幽霊ハイスクール 最終話 別れの時(3)

  • 2010.11.23 Tuesday
  • 09:26
 俺達は佳恵さんの彼氏の家にやって来た。
佳恵さんは、俺と木原、そして美保が一緒に来てくれるなら、彼氏に姿を見せて、もう苦しまないでと言うことが出来ると言った。
俺と木原、そして美保は佳恵さんと一緒に彼氏の家に行くことにした。
電車に乗って一時間ほど離れた街に佳恵さんの彼氏の家はあった。
佳恵さんの彼氏の名前は伊藤隆行という。
優しくて、カッコイイ人らしい。
俺は佳恵さんの彼氏の家のインターフォンを押そうとした。
しかし佳恵さんは少し待ってほしいと言った。
心の準備をしたいと。
そして心の準備ができた佳恵さんは、インターフォンを押してと言った。
俺は緊張で震える指で、佳恵さんの彼氏の家のインターフォンを押した。
「はい、どちら様ですか。」
インターフォンから男性の声がした
「あの、私、坂入健太郎といいます。
伊藤隆行さんはいらっしゃいますか?」
「私ですけど。」
インターフォンの向こうからそう聞こえた。
「私、伊藤さんの彼女の友達なんです。
伊藤さんに用があってやって来ました。」
「俺の彼女の友達?」
「はい、西野佳恵さんの友達です。」
「佳恵・・・。」
しばらく沈黙があった。
「分かりました。
ちょっと待っていて下さい。」
伊藤さんはそう言った。
「佳恵さん、ついに彼氏と対面だね。」
木原が言った。
「はい・・・。」
佳恵さんはとても緊張していた。
そして少しすると、家のドアが開いた。
背の高い、若い男性が出て来た。
中々カッコイイ人だった。
「隆行君・・・。」
佳恵さんが言った。
伊藤さんは門を開け、俺達の前まで来ると言った。
「君達が佳恵の友達?」
「はい。」
俺は返事をした。
「俺に用って何?」
伊藤さんが言う。
「実は佳恵さんを連れて来たんです。」
「佳恵を連れて来た?」
「はい。」
「何を言ってるんだ。
佳恵は一年半前に亡くなったんだ。
いたずらなら帰ってくれ。」
伊藤さんは怒るように言った。
俺は後ろを振り向き、佳恵さんを見た。
佳恵さんはじっと伊藤さんを見ていた。
「ほら、佳恵さん。
伊藤さんの前に姿を現しなよ。」
俺は言った。
「だからいたずらなら帰ってくれ。」
伊藤さんが怒った。
「ちょっと待っていて下さい。
俺達は本当に佳恵さんを連れて来たんです。
ほら、佳恵さん。
姿を現しなよ。」
佳恵さんは緊張した顔で頷き、伊藤さんの前に行った。
「伊藤さん、びっくりするかもしれません。
すぐに伊藤さんの前に佳恵さんが姿を現します。」
俺は言った。
「何を言ってるんだ、君達は。
佳恵は一年半前に・・・。」
そう言いかけた伊藤さんの顔色が変わった。
大きく目を見開いている。
「嘘だろ・・・。」
伊藤さんは言った。
「こんなことって・・・。」
伊藤さんはかなり動揺していた。
佳恵さんが伊藤さんに姿を見せたのだ。
「久しぶり、隆行君。」
佳恵さんは言った。
「一体どうなっているんだ・・・。」
動揺する伊藤さんに、俺は言った。
「佳恵さんは、今は幽霊なんです。」
「幽霊?」
「はい。
信じられないかもしれませんが、本当です。」
伊藤さんは何度もまばたきをした。
「本当に佳恵か?」
「うん。
幽霊になっちゃったけど、佳恵だよ。」
「信じられない・・・。」
伊藤さんはじっと佳恵さんを見ている。
俺達は、二人のやり取りを見守ることにした。
「佳恵。
本当に佳恵なんだな?」
「うん、佳恵だよ。」
伊藤さんの目に涙がたまっていった。
「佳恵・・・。
ずっとお前のことを考えていた。
お前が亡くなってからずっと・・・。」
「隆行君。
私も隆行君のことを忘れたことはなかった。」
「佳恵!」
伊藤さんが佳恵さんを抱きしめようとした。
しかし伊藤さんの腕は、佳恵さんの体をすり抜けてしまった。
「ごめんね、隆行君。
私、幽霊だから触れないの。」
「そんな・・・。」
俺は思った。
伊藤さんも、俺と同じように佳恵さんに触れればいいいのにと。
そうすれば、二人は抱きしめ合えるのに。
「隆行君。
私、隆行君に言いたいことがあって来たの。」
「俺に言いたいこと?」
「うん。
隆行君、私達が事故に遭って、自分だけが生き残ったことにとても苦しんでいたよね。」
「そうだよ。
俺だけが生き残って、佳恵が死んだんだ。
とても苦しんだよ。
いや、今も苦しんでる。」
「私が隆行君に言いに来たのはそのことなの。
お願い、もう苦しむのはやめて。」
「佳恵・・・。」
「私、死んでから少しして、隆行君の所に行ったの。
その時、隆行君はとても苦しんでいた。
私はそんな隆行君を見ているのがとても辛かった。」
「そりゃあ苦しむさ。
自分の大切な人を失ったんだから。」
「そうだよね。
もし立場が逆だったら、私も苦しんでいると思う。
でもね、これ以上隆行君が苦しむのは嫌なの。
私のことでまだ苦しむのなら、いっそ私のことは忘れて。」
「そんなこと出来るわけないだろう。
俺は佳恵を忘れられないよ。」
その言葉を聞いて、佳恵さんは俯いた。
「隆行君・・・。」
「佳恵、幽霊でもいい。
俺の傍にいてくれないか。」
「それは・・・、出来ない。」
「どうしてさ!」
「幽霊になった私と一緒にいても、隆行君は幸せになれないから。」
「佳恵、俺は・・・。」
「分かる。
分かるよ、隆行君の気持ち。
でも、隆行君と一緒にいることは出来ない。
もしこのまま幽霊になった私と一緒にいたら、隆行君はずっと私に縛られることになる。」
「それでもいいよ!」
「よくないわ!」
「佳恵・・・。」
「私は隆行君のことが好き。
大好きよ。
だからこそ、隆行君には幸せになってほしいの。
もう私のことで苦しまないで。」
しばらく沈黙が流れた。
「佳恵、俺はお前のことは忘れられないよ。
幽霊でもいい。
傍にいてくれないか。」
佳恵さんは顔を上げて伊藤さんを見た。
「隆行君。
それは出来ないの。
お願い。
私の気持ちを分かって。」
「佳恵。
俺はお前と・・・。」
「お願い!
隆行君とは一緒にいられないの。
私も出来ることなら隆行君と一緒にいたい。
でもそれはダメなの。
幽霊になった私とずっと一緒にいたら、お互いが辛い思いをするだけなの。
もう私のことで苦しむのはやめて。
さっきも言ったけど、隆行君には幸せになってほしいの。
それが私の願いなの。
新しい恋人を見つけて、幸せになって。」
「佳恵、俺は新しい恋人を見つけることなんて出来ないよ。
俺は今でもお前のことが好きなんだ。」
「隆行君・・・。」
「佳恵。
俺の傍にいてくれ。」
佳恵さんは泣いていた。
その涙は、地面に落ちる前に消えてなくなってしまった。
「隆行君。
もう私は隆行君とは一緒にいられないの。
お願いだから、私の気持ちを分かって・・・。」
「佳恵・・・。」
泣いている佳恵さんを見て、俺の心が痛んだ。
佳恵さんは、伊藤さんの傍にいたいのだ。
でもそれはお互いの為にならないと分かっている。
だから伊藤さんに泣きながら言っているのだ。
私の気持ちを分かってと。
「隆行君。
私、今日は隆行君に会えてよかった。」
「佳恵、これからも会えるんだろ?」
「いいえ、もう会うのはこれで最後。
私は隆行君とはもう会わない。」
「どうして!」
「何度も言うけど、隆行君には幸せになってほしいの。
私は死んだ人間よ。
そんな私と一緒にいても、隆行君は幸せになれない。
だからこれが最後。
隆行君、もう私のことで苦しまないで。」
「佳恵・・・。」
「さようなら、隆行君。」
佳恵さんがそう言うと、伊藤さんが辺りを見回した。
「佳恵!
どこに行ったんだ!
姿を見せてくれ!」
佳恵さんは伊藤さんの前から姿を消したのだ。
「佳恵!
俺はお前のことは忘れないからな!
絶対に、忘れないからな!
俺が愛しているのは、お前だけなんだからな!」
佳恵さんは泣き続けていた。
「もう行きましょう、健太郎君。」
佳恵さんが言った。
「それじゃあ。」
俺は伊藤さんに言った。
「佳恵!
俺が好きなのはお前だけだからな!
絶対に忘れないからな!」
俺達は伊藤さんの家をあとにした。
「佳恵さん、大丈夫?」
美保が心配そうに聞く。
「はい・・・、大丈夫です・・・。」
佳恵さんは泣きながら言った。
「これで、よかったんだよな?」
木原が言った。
誰もその問いには答えられなかった。
俺は泣き続ける佳恵さんの背中を、優しく撫でた。
「隆行君・・・。」
俺達は、泣いている佳恵さんをただ見守っていた。

                                  最終話 さらにつづく
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