稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第十二話 副作用の恐怖(2)

  • 2018.11.17 Saturday
  • 10:32

JUGEMテーマ:自作小説

例の薬で人間に変わってしまった動物の一人、ロッキー君。モンブランにしつこくナンパしてきた彼だ。
犬の時はラブラドールレトリバーが入った雑種だったららしく、飼い主が引っ越す時に邪魔だからという理由で捨てられたそうだ。
そんな彼に案内されて、例の薬を使った動物の溜まり場へやって来た。
ここは大きな川を渡す橋の袂、夜になれば虫の声しか聞こえない僻地である。
荒れた遊歩道に草が茂った河原。
橋桁には「火気の使用禁止」と看板が貼り付けてある。
何年か前まで若者がよく騒いでいたのだが、ボヤ騒ぎが出てから注意書きが貼り出されたのだ。
日中は犬の散歩をする人がいたり、キャッチボールをする親子がいたり、バイクでウィリーの練習をする人がいたりと、そこそこ人がいる。
でも夜になれば誰もおらず、明かりは橋の上から漏れてくる街灯だけ。
夜は一人で来たくないほど静かで薄暗い場所なのだ。
「なあロッキー君、ほんとにここが溜まり場なのか?誰もいないようだけど・・・・。」
「変だな。この時間にはたくさん集まってんのに。」
ボリボリと頭を掻いている。
モンブランが「騙したんじゃないでしょうね」と睨んだ。
「私をナンパして人気のない場所へ連れて来る気だったんでしょ。」
「違うって。」
「だったらなんで誰もいないのよ。ここへ連れてきてイヤらしいことする気だったんでしょ。」
「え?やらせてくれんの?」
「なわけないでしょ!」
「ふぎゃ!」
また蹴飛ばされている。
モンブランもモンブランだが、ロッキー君もなかなか変わっている。
「なあマシロー君、彼はウソを言ってると思う?」
「どうでしょう。でも彼に薬を渡したことは間違いないんです。だったら同じ仲間同士で集まっている可能性は高いと思いますよ。」
「なら今日はたまたま誰もいないってことなのかな。」
「まだ来たばっかりですし、そう急いで結論を出すこともないでしょう。もう少し待ってみませんか?」
「そうだな。」
しつこくナンパするロッキー君と、それを蹴飛ばすモンブランを尻目に、薄暗い辺りを歩いてみた。
クンクンと臭いを嗅ぎ、気になる所にはマーキングだ。
「有川さんもすっかり犬ですね。」
「困るよなあまったく。・・・・あ、ここにも掛けとこ。」
「僕もちょっと我慢していたんですよ。失礼して。」
用を足し、辺りを散策し、モンブランとロッキー君のやり取りを眺めていると、夜空に浮かぶ月の角度が変わっていた。
月の動きを見て何分経ったかなんて分からないけど、そこそこ経っているんじゃなかろうか。
「もう30分くらい待ってるよな?」
「ですね。あと少し待って誰も来なかったら帰りましょう。ロッキー君を連れて。」
大人しくついて来てくれるといいが・・・・まあモンブランの尻を追っかけてくるから平気だろう。
「ねえ悠一!コイツほんとにしつこいの。川に落っことしていい?」
「ちょっとくらい仲良くしてやったらいいじゃないか。」
「イヤよこんなチャライ奴。私は一本筋の通ったオスがいいの。」
「ほう、そういうのがタイプなのか。」
「だいたいコイツの正体は犬でしょ?なんで猫の私をナンパするんだか。」
「でも今は人間じゃないか。」
「これは仮の姿よ。心はお淑やかな猫のままなんだから。」
都合よく人間と猫を使い分けやがる。
するとロッキー君が「でも先生だって見た目はチャライんだぜ」と言った。
「先生?」
「だから霊獣の先生、俺たちに人間の常識を教えてくれるんだ。」
「そういえばそんなこと言ってたわね。」
「金髪でリーゼントでさ、やたらとカッコつけたがるんだ。」
「へえ、そんなオスはぜったいにお断りね。」
「でも中身は芯があるんだぜ。男気あふれる霊獣なんだ。」
「アンタは見た目も中身もチャライでしょ。ていうか馴れ馴れしく近寄ってこないでよ。」
「俺も先生みたいな髪型にしてみようかなあ。ついでにバイクスーツを着て真っ赤なマフラー巻いて。」
なんだろう・・・・なんか聞き覚えのある特徴が・・・・。
「ねえ悠一、それってアイツのことじゃないの?」
「いや、まだ断定はできない。」
「でもそんな変なカッコの奴なんてアイツくらいしかいないじゃない。」
「いいかモンブラン、探偵は何事も憶測で決めつけちゃいけないんだ。しっかりとした調査で裏付けを取ってからだな・・・・、」
そう言いかけた時、ロッキー君が「来た!」と叫んだ。
「先生!ここここ!ここっす!」
ブンブン手を振っている。
暗闇の向こうから誰かがやって来る・・・・。
橋の上から坂道を下りてくるシルエットが。
「ねえ悠一、なんか小さな乗り物を漕いでるわ。」
「そうだな・・・・。」
「あれって三輪車なんじゃない?」
「・・・・・・・・。」
「だったらやっぱりアイツよ。」
「いや、まだ断定は・・・・、」
「先生〜!」
ロッキー君が駆けていく。
三輪車を漕ぐシルエットがだんだん近づいて来て、その姿を露わにした。
「先生!こんばんわっす!」
「おう。」
カッコつけて三輪車から降りている。
首に巻いた真っ赤なマフラーをはためかせながら。
「今日早いなお前。」
「そうっすか?」
「今晩はいつもより遅く集合って言ったろ。」
「・・・・ああ!そうでした!三輪車のメンテナンスがあるからって言ってましたね。」
「俺の愛車だからな。ちなみにオフロード用のタイヤにチューンアップしたんだぜ。」
「おお、かっけえ!」
「サスペンションも付けたんだ。ついでにナックルガードもよ。これでどこでも走り放題だ。」
「さすが先生っすね!これも人間の常識ってやつですか?」
「まあな。お前らも人間の常識を覚えりゃ街で生きていける。もうクソみたいな飼い主を恨む必要もなくなるんだ。」
「せ、先生〜・・・・。アンタは俺らの希望っす!」
「おいよせよ。向こうで誰かが見てるじゃねえか。」
そう言ってこっちを見る。
そして固まった。
「・・・・お前らなんでここにいるんだ。」
すごいバツが悪そうな顔をしている。
面白いので写真に撮りたかったが、あいにくスマホがない。
「ほらやっぱりチェリー君じゃない!」
モンブランが嬉しそうに言う。
「私の推理が当たったわけね。」
「そうだな・・・・。」
「じゃあこれからは私が探偵ってことでいいわよね?」
「やめろ、三日で潰れる。」
モンブランは「チェリー君!」と駆け寄り、「まさかアンタが先生だったとはねえ」とバシバシ肩を叩いた。
「困った動物の為にひと肌脱ぐなんて。いいとこあるじゃない。」
「ま、まあな・・・・。」
「でもどうしてこのこと黙ってたの?さっさと教えてくれればよかったのに。」
「まあ・・・それはアレだ。これは俺のプライベートなことだからよ。私情と仕事は分けねえとと思って。」
「なによそれ?カッコつけちゃって。」
またバシバシ肩を叩いている。
するとロッキー君が「モンブランちゃんって先生の女だったんですか!?」と驚いた。
「くあ〜!俺めっちゃ恥ずかしいじゃん。先生の女に手え出そうとしてたなんて。」
「はあ!なに誤解してんのよ。チェリー君はただ一緒に住んでるだけだから。」
「い、一緒に!てことは夫婦も同然で・・・、」
「だから違うってば!」
また喧嘩を始める二人。
チェリー君はコソコソっと抜け出して俺の方へやって来た。
「お前なんでここにいるんだよ?」
「ロッキー君に案内されたんだ。」
「アイツに?」
「夜の商店街を歩いてたらモンブランがナンパされちゃって。話してるうちにお互いの正体が動物だって分かってさ。」
「それでここに案内されたのか?」
「自分たちの為に力を貸してくれる霊獣がいるって言われてな。でもまさか君だったとは。」
「いや、まあ・・・こうなったのは偶然っていうか・・・・。」
恥ずかしそうにそっぽを向いている。
チェリー君は見た目はアレだけど、中身は男気のあるいい奴なのだ。
俺たちにこの事を話さなかった理由はなんとなく分かる。
「君は人間のせいで辛い目に遭った動物を助けてあげたかったんだろ?」
「そんなんじゃねえけど・・・・、」
「顔にそう書いてあるよ。」
「う、うっせえな!分かったようなこと言いやがって。」
「でもそのことを俺たちに喋ったら、彼らは動物に戻されるかもしれない。そうなればまた野良に逆戻りで、飼い主への恨みを抱いたまま生きることになる。
生活だってその日暮らしだし、自由の代わりに危険もいっぱいある。だから黙ってたんだろ?」
