稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第五話 オカマとハリネズミ(1)

  • 2018.11.10 Saturday
  • 13:36

JUGEMテーマ:自作小説

犯罪はいつどこで起きるか分からない。
だからこそ恐ろしいし、油断が出来ないのである。
本日、こがねの湯に盗撮魔が出た。残念ながら犯人には逃げられてしまったけど、そいつを捕まえるべく優秀な刑事が来てくれた。
猫又の源ちゃん、鋭い眼光をした腕利きの刑事だ。
犯人を捕まえるのに必要なのは証拠と目撃者だ。
天井の穴からカメラらしき物を見たというバイトの女の子。
源ちゃんはその時の様子を詳しく尋ねていた。
「なんとなく上を見上げたんです。その時は何も思わなかったんだけど、脱衣所を出ようとした瞬間に物音がしました。
なんかゴソゴソって感じで。それでもう一度天井を見上げた時に、小さな穴が空いてるのに気づいたんです。」
不安なのか手をさすりながら話している。
源ちゃんは「続けて」と促した。
「なんの穴だろうって見てるとまたゴソゴソ音がしました。お客さんも気づき始めててみんなでその穴を見てたんです。そしたら・・・・、」
「そしたら?」
「お客さんの一人が誰かいるんじゃない?って言ったんです。なんか人の気配がするって。
それでじーっと穴の奥を見てたらキラってなんか光ったんですよ。」
「ふむ、何かが光ったと。」
頷きながらメモを取っている。
こういう一言一言が重要な証言になるんだろう。
「なんの光だろうってじっと見てたら、カメラのレンズっぽく見えました。」
「どうしてそう思ったの?」
「どうしてって・・・・光を反射してる光り方だったから。」
「なるほど。その後は?」
「天井に穴があって、その奥に誰かいて、しかも何かが反射して光ってるから、きっと盗撮してる人がいるんだと思いました。だから慌ててウズメさんに言いに行きました。」
そういってウズメさんを振り返る。
「じゃあそのあとはウズメさんも一緒に脱衣所へ向かったわけですか?」
「そうよ。でもその時にはもう誰もいなかったわ。まったく人の気配を感じなかったから。」
ウズメさんはお稲荷さんだ。
人間よりも感覚が鋭い。
そのウズメさんが何も感じなかったってことは、すでに逃げられた後なんだろう。
「ちなみに天井の穴は以前から?」
「いいえ、そんなの空いてないわ。毎朝脱衣所のチェックはするけど今朝だってそんなのなかったし。」
「きっと盗撮する為に空けたんですよ!刑事さん、早く捕まえて下さい!!」
「まあ落ち着いて。ちなみにあなたはその光をカメラのレンズだと思ったわけだが、カメラそのものは見ましたか?」
「見てませんけど、アレはぜったいにカメラだと思います!」
「ふむ。ということはそこに人が潜んでいる姿も見てはいない?」
「だって穴が小さいんだから見れるわけないじゃないですか。」
「ということは、客の一人が誰かいると言ったから、そこに人が潜んでいるんじゃないかと思ったわけだ?」
「でもゴソゴソ音がしてたし!ネズミとか虫とかの小さな音じゃなかったし!」
「分かりました。」
いったん聞き取りを終え、バイトの子を事務所から出す。
今度はウズメさんに事情聴取だ。
しかし話を聞く前にドアの方を振り返った。
モンブランがちょっとだけドアを開けて覗いていたのだ。
源ちゃんは立ち上がり、パタンとドアを閉じる。
モンブランが「なによケチ!」と叫んだ。
「私たちだってここのスタッフよ!真実を知る権利があるわ!」
なにがスタッフか。
面倒を起こされると困るからある程度自由にさせているだけだ。
俺は「外野は気にせずに続けて下さい」と言った。
源ちゃんは頷き、ウズメさんにも話を聞いていく。
「一つ疑問に思ったことがあるんですがね。」
「なんでも聞いて。」
「ウズメさんほどの方がなぜ盗撮犯の侵入に気付かなかったのかと。」
そう、これは俺も思った。
人間よりも遥かに感覚の鋭いお稲荷さんが、盗撮犯の侵入を許すわけがない。
ましてやウズメさんは稲荷の長だ。
霊感だって強いわけだし、悪人が近づけば気づきそうなものだけど・・・・。
「あの子たちの面倒を見るのに手一杯で。」
