竜人戦記 第五十三話

  • 2010.09.28 Tuesday
  • 09:25
 マリーンはエリーナの体を抱きしめてしばらく泣き続けていた。
妹を殺してしまった自分。
そうすることでしか、エリーナを止めることが出来なかった。
マリーンはしばらくエリーナの体を抱きしめたあと、そっと床に置いた。
「エリーナ、天国でまた会いましょう。」
そう言ってマリーンはもう動かなくなったエリーナの頭を撫でた。
マルスとエレンがマリーンに近寄って来る。
マルスはマリーンの肩にそっと手を置いた。
マリーンはその手を握った。
「私、自分の妹を殺してしまったわ。」
マリーンは悲しげな声で言った。
「仕方なかったんだよ。
こうする以外に彼女を止める方法はなかったんだろう?」
マルスはマリーンに聞いた。
マルスの言う通りだった。
こうする以外エリーナを止めることは出来なかった。
しかしマリーンはその問いには答えず、ただマルスの手を握っていた。
「マリーン・・・。」
エレンがマリーンの目の前に飛んで来て心配そうな目で見つめる。
マリーンはもう一度エリーナの頭を撫でると、立ち上がった。
「エリーナ、あとでちゃんとお墓を作ってあげるからね。」
マリーンは言った。
マリーンは涙を拭き、マルスの方に向き直って言った。
「エリーナがここにいるっていうことは、魔人もこの塔にいるかもしれないわ。
ケイト達のあとを追いましょう。」
マリーンはマルスを見つめて言った。
そこへフェイとリンが階段を上がってマリーン達の元へやって来た。
フェイは床に倒れて死んでいるエリーナを見て言った。
「一体何があったんだ。」
マリーンのかわりにマルスが答えた。
フェイとリンは真剣にマルスの話を聞いていた。
「そうだったの・・・。
つらいわね、マリーン。」
リンが言った。
マリーンはエリーナを見ると、目を閉じた。
幼い頃の記憶がよみがえる。
二人で楽しく遊んだ思い出。
マリーンはそれを胸にしまい、マルス達を見て言った。
「私達も上に行きましょう。
ケイト達のあとを追うのよ。」
そう言ったマリーンの目は真剣だった。
「そうだな。
そうしよう。」
マルスがそう言い、マリーン達は上の階段へ上がることにした。
「また戻って来るからね、エリーナ。」
マリーンはエリーナを振り返って言った。
その頃、ウェインはケイトを抱えて階段を駆け上っていた。
ケイトはマリーンのことが心配だった。
マリーンは妹を追って旅をしていると言っていた。
きっとあのエルフがマリーンの妹なのだろう。
マリーンは妹のエルフと闘っているのだろうと思った。
マリーンが無事なのか、ケイトは心配でたまらなかった。
そしてケイトはウェインに言った。
「ウェインさん。
もうおろしてくれていいですよ。
自分の足で歩けますから。」
しかしウェインはケイトを抱えたまま階段を駆け上がった。
「ウェインさん。」
ケイトが呼びかけても無視である。
ウェインはそのまましばらく階段を駆け上がった。
すると一つに部屋に出た。
ウェインはそこでケイトをおろした。
部屋の奥に階段がある。
きっとこの部屋にも見張り番がいるのだろう。
ケイト達は部屋を進んだ。
すると階段の手前に魔法陣が現れた。
そこから白く、長い服を着た一人の女性が出て来た。
肩までの金髪の髪に、とても美しい顔をしている。
「お前もこの塔の見張り番か?」
ウェインがその女性に尋ねた。
「ええ、そうよ。
私の名前はシール。
トリスに頼まれてこの塔の見張り番をしている魔法使いよ。」
シールと名乗った女性はそう言った。
「ならお前を倒さないと先へは進めないということだな。」
ウェインが言う。
「その通り。
先に進みたいなら、私を倒してからね。」
そう言ってシールは笑った。
ウェインは大剣を構えて前に出た。
ケイトは闘いの邪魔にならないように少し後ろへ下がった。
「じゃあ始めましょうか。」
シールはそう言うと、手から雷を放ってきた。
ウェインは大剣を避雷針がわりにして床に突き立てた。
雷が大剣に落ちる。
するとウェインは大剣を手に取ってシールに斬りかかった。
シールは手を上にかざした。
シールの周りに小さな竜巻がおこる。
ウェインの大剣は小さな竜巻によって阻まれた。
そして小さな竜巻が消えると、シールは手から氷を放った。
ウェインはその氷を大剣で斬り裂く。
するとシールは両手を上にあげた。
シールの上に魔法陣が現れ、そこから鳥の顔にライオンの体をして、翼を生やした魔物が現れた。
魔物はウェインに襲いかかって来た。
ウェインは大剣を振って応戦する。
そこへシールがウェインめがけて雷を放った。
ウェインは雷をくらってしまった。
雷をくらってぐらつくウェイン。
そこへ魔物が襲いかかる。
魔物の爪がウェインの左腕を斬り裂いた。
ウェインは魔物に向かって大剣を振る。
しかし魔物は宙に飛んで、ウェインの大剣をかわした。
そこへシールがまた手から氷を放った。
その氷はウェインの足に当たり、ウェインの足は凍りついてしまった。
また魔物が襲ってくる。
ウェインは足が凍っているので下半身は動かせない。
ウェインは大剣で魔物の爪を受け止めた。
そこへまたシールが氷を放ってきた。