「ふん!どう想像しようと好きにすりゃいいさ。・・・・ただよ、奴らは霊獣じゃねえし、ほんとの人間でもねえ。
ほっといたら悪さするかもしれねえし、生きることにも苦労するだろうから、ほんのちょっとアドバイスをと思ってだな・・・・、」
それを手助けというんだけど、意地っ張りなので認めようとしない。
ただ気になるのは何がキッカケでロッキー君に出会ったのかということだ。
「まさかとは思うけど、ずっと前から薬の存在を知ってたとかじゃないよな?」
「なわけねえだろ。それならさすがに言ってるっての。」
「じゃあどうして?」
「だからたまたまだよ。街をブラブラしてる時に変わった人間がいてよ。犬みてえにあちこち臭いを嗅いで、片足上げて立ちションしてやがんだ。」
「なんかどっかで聞いたことある話だな・・・・。」
「どう見たって変だと思うじゃん?だから声かけたわけさ。お前何やってんだ?って。そっからだよ、色々話を聞いて事情を知ったのは。
このままほっとけばぜってえトラブルになると思ってよ。いっちょ俺が面倒みてやるかって。」
「なるほど。」
ロッキー君はまだモンブランを口説いていて、もはやチャライを通り越して呆れてしまう。
でもそれは単にしつこい男というだけじゃなくて、犬の時のクセが抜けていないんだろう。
ロッキー君は明らかに発情していて、自分の気持ちだけで突っ走っている。
「前は良い女見つけるとケツに乗っかろうとしてたんだぜ。」
「それ捕まるだろ・・・・。」
「だから俺が面倒見なきゃって思ったんだよ。しかも他にもそういう奴らがいるって言うからよ、じゃあまとめて連れて来いって言ったんだ。
あとちょっとしたら集まってくるはずだぜ。」
「そっか。なら待つよ。でも・・・・、」
「分かってる。解毒剤を飲ませるんだろ。」
「手に入ったらな。チェリー君にとっては不本意かもしれないけど・・・・、」
「いいさ、現実を知ったから。」
「現実?」
「奴らに人間の常識を叩き込もうとしたんだけど無理だった。なにせいきなり人間に変わっちまったんだ。ちょっとやそっと教えたくらいじゃ動物だった頃の感覚は抜けねえよ。」
そう言ってモンブランとロッキー君を見つめる。
二人はまだぎゃーぎゃー言い合っている。
モンブランは「フシャー!」と唸り、猫パンチを繰り出した。
ロッキー君は舌を出しながら「ハッハッハ!」と犬みたいに息をして、隙を見てはモンブランの臭いを嗅ごうとしている。
「・・・・・・・・。」
「な?」
「もはや人間の姿をした猫と犬だ。」
「こういうことだよ。あのオカマはよかれと思ってやったんだろうけど、このままじゃ余計に不幸にしちまう。
だから今日で終わりにしようと思ってた。俺が解毒剤を手に入れてやるから元に戻れって。きっとその方がこいつらの為だ。」
悔しそうに歯噛みしている。
彼らが野良に戻ったところで幸せになれるわけじゃない。
ただ今よりはマシだからそうするしかないんだ。
チェリー君が歯噛みをしているのは、自分の無力さと彼らを捨てた人間に対してだろう。
「なあアンタ。」
「ん?」
「俺も本気で手伝うぜ。カグラとかいう会社を叩きのめすのを。」
「いや、叩きのめすまでやるかどうかは分からないけど・・・・、」
「何言ってんだ、ほっときゃまた似たようなことやらかすに決まってらあ。だいたい稲荷でありながらあんな薬をばら撒こうなんてよ、同じ霊獣として考えられねえぜ。」
「それは同感。本当なら動物たちを守る立場なのに。」
「俺は下っ端の霊獣だがよ、普通の奴にはない特殊な力を持ってる。」
そう言ってスウっと消えてしまった。
得意技の擬態である。
この擬態は目に見えないだけでなく、臭いも音も感じさせないし、体温さえ感じさせなくなるのだ。
それどころか霊力も感じさせないし、レーダーやソナーにも映らない。
先月に戦ったコウモリの霊獣の超音波でさえ彼を探知することは無理だった。
もはや無敵のステルスである。
ゆえに誰もこの擬態を見抜くことは出来ない。
たった一つの弱点を知っていなければ。
《チェリー君が協力してくれるならどんな場所にだって潜入できる。これは心強いぞ。》
いま一番ほしいのはカグラの情報だ。
遠藤さんの話だけではぜんぜん足りない。
あの会社は具体的に何をやっているのか?
