなんてよ。」
そう、彼が渓流に倒れていたのはツクネちゃんに投げ捨てられたからだ。
擬態を使って待ち伏せしていたチェリー君は、洞窟の中からツクネちゃんが出て来るのを見て驚いた。
彼は擬態を解いて、「姉貴!」と駆け寄った。
しかしいきなりチョークスリーパーを極められ、意識が朦朧とした。
そしてそのまま崖下へと投げ捨てられたわけだ。
その時俺はチュウベエと話し込んでいた為に、すぐ後ろで起きている出来事に気づかなかった。
それから数分後、俺もまたツクネちゃんにここへ投げられたのだった。
幸い命は助かったけど、問題はまだ解決していない。
コウモリ野郎の捕獲、そしてツクネちゃんの救出。
この二つを成し遂げないと、依頼を解決したことにはならない。
チェリー君は悔しそうな顔をしながら、「なあ」とモンブランに話しかけた。
「ほんとに間違いないんだよな?コウモリ野郎と姉貴が一緒にいたって。」
「ほんとよ、この目で見たもん。」
「姉貴が操られてるってのも間違いないんだよな?」
「それもほんと。大きなコウモリが口から変なを音を出して、そのせいでツクネちゃんはおかしくなっちゃったのよ。
それまではコウモリ野郎を蹴りまくってたのもの。」
モンブランは自信満々に言う。
実は俺たちと別れてから一時間後くらいに、ツクネちゃんと大きなコウモリを見つけたのだという。
場所は渓流を下ったところにある小さな神社。
狛犬の代わりにカラスの像が二つ並んでいる変わった神社だったという。
その神社の境内に、ツクネちゃんとコウモリ野郎がいた。
しかも神社の周りには大勢のコウモリが飛び回っていたという。
「私が見つけた時は、ツクネちゃんと大きなコウモリが向かい合ってたの。
ツクネちゃんは傷らだけで、そのコウモリに怯えてたわ。
助けようと思ったけど、さすがに私一匹じゃ無理だから、ちょっと様子を見てたのね。
そしたらいきなりツクネちゃんがそのコウモリを掴んで地面に叩きつけたの。
そんでガンガン蹴り始めたのよ。
コウモリは慌てて空に逃げてったわ。けどツクネちゃんの怒りは治まらないみたいで、小石を蹴ってコウモリに当てたの。
そりゃもう見事にヒットしてたわ、ビシ!って音がしてたもの。
その時よ、コウモリが変な音を出したのは。
ツクネちゃんは頭を抱えて苦しみ出して、気を失ったの。
それで次に目覚めた時には、コウモリの言いなりになってたわ。」
なるほど・・・と頷く。
操られていたのなら、俺たちを投げ飛ばしたのにも納得がいく。
「私は早くみんなに知らせなきゃって思った。けど途中で道が分からなくなっちゃって。」
そう言って苦笑いする。
「だから迷うなよって注意したのに。」
「だって仕方ないじゃない。あんなの見た後じゃ動揺しちゃって。」
「じゃあ山を迷ってるうちに、この渓流に出てきたってわけだな?」
「うん。遠くの方から水の流れる音が聞こえてね。渓流を下っていけば山から出られると思って。
でもまさかチェリー君が倒れてるとは思わなかったけど。」
素っ裸の彼を見上げて、「悠一を助けてくれてありがとね」と礼を言った。
「飼い猫としてお礼を言うわ。ほんとにもうどうしようもない飼い主で。」
「礼には及ばねえよ。」
またカッコをつけている。
風もないのにマフラーがはためいているのはなぜだろう・・・・?