それはウェインの体に当たり、ウェインの上半身も凍ってしまった。
ウェインは身動きがとれなくなった。
魔物がウェインの顔めがけて爪を振ってくる。
ウェインは首をひねって魔物の爪をかわしたが、魔物の爪はウェインの顔をかすめた。
ウェインの顔から血が流れる。
「中々やるな。」
ウェインはシールに向かって言った。
「褒めても何もでないわよ。」
シールはそう言って笑った。
「お前はまあまあ強い。
だからこちらも少し本気で闘わせてもらおう。」
ウェインがそう言うと、ウェインの体を光の膜が覆い、大剣は黄金の光を放ち始めた。
ウェインは「はあ!」と言って体を動かした。
するとウェインの体を凍らせていた氷は弾け飛んだ。
そこへ魔物が襲いかかってくる。
ウェインは大きく大剣を振りかぶると、縦一閃に大剣を振った。
魔物は一刀両断されてしまった。
そしてウェインはシールに斬りかかった。
シールは両手を前に突き出してシールドのようなものを張った。
ウェインの大剣がシールドに阻まれた。
しかしウェインはもう一度斬りかかった。
するとシールドにひびが入った。
もう一度ウェインが大剣で斬りつけると、シールドは砕け散った。
焦ったシールは宙に浮いて両手から炎と雷を放った。
ウェインはそれをかわすと、シールの真上にジャンプした。
そしてシールに斬りかかった。
シールはまた両手を突き出してシールドを張った。
しかしウェインの渾身の一撃は、一発でシールドを砕いた。
シールは床に下りて、焦って後ろに下がる。
それをウェインが追う。
するとシールは両手を広げた。
そうしたらシールが三人に分裂した。
三人のシールはそれぞれ炎、雷、氷を放ってきた。
するとウェインの大剣の黄金の輝きが増した。
ウェインは輝きの増した大剣で、三人のシールの攻撃を受け止めた。
そしてウェインは大剣を大きく横に振った。
すると光の刃が三人のシールめがけて飛んでいく。
真ん中に立っていたシールが宙に浮いて逃げ、左右にいたシールは光の刃で真っ二つにされた。
左右にいたシールは消滅した。
ウェインは大きく大剣を振りかぶっている。
また光の刃を放つ気だった。
すると宙に浮いていたシールが「待って!」と言った。
「私の負けよ。
降参するわ。」
宙に浮いていたシールは床に下りて来た。
「あなた強いわね。
私じゃ勝てないわ。」
シールはそう言って笑った。
その言葉を聞いたウェインは大剣を背中に戻した。
するとウェインの体を覆っていた光の膜が消え、大剣の黄金の光も消えた。
シールは自分が出て来た魔法陣まで戻って行った。
「この上が最上階よ。
そこに地獄の門の鍵があるわ。」
シールはそう言った。
「あなたは竜人ね。」
シールが聞いてきた。
「そうだ。」
ウェインが短く答える。
「どうりで強いはずだわ。」
そう言ってシールは笑った。
「じゃあね、竜人さん。」
そう言葉を残すと、シールは魔法陣の中へと消えて行った。
「シールはこの上に地獄の門の鍵があるって言っていましたよね。」
ケイトは言った。
「ああ、さっさと最上階へ行こう。」
ウェインが言う。
「その前にウェインさんの傷を治します。」
そう言ってケイトは聖者の腕輪を使って、ウェインの傷を治した。
「じゃあ上に行きましょう。」
ケイトがそう言った時だった。
下の階段からフェイ達が上がって来た。
マリーンもいる。
ケイトはマリーンに駆け寄った。
「マリーン!
無事だったのね。
また会えて嬉しいわ。」
ケイトは笑顔で言った。
「ええ、私もまたケイトに会えて嬉しいわ。」
そう言ったマリーンの顔は、どこか悲しげだった。
「何かあったの?」
ケイトはマリーンに尋ねた。
マリーンは一度顔を伏せてから、ケイトを見た。
「妹との決着がついたのよ。
でも、私は妹を殺してしまった。
こんな形でしか妹を止められなかった。」
そう言ったマリーンはの瞳は悲しみに満ちていた。
「そうだったの・・・。」
ケイトは何と言っていいか分からなかった。
マリーンが妹を追って旅をしていることは知っていた。
でもその結末が妹を殺すことになるなんて。
「ごめん、マリーン。
私、何て言ったらいいか・・・。」
ケイトがそう言うと、マリーンはケイトの肩に優しく手を置いた。
「いいのよ、ケイト。
私はこうなることを覚悟していたの。」
そう言ってマリーンはケイトに微笑んだ。
「この人はマリーンの友達?」
エレンが言った。
「あ、フェアリー!」
ケイトは驚くようにして言った。
そう言えばマリーンの妹に首を絞められている時、マリーンがケイトの元にやって来た時にもフェアリーがいたような気がした。
「私エレンっていうの。
よろしくね。」
エレンは笑顔で言った。
「私はケイトよ。
よろしくね。」
そう言ってケイトはエレンの小さな手と握手した。
「さあ、まだやることがあるんでしょう。
先を急ぎましょう。」
マリーンが言った。
そうだった。
この上の階には地獄の門の鍵があるのだ。
何としても魔人にそれは渡せない。
「話は済んだか。
じゃあ上の階へ行くぞ。」
ウェインが言った。
こうしてケイト達は地獄の門の鍵のある最上階を目指した。
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