稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜 第十四話 鬼の襲撃(2)

  • 2018.08.26 Sunday
  • 14:41

JUGEMテーマ:自作小説

歳を取ると夢を見なくなるというが、俺も例に漏れずそうなってしまった。
目を閉じれば一瞬だけ暗闇が訪れ、次の瞬間には朝陽が昇っている。
しかも何が悲しいって、目覚ましが鳴る五分前には、手を伸ばしてアラームを止めていることだ。
便利な機能ではあるが、時々うんざりしてしまうことがある。
伊礼誠という男は、一から十まで仕事に染まってしまったのかと思うと、ベッドの上で人生に疑問を感じることがある。
しかし部屋から出て顔を洗い、朝食のテーブルに着く頃にはそんな事さえ忘れてしまっている。
なるほど、俺はすでに魂まで仕事に侵されているらしい。
今までならそれでよかったのだが、今はそうはいかない。
なぜなら息子が出来たからだ。
毎朝早起きして朝食を用意してくれている。
季節によっては陽が昇る前に目を覚まし、飯だけでなく俺のシャツにアイロンまで掛けてくれているのだ。
俺自身が仕事に染まってしまうのは構わない。
しかしまだ中二の息子にそれを付き合わせてしまっていることに罪悪感を覚えていた。
猛は黙々とトーストを頬張り、目玉焼きをかき込み、カップのヨーグルトを平らげ、一口だけコーヒーをすすって「ごちそうさま」と立ち上がった。
食器を流しに運び、自分の部屋へと消えていく。
その数分後には制服に着替えて玄関に向かい、部活で使う大きなスポーツバッグを担いで出て行った。
「気をつけてな。」
首を伸ばして声を掛けると、小さく「行ってきます」と返ってきた。
時計を見ると午前6時半。
テニス部の朝練があるので、いつもこの時間には家を出て行く。
今日はたまたま俺の出勤が早いので顔を合わせた。
しかしいつもは俺が目覚める頃には学校へ向かっているのだ。
夜に食卓を囲うことも無ければ、朝に顔を合わせることすら少ない。
これでは心を開いてくれなくて当然だろう。
しかも女房みたいに世話を焼いてくれることを、どこか当たり前に受け入れてしまっている。
一緒に暮らし始めてもうすぐ二年。
一向に距離が縮まらないのは、全て俺の不甲斐ないさのせいだろう。
《どうにかしないとな。》
この状況を打開したい気持ちはあるのだが、具体策が思いつかずに、ついつい問題を先延ばしにしてしまっている。
少し焦げたトーストにバターを塗り、ガリっと齧りながら新聞を広げた。
その時、コーヒーの横に置いていたスマホが震えた。
見ると結子さんからのメールでこう書いてあった。
『来週の日曜日に猛君とご飯に行く約束をしています。この前の大会で優勝したお祝いです。
前から行きたがっていたステーキ屋さんに連れて行ってあげることになりました。
よかったら伊礼さんも一緒にどうですか?お仕事の都合が付けばで構いません。
もしお父さんが来てくれれば猛君もきっと喜ぶと思います。』
メールの文字を睨んだまま固まる。
まず猛が優勝したなんてことを知らなかった。
毎朝熱心に練習に行っている成果が出たのだろう。
それはとても嬉しいことだが、どうして俺には教えてくれなかったのだろう?
《・・・いや、それはワガママか。話す時間を作っていないのは俺の方なんだから。》
あの子の好物がステーキだということも知らなかった。
言ってくれればいつでも連れて行ってやったのに・・・・なんて思って、またすぐに自戒した。
《行けるなら当然一緒に行きたいさ。でも・・・・・。》
仕事の都合うんぬん以前に、俺が一緒に行ってあの子は喜ぶだろうか?
俺なんかよりも確実に結子さんに懐いているはずだ。
もしかしたら母親のようにさえ思っているかもしれない。
そこへ朝晩たまに顔を合わすだけのオヤジが割り込んで、嫌な顔はしないだろうか?
