稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第一話 おかしな薬(1)

  • 2018.11.06 Tuesday
  • 10:23

JUGEMテーマ:自作小説

一週間前までアパートの窓から桜が見えていた。
近所の地主さんが持っている土地に、たくさんの桜が植わっているのだ。
わざわざ出かけなくても桜が見えるのはいいことだけど、散りゆく様も眺めないといけないのはちょっと寂しい。
先週までまだまだ見頃だったのに、今ではもう青い葉っぱに取って代わられている。
けどまあ初夏も嫌いな季節じゃない。
秋と並んで過ごしやすい季節だ。
特に花粉症を持っている人にとっては今の季節の方が嬉しいだろう。
「なあチェリー君?」
そう言って部屋を振り返ると、ライダースーツに身を包み、ツンツンのリーゼント頭をした男が「ぶえっくし!」とくしゃみを飛ばした。
「なんだ?まだ花粉症が治まってないのか?」
「うるせえ!春なんてとっとと過ぎちまえばいいんだ!・・・・ぶえっくし!」
何度も鼻を拭うもんだから真っ赤になっている。
ポケットから薬を取り出し、鼻の中にシュッシュと吹きかけていた。
「まったくよお・・・・なんでこの俺が花粉症なんかに・・・・、」
「霊獣でも罹るんだな。」
「去年までなんともなかったんだぜ。なのに今年からいきなり・・・・ぶえっくし!」
鼻水があちこちに飛んでいる。
その一滴が真っ白な猫の顔にかかった。
「ちょっと汚いわね!」
ゴシゴシ顔を拭いながら怒っている。
こいつの名前はモンブラン。
俺の飼い猫だ。
自称猫界一の美人らしいけど、その気の強さとオテンバぶりは、美人というより肝っ玉の姉御を思わせる。
「あんたの汚い鼻水で私の顔が汚れたらどうすんのよ。」
「へ!知るかってんだ。」
「なんですって!」
「痛ッ!」
顔に飛びかかって猫パンチを食らわせている。
昔はもうちょっとお淑やかだったんだけど、年々気の強さが増している。
人間と一緒で年を取れば取るほど厚かましくなるのかもしれない。
まあ口に出しては言わないけど。
そんなことを言ったら俺にまで猫パンチが飛んでくる。
チェリー君のくしゃみはまだ治まらなくて、あちこちに「ぶえっくしょ!」と撒き散らしまくっている。
モンブランは「もう最低!」と窓から逃げ出していった。
「ちょっと近所の空き地まで行ってくる。」
「車に気をつけてな。」
「は〜い」と尻尾を振りながら、シュタシュタっとアパート裏の茂みへと消えていった。
それと入れ替わるようにして一羽のインコが飛んできた。
窓のサッシに舞い降りて、クチバシの端っこについたミミズの切れ端らしき物をチュルっと吸い込んでいる。
「ただいま。」
サっと翼を上げるので「おう」と返した。
こいつはチュウベエ。俺の飼いインコだ。
「ずいぶん腹が膨れてるな。」
「いい穴場を見つけたんだ。」
「ミミズの?」
「ああ。量も質も最高だ。クチバシに一口入れた瞬間、ぷちゅっと内蔵が潰れて芳醇な肉汁が・・・・、」
「よせよせ、解説するな。」
こんなもん聞いたら食欲が失せる。もうじき昼だってのに。
チェリー君は相変わらずくしゃみを撒き散らしていて、鼻を真っ赤にしながら涙目になっていた。
そこへチュウベエが飛んでいって、鼻の中に何かを押し込んだ。
「ぐえ!」
「どうだ?」
「テメエ!何しやがる!」
「お前にもおすそ分けをと思って。」
「なにい!?」
「ミミズ。鼻の穴に入れといてやったぞ。」
「・・・・うおおお!気持ち悪りい!」
ブシュっとくしゃみをしてミミズを飛ばしている。
チュウベエをそいつを拾い、「これやるわ」と俺に寄越した。
「いるか!」
「もったいない。」
「そこのメタボ犬にでも食わせとけ。」
「だな。」
パタパタと羽ばたいて、腹を出して寝ているブルドッグに近づく。
こいつはマサカリ。俺の飼い犬だ。
マサカリはいびきを掻きながらムニャムニャと口を動かしている。
チュウベエは口の中に入れようとしたが、上手くいなかったのだろう。
代わりに鼻の穴に突っ込んでいた。
「ぐううう〜・・・ひゅう!」
いびきと共にミミズを吸い込んだ。
