それでも明日はやってくる 第二話 真紅のリップ

  • 2010.10.10 Sunday
  • 09:12
 どうやら少し眠っていたみたいだ。
先ほどまで、彼女と激しく体を重ね合わせていた。
ベッドから身を起して、横に寝ている彼女を見た。
彼女も眠っているようだ。
俺はしばらく彼女の体を見る。
透き通るような白い肌に、なめらかな曲線を描いた腰のライン。
そしてそっと彼女の顔を見る。
とても美しい顔だ。
目鼻立ちが整っている。
しかし一番心を惹かれるのは、その真っ赤な唇だった。
見ているだけで、吸い込まれそうになる。
俺はその唇に、そっとキスをした。
そして彼女を起こさないようにベッドを降りると、台所へ向かった。
コップを手に取り、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
コップに水を注ぎ、グイッと飲み干した。
先ほどまでの彼女との熱い抱擁が思い出される。
俺はもう一杯水を飲んだ。
そして彼女の方に目をやると、体を寝かせたまま、顔だけをこちらに向けていた。
「起きてたのか?」
「うん。」
俺は彼女の方に歩み寄る。
「私にもちょうだい。」
「ん?」
「水。」
「ああ。」
俺はコップに水を注ぎ、彼女の方に持って行く。
彼女はしなやかな指でコップを受け取った。
そして俺と同じように一気に飲み干した。
俺は彼女の隣に腰掛ける。
彼女はふうっと息を吐いている。
俺はその唇に見惚れていた。
「今日、なんだか暑いわね。」
「そうかな。」
「体が火照ってる。」
そう言うと彼女はコップをテーブルに置き、俺に抱きついて来た。
俺はそれを受け止める。
そしてまた激しく彼女と体を重ね合わせた。
朝になり、彼女は微笑みだけを残して去って行った。
俺は軽い朝食を取り、仕事に向かう。
会社では、ずっとぼーっとしていた。
彼女を抱いた次の日は、いつもこうなる。
彼女は今までに抱いた女とは明らかに違っていた。
何か野性的というか、それでいて洗練されているというか。
言葉では上手く表現出来ない。
そして思い浮かぶのは、あの赤い唇だ。
魅惑的で、何か不思議な力を持っていそうなあの赤い唇。
俺は彼女の唇と自分の唇を重ねるたびに、自分が丸裸にされているような感覚に陥った。
彼女に嘘は通用しない。
彼女に小細工は通用しない。
唇を重ねれば、彼女はきっと全てを見抜いてしまうから。
その日一日は、ぼーっとしたまま仕事にならなかった。
仕事を終え、会社を出る。
そして彼女のケータイに電話をかけた。
しかし彼女は出なかった。
俺は知っている。
彼女が俺のものでないことを。
彼女には俺とは別に、本気で心を寄せている相手がいることを。
それでもよかった。
彼女の心が本気で俺に向いていないとしても、俺が彼女にとって遊びだとしても、彼女との繋がりは断ちたくなかった。
俺はその夜、一人ベッドに寝転がりながら、彼女を思い出していた。
あの熱い抱擁。
そしてあの真っ赤な唇。
彼女に会いたかった。
しかしそれが叶わない夜もある。
俺は彼女の肌の温もりを思い出しながら眠りについた。
翌日、仕事を終えると彼女の方から連絡があった。
「今夜会える?」
「もちろん。」
「じゃあ会いに行くわ。」
「ああ、待ってる。」
短い会話で電話は切られ、俺は急いで家へと帰った。
帰ってから熱いシャワーを浴び、ビールを一杯飲んだ。
そしてしばらくベッドの上で横になっていると、ドアをノックする音がした。
俺はドアを開けた。
彼女が立っていた。
「あがっていい?」
「ああ。」
家にあがると、彼女は何も言わずにバスルームへと向かった。
シャワーを使っている音が聞こえる。
俺はベッドに座って彼女が出てくるのを待った。
今夜も彼女の赤い唇とキスが出来る。
あの何とも言えない感覚を味わうことが出来る。
「お待たせ。」
彼女がバスルームから出て来た。
体にはバスタオルを巻いている。
俺は彼女を抱き上げ、ベッドまで連れて行く。
そして彼女をベッドに寝かせると、真っ赤な唇にキスをした。
すると、まるで自分が裸にされているような、自分の全てを見透かされているような感覚に陥った。
俺は夢中でキスをした。
自分が解放されいく感じがする。
それから俺は彼女と激しく体を重ね合わせた。
彼女のしなやかな体を強く抱く。
その間もキスをしていた。
彼女の肌と俺の肌が触れ合う。
時間の感覚がなくなっていく。
自分がとろけていくような感じがする。
彼女とキスをし、体を重ねているうちに自分が自分でないような感覚になってきた。
彼女との行為を終え、俺達は抱き合って寝た。
そして朝がやってきた。
目が覚めると、彼女は服を着ていて、もう帰る所だった。
「じゃあまたね。」
そう言って彼女は真っ赤な唇でキスをしてくる。
そして彼女は去って行った。
俺はベッドから立ち上がり、水を一杯飲んだ。
部屋にはかすかに彼女の匂いが残っている。
今夜、彼女は誰に抱かれるのだろう。
また俺の元に来てくれるだろうか。
さっきキスしたばかりなのに、俺はまた彼女の真っ赤な唇を求めていた。

                                   第二話 完
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