稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第二部 第十八話 人間と動物と霊獣(2)

  • 2018.11.23 Friday
  • 10:28

JUGEMテーマ:自作小説

混乱というのはこういうことを言うのだろう。
俺たちはアカリさんと一緒に岡山までやって来た。
そして目にしたのだ。
人間に変わった動物たちが暴れまわり、動物に変わった人間たちがハンターに狙われているのを。
警察まで出動してえらい騒ぎになっていた。
混乱極まる街の中、警察の護送車の上に立って、女王様みたいに振舞う女がいた。
モンブランだ。
その横には狼男がいて、怖い顔をしながら街を見下ろしていた。
一人の警官が護送車を取り返そうとするが、狼男に蹴っ飛ばされて「ぬああああ・・・」と吹っ飛んでいった。
「この街の女王は私よ!みんな言うことを聞きなさい!」
フワフワの毛がついた扇子で煽っている。
今にも「お〜っほっほっほ!」と笑いだしそうだ。
あちこち店が破壊されているから、あの扇子もどこかから盗んできたんだろう。
「バカ猫め!なんてことを・・・・。」
もはやトラブルなんてレベルじゃない。
これは暴動である。
マサカリたちも呆れ果てていた。
「なあ悠一、いっそのことアイツだけハンターに仕留めてもらった方がいいんじゃねえか。」
「その方が我が家も平和になるな。俺、ちょっとライフル買ってくるわ。」
「みんな、なんてひどいこと言うの!・・・・でも撃つ時は私にやらせて。」
「落ち着け。狼男がいる以上はライフルも効かない。ここはどうにかモンブランを説得してだな・・・・、」
そう言いかけたとき、アカリさんが「あそこ!」と指さした。
「見て!動物とハンターが睨み合ってる場所。ツムギ君がいるわ!」
アカリさんの指さした先にはたしかに彼がいた。
両手を広げ、警察とハンターに何かを喚いている。
「遠くて聞き取れないな。アカリさんなら聴こえますか?」
「・・・・撃つのを止めようとしているみたいね。こいつらは人間だから撃つなって。でも信じてくれないみたい。そこをどけ!って怒られてるわ。」
「まあそうなりますよね。けど彼のおかげでまだ誰も撃たれてないみたいだ。」
「それと向こうにはチェリー君もいる。こっちは暴れてる奴らを止めようとしてるみたい。警察に味方してる感じね。」
「・・・・ほんとだ。きっとアレですよ、自分が思った以上に大事になって焦ってるんですよ。」
「自分の責任だから必死なわけね。」
「だから止めとけって言ったのに。」
お互いの気持ちを知るいい経験になるとか言ってたけど、現実はそんなに甘くない。
このままだと暴れてる奴らはみんな警察に捕まってしまうだろう。
実際に何人かの暴徒が警察に拘束されていた。
しかしその瞬間、「ヒッキー!」とモンブランが叫んだ。
「あの子達を助けてあげて!」
狼男は頷き、警察隊に飛びかかる。
そして圧倒的な強さであっさりと蹴散らしてしまった。
暴徒は解放され、また暴れだす。
建物を壊し、店の商品を強奪し、逃げ惑う人に襲いかかろうとする。
「させるか!」
チェリー君が駆け出し、人々を安全な場所まで避難させた。
彼のおかげでどうにか一般人には被害が出てないようである。
モンブランは「また邪魔して!」と叫んだ。
「ちょっとチェリー君!なんで人間の味方をするのよ!」
「味方なんかしてねえ!お前らを止めようとしてるだけだ!」
「邪魔するなら容赦しないわよ!」
「へ!高い所から吠えるだけの情けない女が。」
「な、なんですってえ!!」
「狼男がいなきゃテメエなんざひと捻りなんだ。いつまでも調子に乗ってると痛い目見るぜ!」
