稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第三部 第三十二話 収束(1)

  • 2019.05.12 Sunday
  • 12:24

JUGEMテーマ:自作小説

事の終わりは突然やってくるものだ。
ひしゃげたエレベーターのドアから課長が現れた。
「課長!」と駆け寄ると「心配かけてごめんね」と言った。
「無事でよかったあ・・・・。鬼神川は!?こうして無事に戻ってきたってことは・・・、」
「うん、もういない。」
「やっつけたんですか!」
「ううん、そうじゃないの。ただもうこっちにはいない。カマクラ家具の社長さんも。」
「あの人も!?いったい何があったんすか?」
「一言でいうのは難しいけど、とにかく自分たちの世界へ帰って行ったわ。だからもう心配ない。」
「伊藤は倒れ、鬼神川もいなくなった・・・・。これでとりあえずは終わったわけか。でも課長、すごく元気のない顔してるけど大丈夫ですか?」
「うん、平気。有川さんやたまき先生や、それにみんながいてくれたから。」
そう言って後ろにいるヘンテコな連中を振り返る。
一人はライダースーツを着たリーゼント、一人はムスっとした顔の神主。
それに野球帽をかぶったデブ、猫みたいな目をした気の強そうな女、パンクロッカーみたいなチャラい感じの男、そしてアンニュイな感じのゴスロリ女。
中でも一番目を引くのは犬人間だ。
たぶん霊獣なんだろうけど、なんかどこかで会ったことがあるような気がする。
「もしかして有川か?」
「おお、よく分かったね。」
「お前も霊獣になってたのかよ!」
「ちょっと薬を飲んで。」
ニコっと笑ってやがる。
どういう神経をしてんだコイツは・・・・。
「ついさっき尻尾が四本あるキツネが出てきたんだけど、あれお前の仲間か?」
「尻尾が四本・・・・ああ!アカリさんか。うん、俺の仲間だよ。」
「慌てて走り去ってったけどなんかあったのか?」
「まあちょっと怪我人が。」
「おいおい・・・大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。とっても強い霊獣だから。」
「ならいいけど・・・・。それよりもう人間に戻れよ。」
「戻りたいけど戻る方法が分からないんだよ。これ新薬だから解毒剤があるのかどうかも分からな・・・・、」
「あるよ。」
「ほんとに?」
「ちょっと待ってろ。」
遠藤さんが持ってたバッグから青と赤のカプセル剤を漁る。
「それが解毒剤?」
「この薬には霊獣の力を打ち消す効果があるから、飲めば元に戻れるらしいぞ。」
「ああ!そういえばそうだった。」
まずは課長にだ。
「どうぞ!」
「ありがとう。有川さん、お先にどうぞ。」
「は!?いやいや・・・そんな奴あとでいいでしょ!まずは課長が・・・、」
「それじゃ頂きます。」
「あ、テメッ・・・・、」
止める間もなく課長の薬を飲みやがった。
ボワっと煙が上がり、人間に戻った有川が現れる。
すると課長が「腕はどうですか?」と尋ねた。
「怪我してましたよね?もう平気?」
「ええ、霊獣の回復力は大したもんです。ほらこの通り!」
ニコニコしながら腕を振っている。
「こ、コラてめえ!課長にお渡ししたモンをなんでお前が・・・・、」
「ちょっとどいて!」
「ぐはッ・・・・、」
猫みたいな顔をした女に突き飛ばされる。
「・・・・あるある!まだまだたくさんあるわ!!」
勝手に薬を漁るので「ちょっと・・・、」と止めようとしたら「邪魔」とまた突き飛ばされた。
「ごはッ・・・・、」
「全員分余裕であるわ。はい。」
そう言って黄色と緑のカプセル剤を取り出し、野球帽の男、パンクロッカーの男、ゴスロリ女に渡していく。
「翔子ちゃんは赤と青のやつね、はい。」
「ありがとう。」
薬を受け取った課長はすぐには飲まなかった。
そこへカレンちゃんが駆け寄ってきて「よかった!」と抱きついた。
「翔子ちゃん!このままいなくなっちゃったらどうしようかって思ってた・・・・。」
「さっきはごめんね。」