「おいアンタ。」
急に俺を振り向く。
そしてビシっと指を突きつけた。
「俺は全てが分かっちまったぜ。」
「ん?なにが?」
「姉貴とコウモリ野郎がいたその神社・・・そいつは間違いなく俺の家が借金をしてる神社だ。」
「なんだって!?」
「だってカラスの像があったんだろ?」
そうモンブランに尋ねると、「間違いないわ」と頷いた。
「じゃあやっぱりそういうことなんだな。」
「どういうことなんだよ?」
「奴らの狙いは姉貴だったってことさ。」
「狙い?」
「謎が全て分かっちまったぜ。」
一人で頷き、腕を組みながら渋い顔をしている。
素っ裸のまま。
「ごめん、間をはしょりすぎてて話が見えない。」
「ああ、そういやこれ言ってなかったけな。」
「何か俺たちの知らないことがるのか?」
「まあな。実はその神社の神主、嫁さんを募集中なんだよ。」
「募集中って・・・・結婚したがってるってことか?」
「婚活ってやつだな。姉貴も求婚されたんだぜ。」
「ほんとに?で・・・・どうなったの?」
「断ってたよ。タイプじゃないって。」
「ほう。ちなみに彼女はどんな男がタイプなんだ?」
「スポーツマン系のイケメンで、サッカーが大好きな人。もしくはサッカー選手がいいって言ってたな。」
「ツクネちゃんサッカー大好きだもんな。」
「ちなみにその神主は野球派なんだ。ワールドカップも見ないってよ。」
「非国民とか言われたんだろうな・・・・。」
「アンタもか?」
「舌打ちまでされたよ。」
「姉貴はサッカーの事となると熱くなるからな、気にすんなよ。」
「でも断ったんならそれで終わりだろ。もしかしてまたしつこくプロポーズしてきたとか?」
「あの後200回くらい手紙を貰ったって言ってたな。」
「怖いなそれ・・・・ストーカーじゃないのか。」
「しつこい野郎さ。姉貴もうんざりしてたな。」
「彼女が一番嫌いそうなタイプだな。」
「さすがにあれだけしつこくされたらな、相当嫌がってたみたいだぜ。
けどある日パッタリ手紙が来なくなってホっとしてたんだ。」
「ようやく諦めてくれたわけか。」
「いや・・・チャンスを窺ってたんだ。」
「チャンス?」
「ああ、借りを作るチャンスをな。」
そう言ってビシっと指を向けてくる。
「俺ん家の神社が財政難ってことを、あいつは知ってやがった。だからこう言ってきたんだ。『よかったらお金を貸します』って。
けどよ、ウチみたいな貧乏な家、借金なんて返すアテはねえ。だから最初は断った。」
「けど今は借金をしてるんだろ?」
「賽銭泥棒のせいでな。」
さっきまでのカッコつけた表情が消えて、怒りの目に変わる。
「ただでさえ火の車なのに、賽銭まで持っていかれちゃもう終わりだ。神社を守る為に残された手段は一つしかねえ。」
「借金したってわけだな。」
「そうするしかなかったんだよ。姉貴はあんな奴に頼るなんて嫌がってたけど、親父とお袋はなんとしても神社を守りたかった。
だから最終的には姉貴が折れたんだよ。」
「そうか・・・。辛かっただろうな、ツクネちゃん。」
「けっこう悩んでたみたいだけど、親父とお袋に泣きつかれてな。頷くしかなかったんだ。
んで結局金を借りることになったわけなんだけど・・・・ここで一つ問題が。」
そう言ってピっと指を立てた。
「ウチには借金を返すアテがねえ。となりゃ担保が必要になる。」
「だな。その為に神社と土地を当てたわけだろ?」
「いや、最初は違ったんだ。」
「最初はって・・・どういうことだ?」
「向こうはあるモノを担保に要求してきた。もし金を返せなかったら・・・・。」
「返せなかったら・・・・?」
「あんたん所の娘さんを嫁にくれって。」
「・・・・・・。」
言葉を失う。だって・・・まさか・・・そんな・・・・、
「ビックリだろ?」
「なんていうか・・・・今時そんな話があるんだなって思って・・・・。」