そう言ってスウっと消えてしまう。
「また擬態ね。ヒッキー、あいつを見つけて!」
狼男は遠吠えを放つ。
一瞬だけキイインと耳が痛んだ。
しかしすぐに何も聴こえなくなり、代わりにアカリさんが苦しそうに呻いた。
「頭が・・・・、」
「大丈夫ですか!」
「平気よ・・・・。それよりあの子が・・・・、」
遠吠えの超音波でダメージを受けているのはアカリさんだけじゃない。
当然彼も・・・・、
「クソ・・・・、」
チェリー君の擬態が解けてしまう。
頭を押さえながら苦しんでいた。
「そこか。」
狼男が飛びかかる。
チェリー君は咄嗟に身を捻り、どうにか最初の一撃はかわした。
しかし二発目のキックは無理だった。
脇腹にめり込み、近くのビルに叩きつけられる。
「がはッ・・・・、」
血を吐き、それでも立ち上がる。
狼男は鋭い牙をむき出し、四つん這いになって構えた。
「マズい!」
アカリさんが駆け出していく。
一陣の風のように駆け抜けて、狼男の背後に飛びかかった。
「いつまでも好き勝手やってんじゃないわよ!」
クルっと回って尻尾を叩きつける。
しかし狼男はあっさりとそれを掴み、ジャイアントスイングのように振り回してから投げ飛ばした。
「危ねえ!」
チェリー君がアカリさんを受け止める。
「大丈夫か!」
「目が回る・・・・。」
「あんたが戻って来たってことは、ウズメの姐さんを連れて来てくれたんだな。」
「ええっと・・・・助っ人を連れて来ることは連れて来たんだけど・・・・、」
「姐さんがいりゃあんな奴はイチコロだぜ!」
そう言って「やい狼野郎!」と睨みつけた。
「テメエの悪行もここまでだ!稲荷の長からキツ〜イお仕置きが待ってるぜ!」
「稲荷の長だと・・・・。」
わずかに怯む狼男。
チェリー君は「で、どこにいるんだ?」とアカリさんに尋ねた。
「早くこいつをやっつけてもらわねえとよ。姐さんはどこだ?」
「助っ人ならあそこに・・・・、」
「おお、護送車の向こう側か。どれどれ。」
期待した目でこっちを見つめる。
俺は「やあ」と尻尾を振った。
「・・・・・・・・。」
「加勢しに来たぞ。」
「アカリの姐さん・・・・助っ人ってまさか・・・、」
「そのまさか。」
「う、ウズメの姐さんは・・・・?」
「急用で来られなくなっちゃって。」
「代わりがアイツら?」
「悪いとは思ってるわよ。」
チェリー君の耳がシュンとうなだれる。
そこまでガッカリしなくても。
狼男は俺たちを見てニヤリと笑った。
「あの子犬が稲荷の長?」
馬鹿にしたようにクスクス笑っている。
「たいそうな助っ人だな。怖くてチビりそうだ。」
「馬鹿にしやがって。」
悔しそうに歯噛みするチェリー君。
アカリさんが「四の五の言ってられないわ」と立ち上がった。
「私たちだけでなんとかするしかない。」
「なんとかって言ってもよお・・・・あの狼野郎、めっぽう強いぜ。」
「まともにやり合ったら勝てないでしょうね。」
「何か作戦でもあるのか?」
「私が正面から挑む。どうにか隙を作ってみせるから、アンタは擬態を使ってトドメ刺して。」
「なるほど、奇襲ってわけか。」
チェリー君はニヤリと頷く。
しかし狼男もニヤリと笑った。
「丸聴こえだぞ。」
そう言って立派な耳を動かした。
「だからなんだってんだ?」
「奇襲はバレてしまったら意味がない。お前たちの作戦は成功しない。」
「へ!やる前から決めつけるのは嫌いでね。」
「弱いクセに偉そうに。」
狼男はボキボキと拳を鳴らす。
そこへアカリさんが立ちはだかり、「私も賛成」と言った。
「やる前から決めつけるのはよくないわ。」
「稲荷か。ハッキリ言ってお前らは大したことがない。」