いったいどう接すればいいのか・・・・しょうじき見当が付かない。
答えの出ない悩みに悩み続けるしかなかった。
サっと朝食を平らげ、洗面所で髪を整え、部屋に戻ってスーツに着替える。
そして玄関で靴べらを握ったところで、《洗い物!》と気づく。
せめて朝飯で使った食器くらい洗っておかないとと思いながら、いつもこうして忘れてしまう。
しかしもう時間がない。
《ああクソ!ほんとに抜けてるな俺は・・・・。》
トントンと靴をならし、うんざりした気分で外へ出る。
マンションの七階にあるこの部屋からは、ドアを出ただけで遠くまで見渡せる。
左手の奥には山が霞み、その少し離れたところに本社のビルが見える。
相変わらず田舎に不似合いなほど大きなビルだ。
そして本社ビルから数キロ離れたところに猛の通っている中学校がある。
ここからではハッキリと見えないが、屋上にある大きな時計はどうにか分かる。
そういえば参観日にも行ったことがない。
あの子が心を開かないのは寂しさの裏返しなのかもしれないが、面と向かって尋ねても本心は語らないだろう。
《せめて結子さんが一緒なら・・・・。》
来週の日曜、どうにかして一緒に飯へ行けないものか。
・・・・無理だろうなと思いつつ、駐車場の車に乗り込んだ。
そしてエンジンを吹かして発進させようとした時、またスマホが震えた。
今度は何だと見てみると、知らない番号からの着信だった。
普段なら無視するが、ふと思い当たることがあって「もしもし?」と通話ボタンを押していた。
『ども、進藤っす。』
「やっぱりか。」
利き腕に電話を持ち替え、「お前どういうつもりだ?」と凄んだ。
「番号を変えたならどうして言わない?まさかバックレるつもりだったのか?」
『まさか。』
「何を笑ってやがる。休みが欲しいからって番号を変えてまで逃げようとしたんじゃないのか?」
『だから違いますって。あ、でもしばらくは出勤出来ないっすから。』
「何を勝手なことを・・・・、」
『それとこの番号は人には教えないで下さい。俺と伊礼さんのホットラインってことで。』
「ホットライン?どういう意味だ?」
『まんまの意味っすよ。もし危ない目に遭ったら連絡下さい。』
「物騒なことを言いいやがる。どうして俺が危ない目に・・・・、」
『カグラですよ。』
「なに?」
『いまカグラと揉めてるんでしょ?』
「そういえばある程度事情を知ってるんだったな。言っとくが余計な詮索はするなよ。いくらお前が優秀な奴でも首が飛ぶぞ。」
『・・・・・・・・。』
「おいどうした?まさかビビったのか?」
優秀と言ってもまだ15歳の子供だ。
猛とほとんど変わらない。
冗談にしては少しキツかったかなと「ただのジョークだ」と笑って見せた。
「それより休みが欲しいならちゃんと申請書を出せ。事情によってはしばらく休ませてやるから。
午後から本社に来てくれれば俺がいるから・・・・・、」
『鬼神川。』
「ん?」
『アイツに注意して下さい。』
急に低いトーンで語りだす。
その声は昨日本社へ来た時と同じほど殺気がこもっていた。
「なあ進藤・・・・ちょっと聞きたいことがあるんだ。とんでもなく馬鹿げた質問だから、もし間違ってたら笑い飛ばしてくれ。」
ウィンドウを下ろし、タバコを咥える。
シュっと火を点けてから、ゆっくりと煙をくゆらせた。
「昨日本社へ来た時、お前は突然いなくなったよな?でもって俺以外誰もお前を見ていないというんだ。
