竜人戦記 第四十八話

  • 2010.09.23 Thursday
  • 09:06
 宿屋に泊っていると、ケイトとリンの部屋に、突然現れた半透明の女性。
ケイトはしばらくその半透明の女性を見ていた。
長い髪に美しい顔をしている。
リンはその半透明の女性を見て怯えていた。
どうやらこの半透明の女性をお化けだと思って怖がっているらしい。
しかしリンの考えは当たっていた。
ケイトは半透明の女に性尋ねた。
「あなたはゴーストね。」
ケイトは言った。
半透明の女性は頷く。
普通人は死ねば天に召される。
しかしそうならない場合というのは何か理由があるのだ。
そしてこうやってゴーストが人前に姿を現す時というのは、何か伝えたいことがあるのだ。
「あなたの名前は何て言うの。
私に何か伝えたいことがあるんでしょう。」
ケイトがそう言うと、ゴーストの女性は頷いて言った。
「私の名前はカレン。
悪い奴に魂を縛られているの。」
「悪い奴に魂を縛られている?」
ケイトは聞き返した。
「そう。
あなたはシスターでしょ。
なら私の魂を解放して。」
そう言ってカレンは宙に浮いたまま宿から去って行こうとする。
「待って!
一体どういうこと?」
ケイトは言った。
「村の奥にある墓地に来て。」
そう言うとカレンは消えた。
ケイトはしばらくカレンが消えた方を見ていた。
迷える魂を天に送り届けるのはシスターの仕事だ。
ケイトはカレンの言っていた村の奥にある墓地に行ってみようと思った。
ケイトは部屋を出て行こうとした。
そこへリンがしがみついて来た。
「ちょっとケイト、一人にしないでよ。」
リンは怯えた表情で言ってくる。
「でも私は行かないと。
迷える魂を救うのがシスターの仕事だから。」
ケイトはリンに向かって言った。
「じゃあ私もついて行く。
部屋で一人で残されるよりマシだもん。」
こうしてケイトとリンは、村の奥にある墓地へと向かった。
外は夜だった。
暗い中を月明かりを頼りに村の奥へと進んで行く。
するとそこには墓地があった。
リンがぎゅっとケイトの腕にしがみつく。
そう言えば、リンは以前にゾンビも怖がっていた。
どうやらリンは、ゾンビやゴーストが苦手らしい。
ケイトは墓地の真ん中まで歩いて行く。
するとカレンが現れた。
「あなたの魂を救いに来たわよ。
あなたの魂を縛っている悪い奴っていうのは、一体どこにいるの?」
ケイトはカレンに尋ねた。
するとカレンは墓地の真ん中にある、黒い大きな石を指差した。
ケイトはその黒い大きな石を見た。
何やら邪悪な気を感じる。
「来る。
出て来る。」
カレンはその黒い石を見ながら言った。
すると黒い石から、煙のような物が現れて、その中に邪悪な気を放つ黒い姿をした男性のゴーストがいた。
カレンは怯えるようにその黒いゴーストを見た。
「こいつがあなたの魂を縛っているのね。」
ケイトは黒いゴーストを見ながら言った。
黒いゴーストはニヤリと笑い、ケイトに襲いかかって来た。
「危ない!」
リンがケイトの体を引っ張って黒いゴーストから遠ざける。
黒いゴーストはケイト達を見てまたニヤリと笑った。
「ここは俺の縄張りだ。
ここにいる魂は俺が好きにしていいんだ。
誰にも邪魔はさせない。」
そう言うと黒いゴーストは爪を剣のように長く伸ばした。
「お前達も殺して、その魂を俺の好きにさせてもらう。」
そう言って黒いゴーストは襲いかかってきた。
黒いゴーストの剣のような爪がケイトに襲いかかる。
「ケイト!」
そう叫んで、リンがまたケイトの体を引っ張る。
間一髪、ケイトは黒いゴーストの爪から逃れた。
そしてリンがケイトの前に立った。
「ゴーストを怖がってちゃ、立派な武道家になれない。
このゴーストは私が倒してみせる。」
そう言ってリンは黒いゴーストにパンチを放った。
しかしリンのパンチは黒いゴーストの体をすり抜けてしまった。
リンは続けて蹴りも放つ。
しかしその蹴りも黒いゴーストの体をすり抜けてしまった。
「人間の攻撃は俺には当たらんよ。」
そう言って黒いゴーストは爪でリンに斬りつけた。
リンは腕を斬られて血を流してしまった。
それでもリンは攻撃をやめない。
パンチや蹴りを黒いゴーストに放つ。
しかしリンの攻撃は全て黒いゴーストの体をすり抜けた。
黒いゴーストが再びリンに斬りつける。
リンは足を斬られてしまった。
「こいつめえ!」
悔しそうに叫ぶリン。
そしてそんな光景をカレンは不安そうに見ていた。
「お前を殺して、その魂を俺の物にさせてもらう。」
そう言って黒いゴーストはリンの体をめがけて爪を突き刺そうとした。
その時ケイトは聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
その光に当てられた黒いゴーストは「ぎゃああああ!」と苦しそうな声を出した。
「貴様!」
そう言って黒いゴーストがケイトの方を向く。
ケイトはまた聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
しかしその光をかわしたゴーストは、ケイトに向かって襲いかかって来た。
黒いゴーストの爪がケイトの腕を斬り裂く。
「きゃああ!」
痛みに叫び声をあげるケイト。
黒いゴーストはなおもケイトを斬りつけようとした。
しかしその時、「やあ!」というリンの声が響いいた。
リンの放った飛び蹴りが黒いゴーストを蹴り飛ばしていた。
リンは全身の気を高めていた。
そして黒いゴーストに言った。
「どう。
気功を使った攻撃なら効くでしょ。」
そう言ってリンは構える。
「気功だとお!