ポンポンと頭を撫でると、猫が喉を鳴らすようにうっとりしていた。
すると猫顔の女がカレンちゃんの顔を覗き込み、クンクンと鼻を動かしてから「まさか・・・?」と呟いた。
「あんたもしかしてカレン!」
キョトンとするカレンちゃんだったが、彼女もクンクンと鼻を動かしてから「モンブラン!?」と叫んだ。
「やっぱカレンじゃない!」
「そっちこそモンブランじゃない!」
「あんたまで人間になっちゃったの!」
「そっちこそ!」
「うわあ、ウソみたい!人間同士の姿で合えるなんて!!」
手を取り合ってキャッキャはしゃいでいる。
「ねえ悠一!人間に戻るのはもうちょっと後でもいいわよね?」
「ん?まあ・・・そうだな。もうちょっとだけな。」
「じゃあ今日一日ってことで。ねえカレン、せっかく人間になったんだし、どっか遊びに行かない?」
「いいよ!あ、でもちょっと待ってて。」
そう言って伊礼さんに駆け寄っていく。
「お小遣いちょうだい。」
「な、なに・・・・?」
「だってお金持ってないんだもん。」
「なんで俺が・・・・、」
「猫同士の時はお金なんていらないけど、人間のまま遊ぶんだったらお金がいるでしょ?だからちょうだい。」
ニコニコしながら手を出している。
するとモンブランが「じゃあ私も」と手を出した。
翔子さんが「カレン!」と怒ると、「構いませんよ」と伊礼さんは財布を取り出した。
「この子達はただの動物なんでしょう?だったらこんな事件に巻き込んでしまったお詫びです。・・・・ほら、これで美味いモンでも食べてこい。」
「やった!」
「優しいおじさんね!カレンの知り合い?」
「まあちょっとね。」
「こらカレン!いい加減に・・・・、」
「ほんとにいいんですよ。」
「すみません・・・あとで立て替えますから。」
「気にしないで下さい。」
そう言って笑う伊礼さんだったけど、「俺にもくれよ」と野球帽の男が詰め寄った。
「そいつらだけなんてズルいぜ。」
パンクロッカーの男も「そうそう」と頷く。
「俺たちにも相応の労いをしてもらおうか。」
「な、なんだお前らは・・・・?」
「ブルドッグのマサカリ。」
「インコのチュウベエ。」
「ブルドッグにインコ?てことはお前らも・・・、」
「そう。」
「ただの動物だ。」
「こんなにたくさん人間に変わってたのか・・・・。」
唖然とする伊礼さん。
有川が「図々しいぞお前ら」と注意した。どうやらこいつのペットらしい。
「人にお願いをする時はちゃんと頭を下げないと。」
「お、そうだな。」
「優しい人間のおじさん、どうか万札を下さい。」
「うんうん、それでいい。」
《いいのかよ!》
どうやら貰うこと自体はOKらしい。
小声で「今日の餌代が浮くな」と呟いていた。
伊礼さんは引きつった顔をしながら「ぐむぅ・・・・」と狼狽えた。
「ま、まあ・・・・やらないとは言わないが・・・・、」
「おうおう!太っ腹だなあんた!」
「ほう、けっこう入ってるじゃないか。」
「勝手に覗くな!」
仕方なしにといった感じでお金を渡す。
すると今度は進藤君も手を出した。伊礼さんは顔をしかめる。
「・・・・なんだその手は?」
「せっかくだから俺もいいっすか?」
「お前は自分で稼いでるだろうが!」
「まあまあ、堅いこと言わずに。」
「ニコニコしやがって。読めたぞ、どうせあのカレンって子とデートするのが目的なんだろう?」
「ち、違いますよ!」
「照れるな照れるな。同じ猫同士なんだ。恋したって不思議じゃないさ。」
「だから違いますって!」
顔を赤くする進藤君に小遣いを渡し「楽しんでこい」と背中を押した。
「おお、マジっすか!あざっす。」
「それよりお前、これからどうするんだ?鬼神川はもういないんだ。復讐は終わったわけだが・・・・先のアテはあるのか?」
「う〜ん・・・そのことなんすけど。」
「モジモジするなんてお前らしくないな。言いたいことがあるならハッキリ言え。」
「実は悩んでるんす。まだ答えが出てなくて。」
「そうか。なら落ち着いたら伝えに来い。ウチに残るっていうなら俺が面倒見てやる。」
「伊礼さん・・・・。」