「あの子たち?」
「外で聞き耳を立ててるあの子たち。」
ドアの向こうからガタっと音がする。
源ちゃんは「どうして彼らが?」と首を傾げた。
「まだまだ人間の常識が身についてないのよ。だから目を離すと何をしでかすか分からなくて。」
「なるほど。そちらに気を取られていたと?」
「浴衣の着付けだけでも大変だったのよ。一秒もじっとしてないんだから。頭に帯を巻いたり、浴衣をサリーみたいに巻きつけたり。」
「よくそんな連中を雇っていますな。」
「今日一日だけね。下手に閉じ込めておくより、ある程度自由にさせておいた方がいいと思って。
でもほんとに大変だったわ。まあそのおかげでお客さんは喜んでくれたし、常連のおじさま方にはこれでもかってほど商品が売れたけど。」
ニンマリ笑っている。
多分だけど、商売に目が行き過ぎたのも気づかなかった理由の一つだろう。
「アカリちゃんも手伝ってくれてたくさん儲かったわ。」
「それは何よりですな。」
なんとも言えない顔でメモを取っている。
ていうかモンブランたちがもっと大人しくしていれば、ウズメさんかアカリさんが盗撮犯の侵入に気づいたってことだ。
まったく・・・・本当にあいつらときたら。
松川くんもお稲荷さんだけど、きっと同じ理由で侵入に気づかなかったのだろう。
「ちなみに今までにもこういう事はありましたか?」
「今回が初めてよ。」
「店の周りに怪しい人物がうろついていたとかは?」
「私の知る限りじゃないと思うわ。それに今日は途中でお店を抜け出したから。カーチェイスを止める為に。」
「ああ、そうでしたな。」
渋い顔で頷いている。
「天井裏は全て繋がっているんですか?」
「浴室以外はね。」
「外から侵入できるような場所はありますか?」
「中庭の壁に通気口があるの。金属製の網が填まってるんだけど、それを外せば天井裏に入れるわ。」
「他に通気口は?」
「あと二つあるけど、途中に鉄製の柵があるから入れないわね。」
「ふうむ、となると中庭の通気口から誰かが侵入したという可能性が高いですな。」
険しい表情で言う。
俺は「あの」と手を挙げた。
「なんですかな?」
「実はここの天井からも人間の臭いを感じたんです。」
「なんですと?」
「真上にある填め込み式のエアコンから臭いが漏れていました。」
「それは本当ですか?」
「はい。でもすぐに臭いは消えちゃいましたけど。」
「なら脱衣所からここを通って逃げたということか・・・・。」
「その可能性があるからって、松川くんとアカリさんが中庭へ向かいました。まだ戻って来ないですけど。」
「ふむ、ちょっと中庭を見せてもらえますかな?」
源ちゃんは立ち上がり、ウズメさんが「こっちよ」と案内していく。
ドアの向こうでは案の定モンブランたちが聞き耳を立てていた。
「話は全て聞かせてもらったわ。」
そう言って耳をピクピクさせている。
「これは凶悪な事件よ。早く捕まえないと第二、第三の被害者が出るわ。」
「そうならない為に刑事さんが来てくれたんだ。お前らはここで大人しくしとけよ。」
「嫌よ!」
出た・・・・モンブランのトラブルメーカーぶりが。
こいつが関われば捕まえられるものも捕まえられなくなる。
俺は「いらんことはするなよ」と釘を刺した。
「お前らは銭湯の仕事をしてればいいんだ。でないと豪華なご褒美が貰えなくなるぞ。」
「何言ってんの、逆よ逆。」
「逆?」
「ここで犯人を捕まえれば大手柄じゃない!そうすればいっぱいご褒美をもらって、大金持ちだって夢じゃないわ。ねえみんな!」
そう言ってマサカリたちを振り返ると、「違えねえ」と頷いた。
「そんな変態野郎は俺様がとっちめてやるぜ!そうすりゃ神戸牛ステーキ食い放題だ!」
「おい待て、抜け駆けは許さんぞ。俺だって鰻重をたらふく食いたいんだ。その後はハモも食べてみたい。」
「私だって負けないわよ!京都の料亭で一流シェフのフルコースを頂くんだから!」
料亭にシェフはいないし、フルコースも出ないだろう。
でもこいつらの妄想は止まらない。
俺の制止を振り切って外へ駆け出していった。
「お〜い!戻れって!余計なことするな!」
ああ・・・・これでまた一悶着起きる。
もはや追いかける気にもなれない。
また何かトラブルが起きたとしても俺は知らん!
だって今の俺は子犬で、あいつらは人間だ。ということは今の俺は飼い主じゃないってことだ。
そもそもこうなってしまったのは怪しげな薬をばら撒いた奴のせいだ。
だから俺にはなんの責任もない!
・・・・と開き直れればいいんだろうけど、そう出来ないのが辛いところだ。
奴らがいらんトラブルを起こす前に止めなければ!
「お前ら!勝手は許さんぞ!」
ダダっと外に駆け出していく。
しかしなぜかモンブランたちは戻って来た。
ついでにアカリさんと松川くんも。
「どうです!誰かいましたか?」
そう尋ねるとアカリさんは「まあね」と頷いた。
「通気口の網が外れてたから、誰か侵入したのは間違いないわ。でも中庭には誰もいなかったから、松川くんと二人でお店の周りを探してたのよ。そうしたら・・・・、」
「怪しい奴がいた?」
「かなりね。だって筋肉ムキムキマッチョマンなのにミニスカートを穿いてるんだもん。」
「ムキムキマッチョのミニスカート・・・・。」
「そんなのどう見たって怪しいでしょ?だから声を掛けたんだけど、その瞬間に逃げ出したのよ。ねえ?」
松川くんを振り返ると「そうです」と頷いた。
「きっと僕たちがこがねの湯の制服を着てるから逃げ出したんですよ。追いかけてきたんだって思って。」
この店のユニフォームはオレンジ色のTシャツに短パン。
そして紫色の前掛けだ。そこにはキツネの刺繍が入っている。
確かに一目でこがねの湯のスタッフと分かる格好だ。
「アカリさんたちを見て逃げ出したってことは、やっぱりそいつが盗撮犯なんですね?」
「だと思うんだけど、全然口を割らないのよ。たまたま通りかかっただけだとか言ってさ。」
「そうやって押し問答してるうちにウズメさんと刑事さんが来たんです。あとは私が引き継ぐからって刑事さんに追い払われちゃいました。」
「まったく・・・・何様だって話よ。苦労して見つけたのは私たちなのに。」
「一般人は向こうへ行ってろみたいな感じでしたよね。」
「ほんとよ!それを言うならアンタだってただの猫又でしょって言いたかったわ。こっちは稲荷だってのにさ。」
「なんか見下すみたいな目えしてましたよね。お前らは稲荷でも下っ端だろみたいな。俺は猫又だけど年季が入ってるんだぞ的な。」
「ああ腹立つ!ウズメさんもなんであんな奴呼んだんだか。」
獲物を横取りされたことが悔しいらしい。
かなりご立腹のようで、こうなった時のアカリさんはかなり怖い。
「コラあんた達!ボケっとしてないで仕事しな!!」
怒号が響く。
モンブランたちはビクっと怯えて、俺の後ろに隠れた。
「悠一、あのお稲荷さん怖いわ・・・・。」
「俺たちゃか弱い動物だってのによ・・・・。」
「こういうのをヒステリーっていうんだよな?」
「いいえ、きっと更年期障害よ。」
こいつら・・・・なんて恐ろしいことを言うのか。
チラっとアカリさんを見ると、顔が獰猛な獣に変わっていた。しかも空気が歪むほど殺気を放っている。
松川くんが「キレちゃダメですよ!」と必死に押さえ込んだ。
「相手はただの動物ですから。」
「お、俺からもちゃんと注意しておきますから!どうかご容赦を!」
二人してペコペコ謝る。
しかしモンブランたちは火に油を注いだ。
「やあねえ、神様のくせにこの程度で怒るなんて。」
「そうだぜ。短気は損気、稲荷の名が泣くぜ。」
「ていうか神様でもヒステリーってあるんだな。」
「だから更年期障害だってば。」
俺も松川くんも真っ青になる。
アカリさんのお尻から大きな尻尾が四つ生えてきた。
これ以上怒らせたら確実に血の雨が降るだろう。
「お前ら!頼むから謝ってくれ!!」
常識がないというのは恐ろしい。
動物なら許されることも、人間だと許されないというのが分からないんだから。
もはやアカリさんの怒りは限界で、「テメエら表出ろお!!」と雄叫びが響いた。
「すいません有川さん!僕これ以上は無理です!!」
「ちょ、待て松川くん!」
なんて奴だ・・・・一人だけ逃げやがった。
アカリさんは今にもキレそうな顔をしながら牙を剥き出している。
「お前ら!今ならまだ間に合う!土下座して謝るんだ!」
そう言って振り向いた瞬間、「何を謝るの?」とウズメさんが言った。
その隣には源ちゃん、そして・・・・・、
「ムキムキマッチョマンのオカマ!」
モンブランが叫ぶ。
確かにそこにはムキムキマッチョのオカマがいた。
まるでボディビルダーみたいにマッチョな肉体で、しかしなぜか服は可愛い。
上はフリルのついたピンクのシャツ、下もフリルの付いたミニスカートだ。
しかも女物のバッグを肩から掛けている。
髪の毛は長く、アイドルみたいにツインテールに結っていた。
「この人よこの人!人間に化けられる薬をくれたのは!」
ビシっと指をさす。
モンブランよ、お前は口止めされているのではなかった?