しかも机の上には動物の足跡らしき物が残されていた。お前・・・・もしかして人間じゃないなんてことはないよな?」
我ながらなんて馬鹿なことをと恥ずかしくなる。
しかし胸につっかえた疑問は昨日から消えないままだ。
コイツは言っていた。
自分はお稲荷さんに近い類のものだと。
もしそれが本当なら人に化けられる動物ってことになる。
キツネじゃないならタヌキか、あるいは・・・・猫か。
じっと答えを待つが、進藤は何も答えない。
きっと呆れているのだろう。
「今のは忘れてくれ」と質問を打ち切った。
「それよりも今日はちゃんと本社へ来いよ。無断欠勤なんかしたらそれこそ本当に首になりかねな・・・・、」
『人じゃないっすよ。』
「なに?」
『俺は人間じゃないっす。』
咥えていたタバコの灰がポロリと落ちる。
「・・・・本気で言ってるのか?」
『だって伊礼さんが聞いたんでしょ?』
「なら・・・お前は化けタヌキとか化け猫とか、そういう妖怪みたいなモンってことか?」
『妖怪とは失敬な。レイジュウです。』
「レイジュウ?」
『霊力の霊に、獣って書いて霊獣。不思議な力を宿した生き物ってことです。』
「・・・・・・・。」
『伊礼さん?』
「すまん・・・・どう返していいか分からなくて・・・・、」
『信じようと信じまいと自由です。あ、ちなみに玉木さんも人間じゃないっすから。』
「アイツもか!」
『あの人はなんて言うか・・・・俺たちの守り神みたいな感じっす。』
「守り神?」
『霊獣は霊獣でも、俺みたいな下っ端とは違う位の高い霊獣です。動物からすればまんま神様みたいなもんで。』
「・・・・・・・。」
『ま、その辺は追々話します。今は深く考えないで下さい。』
これは馬鹿にされているのだろうか?
深く考えないで下さいと言われても、真剣に考えることを躊躇ってしまう。
『とにかく鬼神川にはくれぐれも注意して下さい。アイツはバリバリの武闘派っすから。外にいる時はできる限り一人は避けた方がいいっす。』
「物騒なことを。確かにカグラの連中は胡散臭いが、いくらなんでも襲いかかってきたりは・・・・、」
『しますよ。奴らは平気でやります。特に鬼神川って野郎はね。だからとにかく注意してほしいんすよ。もし何かあったらこの番号に掛けて下さい。』
「なんだ?俺がさらわれたりしたらお前が助けに来てくれるってのか。」
苦笑ものである。
これでもかつては探偵をやっていた。
危険な依頼も少なくなかったし、それでも自分の身を守ってきた。
それをたかだか15の子供に心配されようとは。
「気持ちだけ受け取っておくよ。」
苦笑いしながら返すと、『冗談で言ってるんじゃないっすよ』とやや怒り気味だ。
『カグラはアンタらが思ってる以上にヤバい連中なんです。』
「だからって子供に助けられるほど間抜けじゃないさ。」
『いやいや、助けに行くのは俺じゃないっす。』
「お前じゃない?じゃあ誰が助けに来てくれるんだ?」
『実はこの電話、玉木さんの番号なんすよ。』
「彼女の?」
『もしなんかあっても玉木さんなら絶対に助けてくれますから。』
「なあ、彼女はいったい何者なんだ?さっきは人間じゃないとか言ってたが・・・・、」
『だから位の高い霊獣っすよ。俺たちの世界じゃ神獣って呼ばれる偉い神様なんす。』
「神の獣ってか。なんだかもうついていけんな。」
うんざりして首を振る。
コイツはどこまで本気なのだろう?