嬉しそうに俯きながら、「とりあえず今日はこれで!」と言った。
そして「俺も一緒に行っていい?」とカレンちゃんに駆け寄っていた。
いつの間にかマサカリとチュウベエも混じっていて、楽しそうに去っていく。
「あ、ちょっと待って!」
結子さんが呼び止める。
そして「猛君も混ぜてあげて」と言った。
「ええ!僕はいいよ別に・・・・、」
「遠慮しない。ねえ伊礼さん?」
「ああ。ここにいても仕方ないし、みんなと遊んでこい。」
そう言って「ほら」と小遣いを渡す。
「いいよ、僕持ってるから。」
「遠慮するな。」
「そういう意味じゃないけど・・・・、」
「もしかして知らない奴らばっかりで不安か?進藤は気さくな奴だ。仲良くしてくれるさ。まあ今日に限ってはそれどころじゃないかもしれんが。」
進藤君がカレンちゃんに惚れているのはバレバレで、すでに他のみんなからからかわれていた。
特に有川のペットたちは容赦ない。
ニヤニヤしながらネタにしまくっている。
「猛、ほら。」
小遣いを押し付け、カレンちゃんたちの方に顎をしゃくる。
「分かった・・・・。でもお父さん、今日は帰ってくるよね?」
「もちろんだ。遅くなるだろうがな。でも必ず帰る。」
「あ、じゃあ・・・、」
猛君はチラっと後ろを振り返る。
結子さんが「伊礼さん、この前の書き置きを覚えてますか?」と言った。
「書き置き?」
「猛君が試合で優勝したから、お祝いにステーキを食べに行くってやつ。」
「・・・・ああ!覚えてます、もちろん覚えてますよ。」
「もしよかったら今日三人で行きませんか?」
「今日ですか?さすがにそれはどうかな・・・・。こんな事件の後だからすぐには上がれそうにな・・・・、」
「じゃあ草刈さんって人に押し付けとけばいいじゃないですか。」
「残念ながら彼は融通の利かない上司でしてね。今日はすぐには解放してもらえないと思います。」
「なら私から言います。部下が誘拐された責任をどう取るおつもりですかって。」
「誘拐?」
「だって伊礼さん誘拐されたじゃないですか。あれは草刈って人が危険な仕事を命じていたからでしょう?」
「いえ、あれは俺が油断していたせいで・・・・・、」
「しかもそのあと猛君の学校にまで来て、連絡をくれなんて勝手なこと言い残して。」
目を釣り上げながら「まだ腹が立ってるんです」と息巻いた。
「いくら伊礼さんの上司だからって、この子の気持ちも考えずに・・・・、」
「まあまあ、それだけ仕事に熱心なんですよ彼は。しかし・・・・そうですね。一応頼んでみます。もし許可が降りなかったら・・・、」
「私から言ってあげます!今日は早く帰してあげ・・・・、」
「抜け出してきます。」
「へ?」
「今まで仕事仕事でしたからね。激務だったのは本当のことですが、それを都合の良い言い訳にしていたのも事実です。
本当はちゃんと猛と向き合わなきゃいけなかったのに。」
そう言って「一緒に行くか」と肩を叩いた。
「いいの?」
「ああ。」
「じゃ、じゃあ・・・ぜったいだよ?」
「約束する。」
伊礼さんが拳を握ると、猛君も拳を握ってコツンと合わせた。
「じゃあ・・・ちょっと行ってくる。」
「ああ、楽しんでこい!」
カレンちゃんたちの所へ向かっていくと、有川のペットたちが取り囲んで早速話しかけていた。
「お前ら!夜までには帰ってこいよ!」
有川が叫ぶと、ペットたちは「了解!」と敬礼した。
「それとあんまり羽目外しすぎるなよ。もう警察が出てくるようなことはゴメンだからな。」
猫顔の女が「努力しま〜す」と手を振る。
みんなでワイワイ言いながら去って行った。
「それじゃあ私もこれで。」
結子さんも手を振る。
「送っていきますよ。」
「平気です。それよりモタモタしてると帰る時間が遅くなっちゃうかもしれませんよ?せっかく猛君と約束したのに。」
「これくらいさせて下さい。」
そう言って慣れた感じで結子さんをエスコートしていく。
あの人、普段は真面目ぶってるけど、女相手だとけっこう変わる。
実は昔は遊び人だったのかも。
ていうか送ったあとどうすんだろ?まさかそのまま結子さんの部屋に上がって・・・・、
