稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第十一話 副作用の恐怖(1)

  • 2018.11.16 Friday
  • 11:00

JUGEMテーマ:自作小説

「そんなことがあったんですか。」
源ちゃんがカリカリを頬張りながら言う。
ここは国民宿舎アカネ荘。
こがねの湯で子ギツネたちが倒れてから半日が経っていた。
症状はかなり重く、即入院となってしまった。
もう少し処置が遅ければ命を落としていそうで、数日は絶対安静。
我が子が危篤とあっては、母親としては不安で堪らないだろう。
アカリさんはしばらく仕事を休み、息子たちに付きそうことになった。
病院に駆けつけた時のアカリさんは、まるで死人みたいに血の気が引いて、ウズメさんに支えられないと立っていられないほどだったという。
いったいどうしてこんなことになってしまったのか?
アナグマ動物病院の霊獣の医者によれば、何かの中毒の可能性が高いという。
ピンときたウズメさんは例の薬のことを話した。
医者はすぐにその薬を調べたいと言ったので、遠藤さんの持っていた薬を預けた。
なにか分かったらすぐに連絡してくれることになっている。
『もう傍観してられないわ。しばらくお店は休業して、いったん稲荷の世界へ戻ることにするわ。』
アカリさんの子供がこんな事になって、ウズメさんも本気になった。
『もし用がある時は源ちゃんを通して言って。すぐに駆けつけるから。』
そう言い残し、こがねの湯の近くにある稲荷神社を通って、霊獣の世界へと帰っていった。
ウズメさんが本気で動いてくれるなら心強い。
あとはアカリさんの子供たちが良くなることを願うばかりだ。
その間、俺たちは俺たちのやるべきことがある。
まずは薬で人間に変わってしまった動物たちの捜索だ。
ほうっておけばあの子ギツネたちのように苦しむかもしれない。
まだ薬との因果関係はハッキリしてないけど、おそらくそれが原因だろう。
モンブランたちもすっかり元気になって、今は晩飯をがっついている。
また腹が痛くなっても知らんぞ。
「次から次へとおかしなことばかり。早急に手を打たんと。」
源ちゃんはカリカリを置き、険しい顔で腕を組んだ。
今朝、彼は俺のアパートへスマホを取りに向かった。
そして翔子さんに電話を掛けてくれたんだけど、番号が変わっていたようで繋がらなかったらしい。
俺の知らない間に変えられていたなんて・・・・ショックだ。
当然のごとくモンブランたちにからかわれた。
「とうとう見限られたのね」とか、「ダハハハハ!」と笑われたりとか、「これで逆玉の可能性もゼロだな」とか、「こうなることは分かってたじゃない」とか。
そもそも去年に翔子さんに会った時、マイちゃんと結婚することについて良く思っていなかった。
どうにか認めてもらうことは出来たけど、最初は『もう友達やめます』とまで言われたのだ。
『いくら霊獣だろうとタヌキと結婚するなんてどうかしてますって』かなり怒っていた。
やっぱり今でも怒っているのかもしれない。
モンブランたちは落ち込む俺を笑い続けた。
でもそうなるとカグラの調査は難しくなる。
翔子さんから口利きしてもらえないとなると、いったい誰を頼ればいいのか。
でも良い報告もあった。
源ちゃんはタカイデ・ココについて色々調べてくれたんだけど、いくつか目星い情報を掴んでくれたのだ。
まずオーナーの素性について。
名前は畑耕史といって、かつてはカグラにいたそうだ。
その頃には管恒雄と名乗っていたらしい。
どちらが本名か分からないけど、源ちゃんが言うには管恒雄が正しい名前である可能性が高いという。
おそらく素性がバレることを避ける為に偽名を使っているんだろうと。
そして偽名を使うということは、後ろめたいことがあるからだ。
・・・・遠藤さんは言っていた。
例の薬は付き合っていた男からもらったものであると。
その男がどこで薬を手に入れたかというと、タカイデ・ココのオーナーからである。
彼の忘れたポーチの中にその薬があったのだ。
オーナーはかつてカグラにいて、その時に薬を手に入れた可能性が高い。
ていうかそれしか考えられない。
それを隠す為、偽名を使っているのだろう。
しかもそのオーナーもお稲荷さんなのである。