一度だけ「ごほ!」とむせてから、またムニャムニャと寝言を呟いている。
それを見ていたイグアナが「ひどいことするわねえ」と呆れた。
こいつはマリナ。俺の飼いイグアナだ。
変温動物なのでいつもは窓際にいるのだが、最近は暖かくなってきたので部屋の中をうろつき回っている。
マリナはよじよじとマサカリの腹に上り、チュウベエに向かってこう言った。
「ミミズだって生きてるのよ。オモチャにしちゃ可哀想じゃない。」
「別にオモチャにはしてない。ただ面白いかなあ〜と思って。」
「それをオモチャっていうのよ。ていうかアンタのせいで余計にチェリー君のくしゃみがひどくなったみたいよ。」
もはやくしゃみどころではない。
まるで発作のように鼻水を飛ばしまくっていた。
「おいおい、大丈夫か?」
さすがに心配になってくる。
背中をさすってやると、「これはもしかしたら・・・・」と震えていた。
「どうした?風邪でも引いたのか?」
「そうじゃねえ・・・・。この発作みたいなくしゃみ・・・・花粉症じゃねえかもしれねえ。」
「だろうな。チュウベエがミミズを突っ込んだから。」
「だからそじゃねえって!ヤバいことが起きるかもしれねえんだよ!」
「ヤバイことだって?」
物騒なことを言う。
くしゃみとヤバイこととどう関係があるんだろうか?
チェリー君は「いいか」と真面目な顔になる。
「俺は霊獣の中でも特殊な種類だ。普通の霊獣にはない力を持ってる。」
「知ってるよ、君は秘獣っていうやつなんだろ?不思議な力を持ってるのも知ってる。」
先月、チェリー君のお姉さんからの依頼で、コウモリの霊獣と戦う羽目になった。
その時、チェリー君は特殊な力を見せてくれた。
なんと彼はステルス機能を備えているのだ。
カメレオンみたいに色を変えることで景色の中に溶け込んでしまう。
その特殊能力のおかげでコウモリの霊獣に勝つことが出来たんだけど、俺が知る限り彼が持っている特殊能力はこれだけのはずだ。
「まだ他に特殊な力があるのか?」
「まあな。」
そう言って盛大にくしゃみをする。
正面にいた俺は直撃を喰らい、チュウベエの差し出したティッシュで顔を拭った。
「実はよお・・・・へっくしゅ!俺には予知能力みたいなものがあって・・・・へっぶし!
大きな災いとかが起きそうになると・・・・へっぐしゅ!こうやってくしゃみが・・・へっぶし!何度も・・・・はあ〜・・・・はっくしゅ!」
チュウベエに手を向ける。
「残念ながらもう空っぽだ。」
「棚の上の新しいやつを取ってきてくれ。」
「了解。」
チェリー君のくしゃみはとどまるところを知らず、「もうダメだ・・・」と呟いて元の姿に戻ってしまった。
顔の真ん中に真っ白が線が走ったイタチみたいな動物。
ハクビシンである。
これが彼の正体だ。
動物に戻ったあともくしゃみばかりで、なんと遂には気絶してしまった。
「おい!大丈夫か?」
ピクピクと痙攣している。これは病院に連れて行った方がいいかもしれない。
チュウベエがまたミミズを突っ込もうとしていたので、「やめろ」と奪い取った。
「おい返せ!」
慌てて奪い取り、「うまし!」と叫んでいる。
「ねえ悠一、チェリー君どうしちゃったの?」
マリナが心配そうに尋ねる。
俺は首を振りながら「分からない」と答えた。
《大きな災いが起こりそうになるとくしゃみが止まらなくなるとか言ってたな。てことは何か悪いことが起きる前兆ってことなのか?》
このところは平和である。
生活は相変わらず苦しいが、バイトをしないですむほどには仕事が舞い込むようになっていた。
《まさか・・・廃業とかじゃないよな。だったら絶対に嫌だぞ。せっかく頑張ってここまで来たってのに。》
俺には動物と話せる能力がある。
この力を使って動物探偵をやっているのだ。
動物に関することならどんな依頼でも受けている。
この仕事を始めてから早一年と九ヶ月。
ようやく軌道に乗ってきたってのに、ここで廃業なんてたまったもんじゃない。
《来年の今頃には婚約者だって帰ってくるんだ。そん時に仕事がなかったら指輪さえ買ってあげられないじゃないか。》
俺の彼女も霊獣である。それもタヌキの。
今は自分の世界に帰って、聖獣というワンランク上の位を目指して頑張っているのだ。
だったら俺も頑張らないと!