「なにを余計なこと考えてる。」
ギロっと睨まれる。顔に出てたみたいだ。
「冴木、すぐ会社に戻る。それまで頼んだぞ。」
「了解っす。」
ビシっと敬礼を返す。
そしてすぐにこう思った。
《伊礼さん、ここにいるのがめんど臭くなったな。》
伊藤は倒れ、鬼神川もいなくなった。
カグラの悪事の証拠は紺野ちゃんが持ってきてくれるし、そいつを吟味するのは刑事さんの仕事だ。
てことは後ここに残された問題は・・・・、
「だから私が産むって!」
「いいえ!僕です!」
《まだやってるよ・・・・。》
それもこれも全ての原因はバクの霊獣。
伊礼さんはこの手のものにはあまり関わりたくないらしい。
だからって俺に押し付けられてもって感じだけど。
《こういう問題は専門家に任せるに限るよな。》
後ろを振り返り、「なあ有川」と肩を叩いた。
「お前に仕事だ。あのバクの霊獣をどうにかしてくれ。」
そう言うと課長が「冴木君」と怒った。
「さっきから聞いてれば失礼じゃない。」
「え?」
「有川さんは君より年上なんだから敬語くらい使いなさい。」
「え?ああ・・・すいません!でもなんつうか・・・・どうしてもそいつのこと好きになれないっていうか・・・・、」
「また言った。『お前』とか『そいつ』なんて失礼だと思わないの?君も立派な社会人なんだから、好き嫌いだけで言葉遣いを変えないの。」
「はい・・・・。」
まさかこんな所で叱られるとは。
有川は「別にいいですよ」と言うけど、「ダメです、こういうことはちゃんとしとかないと」とまだ怒っていた。
「それに有川さんは私の友達なんですから。いくら冴木君だからって失礼な言葉遣いは許せません。」
苦笑いする有川だったが、リーゼント頭の男に「なあよお」と声を掛けられていた。
「ツムギのあんちゃんと狼男たちが喧嘩してるぜ。」
「なにい!」
慌てて振り返る有川。
いつの間にか狼男たちが戻ってきて、神主の男と言い争いをしていた。
「キサマら!せっかく僕の神社に祭ってやっていたのに・・・・それが気に入らないとはどういうことだ!」
「だってよお、アンタの神社狭いんだもんよ。そのせいで鳥居の向こうの家だって狭いじゃねえか。」
「うむ。あんな狭い家に男が三人。むさ苦しくてかなわん。」
「ぬうう・・・・放浪していた霊獣をわざわざ住まわせてやってるのに・・・・キサマらには義理というものがないのか!」
「んなこと言ったって。」
「あの家に三人は狭すぎる。」
「そうそう、アンタんとこの家じゃロクに女の子も誘えないし。」
「俺たちは有川と約束したのだ。助けを呼んできたら、見返りに俺たち専用の神社をくれると。」
「有川はただの人間だ!そんな権限はない!!」
「でもウズメさんに掛け合ってくれるって言ってたぜ。」
「彼女は稲荷の長だ。神社の一つや二つ用意してくれるはずだ。」
「馬鹿め。ウズメはもう長じゃないんだよ。」
「はあ!?」
「どういうことだ!」
「ダキニ様が戻って来られたからだ。ウズメはあくまで代理、これでまたダキニ様が頂点に君臨される。お前らの頼みなんか聞いて頂けるものか。」
「そんなあ・・・・、」
「おのれ!俺たちはいったいなんの為に助けを呼んできたのだ!」
「まったくだぜ。たまきが見当たらなくてその辺ウロウロしてたら妙な女に声を掛けられるし。」
「しかしあの女、まさかダキニに匹敵するほどの稲荷神だったとはな。名はトヨウケヒメだったか?」
「たしかカマクラ家具の社長だって言ってたぜ。」
「敵ではあるが、このさい強い霊獣なら誰でもいいと思って連れてきたんだが・・・・正解だったな。」
「ていうかあの女の方から来たがってたからな。伊藤と鬼神川はどこ?って。」
「お、お前らがトヨウケヒメ様を連れて来ただと・・・・・?」
「そうだぜ。」
「役に立っただろう?」
「バカ野郎!あの御方を誰だと思っている!?お前らなんかが気安く話しかけていい相手ではないんだぞ!」
「だから向こうから声かけて来たんだって。けっこういい女だから口説こうとしたんだけど、軽くあしらわれちゃって。」
「く・・・口説く・・・・トヨウケヒメ様を口説くだと!身の程をわきまえろ、この無礼者!」
「んな怒るなよ。」
「もういい、僕の神社から出ていけ!」
「だから出て行くって言ってんじゃん。」
「早く俺たちの神社を用意してもらおう。」
「誰がくれてやるか!」
なんかよく分からないけど揉めている。
「あれうるさいんだけど・・・」と指をさすと「ごめんごめん」と有川は謝った。
「チェリー君、悪いんだけど止めてきてくれない?」
「なんで俺なんだよ!」
「ここは霊獣同士の方が話がまとまるかなと思って。」
「アンタが狼男に約束したことだろが!」
「まあそうなんだけど。」
「責任もってアンタが止めてこい。」
「じゃあこう言えばいいよ。俺が呼んで来てくれってお願いしたのはたまきであって、トヨウケヒメじゃない。助かったことは助かったけど約束とは違う。」
「だから自分で言え!」
「約束した本人が言ったら角が立つかなあって。」
「他人が言った方が角が立つに決まってるだろ!」
「とりあえずウズメさんにはお願いしてみるよ。だからまあ上手く言っといてくれないかな。」
そう言って背中を押す。
リーゼントは「なんで俺が・・・・」とブツブツ言いながら「喧嘩すんなお前ら!」と仲裁に入った。
でも自分が一番喧嘩腰だから火に油を注いでいたけど。
「さっきよりうるさくなったぞ。」
「悪いね、ちょっとの間だけ我慢してよ。それよりあっちをどうにかしよう。」
バクを指差す。
「あの霊獣にはもうご退散願わないと。」
「俺だってとっとと消えてほしいよ。でもマシローちゃんとムクゲさんがなあ・・・・、」
「マシローちゃん?ずいぶん可愛い呼び方するね。」
「あのネズミ、実はメスらしいんだ。」
「ええ!?」
「あんたも知らなかったのかよ。」
「初耳だ。」
「本人がそう言ってたんだよ。でもって今はムクゲさんと喧嘩してる。伊藤をどっちが産むかどうかで・・・・、」
非常にめんど臭い事情だけど説明する。
有川は「なるほど」と頷いた。
「つまりあのバクがどっか行ってくれれば解決じゃないか。」
「そうなんだけど、もう一人の伊藤が銃を向けてるせいで動けないみたいなんだ。」
「分かった、ならこうしよう。伊藤の説得には俺が当たる。冴木君はマシロー君・・・・じゃないや、マシローちゃんとムクゲさんを宥めて・・・・、」
「ちょっと待って!」
黙って話を聞いていた箕輪さんが手を上げる。
「ちょっといいですか?」
「彼女は?」
「俺の先輩。その隣は・・・・、」
「・・・・おお、栗川さんじゃない!」
「お久しぶりです。」
ペコっと頭を下げる美樹ちゃん。
そういえばこの二人は知り合いだったんだ。
「どうして栗川さんがここに?」
「ええっと・・・それは色々あってえ・・・、」
口ごもる美樹ちゃんに代わって箕輪さんがこう言った。
「有川さんって動物に関するトラブルならなんでも引き受けてくれるんですよね?」
「ええ、まあ。」
「じゃあちょっとお願いしたいことがあるんです。あのバクを説得して、心臓を植物に宿らせてくれないかって?」
「はい?」
キョトンとしてる。
まあそうなるだろう。
「ねえ箕輪さん、それマジで言ってるんですか?」
「マジじゃなきゃ言わないわよ。」
「さっきも聞きましたけど、心臓を植物にって無理すぎないですか?」
「出来るわよ、あのバクなら。」
「でも契約がどうたらって持ちかけられますよ?」
「だから有川さんにお願いするんじゃない。彼は霊獣の扱いに慣れてるんでしょ?だったら平気平気。」
「いやでもなあ・・・・。だいたい美樹ちゃんの畑に植えるわけでしょ?それ嫌がるんじゃ・・・・、」
「私ならOKですよ。」
「ええ!だって気味悪くない?」
「別に。」
「軽いね・・・・。」
「あの畑は思い出を守る為に欲しかったんだけど、こうして何かの役に立つなら構いません。」
「うんうん、さすがは美樹ちゃん。」
喜ぶ箕輪さん。
えへ!っと笑う美樹ちゃん。
有川は「なんの話?」とキョトンとしたままだった。

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