何だそれは。」
そう言いながら黒いゴーストがリンに襲いかかってくる。
リンは黒いゴーストの爪をかわすと、強烈な蹴りをはなった。
「ぐふう!」
リンの蹴りをくらって苦しそうな声を出す黒いゴースト。
ケイトも気功というのがどういうものか分からなかったが、どうやらリンの攻撃が当たるようになったようである。
「この小娘があ!」
黒いゴーストは怒りながらリンに襲いかかって来る。
しかしリンは黒いゴーストの爪をかわすと、何発もパンチを打ち込んだ。
「ぐはああ!」
苦しむ黒いゴースト。
「すごい、リン!」
ケイトはリンに向かってそう言っていた。
リンは黒いゴーストに攻撃をしかける。
パンチに蹴り、そして肘打ちに膝蹴りだ。
黒いゴーストは、リンの攻撃にめった打ちにされた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
黒いゴーストが言った。
「何よ。」
リンが構えたまま言う。
「もう悪いことはしない。
そこの女の魂も解放する。
だから許してくれ。」
黒いゴーストは大人しくなって謝り始めた。
「その言葉は本当?
嘘をついてるんじゃないでしょうね。」
リンがきつい口調で黒いゴーストに言う。
「本当だ。
嘘じゃない。
約束する。」
黒いゴーストはしきりに謝っている。
「こう言ってるけど、どうしようか、ケイト?」
リンがこちらを向いて尋ねてくる。
「そこまで謝っているんだし、もう許してあげましょう。」
ケイトはそう言った。
「ケイトがそう言うなら、許してあげる。」
そう言ってリンは高めていた気を解放して構えを解いた。
そして黒いゴーストに背を向けてケイトの元に歩み寄ってくる。
その時だった。
黒いゴーストがいきなりリンの背後から襲いかかって来た。
「危ない、リン!」
ケイトはそう言って、聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
そしてその光に当てられた黒いゴーストが苦しんだ。
「こいつ。
騙し討ちしようとしたのね!」
リンは怒ってそう言い、再び全身の気を高めて黒いゴーストに攻撃をしかけた。
リンの渾身の飛び蹴りが黒いゴーストに当たる。
「ぐええええ!」
黒いゴーストは苦しそうな声を出した。
「これでとどめよ!」
そう言ってリンは、フェイが放つような強烈なパンチを黒いゴーストに打ち込んだ。
リンのパンチが当たって、ドスン!という低い音が響く。
「ぐおおおおお!」
黒いゴーストはダメージを受けながらも、最後の力を振り絞ってリンに襲いかかって来た。
ケイトはまた聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から放たれた光が、黒いゴーストを消し去っていく。
「うぎゃああああ!」
黒いゴーストそう叫び、聖者の腕輪の光によって消滅させられてしまった。
「やった!
勝ったね!」
リンが嬉しそうに言う。
それからケイトは聖者の腕輪を使って、自分とリンの傷を治した。
ケイトとリンは顔を見合わせて笑った。
そしてその光景を見ていたカレンが、ゆっくりとこちらに近づいて来た。
「ありがとう。
これで私の魂は解放されるわ。」
カレンは言った。
「よかったね。
これで天国に行けるよ。」
リンが笑顔で言った。
カレンは頷き、最後にケイトに向かってもう一度「ありがとう。」と言った。
そしてカレンが微笑むと、その体は光に包まれながら、空に吸い込まれるようにして消えて行った。
「よかった。
迷える魂を救えて。」
ケイトは言った。
そして黒いゴーストが出て来た黒い大きな石は、朽ちたようにボロボロになっていた。
「なんか大変な夜だったね。」
リンが言った。
「そうね。
もう一度ベッドに入って、ゆっくり寝ましょう。」
ケイトはそう言い、リンと一緒に部屋に戻って眠りについた。
翌朝、みんなは宿屋の前に集合した。
「昨日はよく眠れたか?」
何も知らないフェイが、ケイトとリンに聞いてくる。
「まあね。」
リンはそう答え、ケイトと顔を見合わせて笑った。
「何だ?
二人して笑って。
何かあったのか?」
フェイが不思議そうに聞いて来る。
「別に、何にもないよ。」
リンはそう言い、またケイトと顔を見合わせて笑った。
「変なやつらだなあ。」
そう言いながらフェイは笑った。
「じゃあ旅の再開といくか。」
マルスがそう言い、ケイト達は再び旅立つことにした。
村を出て行く前、ケイトは一瞬村の奥の墓地を振り返った。
どうかカレンが迷うことなく天国に行っていますように。
ケイトはそう願い、みんなとともに村を出た。
とても良い天気で、雲一つなく空は晴れ渡っていた。
太陽の光がケイト達の影を作っている。
その時ケイトは、背後にふと邪悪な気を感じた。
振り返ってみたが、誰もいなかった。
今の邪悪な気は一体何だったんだろうと不思議に思った。
そしてケイトは背後に何か違和感を感じた。
振り返ってみるが、やはり誰もいない。
ケイトは背後に違和感を感じたまま、ウェイン達と旅を続けた。
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