「おいチェリー君!今から病院に連れてってやるからな!もし治ったらいったいどんな悪い事が起きるのか聞かせてくれ。」
「・・・・へっくし!」
気絶しながらくしゃみをするとは相当だ。
ポケットに財布を突っ込み、慌てて病院に向かった。
幸い大事には至らなかった。
くしゃみのしすぎで酸欠を起こしてしまっただけだったのだ。
とりあえず薬をもらい、家に帰って来る頃には多少マシになっていた。
「おい悠一、腹減ったぞ。」
いつのまにか目を覚ましていたマサカリが餌をねだってくる。
「はいはい」とカリカリを入れてやると、何日も食っていないみたいな勢いでがっつき始めた。
今朝食ったばかりなのに。
「なあ悠一。」
「なんだ?」
「餌の中にミミズ入れたか?」
「まさか。」
「な〜んか生臭いというか泥臭いんだよなあ。」
「気のせいだ。」
「・・・そうだな。気のせいだよな。」
寝ている間にミミズを食っていたなんて知る由もないマサカリは、時々首をかしげながらカリカリを頬張っていた。
「さてチェリー君、いったいどんな悪い事が起きるのか聞かせてもらおうか。」
カリカリカリカリ音を立てるマサカリを尻目に、ぶしゅん!とくしゃみをするチェリー君を見つめる。
人間に化けようとしていたが、くしゃみの被害が大きくなるので「そのままで頼む」と言った。
「へ!言うことなんかなんもねえよ。」
「なんでさ?良くない事が起きるかもしれないんだろ。まさか・・・・俺が廃業するとかじゃないよな?」
「んな個人的なことじゃねえよ。俺っちのくしゃみは占いとは違うんだ。」
「ほ。」
「安心してんじゃねえ。こうやってぶしゅぶしゅくしゃみが出るってことは、とんでもなく大きな災いがやってくる時なんだよ。」
「例えば?」
「そうだな。前にこうなった時は新型のインフルエンザが流行してヤバいことになってたな。」
「パンデミックってやつか?それは怖いな。」
「幸い大事にはならなかったみたいだけどな。人間の科学者どもが薬を作ったから。」
「じゃあ他には?」
「霊獣の世界に隕石が降ってきた。」
「隕石!そりゃまた・・・・。」
「直径10キロもあるドデカイやつでよ。あんときゃヒヤっとしたぜ。」
「大丈夫だったのか?」
「偉い神獣たちがどうにか防いでくれたぜ。その代償として龍神の一匹がギックリ腰になっちまったけど。」
「なるほど。他には?」
「そうだなあ・・・・色々あったけど、やっぱり一番印象的なのはアレかな。」
「どれ?」
ズイっと身を乗り出す。
チェリー君はミリオネアのみのもんたばりに溜めてからこう言った。
「この世を霊獣の世界に変えようとした奴がいたんだ。」
「この世って・・・人間の世界を?」
「ああ。」
「いったい誰が?なんの為に?」
「ダキニって奴さ。全てを霊獣の世界に変えれば、面白い世の中になると思ってたらしい。そうすればどこ行っても退屈しなくなるからって。」
「ダキニ・・・・。」
「まあ詳しい話は姉貴から聞いただけなんだけどよ。」
「・・・・その時はどうなったの?」
「上手くいかなかったみたいだな。他の神獣たちが止めに入ったから。中でもたまきって猫神が一番頑張ったらしいぜ。タイマン張って大喧嘩したらしいから。」
「たまきが・・・・。」
たまき・・・・彼女は偉い猫の神様で、俺の師匠でもある。
とにかく神出鬼没で、彼女を見つけ出すことが動物探偵として一人前になる条件だった。
「今から100年も前のことだけどな。でもあんときゃマジでヤバかった。
下手すりゃ霊獣と人間の間で戦争が起きるんじゃねえかってギリギリのところだったからよ。大事にならなくてよかったぜ。」
その時のことを思い出しているのか、くしゃみをしながらホっとしていた。
でも俺はホっとなんか出来ない。
なぜならダキニとは深い因縁があるからだ。
一昨年の夏、アイツのせいで危うく死にかけたのだ。
