竜人戦記 第五十一話

  • 2010.09.26 Sunday
  • 09:23
 マリーンはずっとエリーナの気を追って旅をしていた。
そして山奥の中にある塔までやって来た。
この塔の中からエリーナの気がする。
「この中にエリーナがいるわ。」
マリーンは弓矢を背負い直して言った。
「じゃあ中に入ろう。」
エレンが言う。
マリーンは頷き、エレンとともにその塔の中に入った。
中には上へと続く階段があった。
マリーンはその階段を上がった。
すると一つの部屋があり、そこに二人の人間が座り込んでいた。
マリーンはその人間達に近づいてみる。
人間達もマリーンの気配に気付いたようで、こちらを振り返った。
「あなた達は・・・。」
マリーンはその人間達の顔に見覚えがあった。
「あんたは確か・・・。」
向こうもこちらに見覚えがあるようだ。
座り込んでいるのは、一人の筋肉質な男性と、その男性と同じ服を来た女の子だった。
その女の子はマリーンを指差して言った。
「あなたは、確かマリーン。」
「ええ、そうよ。
あなたは確かリンね。」
マリーンは言った。
「知り合い?」
エレンが聞いてくる。
マリーンは頷いた。
この二人がいるといいうことは、ケイトもこの塔にいるということだ。
「ケイトは一緒じゃないの?」
マリーンはリンに尋ねた。
「うん。
ケイト達は先に上の階段に上がって行ったよ。」
リンは言った。
「この塔は一体何なの?」
マリーンは聞いた。
「この塔は地獄の門の鍵があるの。
魔人より先に地獄の門の鍵を見つける為に、この塔に来たんだよ。」
リンは立ち上がって答えた。
「そうなの。
じゃあ上に行けばケイトがいるのね。」
マリーンは聞いた。
「うん。
ウェイン達と一緒にいると思う。」
リンは疲れているのか、ふらつきながら立っていた。
すると男性の方がマリーンを見て言った。
「そう言えばさっき、あんたとは別のエルフがこの塔にやって来たぜ。
声をかけても無視して、上の階段に上がっていったぜ。」
「それは本当!」
マリーンは勢い込んで聞いた。
「本当だよ。
確か腰に鞭をつけていたと思う。」
リンが思い出すように言った。
「分かったわ。
私も上の階段に上がって来るわ。」
マリーンは部屋の奥にある階段を駆け上がった。
「何があるか分からないから気をつけてね。」
リンが階段を上がるマリーンを見て言ってくる。
マリーンは頷いて階段を上がった。
「フェアリーなんて珍しいものをつれてるな。」
階段を駆け上る途中、そう言った男性の声が聞こえてきた。
それからしばらく階段を上がると、また一つの部屋に出た。
その部屋には一人の剣士が座っていた。
マリーンはこの剣士を知っている。
マリーンは二度もこの剣士に助けられたのだ。
「マルス。」
マリーンはその剣士の名前を呼んだ。
「マリーン!」
マルスは振り向いて言った。
「また知り合い?」
エレンが尋ねてくる。
マリーンは頷きながら、マルスの方に駆け寄った。
「ひどい傷・・・。
大丈夫?」
マリーンはマルスを見て言った。
「ああ、何とかな。
マリーンは元気そうだな。
おまけにフェアリーなんて珍しいものをつれているじゃないか。」
マルスは笑いながら言った。
「私は何とか無事に旅をしているわ。
このフェアリーに助けられたこともあったけど。」
そう言うとエレンは胸を張って笑った。
「そうか。
無事で何よりだ。」
マリーンはマルスに恩がある。
二度も助けてもらったのに、何もお返しが出来ていなかった。
「ねえ、エレン。
魔法を使ってマルスの傷を治してあげて。」
マリーンは言った。
「うん、いいよ。」
エレンはマルスに近づき、回復の魔法を使った。
マルスの傷が癒えていく。
こんなことで恩返しが出来たとは思わないが、マルスの傷がなおったことでマリーンは嬉しかった。
傷が治って元気になったマルスは、立ち上がってマリーンに言った。
「さっきここを一人のエルフが階段を上がっていったんだ。」
マルスは言った。
「ええ、知っているわ。
きっと私の妹よ。」
マリーンは言った。
「そうだろうと思ったよ。
確かあのエルフは以前にマリーンと闘っていたもんな。
そしてあれは自分の妹だと言っていたはずだよな。」
マルスは言った。
「ええ、それで危ない所をあなたに助けられた。
感謝しているわ。」
マリーンは微笑んで言った。
マルスは照れたように頭を掻いた。
「今、上にはウェイン達が上がって行っている。
マリーンの妹のエルフと遭遇しているかもしれない。」
マルスは焦ったように言った。
「そうね。
急いで階段を上がりましょう。」
こうしてマリーンはマルスとともに階段を駆け上がった。
そして階段を駆け上がっていると、大剣を背負った剣士と、エリーナが向かい合っているのが見えた。
あの大剣を背負っているのが竜人だろう。
そしてエリーナはシスターの首を腕で絞めていた。
おそらくあのシスターがケイトだろう。
マリーンはエリーナの近くまで駆け上がると、弓矢を構えて言った。
「エリーナ、そのシスターを離しなさい!」
エリーナはマリーンの方を向いた。
そしてケイトもマリーンの方を見た。
ケイトの唇が、マリーンという名前を呼ぶように動いている。
きっとエリーナに首を絞められて声が出ないのだろう。
「また追って来たの。
本当にしつこいわね。」
エリーナはマリーンを見て言った。
「私はどこまでもあなたを追いかけるわ。
それよりケイトを離しなさい!」
するとエリーナは笑った。
「このシスター、ケイトっていうのね。
マリーンのお友達か何か?」
「ええ、そうよ。
ケイトは私の友達よ。」
そう言ってマリーンはエリーナに弓矢を向ける。
するとエリーナはケイトを盾にするようにマリーンの方に向けた。
「矢を放ったら、このケイトって子に当たっちゃうわよ。」
そう言われてマリーンは矢を放てなかった。
しかしその時、マリーンに気をとられているエリーナに、竜人が斬りかかった。
それに気付いたエリーナは、竜人の方にケイトを突き飛ばした。
竜人は突き飛ばされたケイトを抱えた。
「ウェイン、お前達は先に上へ上がってろ!」
マルスが叫ぶ。
そういえば竜人の名前はウェインといったかなと思い出しながら、マリーンはエリーナに矢を放った。
エリーナは体をよじって矢をかわした。
ウェインはケイトを抱えて階段を駆け上がって行く。
「待ちなさい!」
それを追おうとするエリーナ。
しかしマリーンはエリーナを呼びとめた。
「私に背中を向けていいの?
矢を放つわよ。」
そう言われてエリーナは悔しそうに唇を噛みながらマリーンを見た。
「マリーン!」
ウェインに抱えられて階段を上がっていくケイトが叫んだ。
マリーンはケイトの方を見て微笑んだ。
ケイトは心配そうにマリーンを見ていた。
やがてウェインとケイトの姿は見えなくなった。
「まったく。
いつもいつも私の邪魔をしようとするわね、マリーン。」
エリーナは怒った口調でそう言った。
「ええ、そうよ。
私の目的はあなたを止めることだもの。
いくらでも邪魔してあげるわ。」
マリーンはエリーナを見据えて言った。
「どうやらここできっちり決着をつけた方がいいみたいね。」
エリーナは言った。
「私もそう思うわ。」
マリーンは答えた。
「ここじゃ闘いづらいわ。
下にあった部屋に下りて、そこで決着をつけましょう。」
そしてマリーン達とエリーナは、マルスがいた部屋まで下りて来た。
「マリーン、今度こそ殺してあげる。」
そう言ってエリーナは腰の鞭を手に取った。
「俺も一緒に闘うよ。」
マルスは言った。
しかしマリーンはそれを断った。
「私はどうしてもこの手で決着をつけたいの。
マルスの気持ちは嬉しいけど、私一人で闘うわ。」
マリーンは言った。
「私も一緒に闘っちゃダメなの?」
エレンが聞いてくる。
「そうね。
エレンとマルスは私の闘いを見守っていてちょうだい。」
マリーンは真剣な顔で言った。
「ああ、分かった。」
マルスは頷いた。
しかしエレンは頷かなかった。
「私も一緒に闘う!」
エレンは不満そうに言った。
「でもこの闘いは・・・。」
「もう決めたの!
私も一緒に闘う!」
マリーンが言い終わる前にエレンは言った。
マリーンは仕方ないわねというふうに頷いた。
「もう話は済んだ?」
エリーナが聞いてくる。
「エリーナ、もし私を殺したら、そのあとはどうするつもりなの?」
マリーンは聞いた。
エリーナはしばらく考える仕草を見せてから言った。
「そうね。
この世の人間を殺す旅にでもで出ようかしら。」
エリーナはそう言って笑った。
マリーンはその言葉を聞いて、何としてもエリーナを倒さなければならないと思った。
そしておそらくこれがエリーナとの最後の闘いになるだろうと思った。
この闘いの末、きっとどちらかが命を落としている。
しかしマリーンは、そんな覚悟はとうにできていた。
「じゃあいくわよ、マリーン。」
そう言ってエリーナは自分の足元で鞭を振った。
マリーンも弓矢を構えてエリーナに向けた。
マリーンとエリーナの、最後の闘いが始まった。
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