幽霊ハイスクール 第十九話 幽霊の恩返し(2)

  • 2010.11.20 Saturday
  • 09:08
 木原が石に閉じ込められていた幽霊を助けた。
その幽霊は原口正美さんという名前で、なんと超能力が使えるのだ。
原口さんは、助けてくれた木原にお礼がしたいと言った。
何か木原の役にたつことがしたいと。
しかし木原は困っていた。
特にお礼なんて望んでいなかったからだ。
それでも原口さんは木原の役にたちたいと言った。
そして今、木原は原口さんに弁当を食べさせられている。
「はい、木原君。
あーんして。」
原口さんが超能力を使い、木原の口にご飯を運んでいく。
木原は困った様子で弁当を食べていた。
「私、木原君の役にたってますか?」
原口さんが聞く。
「うん、まあ、何とも言えないな。」
木原が言う。
すると原口さんは悲しい顔になった。
「私、木原君の役にたててないんですね。」
「いや、だからそんな悲しい顔しないでよ。」
木原が慌てて言う。
「私、木原君の役にたちたいんです。」
「うん、それはもう分かったから。」
木原は自分で弁当を食べ始めた。
「ああ、私、どうすれば木原君の役にたてるのかしら。」
原口さんは悩んだ顔を見せる。
「べつに俺の役にたたなくてもいいよ。」
「いえ、それではいけません。
ちゃんと助けてもらったお礼はしないと。」
木原は弁当をかきこみ、お茶を飲んで言った。
「原口さんて真面目だよね。」
「そうですか。」
「うん、そうだよ。
俺が原口さんを助けたのはたまたまなんだから。
助けようと思って助けたわけじゃないんだからさ。」
確かにその通りだ。
木原はただ石に貼ってあるお札をはがしただけだ。
その結果、石に閉じ込められていた原口さんが出て来れたのだ。
「でも、助けてもらったことにかわりはありません。」
「それはそうだけど・・・。」
「私、木原君にちゃんとお礼ができるまで、成仏できません。」
「そんなこと言われてもなあ。」
木原は食べ終えた弁当をかたづけ始めた。
「原口さんて、子供の頃から超能力を使えたの?」
弁当を食べ終えた美保が聞く。
「いえ、超能力を使えるようになったのは高校三年生の時です。」
「何かきっかけのようなものがあったんですか?」
佳恵さんが聞く。
「はい。
私が高校三年生の頃、家の階段を下りていたらこけそうになったんです。
私は危ないって思いました。」
「それで?」
木原が聞く。
「そしたら、私の体が宙に浮いたんです。
おかげで私は、階段を転げ落ちずにすみました。
それからです。
私が超能力を使えるようになったのは。」
「便利そうだよね、超能力。」
美保が言う。
「とっても便利ですよ。
手の届かない所の物だって動かせるし、荷物を手で持たなくてもいいし。」
「いいですね、超能力。
私もほしいです。」
佳恵さんが言う。
「でもあんまり超能力を使い過ぎると、次の日にすごく疲れるんです。
だから加減して使っていました。」
「でも幽霊になったらそんなの関係ないんじゃない?」
美保が言う。
「いえ、幽霊になっても同じですよ。
超能力を使い過ぎると、やっぱり次の日は疲れるんです。」
「幽霊でも疲れるんだな。」
俺は言った。
「そうですよ。
幽霊にも人間と同じ体力のようなものがあるんです。
幽霊の場合は霊力ですね。
霊力を消耗すると、疲れるんです。」
佳恵さんが言った。
「へえ、そうなんだ。」
俺は言った。
「その通りです。
だから超能力は乱用出来ないんです。
でも私、木原君の為なら力を惜しみません。
私に出来ることがあったら、何でも言って下さい。」
「今のところは特に無いなあ。」
すると原口さんは、また悲しい顔になった。
「だからさ、すぐに悲しい顔をするのをやめてよ。」
木原が言う。
「すみません。
私、落ち込みやすいもので。」
原口さんが悲しい顔のまま言う。
そこで昼休みが終わった。
木原と美保が、自分の席に戻って行く。
五時間目の授業が始まった。
俺は木原を見ていた。
すると、木原が触ってもいないのに、教科書のページがめくられていく。
きっと原口さんがやっているのだ。
他にも消しゴムが宙を浮いて木原の手に運ばれてきたり、触ってもいないノートがめくられたり。
原口さんは、何とか木原の役にたとうとしているみたいだ。
「なんか努力を惜しまないね、原口さん。」
俺は小声で佳恵さんに話しかけた。
「そうですね。
よっぽど木原君の役にたちたいんでしょうね。」
「なんか涙ぐましいな。」
「ええ、木原君は困っていますけど。」
そして五時間目の授業が終わった。
俺と美保は木原の席に行った。
「あのさ、教科書とかノートは自分でめくるから。」
木原が原口さんに向かって言う。
「ごめんなさい。
私、木原君の役にたちたくて。」
「その気持ちはありがたいけど、授業中はおとなしくしててくれないかな。」
原口さんはまた悲しい顔になった。
「ごめんなさい・・・。
私、役にたてなくて・・・。」
「いや、だからそんな悲しい顔をしないでよ。」
すると美保が言った。
「いいじゃない。
原口さんは木原の役にたとうとしてるんだから。
その気持ちはありがたく受け取りなさいよ。」
「そう言うけどな、その気持ちが逆に迷惑になることだってあるんだ。」
その言葉を聞いた原口さんは、今までで一番悲しい顔になった。
「私・・・、迷惑ですか・・・。」
「いや、今のはその、あれだ、言葉のあやっていうか。」
「私・・・、迷惑なんですね・・・。」
「だから違うって!
もう、そんなに悲しい顔をしないでくれよ。」
「だって・・・、木原君が迷惑だって言うから・・・。」
木原は完全に困っていた。
「お願いだからその悲しい顔をやめてよ。」
「ごめんなさい。
私、ダメな女ですね・・・。」
「いや、そんなことないから。」
俺は木原と原口さんのやり取りが面白くて、笑ってしまった。
「健太郎、何を笑ってるんだよ。」
「いや、ごめん。
なんか面白くて。」
すると木原はぷりぷり怒った。
「ちっとも面白くないよ。」
「ごめんなさい、木原君。
私、授業中はおとなしくしています。」
原口さんが言った。
「うん、そうしてて。」
木原が言う。
「なんか木原って冷たいやつね。」
美保が言った。
「だって・・・。」
何か言おうとして、木原はやめた。
これ以上何か言ったら、原口さんが余計に悲しい顔になるだけだと思ったのだろう。
そして六時間目の授業が始まった。
木原は自分で教科書のページをめくっている。
原口さんはおとなしくしていた。
「なんか可哀想だね、原口さん。」
俺は佳恵さんに言った。
「そうですね。
明らかに落ち込んでいますね。」
そして六時間目の授業が終わった。
俺は帰る用意をして、木原の席へ行った。
原口さんまだ悲しい顔をしていた。
するとそこへ美保がやって来た。
「私はこれから部活に行ってくるわ。
木原、これ以上原口さんに悲しい顔をさせちゃダメよ。」
「分かってるよ。」
「じゃあみんな、また明日ね。」
美保は手を振って部活に行った。
「俺は今日は部活は休もう。」
木原が言った。
「何でだ?」
俺は聞いた。
「なんだか調子が狂っちゃった。
今日はこのまま帰る。」
「じゃあ一緒に帰るか。」
俺が言うと、木原は頷いた。
そして学校を出た。
「原口さん、もう悲しい顔はやめなよ。」
木原が言った。
「はい・・・。」
原口さんは小さく返事をした。
「原口さんはどうしても木原君の役にたちたいんですよね。」
佳恵さんが言った。
「はい。
助けてくれた木原君に、きちんとお礼がしたいんです。」
「べつにお礼なんていいのに。」
木原が言う。
「いえ、そういうわけにはいきません。」
原口さんは強い口調で言った。
「もう、好きにしなよ。
でも悲しい顔をするのだけはやめてくれよな。」
「はい、ごめんなさい・・・。」
「ほら、また悲しい顔になった。」
そうやって話しながら帰っていると、信号待ちになった。
すこし待つと、信号は青に変わった。
木原が自転車をこいで横断歩道を渡ろうとする。
すると「危ない!」と佳恵さんが叫んだ。
何だろうと思って前を見ると、信号無視した車が木原に迫っていた。
「木原、危ない!」
俺も叫んでいた。
木原に車が迫る。
もう車をかわせない。
木原がはねられる。
俺はそう思った。
その時だった。
木原の体が、自転車ごと宙に浮いた。
その下を、信号無視した車が通り過ぎていく。
信号無視した車は、信号の向こうにある建物に突っ込んだ
物凄い音がした。
辺りが騒然となる。
木原は宙に浮いたまま俺達の方にやって来た。
俺は原口さんを見た。
原口さんは、木原に向かって両手を伸ばしていた。
そして木原がゆっくりと地面に下りて来る。
「びっくりした!
何だったんだ、今のは。」
木原が驚いたように言う。
「木原君、怪我はないですか?」
原口さんが聞いた。
「ああ、どこも怪我してないよ。
ていうかもしかして、原口さんが超能力を使って助けてくれたの?」
「はい。
もうダメかと思ったけど、何とか間に合いました。」
原口さんは安堵した顔で言う。
木原は自転車から降りて、原口さんに近寄った。
「ありがとう!
原口さんは命の恩人だよ!
本当にありがとう!」
その言葉を聞いた原口さんは、笑顔になって言った。
「私、木原君の役にたてましたか?」
「もちろん。
もし原口さんが助けてくれなかったら、俺は大怪我をしていたか、悪くしていたら死んでたよ。
本当にありがとう。」
「やった!
私、木原君の役にたつことが出来ました。
これでちゃんとお礼は出来ました!」
原口さんは喜んでいた。
「うん、お釣りがくるくらいお礼をしてもらったよ。
本当に助けてくれてありがとう。」
「よかった。
これで私、成仏出来ます。」
原口さんの体が光りに包まれていく。
「原口さん、ありがとう。」
「私こそ、助けてもらってありがとう。
さようなら、木原君。」
原口さんは光になり、空へと昇って行った。
「助かってよかったな。」
俺は言った。
「うん、原口さんのおかげだよ。」
木原は空に向かって、もう一度ありがとうと言った。

                                 第十九話 完
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