稲荷の長のくせに好き勝手なことばっかりやってくれて、迷惑千万もいいところだった。
最後はたまきや仲間と協力して倒したけど。
《ダキニの奴・・・・そんな昔から面倒事ばっかり起こしてたんだな。今は地獄にいるはずだけど、絶対に改心なんかしないだろうな。
こっちへ戻って来たらまた面倒を起こすはずだ。》
思い出しただけでも身震いする。
奴の身勝手ぶりにどれだけ振り回され、危ない目に遭わされたことか。
もうあんな思いをするのはゴメンだ。
できれば二度と関わりたくない。
「なあチェリー君。まさかとは思うけど、ダキニがまた何かしでかすとかじゃないよな?」
「なんだお前?ダキニのこと知ってんのか?」
「まあ色々とあってな。それよりどうなんだ?またアイツが良からぬことを企んでるのか?」
「さあな。」
「さあなって・・・・災いが見えるんだろ?」
「見えるとは言ってねえよ。悪い事が起きそうになるとくしゃみがとまらなくなるだけだ。」
「じゃあ何が起きるかは・・・・、」
「起きてからのお楽しみってわけだな。へっぶし!」
チュウベエが「ほれ」とティッシュを差し出す。
そいつで顔を拭いながら、俺まで嫌な予感に満たされていった。
《もしアイツが戻ってくるとかだったら、どこかに身を隠した方がいいかもしれない。
でもそれだとせっかく軌道に乗り始めたこの仕事にも影響が出るよな。・・・・クソ!結局仕事の心配をしなきゃいけないのか!》
具体的に何が起こるのか分からない。
分からないけど漠然と思っていた。
多分ダキニが関わっているんだろうと。
俺には予知能力なんてないけど、胸に渦巻く不満がそう告げているのだ。
「ただいま。」
窓から声がして振り向く。
モンブランが帰って来た。
サッシの上に立ちながら、なぜかニヤニヤとこっちを見ている。
「どうした?やけに嬉しそうな顔して。」
「うふふ。」
不気味な笑みをしやがる。
こいつは我が家で一番のトラブルメーカーだ。
どうせまた下らない揉め事でも持って帰って来たんだろう。
「悪いなモンブラン。今はお前に構ってる暇はないんだ。」
プイっとそっぽを向くと、「そう言ってられるのも今のうちよ」と言った。
「真剣な顔で何を悩んでるのか知らないけど、そんなのすぐに吹き飛んじゃうくらいすごいモノを見せてあげるわ。」
「そうかい。腹が減ったらそこにカリカリがあるから。勝手に食べてていいぞ。」
「ふん!嘘だと思って。」
不満そうに言うけれど、こいつの話を真面目に聞いて得した試しなどない。
俺だけじゃなくて他の動物たちも興味がなさそうだった。
「悠一、おかわりくれよ。」
「俺もっかいミミズ獲りに行ってくるわ。」
「初夏の陽射しはいいわねえ。すぐに温まるわあ。」
「ぶえっくし!」
誰も彼もモンブランの話になんて耳を貸さない。
みんな厄介事に関わりたくないのだ。
いつもなら「アンタたち!」と怒るモンブランだけど、今日はなぜか余裕の笑みだった。
ニヤニヤと笑いながら「アンタたち!」と叫ぶ。
「今からすごいモノを見せてあげるわ。」
部屋の真ん中でクルっと回る。
何がなんでも注目を引きたいらしい。
しかし誰も興味を示さない。
もちろん俺もだ。
「さ、昼飯作るかな。」
よっこらしょっと立ち上がり、台所に向かう。
そしてフライパンを握った瞬間、「ぬうあ!」とマサカリの声が響いた。
続いて「ぎゃあ!」とチュウベエが、「いやあ!」とマリナが、「べええっくし!」とチェリー君のくしゃみが。
どうせまたトラブルを起こしたに違いない。
「こらモンブラン!」と振り返ると、そこにモンブランはいなかった。
代わりに見知らぬ女が立っていた。
俺も悲鳴を上げてフライパンを落としそうになる。
「あ、あの・・・・どちら様で?」
女は腕組みをしてニヤニヤ笑っている。
余計に怖い・・・・。
暖かくなってきたら、どこかから変人が入り込んだんだろうか?