こんな話を聞かされて、ハイそうですかなどと頷けない。
『さっきも言ったけど、今は深く考えなくていいっすから。時が来れば分かりますよ。』
あっけらかんと言いやがる。
だったら今話せと言いたかったが、多分はぐらかされるだけだろう。
『この番号は玉木さんに繋がるホットラインっす。もし狙われるとしたら伊礼さんが一番確率が高いんで教えたんすよ。』
「俺が?どうして?」
『だって司令塔みたいなモンでしょ?アンタが消えれば後は大したことない連中だから。冴木さんも部長補佐も、カグラにとっちゃ脅威じゃないんすよ。』
「いや、司令塔は俺じゃないぞ。仕切ってるのは草刈だ。」
『あのオッサンはダメっすよ。会長の忠実な犬っていうだけだから。』
「忠犬を全うするのが奴の仕事さ。」
『そんな奴相手にしたって仕方ないっすよ。カグラの連中が警戒してるのは伊礼さんなんすから。
だからくれぐれも注意して下さい。なんかあったらマジで遠慮せず掛けていいっすから。』
そう言い残し、『じゃ』と切りやがった。
「おい!」
すぐにリダイヤルするがまったく出ない。
ホットラインじゃないのかこれは。
《なんなんだまったく・・・・。》
助手席にスマホを投げ、短くなったタバコを灰皿に押し付ける。
まあいい、進藤にはまたあとで電話を掛けよう。
今は仕事に向かわないといけない。
しばらく車を走らせ、靴キングの配送センターへやってくる。
砂利敷きの駐車場に車を止め、入口の守衛に本社の社員証を見せ、倉庫内をうろついていたセンター長に「よう」と手を挙げる。
眠そうな仏頂面が「おはようございます!」と仕事用のスマイルに変わった。
「悪いがしばらく休憩室を使わせてもらうぞ。」
「はい!はい!うかがっております本部長!どうぞお好きなだけ!」
「今はこっちの本部長じゃない。本社の課長だ。」
「や・・・ああ!そうでした!失礼いたしました!!」
そんな直角に腰を曲げなくてもと思うくらい頭を下げている。
靴キングでは現場を仕切る鬼部長として認識されているので、やたらと俺を怖がる奴がいる。
《そんなに厳しくしているつもりはないんだがな。》
何かと厳しい昨今、いつかパワハラだと訴えられるかもしれない。
まあそうなったらそうなったで構わないが。
現場を仕切る者は厳しさが大事だ。
いくら時代が変わろうとも、この事だけは変わらないと思っている。
あと10年もすれば頑固ジジイなんて呼ばれるんだろうなと、休憩室に一番乗りして冴木たちを待った。
時刻は8時ちょうど。
「おはようございます!」とやってきた冴木に、「5分前に来い!」と怒声で返してやった。
「すいません、ちょっと寝坊しちゃって。」
「まったく・・・・俺が若い頃はもっと厳しかったぞ。部屋に入るのと同時に鉄拳が飛んできてだな・・・・、」
「そんなことより課長はまだですか?いつもなら絶対に俺より先に来てるのに。」
サラっと話題を変えやがる。
怒鳴った自分が滑稽に思えて、「ううん」と咳払いで誤魔化した。
「確かに珍しいな。」
「ちょっと電話してみます。」
滅多にないことなので心配そうな顔をしている。
電話を終えた冴木は「寝坊らしいです」と驚いた顔に変わっていた。
「彼女が?」
「かなり疲れてるんだと思います。声に力が無かったですから。」
「だから二、三日くらい休めと言ったのに。」
「まあまあ。それより昨日はあれからどうでした?進藤君には聞いてみたんですか?化け猫ですかって。」
「おお、その事なんだがな・・・・、」
さっき進藤から電話があったことを伝えた。
内容を話すと、冴木は神妙な顔で唇をすぼめていた。
「なんか・・・・どう受け取っていいのか分からない話ですね。」
「俺も呆れてるよ。」
「けど玉木さんが人間じゃないっていうのは、ちょっと分かる気がします。あの人ってどこか人間離れした雰囲気がありますから。」
「だからって神獣とはなあ。俺には信じられん。それよりも鬼神川のことの方が気になるな。」
「ああ、襲い掛かってくるかもってやつですか?」
「まさかとは思うが、万が一ってことも考えられる。玉木によればカグラは密猟が本業らしいからな。
てことは犯罪者集団ってわけだから、どういう手段に出てくるか分からない。もし玉木の話が本当だったらだが。」
