稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第八話 例の薬(2)

  • 2018.11.13 Tuesday
  • 13:12

JUGEMテーマ:自作小説

春の終わりの小雨には風情がある。
今日は朝から曇っていて、目が覚めた時から霧のような雨が地面を濡らしていた。
もし普段通りにマサカリを散歩に連れて行くなら、鬱陶しいと感じただろう。
でも今日は違う。
面倒臭いと感じていた朝の散歩も、自分自身が犬になれば楽しいものだ。
となれば小雨にも風情を感じるというものである。
「いやあ、早朝の散歩ってこんなに楽しいものだったんだなあ。なあマサカリ?」
「へ!俺は面倒臭いだけだぜ。」
今日はいつもと立場が逆転。
俺はリードを付けられ、マサカリがそれを握っている。
ここは国民宿舎から少し離れた林道である。
道路は舗装してあるけど、周りを囲う木立が山を感じさせた。
時々葉っぱから雫が落ちてきて、鼻先を掠めていく。
俺はクンクンと地面の臭いを嗅ぎながら、草の根元にオシッコをかけた。
「ちゃんとマーキングをしとかないとな。」
「へん、子犬がいっちょ前に。」
「お前だって子犬の頃からやってたろ。」
「まあ本能だからな。」
あちこち臭いを嗅ぐ度に立ち止まってしまう。
マサカリに「さっさと歩けよ」と引っ張らてしまった。
「もうちょっとゆっくり嗅がせろよ。」
「悠一、おめえ心まで犬になっちまったのか?」
「だって気になってしょうがないんだ。」
犬の鼻はよく利く。
ちょっとした臭いでも嗅ぎ分けられる。
そのうち便意を催してきて、林道の真ん中でスッキリしてしまった。
「こら!道の真ん中ですんなよ。」
ブツブツ言いながらビニール袋で回収している。
もうオシッコウンチを見られるのも恥ずかしくない。
マサカリの言う通り、心まで犬に変わってしまったようだ。
昨日までは早く人間に戻りたいと思ってたけど、今はこのままでもいいかなと思っている。
犬として第二の人生を過ごすのも悪くないかもしれない。
《・・・・いやいや!イカンぞ!なにを血迷ってるんだ。》
人間に戻れなかったら仕事も結婚も出来ないではないか。
たった一日で心まで犬に染まってしまうだなんて・・・・やっぱりあの薬は恐ろしい。
と思いつつ、また草の根っこにオシッコを掛けた。
「ほら、もう帰るぞ。」
「え〜、まだいいだろ。」
「なに言ってんだ。もうじき源ちゃんが来るんだぜ。」
「ふん!人間っていうのはせかせかしてて嫌だねえ。」
「お前だって人間の時はせかせかしてたクセに。」
強引にリードを引っ張られる。
俺は四足を突っ張って抵抗した。
「むぎいいい〜!」
「こら!引っ張るな!」
首輪がせり上がって、顔の真ん中に肉が集まってくる。
だってまだ散歩をしたいのだ。
帰る方の道には行きたくない!
「ワガママな野郎め!こうしてやる!」
「ああ、やめろ!」
片手でヒョイっと持ち上げられる。
抵抗むなしく宿舎へ連れて帰られてしまった。
フロントの人がタオルを持ってきてくれる。
マサカリは「すんませんねえ」と受け取って、ゴシゴシと俺を拭いた。
「おい!もっと優しく拭いてくれ。」
「バッキャロウ!お前はいっつもこんな感じで俺を拭いてるんだぜ。」
暴れる俺、ゴシゴシ拭くマサカリ。
フロントの人が笑っていた。
部屋へ戻るともう源ちゃんが来ていた。
まだ朝の六時半、刑事に時間は関係ないようだ。
俺はマサカリの手から飛び降り、「解毒剤は!」と尋ねた。
「見つかったんだよな?」
「残念ながら。」
「そんなあ・・・・。」
「念入りに捜してみたんですがね。それらしき物はどこにも。」
「ほんとにちゃんと捜したのか?どっか見落としてるとかは?」
「猫又仲間も一緒に捜してもらったんですが見つかりません。側溝にでも落ちて流されたか、誰かが拾ったかのどちらかでしょう。」
「じゃあ元に戻れないってこと?」
「解毒剤が見つかるまでは。」
「・・・・・・・。」
ショックだ。源ちゃんなら見つけてきてくれると思ってたのに。
今でさえ心が犬に染まりつつあるのだ。
あと一日このままだったらどうなるか。想像しただけでも恐ろしい・・・・。
「お願いだよ源ちゃん!ぜったいに解毒剤を見つけてくれ!」
「まあ落ち着いて。」
ヒョイっと抱き上げられてモンブランに渡される。
