竜人戦記 第五十二話

  • 2010.09.27 Monday
  • 08:10
 マリーンはこれが最後の闘いになるだろうと思い、エリーナに矢を向けていた。
長い間エリーナを追って旅をしてきた。
しかし、それも今日ここで終わるのだ。
「いくわよ、マリーン!」
そう言ってエリーナが鞭を振ってきた。
マリーンはそれをかわす。
するとエリーナは連続で鞭を振ってきた。
しかしマリーンはエリーナの振った鞭を全てかわした。
マリーンはおかしいと思った。
いつもなら、連続で振ってくるエリーナの鞭をくらってしまう。
なのに今はかわすことが出来た。
マリーンは不思議に思いながら矢を放った。
マリーンの放った矢は、いつもより速かった。
エリーナは何とかそれをよける。
「どうしたの、マリーン。
何だか急に強くなったみたい。」
エリーナは言った。
マリーンはもしやと思って右手の指にはめた指輪を見た。
するとベッカルからもらった強者の指輪が小さく光っていた。
ベッカルは言っていた。
この指輪は、使った者の戦闘力を一時的に増すと。
今はのマリーンは、強者の指輪のおかげでいつもより強くなっていた。
エリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはそれをかわすと、次の矢を放った。
矢はエリーナの右足に命中した。
そしてマリーンは連続で三本の矢を放った。
エリーナは矢をかわしきれず、右腕、左肩、そしてお腹に矢が命中した。
エリーナは苦しそうにしながら言った。
「どういうわけか分からないけど、いつもより強くなっているみたいね。
だったら私もそうさせてもらうわ。」
エリーナはそう言い、呪文を唱え始めた。
エリーナの周りに黒い霧が現れ、やがて黒い霧はエリーナの体に吸い込まれていった。
そして次にエリーナは体に刺さった矢を全て抜き、回復の呪文を使った。
エリーナの傷は完全に治った。
「ここからが本番よ。」
そう言ってエリーナが鞭を振ってくる。
その鞭はさきほどより速かった。
マリーンは何とかそれをかわすと、エリーナに向かって矢を放った。
しかしエリーナはあっさりと矢をかわしてしまった。
「自分を強化する呪文を使わせてもらったわ。
マリーンも強くなったみたいだけど、これで私の方が上よ。」
そう言ってエリーナは連続で鞭を振ってきた。
マリーンは鞭をかわしきれずにくらってしまった。
マリーンの白い肌から赤い血が流れる。
エリーナはなおも鞭を振ってくる。
マリーンは後ろへ飛んで何とかそれをかわすと、連続で矢を二本放った。
しかしエリーナは、マリーンの放った二本の矢を鞭で叩き落としてしまった。
そこへまたエリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはかわしきれずにそれをくらった。
マリーンは鞭のダメージにより、膝をついてしまった。
「マリーン!」
エレンがそう叫んで両手を広げた。
辺り一面が花畑に変わる。
エレンが幻覚を使ったのだ。
「ふん、こんな幻覚に惑わされるとでも思ってるの。」
エリーナはそう言い、膝をついたマリーンに鞭を振ってきた。
マリーンはその鞭をくらって倒れてしまった。
するとエレンは魔法で自分の姿を消し、マリーンに近づいて来た。
そしてマリーンに回復の魔法を使った。
傷が癒えて立ち上がるマリーン。
それと同時に、エレンは幻覚を解いた。
花畑の風景が、元の部屋に戻る。
エリーナに幻覚は効かないと思って、エレンは幻覚を使うのをやめたのだ。
エレンは姿を消したままマリーンの傍にいた。
するとエリーナが言った。
「マリーン、以前にもそのフェアリーに助けられたわね。
今回もその邪魔なフェアリーのせいでマリーンにとどめをさしそこねたわ。」