「鬼神川さんってけっこうヤバい雰囲気ありますよね。なんかその筋の人みたいな。」
しばらく冴木と話し込む。
そして時計が午前九時を差す頃、「遅れてすいません!」と部長補佐がやって来た。
目の下にクッキリと隈が出来ている。
かなり疲労が溜まっているようだ。
それでも休みを取ろうとしないのは、強い責任感の表れなのだろう。
この日はそれぞれの話を持ち寄って、一時間後には解散となった。
俺はとりあえず本社に戻り、通常業務をこなすことにした。
進藤には午後から会社へ来るようにと言ってあるが、おそらく姿は見せまい。
人には言えない大きな事情を抱えているのだろう。
気になるのは、その事情がカグラと関係があるんじゃなかということだ。
時が来れば分かるなんて意味深なことを言っていたが、出来れば今すぐに教えてほしいものだ。
《本社へ戻る前に進藤の家へ寄ってみるか。》
確か稲松文具が社宅にしているアパートに住んでいるはずだ。
車だとここから30分も掛からない。
ちょっと早いが昼休憩も兼ねて、奴の家に向かってみることにした。
ガラガラの国道を駆け抜け、色々な企業の工場や配送センターが並ぶ工業地帯から抜け出していく。
景色が畑と田んぼに変わり、まっすぐ伸びる道路を進んで、交差点を右折して南に向かった。
そこからしばらく道なりに走り、民家が並ぶ細い道を抜けたところに社宅のアパートがあった。
二年ほど前に建ったばかりの綺麗なアパートで、八つある部屋のうちの半分を稲松文具が借りている。
確か進藤の部屋は二階の一番右だったはずだ。
脇に付いている階段を上がり、部屋の前までやって来る。
チャイムを押してから「俺だ、伊礼だ」と言うが返事はない。
もう一度鳴らしてもやはり返事はなく、どうやら出かけているらしい。
「留守か。」
諦めて引き返そうとした時、ふと人の気配を感じて振り向いた。
「お前はッ・・・・、」
視界を塞ぐほどのガッチリとした巨体、そして鬼が怒り狂っているかのような厳つい顔つき。
突然現れた鬼神川に思わず固まってしまう。
と同時に進藤が言っていたことを思い出した。
《まさか本当に襲いに来たのか!?》
そう思った瞬間、腹に激痛が走った。
漬物石みたいなゴツイ拳がめり込んでいたのだ。
「かは・・・・、」
とても耐えられるパンチじゃなかった・・・・。
膝をつきながらヨダレを垂らしていると、今度は背中に衝撃が走った。
「ぐッ・・・・、」
腹と背中の両方から痛みが押し寄せ、呼吸が苦しくなる。
声を上げることも出来ずに、その場にうずくまるしかなかった。
《本当に襲ってきやがるとは・・・・・。》
予想もしない奇襲に成す術なく打ち倒される。
鬼神川は丸太のような太い腕で俺を持ち上げ、ヒョイと肩に担いだ。
「しばらくお付き合い願います。」
野太い声で言って車の中へ運んでいく。
大型のボックスカーだった。
座席へ押し込まれ、固く手足を縛られる。
・・・・油断した。
今更悔やんでも遅いが、まだ望みはある。
玉木へ繋がるホットライン。
本当に助かるのかどうか怪しいが、ここは賭けてみるしかないだろう。
縛られた手を動かして、どうにかポケットのスマホを握ろうとする。
しかしその時、俺の他にもう一人縛られている人物がいることに気づいた。
《なんで彼女が!》
北川部長補佐がぐったりと横たわっている。
気を失っているのか目を閉じたまま動かない。
《鬼神川め!なんで彼女まで・・・・。》
まったく状況が飲み込めないが、危うい事態なのは確かだ。
やはりここはホットラインに頼るしかないだろう。
もし玉木が来てくれなかったとしても、スマホがあるなら誰かに助けを求められ・・・・、
「つまらん事はせんで下さい。」
助手席から大きな手が伸びてきてスマホを奪われる。
これでは助けを呼ぶことすら出来ない。
やがて車は走り出し、俺たちをどこかへ連れ去っていく。
いったいなぜこんな事になっているのか分からないが、おそらく無事ではすまないだろう。
エンジン音と振動を感じながら、不安に苛まれるしかなかった。

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