「キャンキャン吠えないの。」
「だって・・・・、」
「散歩が終わったら餌でしょ。はいどうぞ。」
売店で買ってきたカリカリをお皿に入れている。
俺は情けなくもガッツいてしまった。
「見て見て!めちゃくちゃ尻尾振ってるわ!可愛い!」
大笑いするモンブラン。「クソったれ!」と叫びながらカリカリを頬張った。
「よかったわねえ、ペット可能な宿で。」
マリナも頭を撫で撫でしてくる。
チュウベエが「ほ〜れほ〜れ」と餌を取り上げた。
「あ、返せ!」
「もっと高くジャンプしてみ?」
「返せってば!」
「なははは!ぜんぜん届かないでやんの!」
「チクショウ・・・・。」
「代わりにこれやるよ。」
目の前にミミズをぶら下げられる。
モンブランが「意地悪しちゃダメよ!」と怒った。
「イジメたら可哀想でしょ。」
「だって面白いんだもんよ。お前もやってみ。」
餌を渡すと、ちょっと迷ったあとに「ほ〜れほ〜れ」とからかった。
「だから返せよ!」
「あははは!ほんとだ、面白い!」
「クソ!マジで覚えてろよお前ら・・・・・。」
こんなの虐待ではないか。
立場が逆転した時どうなるか・・・・きっちり思い知らせてやる!
「お前らいつまでふざけ合ってんだよ。源ちゃんがイラついてるぜ。」
チェリー君に叱られてしまったではないか。
「解毒剤が見つからなかったのはショックだけど、例の薬の件はどうだった?詳しい出処って分かったのか?」
「実はそっちも難航していましてな。遠藤の言っていたタカイデ・ココという店に行ってみたんですが、入れてもらえなかったんですよ。」
「どうして?」
「あの店は会員制だそうで、一見さんはお断りだと。」
「でも警察手帳を見せれば・・・・、」
「もちろん見せました。しかし無理でしたな。警察として店に入りたいなら令状を持って来いと。」
「なんか怪しい店だな、それ。」
「ああいった高級な会員制の店というのは、それなりの身分の客が出入りするものです。
となるとイメージが大事なので、私のような立場の者は敬遠されるんですよ。」
「じゃあ会員になって潜入するっていうのは?」
「二年待ちだと言われました。金額もウン百万とするようで。」
「それって追い返すためにそう言ってるってこと?」
「かもしれませんな。どっちにしろマトモな方法では入れそうにない。だったら方法は一つ、マトモではない方法で入るしかない。」
「マトモではない方法って・・・・まさか!」
「ええ、私は猫又ですからな。変化の術を使えば潜入は簡単です。」
「じゃあすぐに潜入してくれ!もしかしたらそこにも解毒剤があるかもしれない。」
「まあそう焦らずに。こういうのは慎重に事を運ばんと痛い目を見るもんです。今日一日かけてタカイデ・ココを調べますから、潜入はそれからですな。」
「次こそは期待してるからな源ちゃん!」
もはや彼しか頼りがいない。
そのあと、源ちゃんは遠藤さんに再度取り調べを行った。
カグラのこと、薬のこと、鬼神川という男のことなど。
遠藤さんの話は昨日と変わらず、とくにめぼしい情報はなかった。
「奴らはとにかく危険よ。特に鬼神川は。薬を開発してる時だって、何人か失踪したり行方不明になってるんだから。」
「その鬼神川という男は稲荷で間違いないんだな?」
「そうよ。鬼の狐火って呼ばれてるらしいわ。」
「その名前は私も聞いたことがある。確か尻尾は六本だったな?」
「ええ、間違いないわ。」
「ということは位の高い稲荷だ。神獣クラスと見て間違いないだろう。」
源ちゃんの顔は険しい。
だって神獣クラスといえば、ウズメさんやダキニ、それにたまきと同じ位なんだから。
いくら源ちゃんが腕利きの刑事とはいえ、猫又が勝てる相手じゃないだろう。
「稲荷が仕切る会社か・・・・。そういえばカグラとライバル関係にあるカマクラ家具も神獣クラスの稲荷が仕切っていた。この二つの会社、何か関係があるのかもしれんな。」
険しい顔は憂いに変わる。
「なあ源ちゃん、これって君だけの手に余るんじゃないか?」
「そうですな、さすがに猫又だけではどうにも。」
「じゃあここはウズメさんにも協力してもらおう!なんたって稲荷の長なんだから・・・・、」
「そう簡単にはいかんのですよ。」
源ちゃんは渋い顔で言う。
「有川さんは人間だから霊獣の世界に疎い。」
「どういうこと?だってウズメさんは稲荷の長なんだから、その鬼神川って人だって言うこと聞くはずでしょ?
