幽霊ハイスクール 第十九話 幽霊の恩返し

  • 2010.11.19 Friday
  • 09:28
 佳恵さんと買い物に行った翌日の月曜日、俺は学校に向かっていた。
「よう、健太郎。」
学校に向かう途中にある上り坂で、いつものように木原が声をかけてくる。
「よう、木原。」
「佳恵さん、おはよう。
今日も綺麗だね。」
木原が言う。
「おはようございます、木原君。」
佳恵さんが笑顔で挨拶を返す。
「やっぱり朝は佳恵さんの笑顔を見ないと始まらないよ。」
木原も笑顔で言う。
「お前はいつも佳恵さんを褒めているな。」
俺は言った。
「褒めてなんかいないさ。
事実を言っているだけだよ。
佳恵さんは綺麗だから、綺麗だと言ったんだ。」
「私なんかが綺麗でしょうか。」
「もちろん。
佳恵さんはとっても綺麗だよ。
俺が生きてきた中で見た一番の美人だよ。」
「お前は恥ずかしいことをあっさりと言うやつだな。」
俺は言った。
「そうか?
俺は心に思ったことを素直に言葉にしているだけだよ。」
それからも学校に着くまで、木原は佳恵さんを褒め続けていた。
佳恵さんは笑顔で木原の褒め言葉を受け流していた。
そして学校に着き、教室に入った。
自分の席に座ると、木原がやって来た。
「佳恵さんは本当に美人だよね。」
「まだ褒めるのかよ。」
「いいじゃないか。
俺は思ったことを素直に言っているだけなんだから。」
すると美保がやって来た。
「みんなおはよう。」
「おはよう、美保。」
「おはようございます、美保さん。」
「よう、野村。」
「聞いてくれよ、美保。
木原が佳恵さんを褒めまくっているんだ。」
すると美保は笑って言った。
「そんなのいつものことじゃない。」
「でも今日は、いつもより多めに褒めている気がするんだ。」
「木原って恥ずかしいセリフを平気で言うよね。」
美保が言う。
「だから、俺は自分の思ったことを素直に言っているだけなんだって。」
「普通は自分の思ったことを何でも口に出したりしないけどな。」
俺は言った。
「俺は純粋なのさ。」
木原は言う。
それを聞くと、また美保は笑った。
「純粋っていうか、単純っていうか、ちょっと人と感覚は違うわよね。」
「それって褒めてるのか?」
木原が聞く。
「どっちでもないわよ。」
美保は言った。
「あの、木原君。」
佳恵さんが言った。
「なんだい?」
「さっきから言おうと思ってたんですが・・・。」
「なになに?」
木原が佳恵さんを見て聞く。
「あのですね、木原君。
また背後霊が憑いています。」
「ええー!」
木原は驚いた。
「また俺に霊が憑いてるの?」
こいつは本当によく霊にとり憑かれるやつだなと思った。
「ねえ、悪い霊じゃないよね?」
木原が心配そうに聞く。
「はい。
悪い霊ではありません。
何か木原君に伝えたいことがあるみたいです。」
木原は自分の後ろを見た。
「ねえ、俺の背後霊に、姿を見せるように言ってよ。」
「分かりました。
あ、私が言うまでもなく、背後霊が姿を現します。」
すると、木原の後ろに女性の幽霊が現れた。
髪はショートカットで、赤いTシャツにジーパン姿だ。
歳は佳恵さんと同年代くらい。
中々の美人だった。
木原は背後霊を見て言った。
「なんで俺にとり憑いているの?」
すると背後霊は言った。
「私、原口正美といいます。
あなたは木原君というんですね。」
「そうだよ。
木原良人っていうんだ。
何で俺にとり憑いているのさ?」
すると、原口正美と名乗った幽霊は言った。
「実は私、木原君に助けられたんです。
それで木原君に感謝の気持ちを伝えたくて、木原君にとり憑いているんです。」
「俺に助けられた?