エリーナは呪文を唱え、手を前に突き出した。
すると姿を消していたはずのエレンが、その姿を現した。
エリーナがエレンの透明になる魔法を解除したのだ。
「邪魔なフェアリー。
さっさと死になさい。」
そう言ってエリーナはエレンに鞭を振った。
エレンは慌てて逃げた。
間一髪、エレンはエリーナの鞭から逃れた。
「マリーン。」
少し離れた場所から、心配そうにマリーンの名前を呼ぶエレン。
マリーンは大丈夫よというふうに頷いてみせた。
そしてマリーンはエリーナに矢を放った。
エリーナはそれを鞭で叩き落とすと、マリーンに向かって鞭を振ってきた。
マリーンはそれを何とかかわすと、エリーナに距離をつめて、近距離から矢を放った。
マリーンの放った矢は、エリーナの右肩をかすめた。
マリーンは次の矢を構える。
その間にエリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはエリーナの鞭をくらった。
しかしマリーンの放った矢もエリーナの右腕に命中した。
マリーンはエリーナの鞭をくらってよろめいた。
しかし次の矢を構える。
その間にエリーナが鞭を振ってくる。
しかし鞭を持つエリーナの右腕にはマリーンの放った矢が刺さっており、鞭はいつもより遅かった。
マリーンは鞭をかわすと、矢を放った。
エリーナはそれをかわそうとしたが間に合わず、左足に矢をくらった。
エリーナは一旦後ろへジャンプすると、体に刺さった矢を引き抜いた。
そして回復の呪文を使おうとした。
そうはさせまいとマリーンは連続で二本の矢を放った。
エリーナは呪文を唱えるのをやめて、マリーンの放った矢をかわした。
「中々やるわね、マリーン。」
そう言うと、エリーナは怪我をした右手から左手に鞭を持ちかえた。
そしてマリーンに向かって連続で鞭を振ってくる。
鞭のスピードは右手で振っている時より遅かった。
しかしマリーンはかわしきれずにエリーナの鞭をくらってしまった。
体から赤い血を流して倒れ込むマリーン。
「マリーン!」
マルスが叫んだ。
剣を抜いてマリーンを助けようとしている。
しかしマリーンは、「来ないで!」と言った。
「これは私の闘いなの。
私が決着をつけなければいけないの。」
マリーンは言った。
「そうね。
これはマリーンと私の闘いだものね。
だから私がマリーンを殺してあげる。」
エリーナはそう言うと、倒れているマリーンをいたぶるように鞭を振ってきた。
「あああああ!」
鞭の痛みに叫び声をあげるマリーン。
そこへエレンが回復の魔法を使おうとマリーンの傍に飛んで来た。
「目障りなフェアリーめ。」
エリーナはそう言ってエレンに鞭を振ろうとした。
マリーンは咄嗟にエレンをかばった。
エリーナの強烈な鞭をくらって苦しむマリーン。
「マリーン!」
エレンが叫ぶ。
「エレン、来ちゃダメ!」
マリーンは言った。
それからもエリーナはいたぶるようにマリーンを鞭で叩き続けた。
マリーンは苦しみの声をあげた。
エリーナの鞭によって、だんだんとマリーンの体が痛めつけられていく。
「マリーン!」
またマルスが叫んだ。
マリーンは助けに来ようとするマルスを見て、首を横に振った。
来ちゃダメ。
マリーンは心の中で言った。
エリーナは鞭でマリーンを叩くのをやめ、足でマリーンを蹴り飛ばした。
「うぐうう!」
苦しそうな声を出すマリーン。
「ねえ、マリーン。
あなたをいたぶるのはとっても楽しいわ。
もっと痛めつけてあげる。」
それからもエリーナは鞭でマリーンを叩き、足でマリーンを蹴り飛ばした。
マリーンは痛みとダメージで意識を失いそうになった。
しかし必死でそれを我慢した。
「マリーン、痛めつけられる気持ちはどう?」
エリーナはそう言って笑い、鞭を振ってくる。
「どうしたの?
もう終わり?