だったらウズメさんから言ってもらえばカグラのことだって簡単に調べられるんじゃ?」
「それが疎いと言っとるんです。」
俺のカリカリを一粒掴み、ボリっと齧る。
「稲荷の世界は二つの派閥に分かれとるんですよ。」
「派閥?」
「ウズメさんやダキニがいる側は仏教系の稲荷なんです。ほら、お寺の中にお稲荷さんが祭ってあるのを見たことがありませんか?」
「・・・・ああ!あるある!知り合いのお坊さんのお寺にあったよ。」
「あれはダキニ天という神を頂点とした、仏教系の稲荷です。対して神社などで祭られているお稲荷さんは別物なんですわ。」
「別物・・・・。」
「あっちは神道系の稲荷でしてな。ウカノミタマノカミやホケモチノカミ、トヨウケヒメといった稲荷神たちがまとめておるんですわ。
そして鬼の狐火と異名をとる鬼神川という男は、神道系の稲荷です。
もし仏教系の稲荷の長であるウズメさんが手を出せば、派閥同士の遺恨に繋がりかねません。」
「そんなややこしいのか、お稲荷さんの世界って・・・・。」
「本来は稲荷神というのは神道にしか存在しないものでした。
しかし民衆に人気のあった稲荷神にあやかる為、お寺でも稲荷を祭るようになりましてな。
そういった文化や歴史の流れなど、いろんな事情があるんですわ。」
「要するにウズメさんの手は借りられないってこと?」
「彼女の立場上、迂闊なことは出来んでしょうな。」
「でもそうなると困るな。だって薬のことを詳しく探るにはカグラのことを調べなきゃいけないわけでしょ?だったらこっちにだって神獣の協力者がいなと。」
「その通りです。この件、思っていた以上に厄介かもしれん。いやはや・・・困った。」
困るのはこっちだ。
解毒剤がないと元に戻れない。
遠藤さんの持っていた解毒剤がなくなってしまった今、カグラに新しいのを作ってもらうしかないというのに。
しかしそのカグラに手を出せないとなると・・・・いやはや、困った。
《誰か・・・・誰かいないのか?こっちに味方してくれそうな強い霊獣は。》
小さな尻尾が垂れ下がる。
悩む子犬・・・・きっとみすぼらしく見えるだろう。
するとモンブランが「いるじゃない!」と手を叩いた。
「たまきに相談しましょ!」
「たまきか・・・・。それは俺も考えたけど、どこにいるか分からないんだよなあ。」
アイツは神出鬼没である。
なんたって猫だから。
実は今年の初めくらいまでは近くにいたんだけど、今は行方をくらましている。
しかもそれは俺のせいなのだ。
俺はたまきの弟子である。
そして今年の初め、ようやく一人前のお墨付きをもらったのだ。
これからは師弟ではなく、共に戦う戦友だと言ってくれた。
でも俺はそのお墨付きを返上した。
一人前を名乗るにはまだまだ未熟だからと。
だってあいつはほんとに凄い奴で、俺なんか足元にも及ばないのだ。
だからこう言った。
どこにいるか分からないお前を、いつか自分の力で見つけてみせると。
その時こそ一人前を名乗れる気がするからと。
たまきは頷き、俺の元から去っていった。
《ああ・・・あの時カッコつけたこと言わなかったらたまきの手を借りられたのに。》
たまきはダキニとタメを張るくらいに強い。
いくら鬼の狐火とかいう奴が相手でも負けないだろう。
「モンブラン、残念だけどたまきに頼るのは無理だよ。どこにいるか分からないんだから。」
「でも源ちゃんなら知ってるかもよ。ねえ?」
そう言って目を向けると、申し訳なさそうに首を振った。
「たまきさんは神出鬼没でしてな。私も普段はどこにいるのか分かりません。」
「腕利きの刑事のクセに情けないわね。」
「こらモンブラン!」
「いいんですよ、刑事として何も出来ていないんですから。」
源ちゃんは立ち上がり、部屋を出て行く。
「あ、怒っちゃった。」
「笑ってないで謝れ。」
「なによ、ちょっと冗談言っただけなのに。」
渋々という感じで「悪かったわよ」と謝る。
しかし源ちゃんは「怒ってるわけじゃありません」と言った。
「何も出来ないまま終わることは刑事として失格だ。今から猫又仲間と対策を考えます。」
心強い言葉だ。
でもそうなると・・・・、
「俺たちはまだここにいなきゃいけないのか?」
「ええ。」
「そんな・・・・。」
昨日の夜、モンブランたちが勝手に抜け出して大変だったのだ。
売店の酒は飲むわ、大声でロビーを走り回るわ、フロントのパソコンを勝手にいじるわ。
キレたチェリー君が『テメエらいい加減にしろ!』とシバき倒したのだった。
部屋に戻ってからも、酔っ払ったモンブランとチュウベエが大声で歌いまくるし、本気で窓から叩き落としてやろうかと思うほどだった。
おそらく今夜もそうなるだろう。
どうにか・・・・どうにか解毒剤を手に入れる方法はないものか?
《カグラを調査することさえ出来れば手には入るかもしれないんだ。薬はそこで作られてるんだから、解毒剤だってまだあるはずだ。》
ない頭をひねって考える。
「では私はこれで。」
源ちゃんが出て行く。
マサカリが「明日は手土産持ってきてくれよ」などとホザいた。
「散歩で会う度にオヤツをくれる人間だっているんだ。次は手ぶらはなしだぜ。」
イラっとくることを言っているけど、そのおかげでピンときた。
「源ちゃん!」
慌てて追いかける。「なんですかな?」と振り返った。
「一人だけ強い味方になってくれる人がいる!」
「ほう、そんな霊獣が。」
「霊獣じゃない。じゃないけど・・・・カグラに顔が利くはずだ。」
「それはいったい誰です?」
「俺の友達で北川翔子さんって人がいるんだ。マサカリの散歩の時によく会う人で、いつも餌をくれる。」
「北川翔子・・・・何か特別な力を持っている人ですか?」
不思議がる源ちゃんに教えてあげる。
「稲松文具会長の娘さん。」
「なんと!あの稲松文具の・・・・、」
「翔子さんは俺の数少ない人間の友達なんだ。しかも本社の課長・・・いや、今はシンガポールで部長補佐だったかな。
とにかく優秀だし、それなりのポストにいる人なんだ。だからグループ会社の調査くらいならお願いできるかもしれない。」
「そうですな・・・・会長の娘さんとなれば父上に取り次いでもらえる可能性も高い。となればカグラの調査は可能かもしれない。」
「ええっと・・・翔子さんは親の力を借りるのは嫌いな人だから、そういう頼み方はしない方が・・・・、」
「そんなことを言っている場合ですか。もし調査が進まなかったら解毒剤は手に入らないんですぞ。それとも一生の犬のままでいいと?」
「それは嫌だけど・・・・、」
「すぐに連絡先を教えて下さい。」
源ちゃんの顔は本気だ。
俺は「アパートのスマホの中に」と答えた。
「分かりました。ではすぐに取ってきます。」
急いで駆け出していく。
翔子さんには申し訳ないと思いつつ、もうこれしか手がなかった。
《ごめん翔子さん!毎回都合の良い時だけ助けてもらおうとして。》
彼女はすごく良い人なのだ。
その優しさについつい甘えてしまうばかりで、こっちから恩返しをした試しがない。
案の定、モンブランたちがからかってきた。
「また翔子ちゃんを頼るの?」
「いっつもいっつもカッコ悪いぜ悠一。」
「俺が翔子なら頭の上に糞を落としてるな。」
「ちょっとチュウベエ、人間はそんなことしないのよ。せめてゲロにしときなさい。」
「お、そうだな。」
《ほんとにこいつらだけは・・・・。》
解毒剤が手に入るまでまだまだ時間が掛かるだろう。
だったらせめてこいつらに人間の常識を教えとかないといけない。
《俺は子犬だから言うことなんて聞かないだろうな。となればここはチェリー君にお願いするしか・・・・、》
そう思いかけた時、「みなさん恥ずかしいですよ」とマシロー君が言った。
「人間になってテンションが上がるのは分かりますが、もう少し落ち着きましょう。」
「なによハリネズミのクセに。」
モンブランが摘まみ上げる。
「私の正体は猫なのよ。ネズミなんかパクっと食べちゃうんだから。」
「ではどうぞ。」
ボールみたいに丸くなって、全身をトゲで覆ってしまった。
「度胸は一人前ね。でもほんとに食べちゃうわよ。」
そう言って「はいマサカリ」と押し付けた。
「なんで俺なんでい。」
「だってなんでも食べるでしょ?」
「バカいえ。そんな針だらけの奴食えるか。」
「じゃあチュウベエは?」
「いらない。」
「じゃあマリナ。」
「嫌よそんなトゲボール。モンブランが食べればいいじゃない。」
「なによ、みんな意気地なしね。じゃあ悠一どうぞ。」
「いるか!」
冗談で言っているのか本気で言っているのか分からない。たぶん本気なんだろうけど。
マシロー君は「みなさんは大人気なさすぎます」と言った。
「いくら元が動物だからって、何をやってもいいわけじゃありませんよ?」
「ずいぶん偉そうに言うわね。ネズミのままのアンタが何を知ってるのよ。」
「私自身は人間になったことはありませんが、人間に変わった動物ならたくさん知っています。」
そう言って遠藤さんを振り返る。
そういえば彼は野良犬や野良猫に例の薬を与えていたのだ。
これってよく考えれば・・・いや、よく考えなくてもヤバいことじゃないか。
「なあ遠藤さん?あなたが人間に変えた動物たち、そのあとはどうしてるんだ?」
「さあ。」
「さあって・・・知らないのか?」
「最初だけは面倒を見てたわ。でもずっとってわけにはいかないもの。今頃はどこで何をしてるやら。」
「無責任な・・・きっとまともな仕事になんか就けないぞ。食うに困って犯罪に走ってたらどうするんだよ?」
「犯罪に走る可能性はあるかもね。捨てた飼い主への復讐とか、悪質なペット業者を刺しに行くとか。」
「冗談のつもりなら全然笑えないんだけど。」
「本気で言ってるのよ。だってどの子も辛そうにしてたもの。マシロー君が通訳してくれて、あの子達の悲しみとか怒りがよく伝わってきたわ。
だからもし復讐に走ったとしても仕方ないと思うわ。」
「それは辛い過去を持つ者としての同情か?」
「そんなところ。」
「けどほんとに犯罪に走ったら刑務所行きだぞ?それはそれで可哀想だろ。」
「野良犬や野良猫のままなら復讐すらできずに死んでいったと思うわよ。それなら刑務所の方がまだマシじゃない?」
「そういう問題じゃなくてさ、犯罪に走るかもしれないってことが問題なわけで・・・・、」
「じゃあアンタがどうにかしてあげればいいじゃない。」
「へ?俺?」
「だって動物を助ける仕事をしてるんでしょ?」
「いや、今はこんな姿だから・・・・、」
「じゃあマシロー君を貸してあげるわ。」
「え?なんで・・・・?」
「だって人間と動物、両方としゃべれるから。それにしっかり者だし。」
だからなんだというのか?
人間と喋れようがしっかり者だろうが、マシロー君はただのハリネズミ。
一緒に行ったからといってどう役に立つんだろう。
「役に立ちますよ。」
俺の疑問を見透かしてかそう答える。
「僕は人間に変わった動物たちの顔を覚えていますから。」
「でも居場所は分からないだろ?」
「聞き込みをすればいいんですよ。だって僕は人間と動物、両方としゃべれるんですから。たくさん情報を集めることが出来ます。」
「それはいつも俺がやってる方法だ。」
「というわけで一緒に捜しに行きましょう。彼らが犯罪に走る前に。」
やる気満々である。
モンブランたちも「行こ行こ!」と乗り気だ。
「これだって動物探偵の仕事よ、ねえ悠一?」
「タダ働きだけどな。」
「遠藤さんからふんだくればいいじゃない。」
「払ってくれるかな?」
チラっと振り返ると「いいわよ」と頷いた。
「ただし全員見つけたらね。」
「分かった、なら依頼として引き受けるよ。」
俺、モンブランたち、マシロー君。
なかなか心配なメンバーだけど、チェリー君がいればなんとかなるだろう。
「チェリー君、君だけが頼りだ・・・・・って、どこいった?」
「さっき出て行きましたよ。」
「アイツも勝手にどっか行っちゃったのか!」
「まあいなくなった人は放っておきましょう。それじゃみなさん、仕事に参りましょうか。」
「おお〜!」
ノリノリで出て行くモンブランたち。
「頑張ってね」と見送る遠藤さん。
ただただ先行きが心配だった。

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM