幽霊ハイスクール 第十七話 悪霊が出た(2)

  • 2010.11.17 Wednesday
  • 09:04
 木原が悪霊を見に行こうと誘ってきた。
俺が断ると、木原は一人で行くと言った。
その話を聞いた美保は、私も木原と一緒に行くと言い出した。
俺は悪霊なんて見に行きたくなかった。
しかし木原と美保が一緒に来いと言うので、仕方なく俺も行くことになった。
「私は反対ですけどね。」
佳恵さんは言う。
「悪霊なんてちょっかいを出さない方がいいんです。
悪霊っていうのは、本当にたちが悪いんですから。」
「そうだよな。
俺も悪霊のいる所なんかに行きたくないよ。」
俺は家を出て、自転車をこいで目的地の廃墟の病院を目指していた。
俺が今から行く廃墟の病院が、悪霊が出る心霊スポットらしい。
場所は学校から東に、自転車で二十分ほど行った場所にある。
集合時間は午後九時。
俺は寒い十二月の夜道を、自転車で駆け抜けていた。
家を出てから学校を過ぎ、それから東に二十分ほど自転車をこいだら、目的地の廃墟の病院に着いた。
木原と美保が、廃墟の病院の正面にいた。
「こんばんわ、健太郎に佳恵さん。」
美保が挨拶してくる。
「よう、美保。」
「こんばんわ、美保さん。」
俺は自転車から降り、廃墟の病院を見上げた。
病院は三階建てになっている。
今夜は月明かりが出ている。
月明かりに照らされた夜の病院は、とても不気味に感じられた。
「懐中電灯を持って来たぜ。」
木原が懐中電灯を点ける。
「なんか怖いね。」
美保が言った。
「ならやめた方がいんじゃないか。」
俺は言った。
「ここまで来て何言ってんだよ。
ほら、早く病院の中に入るぞ。」
木原が病院の正面の入口へと進んで行く。
「お前達も早く来いよ。」
木原が手招きをする。
俺と美保、そして佳恵さんは病院の正面の入口まで来た。
「よし、じゃあ行くぜ。」
木原が緊張した顔で言う。
俺達は廃墟の病院の中に入った。
中は真っ暗だ。
木原が懐中電灯で辺りを照らす。
「どうやらここは待ち合い室だったみたいだな。」
木原が辺りを照らしながら言う。
確かに待ち合い室だったようだ。
いくつも長い椅子が置かれている。
「先に進むぞ。」
木原が言った。
木原は懐中電灯で辺りを照らしながら進んで行く。
処置室や、レントゲン室と書かれた部屋があった。
「ちょっと中を覗いてみるか。」
そう言って木原は、処置室と書かれた部屋のドアを開けた。
中を懐中電灯で照らす。
中にはほとんど何もなかった。
椅子が二つに、テーブルが一つあるだけだった。
「佳恵さん、ここに悪霊はいる?」
美保が聞いた。
「いいえ、ここにはいません。」
「じゃあ先へ進もう。
二階に上がってみるか。」
木原が言った。
俺達は階段を上がり、二階へとやって来た。
「どうやら二階は病棟のようだな。」
木原が懐中電灯で辺りを照らしながら言った。
少し先に進むと、ナースステーションだったと思われる部屋があった。
この部屋もほとんど何もなかった。
「じゃあ病室を覗いてみるか。」
木原はそう言いながら、病室の一つを開けた。
中には何もなかった。
「ああ、私怖くなってきた。」
美保が言う。
「佳恵さん、もし悪霊がいたら教えてね。」
美保が怖がりながら言った。
「分かりました。」
それからも俺達は、二階の病室を順番に見ていった。
しかし何も無く、佳恵さんも悪霊がいるとは言わなかった。
「二階は何もないな。
三階へ行ってみるか。」
木原がそう言い、俺達は三階へやって来た。
「三階も病棟だな。」
俺は言った。
「この階からは、邪悪な気を感じます。」
佳恵さんが言う。
「じゃあこの階に悪霊がいるってことだな。」
木原が緊張した顔で言った。
「じゃあ順番に病室を開けていくぞ。」
木原はそう言いながら、一番近くにあった病室を開けた。
何も無い。
次の病室に行く。
ここも何も無い。
そうやって次々に病室を開けていった。
特に何も無く、最後の病室にやって来た。
「ここから邪悪な気を感じます。」
佳恵さんが言った。
「じゃあこの病室に悪霊がいるってことだな。」
木原がそう言い、病室を開けようとした。
「ちょっと待ってよ。」
美保が言った。
「どうした?」
俺が聞く。
「なんだから怖くなってきちゃった。」
「何だよ、怖気づいたのか。」
木原が笑いながら言った。
「だって、怖いものは怖いんだもん。」
ならどうしてここに来たのだと言いたい。
「木原君、その病室を開けるのは待って下さい。」
佳恵さんが言った。
「どうしたの?
佳恵さんまで怖くなってきたの?」
木原が言う。
「違います。」
「ならどうしたのさ?」
「この病室には、多分悪霊がいます。
だからこの病室を開けるのはやめておきませんか。」
「ここまで来て何を言ってるんだよ。」
木原が言う。
「もうこの病院に悪霊がいることは分かりました。
それでいいじゃないですか。
悪霊っていうのは、本当にたちが悪いんです。
もしとり憑かれたら、大変なことになりますよ。
だからここで引き返しましょう。」
俺も佳恵さんの意見に賛成だった。
「なあ、木原。
佳恵さんの言う通りだよ。
もういいだろう。
これ以上はやめておこう。」
「健太郎まで何を言ってるんだよ。」
すると美保が言った。
「私、悪霊にとり憑かれたくない。」
「野村までそんなことを言うのか。
じゃあいいよ。
お前達は帰れよ。
俺一人でこの病室を開けるからさ。」
木原が怒ったように言う。
「もうやめておきましょう、木原君。」
佳恵さんが言う。
「私は皆さんのことを心配して言っているんです。
だからもうやめておきましょう、ね。」
「佳恵さん・・・。」
そう言われて、木原は病室から離れた。
「佳恵さんがそこまで言うんなら、やめておくよ。」
木原は言った。
「それがいいです。
さあ、皆さん。
もう帰りましょう。」
佳恵さんがそう言った時だった。
病室の中からガタンと物音がした。
「何だ・・・?」
木原が病室のドアを見る。
木原の点けている懐中電灯がいきなり消えた。
そして次の瞬間、誰も触っていないのに、病室のドアが勝手に開いた。
「うわ、どうなってるんだ!」
驚く木原。
俺達は病室の中を見た。
窓から月明かりが射し込んでいる。
青白く照らされた部屋の中には、誰もいなかった。
「佳恵さん!
この部屋に悪霊はいるの?」
美保が聞いた。
「皆さん、逃げて下さい!
悪霊が出て来ました!」
佳恵さんが言った。
俺達はしばらく固まっていた。
そして見た。
月明かりで照らされた、さっきまで誰もいなかった部屋に、女性の姿が浮かび上がるのを。
「きゃあ!」
「うわあ!」
俺達は驚いた。
病室に現れた女性を見て、俺は怖いと思った。
その女性はまるで憎悪の化身のような顔をしていた。
以前木原にとり憑いた犬の霊より、邪悪な気を感じた。
「逃げよう!」
俺は言った。
その言葉を合図に、みんな病室の前から逃げ出した。
俺は走りながら後ろを振り返った。
するとその女性の霊が追って来ていた。
「早く逃げろ!」
俺は言った。
しかし階段の所で、美保が転んでしまった。
「痛い!」
転んだ美保が言う。
すると美保の後ろに、悪霊が迫って来た。
「美保さん、危ない!」
佳恵さんが咄嗟に美保の前に立ちはだかる。
悪霊は、佳恵さんに掴みかかってきた。
「美保さん、早く逃げて!」
佳恵さんが言う。
俺は転んだ美保を起こした。
「美保。
木原と一緒に先に逃げろ!」
「健太郎はどうするの!」
「いいから早く逃げろ!
木原!
美保を連れて行け!」
俺は木原に美保を預けた。
「逃げるぞ、野村!」
「でも健太郎が!」
「いいから早く逃げろ!」
俺は言った。
木原が美保を連れて逃げて行った。
悪霊は佳恵さんに掴みかかっている。
その顔は憎悪に満ちていた。
「死ね・・・・、みんな死ね・・・。」
悪霊が言う。
「健太郎君も早く逃げて!」
佳恵さんが叫ぶように言った。
「佳恵さんを置いて逃げられないよ!」
俺は佳恵さんの体を掴み、悪霊から引き離そうとした。
しかし悪霊の力はすごかった。
ぜんぜん佳恵さんを離そうとしない。
「健太郎君!
私のことはいいから早く逃げて!」
「嫌だよ!
佳恵さんを置いて行けないよ!」
俺は役に立つかもしれないと思って、紙に包んで塩をポケットの中に入れていた。
俺は塩を取り出し、それを掴んで悪霊に投げつけた。
一瞬だけ悪霊が怯んだ。
その隙に、俺は力いっぱい佳恵さんを引っぱった。
すると、なんとか佳恵さんの体は悪霊の手から離れた。
「早く逃げよう!」
俺は佳恵さんの手を掴んで走った。
後ろを振り向くと、悪霊が追って来ている。
俺は佳恵さんの手を掴んだまま、全力で出口を目指して走った。
そして病院の出口が見えた。
悪霊はすぐそこまで迫って来ている。
俺は佳恵さんとともに、病院の出口を走り出た。
振り返ってみると、もう悪霊は追って来なかった。
どうやら病院からは出られないらしい。
悪霊は病院の出口から、恨めしそうな目で俺達を見ていた。
「早くこの場所から離れよう。」
俺達は自転車に乗り、病院をあとにした。
「怖かったよお。」
美保が泣き声で言う。
「皆さん怪我はしていませんか?」
佳恵さんが聞く。
みんな大丈夫だと言った。
「ごめん、俺のせいで・・・。」
木原が言った。
「もう悪霊なんて見たくないな。」
俺が言うと、木原も美保も頷いた。
「皆さんが無事で本当によかった。」
佳恵さんが言った。
「佳恵さんは大丈夫?」
俺は聞いた。
「はい。
健太郎君が助けてくれたおかげで。」
佳恵さんは微笑んで言った。
「皆さん、あれが悪霊です。
もう悪霊なんかに関わるのはやめましょうね。」
木原と美保は頷いた。
心霊スポットに、確かに悪霊はいた。
それは思った以上に恐ろしいものだった。
俺はもう二度と悪霊なんて見たくないと思った。

                                 第十七話 完



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