源ちゃんはタカイデ・ココを張り込みしていた。
そして外に出てきたオーナーを注意深く観察したのだ。
するとある事に気づいた。
よく目を凝らしてみると、お尻の辺りに違和感を覚えたのだという。
もしやと思い、さらに注意深く見つめると、うっすらとキツネの尻尾らしき物が見えたという。
上手く消しているつもりでも、源ちゃんの目は誤魔化せなかったのだ。
『おそらく奴は位の低い稲荷でしょうな。上位の者なら猫又の私に見抜かれたりはしないはずだ。』
『元カグラの社員で、しかもお稲荷さん。てことは例の薬はカグラから持ち出した物ってことですよね?』
『だと思いますな。』
『ちなみに潜入は出来そうですか?』
『可能だとは思いますが、私一人入ったところでどうなるか・・・・。位は低くとも相手は稲荷です。猫又一匹では太刀打ち出来ない。』
『ならどうするんです?』
『微罪でも掴めれば警察の力を借りてガサ入れできるんですがね。』
『でも警察だけじゃお稲荷さんには勝てないでしょ?』
『いやいや、警察が踏み込めば奴も暴れることは出来ません。なぜなら人間の世界におる霊獣は正体を隠しておりますからな。
信用できる人間には正体を明かすことはあっても、公になりそうな状況で暴れるなど考えられない。』
『微罪かあ・・・・いわゆる別件逮捕的な?』
『そんなもんです。』
ついさっきまでそんな話をしていた。
二人して頭を悩ませていたんだけど、特に良い考えが浮かんでこない。
すると黙って聞いていた遠藤さんが「ちょっといいかな?」と手を上げた。
「なんだ?」
「タカイデ・ココってお店さ、ぜったいにカグラの息がかかってると思うのよ。」
「だろうな。オーナーの素性からすれば。」
「てことはさ、何か悪いことに使われてる場所じゃないかなって思うのよね。」
「例えば?」
「・・・そうねえ、例の薬の取り引きとか。」
「薬の・・・・。」
「あとは霊獣の売買。カグラは密猟が本業みたいなもんだから、獲物を売る必要があるじゃない?そういう時に使われてるんじゃないかなあって。」
「何か証拠でもあるのか?」
「だからそれがあるかどうか調べてみればいいじゃない。」
「調べるのが難しいから困っとるんだ。」
「だったら囮捜査ってのはどう?」
「囮捜査だと?」
源ちゃんは顔をしかめた。
遠藤さんの言いたいことは分かる。
猫又である源ちゃんがわざと獲物になれば、タカイデ・ココに潜入できるんじゃないかと言っているのだ。
しかしそれはあまりにリスクが高すぎる。
捕まったら何をされるか分からないし、最悪はそのままどこかへ売り飛ばされてしまうだろう。
源ちゃんもそれを分かっているようで、「アイデアとしてはアリだが・・・」と言葉を濁した。
「やっぱり無理?」
「成果を得られる可能性が低すぎる。」
「そっかあ・・・・名案だと思ったんだけど残念。」
「しかしタカイデ・ココが悪企みの現場として使われている可能性はあるだろう。だったら出入りしている客を調べれば何か掴めるかもしれん。」
「なら明日もまた張り込みってわけね。」
「実は今日だけで三人ほどの出入りがあった。」
「そうなの?だって張り込みしてたのって昼間でしょ?そんな時間からバーにお客が来るもんなのかしら。」
「だからこそ怪しいとも言える。顔は覚えているのでな、明日猫又の仲間と一緒にそっちの方面で当たってみるつもりだ。」
「でも顔だけ覚えててもどこの誰か分からないんじゃないの?」
「いや、一人だけ知っている顔がいてな。」
「そうなの?誰々?」
興味津々に身を乗り出す。
俺も「誰?」と詰め寄った。
「カマクラ家具の豊川という男です。」
「カマクラ家具・・・・それって・・・、」
「カグラのライバル会社ですな。」
「ていうかあそこの元社長ってダキニだよな?」
「ご存知なんですか?」
「まあちょっと色々と・・・・。」
「ダキニ殿は色々問題のある方だとたまきさんから聞かされておりましてな。あの会社は警戒するようにと言われておったんですわ。
ですので一応幹部の顔くらいは把握しとりますよ。」
「ならその豊川って男について調べれば何か分かるかもってこと?」
「タカイデ・ココは普通の店ではないでしょう。それに遠藤は前にこう言っとりました。カグラとカマクラ家具が共犯かもしれないと。そうだな?」
「ええ。鬼神川はちょくちょく向こうの役員と会ってたみたいだから。それにカグラの社員も二人そっちに移ってるのよ。」
「祝田と大川・・・元技術部の社員であり、薬を開発した張本人。それが今ではカマクラ家具の重役になっとる。」
「じゅ、重役!?」
「現在は瀞川と安志と名乗っているようでな。役職もそれぞれ専務と取締役だ。」
「なによそれ!なんでそんなに偉くなってんの!」
「分からん。しかし何かカラクリがあるんだろう。まあ豊川を追えばその理由も見えてくるかもしれん。」
「でも気をつけてよ。あの二人だってお稲荷さんなんだから。下手すれば返り討ちに遭うかも。」
「承知の上だ。」
源ちゃんはうんと背伸びをして立ち上がる。
残ったカリカリをポケットに詰めながら。
「では私は仕事に戻ります。」
そう言い残して部屋を出て行こうとするので「ちょっと!」と呼び止めた。
「なんですかな?」
「カーチェイスの件ってどうなったの?」
「・・・・ああ!すっかり忘れておりました。」
「ちょっとちょっと・・・頼むよ源ちゃん。このままじゃ人間に戻った時に逮捕されちゃうよ。」
「まあどうにかしてみせましょう。その代わりそっちも仕事をお願いしますぞ。
遠藤のせいで人間に変わってしまった動物の確保、それにアカリさんの子供に薬を渡した男の調査も。」
「そ、それも俺たちの仕事なの?」
「こっちはこっちで手一杯でしてな。まあウズメさんも動いてくれていることですし、どうにかなるでしょう。」
「じゃあ」と手を上げて去って行く。
カグラとタカイデ・ココの件は源ちゃんに頼むしかないけど、岡山で薬を捌いている男までこっちで調べろとは・・・。
《俺は動物探偵であって刑事じゃないぞ。》
そんな調査なんて自信がない。
遠藤さんから受けている依頼すら大変だというのに。
《せめて子犬じゃなければなあ。》
ああ・・・早く人間に戻りたい。
いったいいつになったら解毒剤が手に入るのか。
今でさえ人間であることを忘れてしまいそうな気になっているのだ。
このままいけば心まで犬に成りきって・・・・・って、悪いふうに考えるのはやめよう。
壁の時計を見ると夜の七時半。
今日は大人しく休んで、明日また仕事に取り掛かろう。
そう思って丸くなると、マシロー君に「なに寝てるんですか」と起こされた。
「夜なんだから寝るに決まってるじゃないか。」
「ダメです。野良犬や野良猫は夜に活発になるんです。」
「知ってるよ。」
「ということは人間に変わってしまった野良たちは、夜にこそ活動的になっているはずです。今なら見つけることが出来るかもしれません。」
「そうかもしれないけどさ、夜だと危険じゃないか?暗い中での捜索はやめた方が・・・・、」
そう言いかけたとき、モンブランに抱き上げられた。
「今から行きましょ!」
「コラ!降ろせ!」
「イヤよ。私たちは悠一の飼い主なんだから放っていけるわけないでしょ。」
「お前らと一緒だからイヤなんだ!どうせまたトラブルを起こすに決まってる!」
「大丈夫よ。ご飯もいっぱい食べたし元気いっぱい!ねえみんな?」
そう言って振り返ると、マサカリはお腹をなでながら寝そべっていた。
「うい〜・・・食った食った。」
「ちょっとマサカリ!寝てんじゃないわよ!」
「うっせえなあ・・・食ったら寝る・・・当たり前のことじゃねえか・・・・ムニャムニャ・・・、」
もう寝てしまった。
お前はのび太くんか。
「あ、チュウベエまで!ちょっと起きてよ!」
「う〜ん・・・・極上のミミズ・・・・もっと食わせてくれ・・・・、」
「あんた飲みすぎなのよ!一升瓶を三つも空にしちゃって!」
「そのミミズ・・・・マサカリの餌と交換してくれ・・・・ゲロ!」
「うわ汚い!」
飲みすぎて吐いている。
あの汚れた布団、誰が弁償するんだろう・・・・。
「こうなったらマリナ、私たちだけで行きましょ!」
「・・・・・・・・。」
「ちょっとマリナ。聞いてる?」
「・・・・ぐう。」
「なんでアンタまで寝てんのよ!」
マリナの横には大量の空き瓶が転がっていた。
お腹の健康を整える乳酸菌一兆個の飲むヨーグルトだ。
この手の飲み物はなぜか眠くなるものである。
俺もインドのヨーグルトみたいな物を飲んだ時、やたらと眠くなったことがあるのだ。
みんなムニャムニャと夢の中。
何度も呼んでも起きなかった。
「もう!アンタたちそれでも悠一の飼い主なの!?」
「お前らに飼われた覚えはないぞ。」
「だって今は私たちが人間じゃない。子犬の面倒みるのは当然でしょ?」
「そりゃありがたいけど、あんまり余計なことされると困るんだよ。今日は大人しく寝てさ、明日に備えよう。」
「イヤよ。だって私は猫なのよ。夜こそパワー全開なんだから。」
元気なのは分かるけど、俺をボールみたいに投げるのはやめてほしい。
「まあいいわ、こうなったら私だけで見つけてやるんだから。」
「おいやめろ!お前が一番危険なんだ。」
「それじゃ行きましょ。」
「あ、僕もお供します。」
マシロー君もトコトコついて来る。
遠藤さんが「気をつけてね〜」と手を振った。
ていうか遠藤さんもついて来てきれればいいのに。
まあ容疑者だから仕方ないけど。
モンブランに抱かれたまま夜の街へ繰り出す。
市街地の大通りにはそこそこ人がいて、昔に比べると人が増えたなあと感慨深くなる。
お店も増えたしマンションも増えたし、道路も広くなったしコンビニも「こんなにいるの?」ってくらいにある。
代わりに田んぼや畑が消えていって、田舎好きの俺としてはちょっと寂しい気持ちになる。
今は感傷に浸ってる場合じゃないけど。
「けっこう賑やかですね。」
モンブランの肩の上でマシロー君が言う。
「もう少し人の少ない街かと思っていました。」
「昔はそうだったんだよ。でもマンションやアパートが増えて引っ越してくる人も多いみたいだね。」
とりあえず大通りを歩いて商店街へ向かう。
以前は廃れていた商店街も、市が大金を投じて復活させたおかげで、今は賑わっている。
代わりにガラの悪い連中が屯することもあるけど。
最近だと違法薬物の売買をしている輩もいるようで、発展とともに治安も悪くなっていくんだなあと実感する。
「なあモンブラン、商店街は避けよう。子犬とハリネズミを持ったままじゃ目立ちすぎる。」
「目立つと悪いことあるの?」
「目立たない方が仕事がしやすいだろ。」
「いいじゃない目立っても。ていうか目立ちたいわ。」
そう言って嬉しそうに商店街へ入って行く。
「おい待てって!」
「イヤ。」
「周りを見てみろ、ジロジロ見られてるぞ。」
若い女が子犬とハリネズミを持ったまま歩いているのだ。
注目されない方がおかしい。
「あ、可愛い靴。」
店先に飾られたブーツに見入っている。
ゴソゴソとポケットを漁って、「ああ、足りない〜・・・」と残念がった。
「ファミレスでマサカリが食べまくったからちょっとしか残ってないわ。」
「ていうかお前らも散々食ってたろ。」
「また源ちゃんにねだらないと。」
「やめてくれ、俺の借金が増えるだけだ。」
羨ましそうにブーツを見つめながら、すぐに次の品に目移りする。
「あ、向こうの帽子も可愛い!」
「こらこら、買い物しに来たんじゃないぞ。」
「残念、また足りない。」
「300円しかないんじゃ何も買えないって。諦めて仕事しよう。」
「・・・あ、向こうにも可愛い靴売ってる!」
「人の話聞いてるか?」
こんな調子であちこち見て回って、気がつけば商店街を抜けてしまった。
これじゃただウィンドウショッピングをしに来ただけじゃないか。
「なによ、全然買えそうな物がないじゃない。」
「だから言っただろ、そろそろ仕事しよう。」
「飽きた、もう帰りたい。」
「お前なあ・・・・。」
自分から行こうと言ったクセにもう飽きるとは。
どうやら夜の街に遊びに来たかっただけのようだ。
まあいい。
あんまりウロウロしているとまたトラブルを起こしかねない。
俺も「帰ろう」と言った。
しかしその時、チャライ感じの男が「ねえねえ」と声を掛けてきた。
「いま何してんの?」
ポケットに手を突っ込んだまま遠慮もなく近づいてくる。
モンブランは「あんた誰?」と睨んだ。
「俺?まあただの通行人?」
「あっそ。じゃあさっさとあっち行けば。」
モンブランは相手にしない。
この手の男は猫の時から慣れているのだ。
本人いわくしょっちゅうオス猫からナンパされるらしく、その度にシッシとあしらっているのだという。
人間に変わってもそれは健在のようで、しつこく絡んでくる男に「ウザイのよ!」と怒っていた。
「あっち行かないと蹴飛ばすわよ。」
「おお怖!」
全然怖がっていない感じで言う。
そして「可愛い犬連れてんね」と俺に手を伸ばしてきた。
「ちょっと触らないでよ。」
身をよじって避ける。
男は「こっちはなに?ハリネズミ?」と興味津々だ。
「こんなの二匹も連れてるなんて変わってんね。」
「だから?」
「そんな拒絶しないでよ。」
「なに連れて歩こうと私の勝手でしょ。」
「誰もダメなんて言ってないじゃん。」
「私は忙しいの。あんたみたいなチャライ奴に構ってらんないのよ。」
相手にしていられないとばかりに男から離れていく。
しかししつこく「ねえねえ」と追いかけてくるので、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまった。
「ほんっとウザイわね!冗談抜きで蹴飛ばすわよ!!」
カっと目を見開いて睨みつける。
スネを蹴るフリをすると、「うお・・・」と男は飛び退いた。
「そんな怒んないでよ。」
「アンタがしつこいから怒ってんのよ!」
どこの誰だか知らなけど、そろそろ本気で逃げた方がいいだろう。
怒ったモンブランは蹴飛ばすだけでは終わらないだろうから。
しかしそれでも男は怯まない。
そしてこんな一言を放った。
「君さ、元は動物でしょ?」
「へ?」
「なんとなく俺たちの仲間って感じがするんだよなあ。」
「どういうことよ?」
「ただの勘だよ勘。なんなら当ててみよっか?たぶん・・・・・猫じゃないかな?」
「なんで分かるの!」
髪の毛が逆だっている。
こういう所だけ猫らしさが残っているのがちょっと面白い。
男は「ほらやっぱり〜」と手を叩いた。
「なんで!なんで分かるの?・・・・は!もしやアンタ霊獣なんじゃ?」
「違う違う。俺は霊獣なんかじゃないよ。」
「霊獣じゃないならなんで私の正体が・・・・、」
そう言いかけた時、マシロー君が「ちょっといいですか?」と口を挟んだ。
「あなた私のこと覚えていますか?」
「ん?」
キョトンとしている。
「私はあなたのこと覚えていますよ。高速道路の高架下で不思議な薬をもらったでしょう?」
「なんで知ってんの!」
今度は男が驚く番だった。
「ていうかハリネズミなのになんで人間の俺と会話出来てんだよ?」
「そういう体質なもので。」
「そうか、なら納得。」
《物分り良すぎだろ。》
ツッコミたい気分を我慢して男の話を聞く。
「たしかに妙な薬をもらったぜ。オカマみたいな人間からな。」
「その薬を飲んだ途端に人間に変わった。違いますか?」
「その通りだけど・・・・なんで知ってんの?」
「私もその場所にいましたから。」
「ええ!あん時ハリネズミなんていたっけ?」
「あなたに薬を渡した人のバッグに入っていたんです。ちょっとだけ顔を出していたんですが気づきませんでしたか?」
「まったく。」
「そうですか。それなら仕方ありません。」
前半はともなく、後半のやり取りはなんなんだろう・・・・。
男は「正体バレてんならやりやすいや」と言った。
「ねえそこの彼女。俺たちの溜まり場に来ない?」
「溜まり場?」
「人間に変わった動物たちが集まってる場所があるんだよ。」
「そうなの!てことはそこに行けば人間に変わった動物が全員いるってこと?」
「全員かどうかは分かんないけどけっこういるよ。ほら、俺たちって人間になったばっかで分からないことだらけだからさ。
みんなで集まって先生に教えを請おうってことになったんだよ。」
「先生?」
「霊獣だよ霊獣!しかもすげえ霊獣なんだって。」
「どうすごいのよ?」
「さあ?なんかすごいんだよ、うん。」
「ほんっといい加減ねアンタ。」
眉間に皺を寄せてイライラしている。
トントンと足踏みをしながら、「悠一どうする?」と尋ねた。
「もう私は満足したから帰ってもいいんだけど、悠一も帰りたいって言ってたわよね。」
「まてまて、俺は何も満足してないぞ。」
こんなことを聞かされて帰れるわけがない。
「君、悪いけどその溜まり場に案内してくれるか?」
「いいぜ。そっちの可愛い子も来るんだよな?」
可愛いという単語にだけ嬉しそうにしている。げんきんな奴だ。
「こいつも行くよ。な?」
「まあねえ・・・どうしてもって言うなら行ってあげてもいいわよ。」
「マジ?んじゃこっちこっち!」
調子に乗ってモンブランの手を引っ張る。
「気安く触らないでよ!」と蹴っ飛ばされていた。

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