竜人戦記 最終話

  • 2010.10.01 Friday
  • 09:19
 地獄の門はもう開かれることはなく、魔人もこの世からいなくなった。
もうこの世の危機は去ったのだ。
みんなの奮闘のおかげで、この世は地獄にならずにすんだ。
もう戦いは終わったのだ。
ケイト達は、とりあえずカリオンの街を目指していた。
その旅の途中、マリーンが妹を火葬したいと言った。
ケイト達は枝や枯れ葉などをたくさん集め、その中にマリーンの妹を入れた。
そしてウェインが手から炎の球を放った。
マリーンの妹は、燃えながら煙となり、空に舞い上がって行く。
ケイトは十字架を握って祈りを捧げた。
やがて炎も消え、そのあとにはマリーンの妹の骨が少しだけ残っていた。
「エリーナ・・・。」
マリーンはそう言って骨の一部を拾い、自分の胸にしまった。
残りの骨はその場に埋めた。
マリーンはその場所に花を摘んできて置いた。
そしてケイト達は旅を続けてカリオンの街まで戻って来た。
とりあえずこの街で一晩泊ることにした。
その夜、宿の部屋でケイトはマリーンとリンとそしてエレンとで、今後のことについて話し合っていた。
「マリーンはこれからどうするの?」
ケイトは尋ねた。
「私はお世話になったエルフの村に戻ろうと思っているわ。
そこでエリーナのお墓を作るの。
これからは静かに暮らしたいわ。」
マリーンは答えた。
「妹さんのことは残念だったわね・・・。」
ケイトは言った。
「そうね。
でも仕方なかったことなのよ。
ああすることでしかエリーナを止められなかったから・・・。
悲しみはまだあるけど、覚悟はしていたことだから。」
マリーンはエリーナの骨が入れてある胸の辺りを触って言った。
「マリーンは強いね。」
リンが言った。
「そんなことはないわ。
私は強くなんかない。
ただ自分のやるべきことをやって、悲しみにくれて生きるのはやめようと思っているだけよ。」
それを強いというと思うのだが、ケイトは口には出さなかった。
「リンはこれからどうするの?」
今度はリンに尋ねた。
「私はまだ修行の旅を続けるわ。
お兄ちゃんと話し合ってそう決めたの。
自分の国に帰るのは、もっと立派な武道家になってからにしようって。」
リンは真剣な顔で言った。
「そうなの。
立派な武道家になれるといいわね。」
ケイトは笑顔で言った。
「うん、絶対になるよ!」
リンは勢い良く答えた。
「エレンはこれからどうするの?」
マリーンが聞いた。
「私はマリーンについて行く。」
エレンは言った。
「自分の故郷に帰らなくていいの?」
マリーンが言う。
「いいの。
私はマリーンと一緒に行くの。」
そう言ってエレンはマリーンの肩に乗った。
マリーンは仕方ないわねというふうに、微笑みながら頷いた。
「それで、ケイトはこれからどうするの?」
マリーンが尋ねてきた。
ケイトは返事に困った。
「まだ決めていないの。」
ケイトは答えた。
「そうなの?
自分の故郷には帰らないの?」
マリーンが聞いてくる。
「私は幼い頃に両親を亡くして、ある村の神父様に引き取られたの。
でもその村が魔人のせいでめちゃくちゃにされて、それで色々とあって私は村を追い出されたの。
だからこれからどうしようか考えている所なのよ。」
ケイトは答えた。
「そうなの。
それは大変ね。」
マリーンが心配そうな顔で言ってくる。
「じゃあケイトも武道家を目指して私達と一緒に旅をすればいいじゃない。」
リンが言った。
ケイトは思わず笑ってしまった。
「私に気を遣ってくれるのは嬉しいけど、私はシスターとして生きるつもりだから。
ごめんね、リン。」
そう言うとリンはちょっと寂しそうに俯いた。
「あの竜人さんは、これからどうするのかしらね。」
マリーンが言った。
そうだ。
ウェインはこれからどうするのだろう。
ウェインはもう自分の使命は果たした。
これからどのようにして生きるつもりなのだろう。
「これは私の考えだけどね。」
マリーンがそう前置きしてから言った。
「きっとあの竜人さんはこれからは静かに暮らしたいんじゃないかしら。
私も妹を追ってずっと旅をしていたから、彼の気持ちが少し分かるの。
重大な使命から解放されて、今はゆっくりと暮らしたいはずよ。」
「そうなのかなあ。」
ケイトは思った。
ウェインは本当に静かに暮らしたいのだろうか。
ケイトにはウェインの気持ちは分からなかった。
それから四人で他愛無いお喋りを続け、楽しい夜を過ごした。
そして翌朝、みんなは宿屋の前に集まった。
「これからみんなはどうするんだ?」
マルスが言った。
「私はお世話になったエルフの村に帰るわ。」
マリーンが言った。
「私もマリーンと一緒に行くのよ。」
エレンは言った。
「そうか。」
マルスは頷いた。
「フェイはどうするんだ?」
マルスが尋ねる。
「ああ、俺とリンはこれからも修行の旅を続けるよ。
だから今日ここでお別れだ。」
フェイが言った。
「そうなの?」
ケイトはリンを見て言った。
昨日の夜、修行の旅を続けるとは言っていたが、今日別れるなんて聞いていなかった。
「うん。
私はお兄ちゃんと旅を続ける。
昨日はなんだかみんなと別れるのが寂しくて言えなかったけど、お別れするのは今日なんだ。」
リンは少し寂しそうに言った。
「お前らと旅が出来て楽しかったよ。
いい経験にもなった。」
フェイが言う。
「気をつけて旅をしろよ。」
マルスがそれに笑顔で答えた。
「ケイト・・・。」
リンがケイトの名前を呼んだ。
そして抱きついてきた。
「私、ケイトのことを本当のお姉さんみたに思ってた。