いや、正直に言ってくれた方がありがたいけどさ。
しかしオカマは怒った。見た目に似合わないほど高い声で「それ言わない約束でしょ!」と。
「あ、そうだった・・・・。」
「もう!口止め料としてあげたモンパチ返してちょうだい!」
耳に刺さるほど高い声だ。
源ちゃんはオカマの背中を押しながら事務所へと入って行く。
ウズメさんもそれに続こうとした時、「何してるのアカリちゃん!」と叫んだ。
「こんな所で稲荷に変化して!みんな怖がるでしょ!」
「え?ああ・・・すいません!」
慌てて元に戻る。
ウズメさんは指をさしながら説教をした。
「何度も言ってるでしょ、お店では人間でいなさいって。いくらここがバックヤードでも、お客様のいらっしゃる店に変わりはないんだから。」
「すいません・・・。」
「あなたもう新人の稲荷じゃないのよ。このお店だって私が不在の時はあなたが店長代わりなんだから。」
「はい・・・・。」
「後輩に厳しく指導するのはいいけど、自制心は忘れちゃダメよ。」
「気をつけます・・・・。」
さすがのアカリさんもウズメさんには頭が上がらない。
なんたって稲荷の長だし、命の恩人でもあるし、なにより自分を稲荷にしてくれたのもウズメさんだから。
ウズメさんは険しい表情のまま事務所へ入っていく。
パタンと扉が閉じられて、アカリさんはしょんぼりしていた。
「あらあら、さっきまであんなに威勢がよかったのに。」
「怒られてしょんぼりしてるぜ。」
「稲荷の世界も大変ですなあ。」
「私イグアナでよかったわあ。今は人間だけど。」
「お前らいい加減にしろ!」
こいつらの口の悪さはどうにかならんものか。
動物の時は笑って許せたけど、人間の今は笑えない。
俺は「すいませんアカリさん!」と頭を下げた。
「こいつらホントにどうしようもないバカなんです!どうか俺に免じて許してやって下さい!!」
どうか平にと謝っていると、「はあ・・・」と肩を落とした。
「あ、アカリさん・・・・?」
「ダメね私は・・・・。」
「え?」
「そんな動物たち相手に本気になっちゃうなんて・・・・稲荷失格だわ。」
「いやいやいや!そんなことないですよ!悪いのはこいつらなんですから、ええ。」
「いいのよ慰めてくれなくても・・・・。」
「慰めるなんてそんな・・・・。」
「これじゃ子供たちだって言うこと聞かないはずだわ。それどころか子供の躾を悠一君に依頼しようだなんて・・・・親としても失格だわ。」
壁に手を付いて項垂れている。
こんなに落ち込むなんて珍しい。
「あ、あの・・・・何かあったんですか?」
「何かって・・・・なにが?」
「だってアカリさんがここまで落ち込むなんて・・・・・。」
「私だって落ち込むことくらいあるわよ。」
「そ、そうですか・・・・。」
「悠一君、悪いんだけど依頼はキャンセルするわ。」
「ええ!どうして?」
「せめて子供の躾くらいは自分でやらなきゃね。」
そう言ってトボトボとバックヤードから出て行った。
やっぱり相当落ち込んでいるみたいだ。
それもこれも全てはこのアホどものせい。
俺は「お前ら!」と怒鳴った。
「さっきから好き勝手なことばかりしやがって!今は人間だって自覚してるのか!」
そう言って振り返ると誰もいなかった。
「は!また目を離した隙に・・・・。」
これだから油断ならない。
今度は何をしでかすつもりなのか。
慌てて探しに行こうとすると、事務所のドアが開いて「悠一」とモンブランが呼んだ。
「あ、なに勝手に入ってんだ!」
「だって刑事さんに呼ばれたんだもん。」
「源ちゃんに?」
「聞こえてなかったの?」
「だってアカリさんと話してたから・・・・。」
「もう、ボケっとしちゃって。悠一もさっさと入って。」
「あ、ああ・・・・。」
なぜか俺が注意される。
釈然とせずに事務所に入ると、モンブランの膝の上に乗せられた。
「刑事さんが詳しく話を聞きたいんだって。」
「それは・・・例の薬のことか?」
「うん。」
「それはいいけど盗撮の件はどうなったんだ?」
「今はこっちが先だって。」
「なんで?」
「事件の重大さが違うから。」
「そんな、事件に大きいも小さいも・・・・、」
「ありますよ。私はモスグリーンのコートを羽織った刑事じゃないんでね。」
源ちゃんが鋭い目で言う。
「盗撮の件はもちろん調べます。しかし今はこの薬の件が先です。」
そう言って赤と青のツートンカラーのカプセル剤を見せた。
「ああ!それはあの薬!」
「あなた方が飲んだのはこれで間違いありませんか?」
「そうです!その薬です!」
こいつのせいで今の俺はこんな姿に・・・・。
やっぱりこのオカマがこの薬を捌いていたってことか。
モンブランの手から飛び降り、「解毒剤を寄越せ!」と詰め寄った。
しかしオカマは「なにこの犬?」と俺を抱き上げた。
「キャンキャン吠えちゃって可愛い。」
「おいコラ!撫で撫でするな!」
「有川さん、そいつは人間です。あなたの言葉は通じません。」
そういえばそうだった。
だけどこの人はモンブランに薬を渡しているのだ。
それも喋らないようにと口止めをして。
動物と喋ることが出来ないならそんなことは無理なはずだ。
まあモンブランが人間に化けたあとに言ったとも考えられるけど・・・・、
「なあモンブラン。お前はなんでこの人の言葉が理解できたんだ?」
「だってネズミが通訳してくれたから。」
「ネズミ?」
「カバンの中にいるの。出てきたら?」
そう言うとオカマのバッグがごそごそと動いた。
中から小さな生き物が顔を出す。
オカマはそいつを手に乗せ、「可愛いでしょ」とウットリした。
人の手に乗るくらいの大きさで、背中にはビッシリとトゲが生えている。
こいつはハリネズミだ。
「ほらマシロー君、ご挨拶して。」
オカマが言うと、「ごきげんよう」と小さな前足を上げた。
「皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。」
声は幼いが言葉遣いは達者だ。
マシロー君はオカマの手から飛び降り、ピョンとテーブルの上に立った。
「人と喋ることができるハリネズミ、マシローと申します。どうぞよろしく。」
ペコリと頭を下げる。
釣られて俺も頭を下げた。
「動物としゃべれる人間、有川悠一です。」
「やや!これは驚き!動物としゃべれる人間とは!」
目を丸くしている。
でもそれは俺だって同じだ。
「あの、つかぬことをお伺いしますが・・・・、」
「なんでしょう?」
「もしかして君も霊獣ですか?」
「いえいえ、滅相もない。僕はただのハリネズミです。人としゃべれることを除いて。あなたこそ霊獣ですか?」
「滅相もない。俺はただの人間です。動物としゃべれることを除いて。」
「僕たち似た者同士ですね。」
「そうですね。」
「じゃあ僕はこの辺で。」
そそくさとバッグに戻って行く。
モンブランが「ね?」と言った。
「すごいでしょ、ネズミの通訳なんて。」
「ああすごい。でもこんな話聞いてないぞ。」
「だって聞かれなかったもん。」
「・・・・・・・・。」
いったいどこの誰が人と話せるネズミがいるかどうかの質問をするというのだろう。
しかしモンブランは悪びれない。
他の奴らも「ダメだな悠一は」と笑っていた。
まったく・・・今日はなんて日だ!

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