どういうこと?」
木原が聞く。
「覚えていませんか?」
「何のことかさっぱり。」
「昨日のことですよ。」
「昨日のこと?」
木原は考え込んでいる。
「木原、何か思い当たることはないのか?」
俺は聞いた。
「ちょっと待ってよ。
今思い出しているところだから。」
木原は「うーん。」と唸りながら昨日のことを思い出しているようだ。
そしてしばらく考え込むと、「あ!」と言った。
「そういえば昨日、いつもと違う道を通って帰ったんだ。」
「それで?」
美保が聞く。
「それでさ、その帰り道の途中で林の中を通ったんだよ。
そしたらさ、その林の中に、大きな石がいくつも積み上げられている場所があったんだ。
俺は何だろうって思って、その場所に近づいてみたんだ。」
「うんうん。」
美保が頷きながら聞いている。
「そしたらさ、たくさん積み上げられている石の中に、一つ、お札が貼ってある石があったんだ。」
「お札?」
俺は聞いた。
「うん。
赤いお札で、何か文字が書かれていたんだ。
俺は何だろうと思ってそのお札をはがしたんだよ。」
「あんたよくそんなことが出来るわね。」
美保が呆れたように言った。
「どういう意味さ?」
「石にお札なんて貼ってあったら、普通は気味が悪くて誰もはがさないわよ。」
「そうか。
俺は何とも思わなかったぞ。」
美保の言う通り、木原の感覚は俺達とは少し違うようだ。
「それで、はがしたお札はどうしたの?」
美保が聞く。
「やぶって捨てた。」
「信じられない。
私なら怖くて出来ないわ。」
美保がまた呆れたように言った。
すると木原の背後霊の原口さんが言った。
「でもそのおかげで、私は助かったんです。」
「どういうこと?」
木原が聞く。
「実は私、そのお札が貼ってある石に閉じ込められていたんです。」
「そうなの?」
俺は聞いた。
「はい。
半年前に、意地の悪い霊能者にその石に閉じ込められて、出て来れないようにお札で封印されていたんです。
でも木原君がお札をはがしてくれたおかげで、私は出て来ることが出来ました。
木原君、本当にありがとう。」
原口さんは、木原に頭を下げた。
「いやあ、べつに感謝されるようなことじゃないよ。」
木原は照れていた。
「木原君のおかげで私は助かったんです。
それで私、木原君に何かお礼がしたいんです。」
原口さんは真剣な顔で言った。
「べつにいいよ、お礼なんて。」
木原が言う。
「いえ、何かお礼をしたいんです。」
「お礼って言われてもなあ。」
木原は言った。
「私、こう見えても超能力が使えるんですよ。」
原口さんは言った。
「超能力?
そんな馬鹿な。」
そう言って木原は笑った。
「あ、信じてないですね。
分かりました。
私が本当に超能力が使えるっていうところをお見せしましょう。」
すると原口さんは木原に向かって両手を伸ばした。
「うわ!
何だ!」
信じられないことに、木原の体が少し宙に浮いた。
原口さんは、今度は俺のかばんに両手を伸ばした。
すると俺のかばんも宙に浮いた。
「すごい!」
美保が驚いて言う。
原口さんは、両手を伸ばすのをやめた。
すると宙に浮いていた木原の体と俺のかばんは元に戻った。
「信じられない・・・。」
俺は言った。
「ね、これで私が超能力が使えるっていうことが分かったでしょう。」
「私、超能力なんて初めて見ました。」
佳恵さんも驚いて言った。
そこで朝のホームルームのチャイムが鳴った。
「とりあえず、続きは後で。」
木原はそう言うと、自分の席に行った。
美保も自分の席に行った。
そしてホームルームが終わり、一時間目の授業が始まった。
「すごいね。
原口さんて超能力者だったんだ。」
俺は小声で佳恵さんに話しかけた。
「ええ、私も驚きました。
まさか超能力が実在するんなんて。」
「でもさ、こうやって幽霊も実在するんだよ。
超能力があってもおかしくないのかもしれないね。」
「それはそうですね。
普通の人は、幽霊が実在することすら知らないわけですし。」
「世の中不思議なことだらけだ。」
「ええ、本当に。」
そして一時間目の授業が終わった。
俺と美保は木原の席に行った。
「木原君、何か私に望むことはありますか?」
原口さんが聞いた。
「望むことって言われてもなあ。
特に無いなあ。」
すると原口さんは悲しそうな顔をした。
「じゃあ私は木原君に何もお礼をすることが出来ませんか?」
「いや、そういうわけじゃないけど・・・。」
木原の気持ちは分かる。
いきなりお礼をしたいなんて言われても、確かに困ってしまう。
「私、何か木原君の役にたてるようなことがしたいんです。
そうじゃないと、成仏出来ません。」
「そう言われても・・・。」
木原は困っているようだった。
それから二時間目の授業が始まった。
そしてどんどん授業は終わっていき、昼休みになった。
木原と美保が、弁当を持って俺の席にやって来る。
木原は弁当を広げた。
すると原口さんが言った。
「私が食べさせてあげますよ。」
原口さんは超能力を使い、木原の弁当の卵焼きを木原の口へと運んでいく。
「木原君、あーんして下さい。」
木原は言われるままにした。
木原の口に卵焼きが入る。
「美味しいですか?」
原口さんが聞く。
「うん、まあ美味しいかな。」
「じゃあ次です。」
今度はウインナーを木原の口に運んでいく。
木原は口をあけ、その中にウインナーが入った。
木原は口をもぐもぐさせながら言った。
「あのさ、気持ちはありがたいんだけど、弁当は自分で食べるから。」
それを聞いた原口さんは悲しい顔になった。
「私・・・、役にたてないんですね・・・。」
「いや、そんなに悲しい顔しないでよ。」
木原が慌てて言う。
「じゃあ私がお弁当を食べさせてあげます。
はい、あーんして。」
木原の口にまたおかずが運ばれていく。
木原は苦笑いしていた。
幽霊に弁当を食べさせられる木原。
俺はその光景を見て、木原も妙な幽霊にとり憑かれたものだと思った。

                                  第十九話 つづく
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