それを知ることが出来れば、ウズメさんがカグラの壊滅に動いてくれるだろう。
そしてたまきも。
彼女は俺の師匠であり、そしてウズメさんの親友だ。
居場所さえ分かればきっと手を貸してくれる。
・・・ああ!あと解毒剤。
個人的にはこれが一番大事だ。
チェリー君ならカグラに潜入して奪って来てくれるかも。
「もう君だけが希望だ、頼んだぞ。」
「おう!任せとけ。」
前足を出して握手する。お手みたいになってしまったけど。
それからしばらく動物たちが来るのを待ってみた。
しかし待てども待てども誰も来ない。
月は雲に隠れ、明かりさえ薄くなっていく。
「なあチェリー君、誰も来ないようだけど?」
「おかしいな。今日はちゃんと集まるように言ってあるんだけど。」
「来てるのはロッキー君だけだ。まさか・・・・他の奴らは悪さでもして警察に捕まったんじゃ。」
「それはねえだろ。一人二人ならともかく、全員ってのは考えにくいぜ。」
「ちなみに前に集まったのはいつ?」
「一昨日だ。」
「つい最近か。じゃあみんないっせいに捕まるってことはないか。」
「ちょっと気になるなこれ。」
そう言って「ぶえっくし!」とくしゃみをした。
「あ、それってまさか・・・・、」
「クソッタレ!また出てきやがった。」
「一時は治まってたはずなのに・・・・。」
「また良くないことが起こるんだろうぜ。それがなんなのか分からねえけど・・・・ぶえっくしょ!」
最悪だ・・・・。
子犬に変わってしまっただけでも充分ヤバいのに、また何か起きるだなんて。
《次はゴキブリにでも変わるってんじゃないだろうな。》
想像しただけでもおぞましい。
嫌な考えを追い払おうと頭を振った・・・・その時だった。
突然目の前に何かが降ってきた。
「うおおお!今度はなんだ!?」
慌てて飛び退くと、そこにはよく知った顔がいた。
「あ、アカリさん・・・・?」
ものすごく怖い顔をしている。
今すぐ誰か殺しそうなくらいに・・・・。
「なんでこんな場所に・・・・?」
「あんたに用があるから。」
「俺に?」
「アカネ荘に行ったらマサカリが教えてくれたわ。夜の街に出て行ったって。しばらく探してたらここにいるのを見つけた。」
「そ、そうですか。あの・・・・子供さんは?大丈夫なんですか?」
恐る恐る尋ねる。
アカリさんはまったく表情を変えずにこう言った。
「もう命に別状はないって。」
「そうなんですか!よかった・・・・。」
「でも後遺症が残るかもしれない。」
「こ、後遺症・・・・?」
「まだ眠ったままなのよ。最悪はこのまま目覚めないかもって言われたわ。」
「それってつまり・・・・植物状態ってことですか?」
怖い顔がさらに歪む。
そしてふっと力を抜いて呟いた。
「殺してやる。」
「え?」
「薬を渡した奴を殺してやる。」
「アカリさん・・・・。」
本気の目だった。
声にも尋常じゃないほどの殺気がこもっている。
静かな声だけど、言葉は嘘じゃないって伝わってくる。
もし人間のままだったら全身に鳥肌が立ってるほどに。
「悠一君、手を貸して。」
「へ?」
「薬を渡した奴らを見つけるのに手を貸して。あとは私がやるから。」
顔が獰猛な獣に変わっていく。
怒りが抑えられないんだろう。
落ち着いて・・・・なんて言えない。
怖いからじゃなくて、子供をあんな風にされた親の気持ちを考えると・・・・。
「あの子達は言ってたわ。犬みたいな変な人間から薬をもらったって。そのあと山間の集落の稲荷神社でも。」
「ええ・・・たしかにそう言ってました。」
「どっちも殺してやる。絶対に許さない。」
「本気・・・・なんですね。」
「人間だろうと霊獣だろうと関係ない。どこまでも追いかけて息の根を止めてやる。」
怒りが膨らんでいく。
このまま稲荷に変わるのかと思ったら、力を抜いて人間に戻った。
それが逆に怖かった。
アカリさんはある意味冷静なのだ。
目的を達成する為に。
止めようのない怒りと、目的を成し遂げる為の冷静さ。
俺はどう答えていいのか分からなかった。
アカリさんの気持ちは痛いほど分かる。
でも誰かを殺す為に手を貸すなんてこと・・・・。
射抜くようなアカリさんの眼光、答えに窮して黙り込むしかなかった。
「なあよお。」
チェリー君が静寂を破る。
「ぜんぜん話が見えねえんだけど、なんかあったのか?」
アカリさんがチラリと彼を見る。
「彼も霊獣なんです。アカリさんなら見抜いてると思うけど。」
「知ってる、何度かお店に来てたことがあるから。」
「チェリー君は信頼できる仲間です。子供さんのこと、話していいですか?」
今度はアカリさんが黙った。
面識の少ない相手にこんな事情を喋ってほしくないだろう。
でも少しの間黙ってから、小さく頷いた。
「悠一君が信頼してるっていうなら。」
「ありがとうございます。」
チェリー君に事情を話す。アカリさんの子供たちに起きた出来事を。
すると血相を変えて「ほんとかそりゃ!」と叫んだ。
「ほんとだよ。アカリさんの子供は今もまだ病院に・・・・、」
「そうじゃねえ!」
そう言って俺を掴み上げる。
グラグラと揺さぶられて「やめろ!」と噛み付いた。
「痛ッ!」
「なに興奮してんだよ。」
「するさそりゃ!だってお前・・・・薬を渡した犬みたいな人間ってアイツにそっくりじゃねえか!」
「アイツ?」
「ロッキーだよ!」
「ロ・・・・・あああ!」
たしかにその通りだ。
犬みたいに舌を出して「ハッハッハ!」って言ったり、ひたすら臭いを嗅ごうとしていたり。
「でもたまたまじゃないのか?犬に変わった人間ならみんな同じようなことするんじゃ・・・・、」
「なに言ってんだ、マサカリはそんなことしてねえだろ。」
「言われてみれば・・・・。」
「人間なのにあちこち臭いを嗅いだり、足あげて小便したりよ。それってちょっとわざとらし過ぎんだろ。」
「ロッキー君は足上げてオシッコしたりするの?」
「最初に会った時はやってたんだよ。犬のウンチ嗅いだりな。だからこそ変な野郎だと思って声かけたんだ。」
「じゃ、じゃあ・・・・薬を渡したのはロッキー君?」
「断定はできねえ。本人に聞いてみるのが一番だろうぜ。」
そう言って「おいロッキー!」と呼んだ。
「ちょっとこっち来い。お前に聞きたいことが・・・・、」
言いかけて固まる。
「いねえ・・・。さっきまでモンブランのケツ追っかけてたのに。」
「ていうかモンブランもいないじゃないか!」
「あいつらどこ行きやがった?」
いつの間にか消えてるなんて・・・。
ロッキー君はともかく、モンブランはいったいどこへ?
するとその時、「先生〜!」と声がした。
ぽっちゃりした女が息を切らしながら走ってくる。
「おお花子、どうしたそんなに慌てて。」
「た、大変なの・・・・みんなが・・・・、」
「ちょっと落ち着け。ハアハア言ってんぞ。」
「倒れたんです!」
「なにい!?」
「ここに来る途中、急に胸が苦しいって・・・・。早く助けないと死んじゃう!」
「・・・・・・・・。」
チェリー君は呆然とする。
口を半開きにしたまま固まっていた。
「すぐ案内しろ!」
「こっちです!」
俺を放り投げ、女のあとを追っていった。
宙に投げ出された俺はアカリさんにキャッチされる。
「急に胸が苦しくて倒れるって・・・・。アカリさん、これってまさか・・・・。」
「・・・・・・。」
雲が流れ、月明かりが戻ってくる。
月光に照らされたアカリさんの顔は直視するのも怖いほどだった。

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