一緒に旅が出来てすごく嬉しかった。」
リンは泣いていた。
「私もリンのことを本当の妹みたいに思っていたわ。」
そう言ってケイトはリンを抱きしめた。
しばらくそうしたあと、リンはケイトの顔を見て言った。
「またいつか絶対に会おうね。」
リンは涙を拭いて笑顔を見せた。
「うん。
またいつか会いましょう。」
ケイトも笑顔で言った。
「それじゃあ。」
リンは手を振って、フェイとともに去って行く。
「リン、元気でねー。」
ケイトは大きな声で言った。
リンは振り返り、大きく手を振った。
ケイトはフェイとリンの姿が見えなくなるまで見送った。
「マルスはこれからどうするの?」
マリーンが尋ねた。
「ああ、俺は故郷の街に帰るつもりだ。
もう仇の魔人もいなくなったことだしな。」
マルスは言った。
「ウェインさんはこれからどうするんですか?」
ケイトは尋ねた。
「俺も故郷の村に帰るつもりだ。」
ウェインは答えた。
「そうですか・・・。」
ケイトは思った。
やっぱりウェインはマリーンの言った通り、静かに暮らしたいのかもしれない。
故郷の村でゆっくりと暮らすつもりなのだろう。
みんな自分の帰る場所があるのだ。
「ケイトはどうするんだ?」
マルスが聞いてくる。
「私はまだ決まってなくて・・・。」
ケイトは顔を伏せて言った。
「そうなのか。
まあ時間はたっぷりある。
ゆっくり決めればいいさ。」
マルスはそう言った。
そしてウェインもマリーンもマルスも、故郷に帰るには船に乗って一旦ウッズベックの街に戻らなければならないと言った。
ケイトもそうすることにした。
そしてカリオンの港から、ウッズベックに向かう船に乗せてもらった。
それから二週間かけて船はウッズベックに到着した。
その間、ケイトはこれから自分はどうしようかとずっと悩んでいた。
そしてあることを思いついた。
みんなは船を降りて、ウッズベックの街に入った。
そしてウッズベックの街の出口まで来た所で、マリーンとエレン、そしてマルスとはお別れとなった。
「じゃあな、みんな元気でな。」
マルスが言う。
「あなたには本当にお世話になったわ。
ありがとう。」
マリーンがマルスに言った。
「いいってことさ。
それより気をつけてエルフの村に帰るんだぞ。」
マルスが言った。
「ええ、そうするわ。」
そう言ってマリーンは微笑んだ。
マルスも笑った。
二人はしばらく見つめ合っていた。
「なんだか二人は恋人みたい。」
エレンがそう言って笑った。
マリーンはその言葉に微笑み、マルスは照れたように頭を掻いた。
「じゃあもう行くよ。」
マルスが言った。
「あなたも気をつけてね。」
マリーンがそう言って手を振る。
ケイトはこの二人は恋人になるんじゃないかと密かに思っていたが、そうはならなかった。
「じゃあな!」
マルスが大きく手を振り、西に向かって去って行く。
ケイトとマリーンも手を振り返した。
「じゃあ私も行くわ。」
マリーンがケイトを見て言った。
「マリーン、また会えるよね。」
ケイトはマリーンの手を握って言った。
「ええ、いつか会えるわよ。」
マリーンもケイトの手を握り返した。
「私も握手する。」
エレンも握手を求めてきたので、ケイトはエレンの小さな手を握った。
「じゃあね、ケイト。」
そう言ってマリーンは最後にケイトを抱きしめた。
ケイトは泣きそうになるのをこらえながら、マリーンを抱きしめ返した。
「それじゃあ、元気でね。」
マリーンはケイトにそう言い、ウェインとケイトに手を振って去って行く。
「マリーン、またねー。」
ケイトは大きな声で言った。
マリーンは振り返って微笑み、肩にエレンを乗せて、手を振って東に去って行った。
「みんな行っちゃいましたね。」
ケイトはウェインに言った。
「ああ、そうだな。」
ウェインは短く答える。
「ウェインさんも自分の故郷に帰るんですよね。」
「ああ。」
「ウェインさんの村って、教会はありますか?」
ケイトは聞いた。
「無いな。」
ウェインは素っ気なく答えた。
「じゃあ教会を建てましょう。
それで私がそこのシスターになります。」
そう言うと、ウェインはケイトを見た。
「本気か?」
ウェインが尋ねる。
「ええ、本気です。」
ケイトは笑って答えた。
「ねえ、ウェインさん。
私もウェインさんの故郷の村に連れて行って下さい。」
そう言うと、ウェインは少し戸惑った表情をした。
「私、もう帰る所がないんです。
だから、ウェインさんの村に連れて行ってもらえませんか?」
ウェインはケイトと目を合わさず、宙を見ていた。
「ウェインさん。」
ケイトは真剣な目でウェインを見た。
するとウェインは南に向かって歩き出した。
それを追うケイト。
「ねえ、ダメですか?」
ケイトはウェインの横顔を見る。
ウェインはチラリとケイトを見ると言った。
「好きにしろ。」
「はい、好きにします。」
ケイトは笑顔で言った。
こうしてケイトはウェインの故郷の村に行くことになった。
空には眩しく太陽が輝いている。
そして青い空を雲が流れていっている。
ケイトはそんな空を見上げながら、ウェインとともに、ウェインの故郷の村を目指して歩いて行った。
青い空の下を吹く風が、ウェインとケイトを包んでいるようだった。

                                         完

コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< April 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM