稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜 第十六話 苦悩する猫又(2)

  • 2018.08.28 Tuesday
  • 13:30

JUGEMテーマ:自作小説

猫は孤独な生き物であると思われがちだが、実はそうでもなかったりする。
野良猫であれば、まず朝晩に猫の集会がある。
猫にとって重要な会議をすることもあれば、ただなんとなく集まることもあるのだが、圧倒的に後者の方が多い。
だってずっと一匹ってのは寂しいもんだ。
束縛されるのは嫌だけど、完全にほっとかれるのも嫌なのが猫という生き物なのだ。
家猫の場合でも、飼い主に与えたい時は甘え、気が乗らない時は撫でられるのも嫌だったりする。
要するにワガママなのだが、本当に一匹でいいと思うのであれば、そんなワガママも出てこないだろう。
つまりはワガママのさみしがり屋なのである。
今、俺は寂しかった。
緑深い山の麓にある猫神神社。
ここにポツンと一匹だけなのだから。
ここへ来て今日で三日目。
猫の姿で境内に寝そべっていた。
誰もお参りに来ないし、野良猫もうろついていない。
山から猪とか鹿でも下りてこないかなと期待するが、まったくそんな気配はなかった。
早くたまきに戻って来てほしい。
そして無事にムクゲを救い出したという報告を聞かせてほしい。
もし万が一二匹とも戻って来なかったら、俺は風来坊の野良猫に戻ってしまうだろう。
無断欠勤しているから仕事もクビだろうし、そうなれば行く宛てもやる事もなくなってしまう。
カグラへの復讐にしたって、俺だけじゃどう頑張っても無理だ。
もしムクゲもたまきも帰って来なかったら、俺はどうしたらいいんだろう?
この先ずっと一匹のままなんだろうか?
・・・・そう考えると怖くなって、この場所に身を隠していることが嫌になる。
たまきからは『神社の外へは出ないこと』と釘を刺されているけど、ちょっとくらいなら大丈夫なんじゃないだろうか。
これでも一応猫又なんだから、鈍感な人間と違って簡単に見つかったりはしない。
もしもカグラの連中が襲って来たら、ここへ逃げ込めばいいわけだし。
《ちょっくら出てみるかな。》
ピョンと境内から飛び降りて、長い階段を下りていく。
古びた石造りの鳥居の前で立ち止まり、ちょっとばかり緊張しながら外へと踏み出した。
誰もいないとは思うけど、念の為に辺りを確認してみる。
目の前には細い道路が伸びていて、向かいには平屋の民家が並んでいた。
ここはかつて城下町だったそうで、当時の風情を活かして観光客を呼び込もうと頑張っているらしい。
町並みは古く、風景の一部だけ切り取れば、時代劇に使えないこともなさそうなほどだ。
何度も左右を確認してみるが、今のところ怪しい奴はいなかった。
自転車に乗ったおばちゃんが通り過ぎていっただけで、あとは物静かなもんだ。
さて、外に出たはいいもののどうするか。
たまきの居場所は分からないし、ムクゲがどこに連れ去られたのかも分からない。
家に帰っても仕方ないし、だったら・・・・、
《ハリマ販売所に行ってみるか。》
箕輪さんや栗川さんがどうしているのかちょっと気になる。
俺が来ないからあたふたしているかもしれない。
ただでさえカツカツの人数で回しているから、かなり忙しいだろう。
トコトコ歩いて古い町並みを抜けていく。
しばらく行くと図書館が見えた。
今日は火曜日、時間は朝の10時くらいだろう。
図書館の前には暇そうな爺さん婆さんがいて、ベンチに座って談笑していた。
そこを通り過ぎると高級住宅地だ。
金のかかってそうな家がズラリと並んでいて、その中でも一番大きな家の前で足を止めた。
《すごいなこれ。》
屋敷と呼ぶのにふさわしい佇まいで、入口の門は自動になっているようだ。
庭も広く、綺麗に手入れされた花壇があった。
門のすぐ傍には車庫があって、高そうな車が二台も停まっていた。
そう車に詳しくないけど、これは分かる。ベンツってやつだ。
その隣にはバイクが二台、そしてバギーが一台あった。
《なんちゅう金持ちだよ。》
ここまで大きな家じゃなくても充分暮らしていけると思うのだが、必要以上に金や物を持ちたがるのが人間らしい。
死ぬまでに使いきれるわけじゃないし、死んであの世に持っていけるわけでもないのに、どうしてこんなにたくさん持ちたがるのか?