「何言ってんのよ。さっき稲荷の長が来たって聞いてビビってたクセに。」
「ダキニは別格だ。あいつには手も足も出なかった。」
「は?ダキニ様は今は長じゃないわよ。」
「なに!?」
「ちょっと事情があってね。でも今の長だってすごく強いわよ。あんたが100人いたって勝てやしないほどにね。」
「ふん!いない奴の話をされてもな。」
またボキボキと拳を鳴らし、アカリさんに近づいていく。
「戦うのはお前らだろう?だったら楽勝だ。」
それを聞いたアカリさんはニヤっとほくそえんだ。
「油断大敵って知らない?」
アカリさんの四本の尻尾がヘビのように絡まっていく
そして巨大な一本の尻尾へと変わった。
「楽勝ってんなら正面から受け止めてみろ!」
クルっと回転して思い切り叩きつける。
狼男は「受けて立つ!」と尻尾を掴もうとした。
しかしあまりの威力に受け損ねてしまう。
「ぐむ・・・・、」
「ほらもう一発!」
「舐めるなよ!」
アカリさんと狼男の力比べが始まる。
そして気がつけばチェリー君はいなくなっていた。
擬態を使っているんだろう。
狼男に隙が出来たとき、死角から飛びかかるはずだ。
「向こうはあの二人に任せるしかないな。俺たちはモンブランを説得してこんなことをやめさせるんだ!」
そう言って振り返ると誰もいなかった。
「あれ?あいつらまた勝手に消えて・・・・、」
どこ行った?と探していると、モンブランが「悠一!」と叫んだ。
「まさかみんなも来てたなんてね。」
「モンブラン、これはやり過ぎだぞ。いくらオテンバだからって許される事と許されない事がある。」
「ふん!なに言ってるのよ。人間はいつだって動物に許されないことしてるじゃない。遊びで銃を撃ったり、薬の為に実験したり。」
「ま、まあそれは・・・・、」
「捨てられたペットをたくさん殺したり、道路を作るからって住処の森を奪ったり。
ニワトリは卵を産む為だけに一生狭いゲージの中だし、お店で売られてる動物だってそう。
こんなの許せない!ぜったいに許せないわ!!」
「そうだな・・・・。お前の言う通り、人間はたくさんひどいことをしてるよ。それについては言い訳できない。」
「ほらね、それに比べたら私のやってることなんて屁でもないじゃない。」
「かもしれないな。でも・・・・どいしていきなりそこまで変わったんだ?前はそこまで人間を憎んでなかったし、街をめちゃくちゃにするほど暴れたりしなかったのに。」
「だってロッキー君が教えてくれたんだもん。世界中を旅してるとき、いろんな酷いことを目撃したって。
そもそもヒッキーだって元々は動物園にいたのよ。でもそこは酷いところでロクに餌も貰えなかったみたい。
部屋は汚いし病気になっても治してもらえない。だからたくさん仲間が死んだって言ってたわ。」
「あの狼男が・・・・。」
「けどロッキー君のおかげでどうにか逃げ出して、そのあとは引きこもりになっちゃったのよ。」
「だからヒッキーって名前なのか・・・・。」
「そうよ!人間への憎しみを忘れない為にね!」
なるほど、だんだんと読めてきた。
モンブランはとても直情的な性格をしているから、こういう話に影響されて突っ走ってしまったんだろう。
それに自分自身も人間に捨てられた身だ。
狼男に同情してしまい、そのせいで暴走したとしてもおかしくない。
なによりヒッキー君は婚約者だ。
恋に落ちると周りが見えなくなるのはいつものことで、それに加えて人間の怒りが爆発してしまったんだろう。
これはちょっとやそっとじゃ止まらない。
下手に抑えつけようとすればもっと暴走する可能性もある。
いったいどうずれば・・・・どう説得すれば怒りを鎮めてくれるのか?
いい考えが浮かばないまま悩んでいると、隣にマリナがやって来た。
「あ、お前らどこ行ってたんだ!」
「ちょっと探し物を。」
「探し物って・・・・おい、お前それって・・・・、」
マリナはライフルを構えていた。
そしてモンブラン目掛けて引き金を引く。
ズドン!と重い音が響き、マリナはズっこけた。
「きゃ!」
「おいおい・・・・大丈夫か。」
マサカリが抱き起こす。
「これすごい反動なのよ。」
「だから俺様が撃つって言っただろ、貸せ。」
またズドンと撃つ。マサカリも倒れた。
「ぐはあ!」
「あ〜あ、見てらんねえな。俺に任せろ。」
今度はチュウベエが構える。
「昔の刑事でドラマで見たんだ。こうやって撃つってな。」
そう言って片手で構えて引き金を引いた。
もちろん反動に耐えられない。
弾は明後日の方へ飛んでいき、銃口は俺の方に向いた。
「おい!危ないだろ!」
「悪い悪い、でもおかしいな。ドラマじゃこうやって撃ってたのに。」
「あ、分かったわ!きっとこう撃つのよ。」
マリナが銃を奪い、しっかりと両手で構える。
銃の後ろの部分を肩に当て、足をしっかりと踏ん張った。
そしてズドン!
モンブランの立っている護送車の窓を撃ち抜いた。
「見て見て!ちゃんと撃てたわ!」
「おお、やるじゃねえか。」
「次は俺な!」
みんなで銃を奪い合っている。
銃口がまた俺の方を向いて、「だから危ないって!」と逃げた。
「お前らいい加減にしろ!ていうかなんでそんなモン持ってんだ!?」
「そこに落ちてたの。」
マリナが指さした先にはハンターが倒れていた。
きっと狼男にノックアウトされたんだろう。
その隣には警官も倒れていて、チュウベエが「じゃあ俺は拳銃でいいや」と抜き取った。
「やめろって!怒られるぞ!」
「そん時はこれで撃つのさ。ズドンってな。」
「刑務所行きになるぞ・・・・。」
コイツらはコイツらで無茶苦茶だ。
マサカリが「あ、こっちにも落ちてるぜ」と散弾銃を拾っていた。
みんな銃を構えてモンブランを狙う。護送車が穴だらけになった。
「ちょ、ちょっとアンタたち!私を殺す気!?」
モンブランは慌てて護送車の後ろに隠れる。
「私たち家族でしょ!銃で撃つなんてヒドイじゃない!」
「だって面白れえんだもんよ、コレ。」
「う〜ん、クセになるこの快感!」
「ねえ、もっと大きな銃ないの?私バズーカとか撃ってみたいわ。」
《あるわけないだろ!》
バンバン撃ちまくっては新しいのを拾ってくる。
モンブランも大概だけど、コイツらもぜんぜん負けていない。
「次は拳銃撃たせてくれよ。」
「いいぞ、俺のと交換だ。」
「ねえ、バズーカないの?」
コイツらの勢いはとどまるところを知らない。
バンバンバンバン撃ちまくっていると、とうとうモンブランがキレた。
「ぐうう〜・・・・あんた達!もう許さない!!」
なんとモンブランも銃を拾ってきた。
片手にライフル、片手に散弾銃、腰には拳銃を差し、「ハチの巣にしてやる!」と撃ちまくった。
反動ですっ転んでいたけど。
それでも立ち上がって撃つ、撃ちまくる。
そのうちコツを掴んだのか、片手でも平気でも撃てるようになっていた。
「うお危ねえ!」
「おいバカ猫!当たったらどうするんだ!?」
「あんたらが先に撃ってきたんでしょ!」
「ねえ、バズーカはどこ?」
《無茶苦茶だなこいつら・・・・・。》
市街地で繰り広げられる銃撃戦。
どうか一般市民に被害が出ませんように・・・・。
ていうか・・・・俺はどうすればいいんだろう?
