幽霊ハイスクール 最終話 別れの時

  • 2010.11.21 Sunday
  • 09:23
 「それでは皆さん、良いお正月を過ごして下さい。」
そう言う担任の教師の言葉で学校は終わった。
今日で二学期は終わり。
明日から冬休みだ。
俺が帰る用意を済ませて席から立ち上がると、木原がやって来た。
「俺、今日部活が休みなんだよ。
一緒に帰ろうぜ。」
木原が言う。
「ああ、いいよ。」
俺は頷いた。
教室を出ようとすると、美保がやって来た。
「私も一緒に帰る。」
美保が言う。
「美保も部活は休みか?」
俺は聞いた。
「うん。」
そういうわけで、木原と美保と一緒に帰ることになった。
この二人と一緒に帰るなんて久しぶりだった。
学校を出て帰っていると、木原が言った。
「飯でも食って帰ろうぜ。」
俺と美保は頷き、近くにあるファミレスに寄って帰ることにした。
ファミレスに入り、席に案内されて座った。
「何食べようかな。」
木原がメニューを見ながら言う。
「私カキフライ定食にしよう。」
美保が言った。
「じゃあ俺もそれにする。」
木原が言う。
「健太郎は何食べる?」
美保が聞いてくる。
「俺もカキフライ定食でいいよ。」
そして店員を呼び、注文をいれた。
「明日から冬休みだな。
お前達は何か予定があるのか?」
木原が聞いてくる。
「特に何もないな。」
俺は言った。
「私もない。」
美保も言う。
「冬休みはクリスマスに正月があるのにな。
何も予定がないなんて寂しいな。」
木原が言った。
「じゃあお前は何か予定があるのか?」
俺は聞いた。
「いや、何もないよ。」
人のことを言えないではないかと思った。
そして注文したカキフライ定食が運ばれて来た。
「いただきます。」
俺達は三人揃って言った。
「クリスマスって、嫌なイベントだよなあ。
恋人がいない人間にとっては。」
木原が言った。
「子供の頃はクリスマスっていうだけで楽しかったのにね。」
美保が言う。
すると、木原が佳恵さんに聞いた。
「佳恵さんは生きている時、恋人はいたの?」
「ええ・・・、まあ・・・。」
佳恵さんが暗い顔になった。
俺はその質問はダメだと思った。
以前に俺も同じ質問をして、佳恵さんは暗い顔になったのだ。
「佳恵さん恋人いたの?」
美保も聞く。
佳恵さんは少し黙ってから答えた。
「いました。」
「へえー、そうなんだ。
ねえねえ、どんな人だったの?」
美保が興味津々で聞く。
「俺も聞きたい。」
木原が言った。
「優しい人でした・・・。」
「年上、年下?」
美保が聞く。
「同い年でした・・・。」
佳恵さんは暗い顔で言う。
「お前ら、あんまり佳恵さんのプライベートなことを聞くなよ。」
俺は言った。
「べつにいいじゃない。
それで、彼氏とはうまくいってたの?」
美保が聞く。
「はい・・・。」
そこで木原が言った。
「どうしたの、佳恵さん?
何か元気が無いけど。」
「そんなことはないですよ・・・。」
「そんなことあるよ。
いつもの佳恵さんじゃないよ。
もしかして、私達余計なことを聞いた?」
美保が言う。
「そう言えばさ、俺達佳恵さんのことを何も知らないよな。
どうして死んだのかも知らないし。」
木原が言う。
「あんまり人の過去は詮索するものじゃないと思うぞ。」
俺は言った。
「いえ、いいんです。」
佳恵さんが言う。
「佳恵さん、答えたくないことには答えなくていんだよ。」
俺は佳恵さんを見て言った。
「でも気になるよな、佳恵さんの過去。」
木原が言う。
こいつは分からないのか。
佳恵さんが過去を詮索されることを嫌がっているのが。
俺がそう思っていると、佳恵さんが言った。
「皆さんの言う通り、皆さんは私の過去を知りません。
でも、話しておいた方がいいのかもしれません。」
「佳恵さん、無理しなくていいよ。」
俺は言った。
「いえ、いいんです。
私の過去のことをお話しします。」
すると佳恵さんは真剣な顔になって話し始めた。
「私にはお付き合いしている人がいました。
結婚も考えていました。
でも、結婚する前に、私は死んでしまったんです。
事故でした。」
「そうなんだ・・・。」
美保が俯いて言った。
「あの日、私は彼とドライブに行っていたんです。
事故に遭ったのはその帰りでした。
信号無視をした車が、私達の乗っている車に突っ込んで来たんです。