「あの・・・もう一回聞きますけどどちら様で?」
恐る恐る尋ねる。
もし変な素振りを見せたら通報しなければ。
ポケットのスマホをギュっと握り締めた。
「私よ。」
「は?」
「だから私。」
「いや、私って言われても・・・どこの誰だか覚えがないんですが・・・・、」
俺が困れば困るほど、なぜか嬉しそうにしている。
「まだ分かんないの?」
「だから誰なんだよ?なんで勝手に人の部屋に入って・・・・、」
「勝手じゃないわ。ここは私の家でもあるもん。」
「・・・・は?」
やっぱり変質者らしい。
ほっとけば何をするか分からない。
俺はともかく動物たちは守らないと。
「なんか知らんけど帰ってくれないか?じゃなきゃ今すぐ警察を呼ぶぞ。」
これみよがしにスマホを見せつけるが、まったく動じない。
それどころか嬉しそうに近づいて来る。
「お、おい!寄るな!」
「そんなにビビっちゃって。」
「お前ら!窓から逃げろ!こいつは危ない変質者だ!」
動物たちにそう言っても固まって動けないみたいだ。
そりゃこんな奴が入ってきたらみんな怖がるだろう。
けど俺は飼い主だ!なんとしてもこいつらだけは守らないと。
「いいかお前!動物だけには手を出すなよ!襲うなら俺だけにして・・・・、」
「わ!」
「うおおお・・・・、」
いきなり脅かしてくる。
腰を抜かして尻餅をつくと、「あはははは!」と笑われた。
「ね?」
「・・・・何が?」
「ビックリしたでしょ?」
「そりゃビックリするよ。いきなり脅かされたら・・・・、」
「そうじゃなくて!私の言ったとおり悩みなんて吹き飛んじゃったでしょ?」
「悩みって・・・・何が?」
「だってさっきから真剣な顔で悩んでたじゃない。私が窓から帰って来た時もさ。」
「はい?」
「ほんっとに鈍いわね。よく見てよ。」
そう言ってクルっと回る。
《よく見てって言われてもなあ・・・・こんな奴知らないぞ。》
ボーイッシュな短い髪に、気の強そうなつり上がった目。
頭にはハット、デニムのジャケットを羽織って、ホットパンツ?みたいなのを穿いている。
足元はブーツ、よく考えれば土足じゃないか。
「あの・・・せめて靴は脱いでもらいたいんだけど。」
「そこ!?見るべきところはそこなの?」
「え?だってここ部屋の中だし・・・・、」
「まだ分からないの!もっとよく見てよ!」
グイっと顔を近づけてくる。
俺は仰け反りながらその顔を見つめた。
《なんてワガママそうな顔だ。つり上がった目も気が強そうだし。まるで猫みたいな奴だな。》
そう思ってからふと気づく。
「・・・・・・・・。」
「どう?」
「まさかとは思うけど・・・・、」
目をキラキラさせながら答えを待っている。
チラっと動物たちの方を見ると、みんな何とも言えない感じで頷いた。
「モンブランか?」
ものすご〜く嬉しそう顔で笑う。
「モンブランなんだな?」
「正解!」
「お前人間に化けてるのか?」
「まあね。」
「てことはとうとう猫又とか化け猫になっちゃったのか?」
モンブランは何も答えずに部屋の中を走り回る。
嬉しそうに飛び跳ねながらクルクルとバク宙した。
「みんな聞いて!これから動物たちに革命が起きるわよ!霊獣じゃなくても人間に化けられる時代がやって来るわ!」
ポケットから怪しげなカプセル剤を取り出し、チェリー君以外の動物たちに飲ませていく。
「ぐえ!」
「何すんだ!」
「まっず〜い!」
みんなゲホゲホと咳き込んでいる。
その数秒後、ボワっと白い煙が上がった。
そして・・・・・、
「なんてこった・・・・。」
マサカリが、チュウベエが、マリナが人間に変わっていた。
「どう?すごいでしょ!」
胸を張るモンブラン。
困惑するマサカリたち。
俺は口を開けて固まるしかなかった。
《どうなってんだいったい?》
唖然とする俺にチェリー君が言う。
「な?良くないことが起こるって言ったろ。・・・・へっくし!」

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