あっちではアカリさんと狼男が戦い、こっちではマサカリたちとモンブランが銃撃戦をやっている。
街では暴徒が暴れているし・・・・残念だが俺に出来ることはない。
「仕方ない。その辺にマーキングでもするか。」
すっかり犬の習性が身についてしまって、こんな時でも縄張りを示そうとしてしまう。
手頃な電柱を見つけ、シーっとおしっこを掛けた。
「お、向こうにもいい感じの電柱が。」
順番に電柱を周り、おしっこを掛けていく。
すると途中で「冷た!」と声がした。
「ん?なんだ今の声。」
「こらお前!よくも俺に小便掛けやがったな!」
「あ、ロッキー君!」
ヒッキー君より一回り小さな狼男が立ち上がる。
そして「おお痛え・・・」と頬を押さえた。
「チクショウ・・・・あのチェリーって野郎、思いっきり蹴飛ばしてくれやがって。」
どうやらノックアウトされていたらしい。
俺を摘み上げて「こんな所まで追いかけてくるとはな」と睨んだ。
「残念だがこの街は俺たちがもらった。お前らはどっか他所へ行け!」
「そんなのハイそうですかって認められるわけないだろ。」
「だったらこうしてやるまでだ。」
口を開け、俺を飲み込もうとした。
しかし頭に何かが当たって「痛!」と叫んだ。
「なんなんだチクショウ!」
どうやら銃撃戦の流れ弾のようである。
「アイツら・・・・こんな所でバンバン撃ちまくりやがって。おいテメエ、どんな躾してんだ!」
「最近よく言われるよ。実は俺も困ってるんだ。」
「だったらあんなに飼うな!」
もっともな意見だが、飼ってしまった以上は責任がある。
「あとで注意しとくよ」と返しておいた。
「なあロッキー君、もうそろそろ終わりにしないか?」
「なにがだよ?」
「こんな馬鹿げた騒動だよ。」
「はあ?なんでテメエの言うことなんて聞かなきゃならねえんだよ。」
「そう凄むなよ。俺には君たちが本当の悪者には思えないんだ。」
「はん!そりゃお前、希望的観測ってやつだぜ。俺とヒッキーは極悪非道の霊獣コンビなのさ。」
そう言ってカッコをつけるが、また流れ弾が飛んできて「痛!」と叫んだ。
「もし君たちが本気なら、この街にいる人たちとっくに殺されてるはずだ。警察や猟友会だって。」
「そりゃ買いかぶりだな。俺たちは人間だって何度も殺ってるぜ。」
「じゃあモンブランに逆らえなかったんだ。そうだろ?」
「バカ言うな。あんな猫にビビるかっての。」
「でもモンブランを怒らせたらヒッキー君も怒らせることになる。」
「あいつもバカな奴だ。昨日今日会ったばっかのメスに入れ込んでよ。これだから引きこもりは嫌なんだ。メスに免疫がないから。」
「でも君だってモンブランを口説いてたじゃないか。」
「あ、あれは良いサンプルになると思ってだな・・・・、」
「ほんとは気があったりして。」
「バカ言うな!あんなオテンバで高飛車なメス・・・・、」
「実はタイプなんじゃないの?」
「・・・・・・・・・。」
「モンブランをさらったのはサンプルになるから、それは間違いないだろうさ。でも気があったんだろ?君も一目惚れしちゃったんだろ?」
「違う!俺はアイツを売り渡す為にだな・・・・、」
「じゃあさっさと売ればよかったのに。ヒッキー君には黙ってさ。」
「ヒッキーはいちおう相棒だから・・・・、」
「相棒に好きなメスを奪われて悔しいんだろ?だからどうしていいか分からなくて、とりあえずモンブランの言うことに従っていた。俺はそう思ってるんだ。」
「だから違うって!あんまりいい加減なこと言ってると・・・・、」
「もし俺に協力してくれるなら、モンブランとの仲を取り持とうか?」
「え?」
急に態度が変わる。
なんて分かりやすい奴なんだ・・・・。
「これでもモンブランの飼い主だからな。だから俺が間に入れば、君にだってチャンスはあるぞ。」