人間に化けられるようになった今でも、人間の心理は分からない。
不思議な生き物だなと改めて実感した。
するとその時、前からパトカーが走ってきた。
一台や二台じゃない。五台もである。
そのうちの一台は覆面パトカーで、中から刑事らしき男が降りてきた。
大きな家の前に立ち、門の横にあるインターホンを押してから、何やら話しかけている。
やけに神妙な顔をしているが・・・・事件でもあったのだろうか。
興味をそそられ、電柱の陰から様子を伺う。
刑事を筆頭に何人もの警官が家の前に並んでいる。
しばらくすると門が開いて、年老いた女が現れた。
ずいぶん疲れきった・・・というより、何かに怯えているような顔をしている。
刑事はその女に招かれ、家の中に入っていった。
残った警官は要人でも守るかのように家の周りを警護していた。
《物々しいな。こりゃ何か事件があったんだ。》
ますます興味を惹かれて、大きな家を見上げる。
その時だった。
窓から毛の長い猫が出てきて、塀を飛び越えてこっちに走ってきた。
この猫もさっきの女と同じように、引きつったような怯えたような、血の気が引いたような、そんな顔をしている。
慌ててダッシュしてきて、俺の横を通り過ぎていく時、「あのちょっと!」と呼び止めた。
毛の長い猫は鬱陶しそうな顔で振り返る。
「呼び止めてごめん。ちょっと聞きたいんだけど・・・・、」
「今忙しいの、ナンパならお断りよ。」
取り付く島もなくピュッと走り去ってしまう。
俺は「待ってくれって!」と追いかけた。
「君はあの家の猫か?」
「しつこいわね!ナンパはお断りって言ったでしょ!」
「だからナンパじゃないってば。あの家で何があったのか聞きたいだけ。」
大きな家を振り返ると、警官たちが鋭い目で周りを睨みつけている。
よほどのことがないとあんな状態にはならないだろう。
「君はあの家の猫なんだろ?じゃあ何があったか知ってるかなと思ってさ。」
「それ聞いてどうすんのよ。」
「そんな怖い顔しないでくれよ。」
「こっちは今大変なのよ!冷やかしならあっち行っててくれる!?」
シャーっと唸るので、「まあまあ」と宥めた。
「なんか困ってるみたいだけど、話によっちゃ手を貸すからさ。」
「あんたみたいな野良に何が出来るっていうのよ?」
「それは話を聞いてみないことには。」
「お断り!どっか行ってよしつこいわね!」
相手にしてられないとばかりにビュンビュン尻尾を振る。
《こんなに焦ってるってことは、よっぽど大きな事件なんだな。でも普通に聞いても答えてくれないだろうし、だったら・・・・、》
俺は猫又だ。
普通の猫にはない不思議な技が使える。
人間に化ける「変化の術」もそうだし、他にも特殊な技を持っているのだ。
《ほんとはやっちゃいけないことだけど、心の声を聞いてみるか。》
頭の中に細い針をイメージする。
そいつをピュっと相手に飛ばして、胸の辺りに突き刺した。
しかし彼女は無反応だ。
なぜならこの針が刺さっても痛くはない。
こいつは肉体じゃなくて心の壁に刺さる針だからだ。
こいつで穴を空けると心の声が漏れてくる。
俺はピンと耳を立て、穴から漏れる心の声を聴いた。
《なんなのよこの野良は!こっちは翔子ちゃんが行方不明で大変だっていうのに!》
・・・ほう、誰かがいなくなったらしい。
女の名前だから、あの家の奥さんとか娘さんだろうか。
《翔子ちゃんが黙っていなくなるなんて絶対におかしい!きっと誰かに誘拐されたんだ。飼い主のピンチなんだから私が助けなきゃ!》
なるほど、翔子って名前の飼い主が誘拐されたのか。
そりゃ飼い猫としては一大事だ。
彼女の声はまだ漏れてくる。
《あの人ならきっと力を貸してくれる》とか、《たしか公園の向こうのアパートに住んでるはず》とか。
盗み聞きはこの辺にしておこう。
もしたまきにバレたらどれほど怒られるか分からない。
猫又には猫又のルールがあって、特殊能力の悪用は厳禁なのである。
そんなことを続けていれば心が悪に染まり、化け猫という恐ろしい妖怪に変わってしまうからだ。
彼女の心の壁に空けた穴は小さい。
数時間ほどで消えるはずだから、ここでやめておけばバレる心配はないだろう。
「なんなのよアンタ、さっきからボーっとして。」
怪訝な目を向けてくるので、「なんでもないよ」と誤魔化した。
「あっそ。じゃあさっさとどっか行って。あんまりしつこいと本気で怒るわよ。」
そう言ってシュシュと猫パンチのシャドーボクシングをした。
「君を困らせる気はないよ。ただ俺は普通の猫じゃないんだ。こう見えても猫又ってやつでね。」
「猫又?それって化け猫のこと?」
「化け猫じゃない。猫又は良い霊獣だからな。」
「?」
「言葉じゃ伝わらないよな。ちょっと見てて。」
ササっと曲がり角まで走ってから、「こっち来て」と尻尾を振る。
「なによ?そんなとこ連れ込んで何しようっての?」
「そういう意味じゃないよ。俺が普通の猫じゃないってとこを見せたいだけ。いいからほら。」
彼女は鬱陶しそうにため息をつく。
俺は「見てくれたらすぐに終わるから」と言った。
「大丈夫だって、何もしないから。」
「・・・・分かったわよ。でもアレよ、もし変なことしたらタダじゃおかないからね。」
ニョキニョキっと鋭い爪を見せつける。
アレで引っかかれたら何日かはブルーになりそうだ。
彼女は曲がり角までやって来て、「さっさとしてよ」とうんざりした顔で言った。
俺は「よく見ててくれよ」と、頭の中に人間の姿をイメージした。
化けるのはハリマ販売所で働いている時の姿。
ご主人の高一の時の姿である。
気合を入れ、モコモコっと尻尾を膨らませた・・・・その時だった。
「なにやってんのバカタレ。」
ギュっと首根っこ持ち上げられる。
そのままクルっと後ろを振り向かされると、目の前にスーツを着た人間の女がいた。
「あ・・・・、」
「あ、じゃないわよ。神社に隠れてなさいって言ったでしょ。」
ものすごい怖い顔で睨んでくる。
思わず目を逸らしてしまった。
「ちょっと寂しかったもんでつい・・・・、」
「しかも猫又のルールを破ったわね。」
そう言って毛の長い猫を振り向く。
「読心の術で勝手に心を覗くなんて・・・盗聴と一緒よ?」
「はい・・・・。」
「やっちゃいけないって教えたでしょ。」
「・・・・・・。」
「分かった!?」
「はい!」
やっぱりバレてしまった。
こんな事なら神社で大人しくしておけばよかった。
たまきは俺を下ろすと、毛の長い猫に話しかけた。
「ごめんなさいね、ウチの子が邪魔しちゃって。」
微笑みながら謝ると、その猫はキョトンとした顔で固まった。
「言葉が分かる・・・・なんで?」
不思議そうに首を傾げる。
当然だろう。
普通の猫は親しい人間の言葉はなんとなく分かっても、赤の他人の言葉は理解できない。
なのに一言一句理解できることに驚いているのだ。
「ねえ、この人アンタの飼い主?」
俺に話しかけてくる。
するとたまきは「飼い主じゃないわ」と言った。
「なんていうか・・・・保護者みたいな感じかしら。」
そう答えた瞬間、さっきよりも驚いた顔で後ずさった。
「え?え?なんで?」
事態が飲み込めないようである。
たまきはクスっと笑った。
「この人・・・・動物の言葉が分かるの?」
「ええっと・・・分かると思うよ、うん。」
「ウソ!ほんとに!?」
「だってさっき話してたじゃん。」
「信じられない・・・・。そんな人が他にもいたなんて!」
全身の毛が逆立つほどビックリしているが、俺も彼女の言ったことにビックリしていた。
「他にもって・・・あんたも猫又に知り合いがいるのか?」
「いないわよそんなの。人間だけど動物としゃべれる人がいるの。」
「そんな馬鹿な。人間が俺たちと喋れるわけがないだろ。」
そう言って「なあ」とたまきを見上げると、「さあねえ」と意味深な笑みを浮かべていた。
「世の中は広いから。そういう人間がいても不思議じゃないかも。」
「もったいぶった言い方だな。でも俺は信じないぞ、人間が動物と喋れるなんて・・・・、」
「今はそんな話はどうでもいいの。とにかくアンタは神社に帰ってなさい。」
「なあ、ムクゲはどうなったんだ?無事なんだよな?それとももう助けたのか?」
「まだよ。」
「じゃあこんな所で油売ってないで、早く助けてやってくれよ。ムクゲは俺の母親みたいなもんなんだ。もし何かあったら・・・・、」
「分かってるわ。アンタのお母さんは必ず助ける。でも事件はそれだけじゃないのよ。奴らは人間までさらってるわ。」
「マジかよ!じゃあアレだ・・・・警察に通報しないと!」
「そうね、もう来てるみたいだけど。」
そう言って大きな家を振り返る。
門の前には警官が立っていて、怪しい奴がいないか見張っていた。
「たまき、もしかしてあの家の人も・・・・・、」
ヒソヒソ尋ねると「ええ」と頷いた。
「でもあの家の人は関係ないだろ。どうしてさらったりするんだよ。」
「関係ないわけないじゃない。あの家に誰が住んでるのか知らないの?」
「まったく。」
「はあ・・・・。」
大きなため息をつく。
そんなこと知らないからって何だっていうんだろう。
「アンタは仮にも稲松文具の社員でしょ?」
「そうだよ、それがどうかしたのか?」
「あの屋敷みたいな大きな家、あれは会長の家よ。」
「え?」
「稲松グループの総帥、北川六郎。」
「・・・・ごめん、全然知らなかった。」
「なんでこんな田舎町に大企業の本社があるのか?それは北川一族の故郷だからよ。
会長の家が本社の近くにあるのはほとんどの社員が知ってること。」
「んなこと言われても知らないモンは知らないんだからしょうがないだろ。」
ツンと開き直ってから、「てことはさ?」と尋ねた。
「もしかして会長がさらわれたのか?」
「いいえ、さらわれたのか娘さん。」
「娘さん?」
何か引っかかる・・・・。
会長の娘っていえば・・・・あの人しかいないじゃないか!
《そうか!それでこの猫は翔子ちゃんがさらわれたって言ってたんだ。》
毛の長い猫は不安そうな顔でこっちを見ている。
俺たちが何を話しているのか気になっているんだろう。
「なあ、君の飼い主って北川翔子って名前だよな?」
「そうよ。」
「稲松文具の部長補佐をやってる?」
「なんでアンタがそんなこと知ってるのよ?」
ギロっと睨んでくる。
「まさかアンタが翔子ちゃんをさらったんじゃないでしょうね?」
「え?なんで俺が・・・・、」
「だって化け猫なんでしょ!」
「違う!化け猫じゃなくて猫又・・・・、」
「どっちも同じよ!アンタ何か知ってるんでしょ?翔子ちゃんの誘拐に関わってるんじゃないの!?」
ものすごい剣幕で詰め寄ってくる。
するとたまきがヒョイっと彼女を抱き上げた。
「ちょっと!なにすんのよ!」
「この子は被害者よ。」
「はあ!?」
「悪い奴にお母さんを誘拐されたの。」
「え・・・お母さんを・・・・?」
急にトーンが落ちる。「大丈夫なの?」と心配そうな顔に変わった。
「たぶん無事だと思うけど、でもどこにいるか分からないんだ。」
「そうだったんだ。ごめん、疑って・・・・。」
「いいさ。それより君だって飼い主を誘拐されたんだろ?」
「そうなのよ!一昨日から連絡が取れないの。会社にも行ってないし、実家にもマンションにもいないし。」
「そりゃ心配だね。でも君の飼い主はもう大人なんだろ?ちょっとくらい帰って来ないからってそこまで心配しなくても・・・・、」
「なに言ってんの!翔子ちゃんは大企業の娘なのよ!それにとびきりの美人だし!だったら誘拐されたかもしれないじゃない!
翔子ちゃんのお父さんが心配して心配して大変なのよ!」
「それで警察を呼んだのか?」
「警察の偉い人とコネがあるから、腕利きの刑事さんに来てもらったのよ。」
「さすがは会長、色々人脈があるんだな。」
家の前には数人の警官、家には刑事。
大人がたった一日か二日帰って来ないだけでこの騒ぎとは・・・・とんだ親バカだ。
ひょっこり帰って来たら赤っ恥だろうに。
会長は娘を溺愛してるってハリマ販売所の人たちが言ってたけど、どうやら本当らしい。
「翔子ちゃんは絶対に誘拐されたに決まってる!私だってじっとしてられないわ!」
ピョンとたまきの腕から飛び降りて、どこかへ走って行く。
「おい!どこ行くんだ!?」
「動物と話せる人のところ!」
「それさっきも言ってたな。本当にそんな奴いるのか?」
「いるわよ!ていうかアンタになんか構ってられないの!これ以上邪魔しないでちょうだい!」
振り向いて「シャー!」っと唸る。
これ以上引き止めたら鋭い爪で猫パンチをお見舞いされそうだ。
《・・・・まあいいか。部長補佐が誘拐されようと知ったこっちゃないし。》
とりあえず無事に帰って来ることだけ祈ってやろう。
「さて、ハリマ販売所に行くかな。」
グイっと背伸びをしてから、トコトコ歩き出す。
「待ちなさい。」
また首根っこを持ち上げられる。
俺は「はいはい、分かってますよ」と首を振った。
「神社に帰ればいいんでしょ。」
「あの子を追って。」
「へ?」
「あの子、たぶん私の弟子のところに行く気だわ。」
「弟子?たまきに弟子なんかいたのか!」
「ちょっと変わった子でね、ずいぶん前から知ってるのよ。」
「すいぶん前ってどれくらい?」
「そうねえ・・・前世くらいから。」
「なんだそれ?」
たまきはクスっと笑う。
「いいからあの子を追いかけて。」
「それはいいけど・・・・神社に隠れてなくていいのか?」
「どうせ戻る気なんてないでしょ?」
「まあな。」
「じゃあいいじゃない。」
そう言って「ほら」と手を向ける。
なんだか分からないが、あそこでじっとしているよりかはよっぽど良い。
「たまき、ムクゲのことは必ず助けてくれるよな?」
「もちろん。」
「なら・・・・信じる。良い知らせを待ってるからな!」
尻尾を振ってから、さっきの猫を追いかける。
振り返るともうたまきはいなくなっていた。
「相変わらず神出鬼没だな。」
普段はどこにいるのか分からないくせに、ピンチになるとなぜか現れてくれる。
さすがは動物を守る神様だけある。
とにかくムクゲのことは任せて、俺はさっきの猫を追いかけよう。
金持ちの住宅地を抜け、その先にある商店街を通り過ぎ、坂道を上って大きな橋に出る。
「・・・いたいた。」
橋の中程を走っている。
俺は全速力で追いかけて「やあ」と隣に並んだ。
「あ!また邪魔しに来たの?」
「フー!」っと唸りながら毛を逆立てている。
「違う違う、君に手を貸そうと思ってさ。」
「いいいわよそんなの!アンタなんか役に立たないだろうし。」
「そんなことないって。俺は猫又なんだ、君が会いに行こうとしている人間より役に立つから。」
「どうだか。」
「ほんとだって、約束する。」
毛の長い猫は疑わしそうな目で見る。
しかしいつまでも俺が諦めないので、「分かったわよ」と頷いた。
「ついて来たいなら勝手にすれば。でも邪魔したら思いっきり引っ掻くからね。」
ニョキニョキっと鋭い爪を向ける。
本気で引っ掻かれたらかなり痛そうだ。
「俺は猫又のタンク。君は?」
「私はカレン。」
「君の模様、アメリカンショートヘアだよね?なのに毛が長い。」
「多分どこかで長毛の猫が混ざってるんだと思うわ。でも私は気に入ってるの。友達も綺麗な毛並みだって言ってくれるし。」
「うん、俺も綺麗だと思う。よく似合ってるよ。」
「ホント!?」
「初めて会った猫にウソ言わないよ。」
半分本気、半分お世辞で言ったのだが、カレンはとても喜んでいた。
「あなた意外と良い猫ね。よかったら友達にならない?」
「いいよ。」
互いに尻尾を絡ませて握手をする。
カレンが言うには、これから会いに行く人は動物探偵なる仕事をしているらしい。
自分もたくさん動物を飼っていて、そのうちの一匹の猫はカレンの親友なのだという。
《ほんとに動物と喋れる人間なんかいるのかな?》
そう思いつつも、猫又なんて不思議な生き物がいるんだから、人間にそういった変わり者がいてもおかしくないのかもしれない。
カレンと二匹、その人間へ会いに橋を渡っていった。

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