「安物のドラマでも見ないよな。けどアイツは本当にそう言ってきたんだ。
とうぜん姉貴は断ったし、親父とお袋もそれは出来ないって首を振った。」
「そりゃそうだろ。娘を担保になんて出来るわけがない。」
「けど借金しなきゃ神社は守れねえ。だから・・・・、」
「神社と土地を担保にしたと?」
「ああ。それで納得したと思ってたんだけど、そうじゃなかったみてえだ。」
そう言いながらパンツを穿き、まだ乾いていないライダースーツに身を通した。
「あいつは姉貴のことを諦めてなかったんだ。だからコウモリ野郎と結託して今回の事を企てたんだろうぜ。」
「企てる?」
「考えてもみろ。姉貴はストーカー野郎の神社にいたんだ。んでもってそこには賽銭泥棒のコウモリ野郎も一緒にいた。
これはどう考えても怪しい。」
「どう怪しいの?」
「だからストーカー野郎とコウモリ野郎が手を組んでるってことだ。
俺たちは一度借金の申し出を断って、そのすぐあとに賽銭泥棒が始まった。
これはどう考えてもタイミングが良すぎるだろうが。」
「つまり・・・チェリー君たちが借金を頼んでくるように仕向けたと?」
「そうだ。その担保として姉貴を嫁さんに貰おうとしたんだ。けどそれも断られた。
代わりに神社と土地を差し出したわけだけど、本当の狙いはそれじゃなかったんだ。」
「要するにまだツクネちゃんのことを諦めきれないから、こうしてさらったと?」
「それしか考えられねえ。コウモリ野郎の力を使って、姉貴を操るのが目的だったんだ。
今なら結婚を申し込んだってOKしてくれるはずだぜ。いや、もしかしたらもうすでに・・・・、」
「う〜ん・・・だったら借金なんて回りくどいことをするかな?やるなら最初から操ってると思うんだけど・・・・。」
「だから〜・・・金を貸すことで借りを作りたかったんだって。そうすりゃ姉貴に会う口実も出来るし、向こうもそれを盾に強気に出られるし。
けど上手くいかなかったから、姉貴を操ることを考えたんだ。」
「けどツクネちゃんは怪我を負わされたんだぞ。好きな相手にそんなことするかな?」
「やったのはコウモリ野郎だ。ストーカー野郎じゃねえ。」
「そうだけど・・・・、」
「とにかくここで言い合ってても仕方ねえ。そいつの神社に行くぜ。」
「え?」
「なんだよ?」
「ツクネちゃんを助けるのが先じゃないのか?」
「操られてるんだから今行っても仕方ねえだろ。また崖に落とされるだけだ。」
「・・・・・・・・。」
「なんだよ?さっきから納得のいかねえ顔しやがって。」
チェリー君はイライラしている。
近くの小石を蹴り飛ばしながら、「ビビってんなら置いてくぜ」と言った。
「あのストーカー野郎が黒幕に決まってる。とっちめれば全部解決だ。」
「う〜ん・・・・、」
「だからなんなんだよ!言いたいことがあるならハッキリ言えよ。」
相当怒ってる。これ以上イラつかせたら殴りかかってきそうだった。
「実は俺がここへ落ちてくる前、たくさんのコウモリが洞窟に戻って来たんだよ。」
「なに?」
俺も立ち上がり、まだ乾いていない服に身を通した。
すごい冷たい・・・・・。
「悪いけど俺はチェリー君とは違ったことを考えてるんだ。」
そう言うとさらにイライラした顔になった。
けど何も言わないのは俺の意見を聞くつもりなのだろう。
だから遠慮なく答えた。
「もし君の言う通りだとしたら、ツクネちゃんがあの洞窟にいるのはおかしいよ。
だってストーカー野郎は彼女と結婚したがってたんだ。だったら神社から逃がさないはずだよ。」
「ふん!俺らの目を欺く為に洞窟へ隠そうとしたんだろうぜ。」
「かもしれないけど、それでも引っかかるんだよなあ。」
「だ〜か〜ら〜!何がだよ!」
怖い顔をしながら近づいてくる。
俺は「どうどう」と宥めた。
