幽霊ハイスクール 第十七話 悪霊が出た

  • 2010.11.16 Tuesday
  • 09:06
 学校の三時間目の授業が終わった休み時間、俺は木原と喋っていた。
「俺達って今までたくさんの霊を見てきたよなあ。」
木原が言う。
「そうだな。
色んな霊がいたな。」
「確かにな。
でもさ、とんでもない悪霊に出会ったことってないよな。」
「それはないな。」
今までたくさんの幽霊と出会ってきたが、とんでもない悪霊に出会ったことはない。
いや、一度だけ悪霊に出会ったことがある。
この前木原がとり憑かれた犬の霊だ。
しかしとんでもない悪霊という感じではなかった。
「なあ、健太郎。
悪霊って見てみたくないか?」
また木原が変なことを言い出した。
「俺はいいよ。
悪霊なんて見たくない。」
「なんだよ、つれないな。
実はさ・・・。」
木原が何か言おうとしたが、俺はその言葉を遮って言った。
「悪霊の出る心霊スポットがあるとか言うんじゃないだろうな。」
すると木原は笑った。
「よく分かったな。
実は悪霊の出るって噂の心霊スポットがあるんだよ。」
いつも思うのだが、こいつはそんな話をどこから仕入れてくるのだろう。
噂になっていると言うが、俺はそんな噂は聞いたことがない。
「それで、その心霊スポットに行ってみようとか言うんだろ。」
俺は言った。
「さすが健太郎。
俺の考えることがよく分かってる。」
俺はため息をついて言った。
「お前なあ、この前犬の霊にとり憑かれて、除霊してもらったことを忘れたのか。
そんな心霊スポットに行って、また悪い霊にとり憑かれたらどうするんだよ。」
「もしそうなったら、またあの霊能者のおばさんに除霊してもらえばいいじゃん。」
こいつは本当に楽観的である。
この前犬の霊にとり憑かれて、あんなに苦しんだっていうのに。
もうそんなことも忘れてしまったのだろうか。
「さっきも言ったけど、俺は悪霊なんて見たくない。」
「そう言うなよ。
その悪霊が出るっていう心霊スポットに行ってみようぜ。」
すると佳恵さんが言った。
「私はそれには反対です。」
「どうしてさ?」
木原が聞く。
「もしその心霊スポットに悪霊がいたら、ひどい目に遭うかもしれませんよ。
悪霊っていうのは本当にたちが悪いんです。
呪われたり、とり憑かれたりしたら、大変な目に遭いますよ。」
俺は佳恵さんの言うことに頷いた。
「その通りだ。
悪霊なんて関わらない方がいい。
それよりもうすぐ期末テストだろ。
心霊スポットなんかに行ってる暇があったら、勉強しろよって話だよ。」
「なんだよ、健太郎と佳恵さん二人してさ。
いいよ、分かったよ。
その心霊スポットには俺一人で行くよ。」
「やめとけって。」
「いいや、俺は行く。
行って本当に悪霊がいるかどうか確かめる。」
そこで四時間目の授業のチャイムが鳴った。
俺の席に来ていた木原は、自分の席に戻って行った。
四時間目の授業が始まった。
俺は小声で佳恵さんに話しかけた。
「木原のやつ、本当に一人で行くつもりかな?」
「そうみたいですね。」
「もし悪霊にとり憑かれたらどうするつもりなんだ。」
「もしそうなったら心配ですね。
私は木原君を説得して、心霊スポットに行くのをやめさせた方がいいと思います。」
「うん、俺もそう思う。
そして木原を説得する役目は、佳恵さんがいいと思う。」
「え、私ですか?」
「うん、木原は佳恵さんのことが好きなんだよ。
好きな人が説得すれば、木原も納得してくれるだろ。」
「そうでしょうか。
私なんかが説得して納得してくれるでしょうか。」
「俺が説得するより、佳恵さんが説得した方が効くと思う。」
「分かりました。
じゃあ昼休みに、木原君を説得してみます。」
そして四時間目の授業が終わり、木原が弁当を持って俺の席にやって来た。
ついでに美保もやって来た。
二人が俺の机に弁当を広げる。
俺は佳恵さんを見た。
「佳恵さん、説得をお願い。」
俺は言った。
佳恵さんは頷いた。
「木原君、本当に悪霊の出る心霊スポットに一人で行くつもりですか?」
佳恵さんが聞いた。
「なになに、悪霊の出る心霊スポットって。」
美保が興味津々という感じで聞いてくる。
「木原君が、悪霊の出る心霊スポットに一人で行くと言っているんです。」
佳恵さんは言った。
「えー、そんな所に一人で行くの?」
美保が聞く。
「そうだよ。
健太郎も誘ったんだけど、来ないって言うんだ。
だから俺一人で行くのさ。」
木原は弁当を食べながら言う。
「木原君、そんな場所に一人で行ったら危ないですよ。
もしまた悪い霊にとり憑かれたらどうするんですか。
そんな所に行くのはやめましょう、ね。」
「佳恵さんは俺を心配してくれてるの?」
木原が聞く。
「そうです。
もし木原君に何かあったら心配です。
だからその心霊スポットに行くのは考え直してもらえませんか。
私からのお願いです。」
木原は「うーん。」と唸った。
「佳恵さんからのお願いかあ。
どうしようかな。」
木原が迷っている。
あと一押しだ。
「木原君、そんな場所に行くのはやめましょう、ね。」
木原は迷っている。
佳恵さんの説得が効いているみたいだ。
「佳恵さんがそんなに心配してくれるなら・・・。」
木原が言った。
どうやら悪霊の出る心霊スポットに行くのを諦めてくれそうである。
すると美保が言った。
「私が一緒に行ってあげようか。」
何を言っているんだ美保は。
せっかく木原が諦めかけてくれているところなのに、邪魔するようなことを言わないでほしい。
「野村も一緒に来てくれるのか?」
「うん。
悪霊が出るって怖いけど、なんか面白そうじゃない。
一緒に行ってあげるよ。」
「そうか。
野村が一緒に来てくれるのか。
じゃあ行こうかな。」
「そんな、やめた方がいいです。」
佳恵さんが言う。
すると美保が言った。
「健太郎も来なよ。」
「何で俺が行かなきゃいけないんだよ。」
「だって私達友達でしょ。
私と木原が行くって言ってるんだよ。
健太郎も一緒に来なよ。」
俺は佳恵さんと顔を見合わせた。
「そうだよ。
野村もこう言ってるんだし、健太郎も来いよ。」
木原が言う。
俺と佳恵さんは顔を見合わせたまま、はあっとため息をついた。
「どうしても行くんですか?」
佳恵さんが聞く。
「うん、行く。」
木原は言った。
「健太郎君、私が説得しても無理みたいですよ。」
「なあ、木原。
本当に行くのか?」
「だから行くって言ってるだろ。」
「健太郎も来なよ。」
美保が言う。
「はあ、結局こうなるのか。」
俺はまたため息をついた。
「じゃあ健太郎も来るってことで決まりな。」
木原が言った。
「それで、その心霊スポットっていうのはどこにあるんだ?」
「学校から東に自転車で二十分ほど行った所に、廃墟になった病院があるんだよ。」
その場所なら俺も知っている。
確か十年ほど前に病院が別の場所に移転して、前の病院はそのままになっているのだ。
「行くのは夜がいいな。」
木原が言う。
「なんか怖いね。
廃墟になった病院に、夜行くなんて。」
美保が言う。
だったらやめておけばいいじゃないかと思った。
「みんなその廃墟の病院の場所は知ってるよな?」
木原が聞く。
「うん、知ってる。」
美保が言った。
「健太郎は?」
「知ってるよ。」
「よし、じゃあ今夜九時にその廃墟の病院に集合だ。」
「もう、どうなっても知りませんよ。」
佳恵さんが言う。
「大丈夫だって。
悪霊が出たら逃げたらいいんだよ。」
木原は笑いながら言った。
「もしとり憑かれたらどうするんだ?」
俺は聞いた。
「その時は霊能者のおばさんに除霊してもらおう。」
「あ、私会ってみたい。
その霊能者のおばさんに。」
美保が言う。
「関西弁のおばさんなんだよ。
もし悪霊にとり憑かれても、きっと除霊してくれるよ。」
木原が言う。
「じゃあ安心だね。」
美保は納得したように頷いた。
俺はやれやれと思いながら、弁当の梅干しを口の中に入れた。
酸っぱい味が広がる。
「本当にどうなっても知りませんよ。」
佳恵さんが、心配そうな顔で俺達を見ていた。

                                 第十七話 つづく
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