私を倒さなくていいの?」
エリーナは笑いながらそう言ってマリーンをいたぶる。
それを悔しそうに見つめるマルスとエレン。
それからしばらくエリーナはマリーンをいたぶった。
「じゃあ、そろそろ終わりにしましょうか。」
エリーナはそう言って大きく鞭を振りかぶった。
もう終わりだ。
私は死ぬんだ。
マリーンは思った。
何としてもエリーナを止めるつもりでいたけど、その思いは叶わなかった。
もし私が死んだら、誰がエリーナを止めるのだろう。
竜人が私にかわってエリーナを倒してくれるだろうか。
いや、それより、この場にいるマルスとエレンはエリーナに殺されてしまうだろうか。
様々な思いがマリーンの頭に浮かんだ。
「マリーン、最後に何か言いたいことはある?」
エリーナがマリーンを見下ろしながら言ってくる。
「もう一度、幼い頃に戻って、エリーナと遊びたかったわ。」
マリーンは言った。
その言葉を聞いたエリーナの表情が一瞬だけ変わった。
しかしエリーナはすぐに普段通りの表情に戻った。
「じゃあこれでお別れね。
さようなら、マリーン。」
そう言ってエリーナが大きく振りかぶった鞭を振ってきた。
マリーンは目を閉じた。
幼い頃から今までのことが走馬灯のように思い出される。
そしてエリーナの鞭がマリーンの体に当たった。
もう私は死んだ。
マリーンはそう思った。
しかしその時、パリン!という何かが壊れる音がした。
マリーンは目を開けてみた。
まだマリーンは生きていた。
そしてマリーンの首元で、身につけていたネックレスが壊れていた。
そのネックレスは、カーロイドの街でジェンキンスという剣士からもらったものだった。
確か身代わりの首飾りと言っていた。
身につけている者の命が危うくなった時、身代わりになってくれると言っていた。
何が起こったのか分からないというふうに立ち尽くすエリーナ。
マリーンはその一瞬を見逃さなかった。
素早く弓矢を構え、エリーナに向かって矢を放った。
エリーナはそれに気付いたが、かわすのが間に合わなかった。
マリーンの放った矢は、エリーナの心臓を貫いた。
「ぐうう!」
そう言って口から血を流し、ゆっくりと倒れて行くエリーナ。
「マリーン!」
そう言ってエレンがマリーンの傍に飛んでくる。
「今すぐ治してあげるからね。」
エレンは回復の魔法を使い、マリーンの傷を治した。
マリーンは立ち上がり、倒れたエリーナを抱きかかえた。
「エリーナ!」
マリーンは思わずその名を呼んでいた。
矢で心臓を貫かれたエリーナは、体から力が抜け、口から血を流し続けていた。
「マリーン・・・。」
エリーナがかすれるような声で言った。
「エリーナ。
ごめんなさい。
こんな方法でしかあなたを止められなくて。」
マリーンは泣いていた。
エリーナゆっくりと右手をあげる。
マリーンはその手を握った。
「ねえ、マリーン・・・、私ね・・・、ダークエルフになってから・・・、一度だけ昔の夢を見たことがあるの・・・。」
マリーンはエリーナの手を握りながらその言葉を聞いた。
「昔の・・・、楽しかった頃。
二人で・・・、仲良く遊んだ夢を・・・。」
「エリーナ!」
マリーンは泣きながらその名を呼んだ。
「私ね・・・、ダークエルフになってから・・・、昔のことなんてどうでもいいと思ってたの・・・。
でも・・・、一度だけ・・・、マリーンと遊ぶ・・・、幼い頃の夢を見た・・・。」
マリーンは強くエリーナの手を握った。
エリーナはマリーンの顔を見て、一瞬だけ微笑んだ。
「もし・・・、出来るなら・・・、もう一度だけ・・・、幼い頃に戻って・・・、マリーンと遊びたかった・・・。
叶わない夢だと知っていたけど・・・、もう一度だけ・・・、そうしたかった・・・。」
そう言うと、エリーナは動かなくなってしまった。
エリーナは死んだ。
マリーンは泣きながら妹の体を抱きしめた。
「ごめんなさい。
あなたを救えなくてごめんなさい。」
マリーンはそう言いながら、もう動かなくなった妹の体を抱きしめて泣き続けた。
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