「マジで?」
「マジで。」
「じゃあ・・・・やめようかな、街を乗っ取るの。」
なんという変わり身の早さ。
単純とは彼の為にある言葉かもしれない。
「じゃあ話は決まりだ。君から説得して、人間に変わった動物たちを止めてくれ。」
「でもここまできて言うこと聞くかな?」
「大丈夫だって。彼らは君たちのことを神様のように崇めてるからな。きっと素直に従うはずさ。」
「じゃあ・・・・ちょっとやってみようかな。」
そう言ってチラリとモンブランを見て「あの子が俺の彼女に・・・」と息を飲んでいた。
「あんた、約束だぞ!ちゃんと俺たちが付き合えるように計らえよ。」
「もちろん。」
「ひゃっほう!」
嬉々として街中へ飛び込んでいく。
しかし流れ弾の嵐を喰らい、「ぐああああ!」と倒れた。
そこへ狼男に投げ飛ばされたアカリさんがぶつかる。
「ちょっと邪魔よ!あっち行ってて!!」
「痛!」
尻尾で弾き飛ばされる。
そのまま壁にめり込んで気絶していた。
「なんて役に立たない奴なんだ・・・・。」
あれじゃどう頑張ってもモンブランは振り向いてくれないだろう。
仲を取り持ったところで結果は見えている。
「さて・・・・どうしよかな、これ。」
またもや何も出来なくなってしまう。
このままだと事態がどんどん悪くなる一方だ。
そのうち本当に死者が出るかもしれない。
どうにか出来ないかと考えていると、突然胸が苦しくなった。
「い、息が・・・でき・・な・・・、」
恐れていたことが起きた。
発作である。
その場に倒れ、ヒューヒューと息が漏れた。
心臓が握りつぶされそうなほど痛い。
肺が圧迫されて呼吸も出来ない。
《苦しい・・・・誰か・・・たすけ・・・・、》
本当に死ぬんだと思うと、冗談すら言えなくなる。
もう限界だ・・・・痛みも苦しみも・・・・。
いっそのこと早く楽になりたい。
そう思うほど辛くて、叫び声さえ出てこない。
・・・・しかし急に痛みは治まった。
フっと胸が楽になり、息も出来るようになる。
代わりに強い吐き気が襲ってきた。
何かがこみ上げてくる・・・・。
喉の奥から熱いものがせり上がって、「おうえ!」と嘔吐した。
口からポタポタとヨダレが落ちる。
ヨダレには紫色をした血が滲んでいた。
「はあ・・・はあ・・・これ・・・なんで・・・?どういうことだよ・・・・。」
自分が吐き出した物を見て驚く。
「心臓・・・・。」
とても小さな心臓が鼓動している。
でも俺はこうして生きてるわけだから、つまりこれはもう一つの心臓なんだろう。
問題はどうしてこんな物を吐き出したのかってことだ。
二つも必要ないから?
いや、だからって吐き出したりはしないだろう。
しかもまだ鼓動を刻んでいるし。
呆然と見つめていると、突然あの男が現れた。
夜の街灯の下に立っていたあの男が。
そいつは無言で俺を見下ろす。
そして吐き出した心臓を手にして、背中を向けて歩み去った。
「お、おいアンタ・・・・、」
追いかけようとしたら、すぐ目の前に流れ弾が飛んできた。
バチンと地面が弾け、慌てて飛び退く。
「危ないだろ!」
まだバンバン銃を撃ち合っている。
あれでよくお互いに無事でいられるものだ。
「・・・・って、あれ?男がいない。」
いつの前にか消えている。
辺りを見渡してもどこにもいない。
まるでこの前の夜のように・・・・。
「まさか・・・・幽霊?それとも霊獣か?ていうかなんで俺の心臓なんか持ち去ったんだ?」
あの男は夢にも出てきた。
たしか霊獣を撃ち殺していた。
さっきの心臓とその事と何か関係があるんだろうか?
胸に残ったもう一つの心臓がドクンドクンと高鳴っていた。

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