「ツクネちゃんが操られてるのは事実だと思う。けど黒幕はストーカー野郎じゃない。コウモリ野郎の単独犯だよ。」
「自信満々に言い切るじゃねえか。なにか根拠があんのかよ?」
「うん、実は俺が洞窟に入った時、彼女はこう言ったんだ。『帰れ、ここはお前らの来る場所じゃない』って。」
「そりゃそう言うだろ。あの洞窟はコウモリ野郎の棲み処なんだ。邪魔者が入って来たら追い払うに決まってらあ。」
「そうだね。そして邪魔者はツクネちゃんも同じだ。だって彼女のことが好きなのはストーカー野郎であって、コウモリ野郎じゃない。
俺やチェリー君が邪魔なら、ツクネちゃんだってあの洞窟に入れないはずなんだよ。」
「それは・・・・ストーカー野郎に頼まれたからじゃねえか?姉貴をここに匿ってくれって。」
「俺はそう思ってない。これはコウモリ野郎の単独犯だよ・・・・多分。」
「最後にメイビーを付けるなよ。説得力ねえぜ。」
「ごめん。でもきっとそうに違いないよ。」
「じゃあなんで姉貴はさらわれたんだよ?コウモリ野郎の単独犯ならさらう理由が無えじゃねえか。」
「けど実際にさらわれたんだ。そして今は洞窟にいる、コウモリ野郎に操られて。」
俺にはある一つの考えがあった。
それを裏付ける為には、あの洞窟の中に入ってみないといけない。
《もし・・・もしも洞窟の中にアレがあるなら、俺の考えは正しいってことになる。》
冷たい服に我慢しながら、崖の上を見上げる。
《神社、お寺、教会・・・・祈ったり願ったりする場所は色々ある。そして・・・・ああいう洞窟にもそういう場所はあるんだ。
もしアレがあるなら、コウモリ野郎が賽銭泥棒をした理由は納得できる。その他の出来事にだって辻褄が合うかも。》
クルっと背中を向け、山の中へ歩き出す。
「おい!どこ行くんだ?ストーカー野郎の神社はこっちだぞ。」
「もう一回洞窟へ行く。」
「やめとけって。また姉貴に投げ飛ばされるだけだぞ。」
「彼女の相手はチェリー君に任せる。俺はその間に洞窟を探索してみるよ。」
「おい!ちょっと待てって!おいってば!」
険しい木立の中を突き進んでいく。
道なき道だが、上へ登っていれば洞窟の方へ近づくだろう。
「おい悠一、こっちから行った方が安全だぞ。」
チュウベエが空から叫ぶ。
「その先は急な斜面になってる。こっちへ迂回しろ。」
こういう時チュウベエは頼りになる。
するとモンブランも「私が先導してあげるわ」と先を歩いた。
「悪いなお前ら。」
「いいのよ、悠一は何か考えがあって洞窟に行くんでしょ?」
「まあな。」
「こういう時の悠一はそこそこ頼りになるのよね。普段はしょうもない飼い主だけど。」
「しょうもないって言うな。」
「しょうもないを通り越して腑抜けだけどな。」
「うるさいぞインコ。」
どうして我が家の動物たちは口が悪いのか。
まあいつものことだけど。
「おい待てって!いま姉貴んとこ行ったって仕方ねえだろ。」
チェリー君が横に並んで来る。
「操られてるのに会ってどうすんだよ?」
「ツクネちゃんに会いに行くんじゃない。洞窟を調べるんだ。」
「調べるって・・・・どこまで続いてるか分からねえんだぞ。すっげえ深かったらどうすんだよ?」
「それも調べてみないと分からない。」
「んな楽観的でいいのかよ。」
「楽観的じゃないさ、ちゃんと目的がある。」
「へえ、どんな?」
「もしかしたらけど、あのコウモリもお金に困ってるんじゃないかと思ってさ。」
「あいつが?なんで?」
「それはあの洞窟にほこ・・・・、」
そう言いかけた時、木立の中からいきなり人が現れた。
「ぎゃあ!」
「いやあ!」
チュウベエとモンブランは慌てて俺の後ろに隠れる。
そして俺はチェリー君の後ろに隠れた。
「誰だお前は!?」
「後ろに隠れてるくせに偉そうに言うんじゃねえよ・・・。」
呆れるチェリー君。
しかし彼の表情はすぐに一変した。
木立の中から現れた人物を見て、「てめえは!」と怒鳴った。
「よくものこのこ現れやがったな!このストーカー野郎!」
拳を構えて睨みける。
俺たちの前に現れたのは、松崎しげるとタメを張りそうなほど色黒のおじさんだった。
神主の衣装を着ていて、頭には小さな四角い帽子を乗っけている。
やけに歯が白くて、歯磨き粉のCMにでも出られそうなほどだった。
「こ、この人が例の・・・・?」
「そうだ!俺たちに金を貸し、その見返りに姉貴を狙うストーカー野郎だ!」
チェリー君は「てめえが黒幕だな!」と飛びかかった。
「ボッコボコにして洗いざらい吐き出させてやるぜ!」
勢いをつけ、「ドラああああああ!」と飛び蹴りをかます。
しかしあっさりかわされて、木の枝で股間を突かれていた。
「ぴあッ!」
変な声を出しながら、もんどり打って倒れる。
膝をつき、股を押さえ、お尻を突き出しながら涙目になっていた。
「弱!」
俺とモンブランとチュウベエの全員でハモった。
「いきなり飛び蹴りなんて失敬な。」
神主は「成敗!」と木の枝でお尻を叩いた。
「ぴえッ!」
遂に倒れるチェリー君・・・・弱いにもほどがあった。
《こんなんでよくボコボコにしてやるとか言ってたな・・・・。》
彼の擬態はすごいけど、その他はてんでダメみたいだ。
みんなして呆れていると、「あの」と神主が口を開いた。
「この犬、おたくのじゃないですか?」
「へ?犬?」
何を言ってるのか分からず、キョトンとする。
すると次の瞬間、神主の後ろからメタボリックなブルドッグが飛び出してきた。
「悠一いいいいいい!」
ガバっと抱きつかれて倒れそうになる。
「悠一いいいいいい!もう二度と会えないかと思ってた!よかったあああ・・・・、」
「マサカリ!なんでお前がここに・・・・。」
ワンワン泣いている。いったいなんなんだ・・・・?
「迷子になってたんですよ。」
神主がマサカリの頭を撫でる。
「買い物から戻ってきたら神社の前にいましてね。悠一、悠一って泣いてたんです。」
「泣いてた?」
「話を聞けば、飼い主に置いて行かれて迷子になってしまったとのこと。」
「迷子・・・・。」
「可哀想に思って、一緒に捜してあげてたんですよ。」
そう言いながら、「見つかってよかったな」と笑いかけた。
「しかしおたくも酷いですな、犬を置き去りにするなんて。」
「・・・・してませんけど。」
「え?でもその犬はそう言ってましたよ。一匹で行くのは嫌だって言ったのに、『お前は別行動だ!』って山に放されたって。」
「・・・・・・・。」
「いけませんぞ、犬の面倒はしっかり看ないと。」
労わるようにマサカリを撫でる神主。
なんだろう・・・・言いようのないほどイラっとする・・・・。
「悠一いいいいい!お前はヒドイ奴だ!俺は迷子になって寂しかったのになんで迎えに来てくれねえんだよ!」
「お前が一匹で行くって言ったんだろ!あれほどやめとけって言ったのに。」
「そこでしつこく止めるのが飼い主ってもんだろが!この薄情モン!」
「いやいや、なんで俺のせいに・・・・、」
「そうですぞ、薄情です。」
「あんたもそう思うよな!こいつはヒドイ飼い主だ!」
「愛犬を見捨てるなんて最低ですな。」
「だよな!お詫びとして犬缶十個くらい請求してもいいよな!」
「十個どころか百個でも構いません。飼い主のクセに犬を泣かすなんて言語道断。」
「俺もそう思うぜ!というわけで悠一、今日から犬缶の量を増やしてくれ!心の傷を癒す為に!」
いったいこのメタボ犬はどういう思考回路をしているのか。
脳内メーカーにかけたら「食欲100%」となるのは間違いなさそうだ。
チェリー君が「まずは俺を助けろ・・・・」と悶えていた。

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