その車は、助手席に乗っていた私の方に突っ込んで来ました。
そのせいで私は死にました。」
少し沈黙が流れたあと、美保が聞いた。
「佳恵さんの彼氏はどうなったの?」
佳恵さんは宙を見ながら答えた。
「私の彼は生きていました。」
「じゃあ死んだのは佳恵さんだけっていうことだな。」
木原が言うと、佳恵さんは頷いた。
「そうです。
私だけが死んだんです。
死んだ私は幽霊になり、しばらく事故に遭った現場をさまよっていました。
私はその時思ったんです。
死んだのが彼ではなく、私でよかったって。
もし立場が逆なら、私はそうとう苦しんだでしょう。
でも、それは彼も同じだったんです。
事故の現場を幽霊になってさまよっていた私は、彼の元に行ってみようと思ったんです。」
「それで、彼氏はどうだったの?」
美保が聞く。
「私は彼も元に行ってみました。
すると、彼はものすごく苦しんでいました。
私が死に、自分だけが生き残ったことを。
私はそんな彼を見ているのがすごく辛かったんです。
そしてそんな彼を見るのに耐えられなくなった私は、彼の元を離れ、浮幽霊となってさまよっていたんです。
長い間浮幽霊としてさまよっていました。
そしたら神様から言われたんです。
一人の高校生と行動をともにするだろうって。
そして健太郎君と出会ったわけです。」
そこまで佳恵さんの話を聞いて、木原は言った。
「佳恵さんの彼氏は自分だけが生き残ったことで苦しんでいたんでしょ。
でもさ、それなら彼氏の前に姿を現して言えばよかったじゃないか。
そんなに苦しまないでって。
どうしてそうしなかったのさ。」
それは俺も疑問に思った。
すると佳恵さんは言った。
「怖かったんです。
彼の前に姿を現すのが。」
「怖かった?
どうして?」
木原が聞く。
「彼はとても苦しんでいました。
そんな彼の前に姿を現すのが、何だか怖かったんです。
それに、私が姿を見せることによって、余計に彼を苦しませるんじゃないかと思って・・・。」
「そんなことはないと思うけどなあ。」
木原は言った。
「私は何だか佳恵さんの気持ちが分かる。」
美保が言った。
「苦しんでいる彼氏の前に姿を現すのが怖かったっていう気持ち、私は分かるよ。」
その言葉に、佳恵さんは俯いた。
「私、勇気がなかったんです。
本当は言えばよかった。
彼に苦しまないでって。
でも言えなかった。
私はいくじなしです。
そのせいで、今も彼は苦しんでいるかもしれないのに。」
「それからは彼氏の元には行ってないの?」
俺は聞いた。
「はい。
彼の苦しんでいる姿を見るのが辛いですから。」
また沈黙が流れた。
そしてしばらくして、木原が言った。
「言いに行こうよ。
佳恵さんの彼氏に、もう苦しまないでって。」
すると美保が言った。
「でも佳恵さんは彼氏の前に姿を現すのが怖いって言ってるのよ。」
「でもさ、俺は言うべきだと思うな。
彼氏に、ちゃんと伝えるべきだと思う。」
木原が言う。
「でも、もう長いこと彼の元に行っていませんから。
今さら言いに行ったって・・・。」
俺は迷っていた。
佳恵さんに何て言おうか。
俺もどちらかといえば木原の意見に賛成だった。
でも佳恵さんは彼氏の前に姿を現すのが怖いという。
美保は佳恵さんの気持ちが分かるという。
俺は佳恵さんに何て言えばいいのだろう。
でも、一つだけ確かだと思うことがある。
俺はそれを佳恵さんに言った。
「佳恵さん。」
俺は真剣な顔で言った。
「何でしょうか?」
「佳恵さんが成仏出来ないのって、彼氏のことが心残りだからじゃないかな。
本当は佳恵さんは、彼氏に言いたいんでしょ。
もう苦しまないでって。」
佳恵さんはしばらく黙ったあと、「はい。」と小さな声で答えた。
「なら言おうよ。
彼氏にさ。」
木原が言う。
「でも、今さら・・・。」
「こういうことに今さらなんてないよ。」
俺は言った。
「健太郎君・・・。」
「俺達が一緒に行ってあげるよ。
だから彼氏に言おうよ。
もう苦しまないでって。」
俺は、迷った挙句にそう言った。
佳恵さんは目を閉じて黙っていた。
頼んだカキフライ定食は、もう冷めていた。

                                 最終話 つづく

コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM