幽霊ハイスクール 最終話 別れの時(4)

  • 2010.11.24 Wednesday
  • 09:06
 佳恵さんの彼氏に会ってから、三日が経っていた。
この三日間、佳恵さんは元気がなかった。
俺は夜、自分の部屋で佳恵さんに聞いてみた。
「佳恵さん、大丈夫?
伊藤さんと会ってから元気がないけど。」
「はい、大丈夫です。
心配をかけてごめんなさい・・・。」
「佳恵さん、傷ついてる?」
「そんなことはありませんよ。」
「ならいいんだけど。
佳恵さん、伊藤さんに会ってから元気がないからさ。」
俺は佳恵さんのことが心配だった。
もしかしたらすごく傷ついているのかもしれない。
「健太郎君、そんなに心配そうな目で見ないで下さい。」
「だって、佳恵さんの元気がないから。」
「ちょっと色々考えてしまって。」
「色々って?」
「隆行君のことです。
隆行君、私が姿を見せたことで逆に苦しんでいないかなとか、隆行君はこれから幸せになれるかなとか。」
佳恵さんの彼氏の伊藤さんは、幽霊でもいいから、佳恵さんに傍にいてほしいと言った。
しかし佳恵さんはそれは出来ないと言った。
幽霊になった自分と一緒にいたら、伊藤さんが幸せになれないからと。
「伊藤さんのことが心配?」
「そうですね。
私の愛した人ですから。」
「もしかして、伊藤さんに会ったことを後悔してる?」
すると佳恵さんは首を横に振った。
「いえ、後悔はしていません。
隆行君に会って、もう苦しまないでってちゃんと言うことができましたから。」
「そう、ならいいけど。」
すると佳恵さんは自分の頬を両手でパンと叩いた。
「ダメですね。
いつまでも元気のない姿を見せていたら。
私は隆行君に会って、言いたかったことが言えてスッキリしました。」
「本当に?」
「本当ですよ。
私の心の中のつっかえが、とれたみたいです。」
俺は佳恵さんをじっと見た。
「何ですか?
じっと見つめて。」
「いや、佳恵さん無理してないかなと思って。」
「そんなことはありませんよ。
それより、健太郎君達にはお礼を言わないといけませんね。
私と一緒に、隆行君に会いに行ってくれたんですから。」
「そんなのいいよ。
俺達は佳恵さんの為を思ってやっただけだから。」
「いえ、ちゃんとお礼を言わせて下さい。
健太郎君、ありがとう。」
「うん。」
「木原君と美保さんにも、ちゃんとお礼を言わなければいけませんね。」
「それならさ、明日みんなで遊ぼうよ。」
「何だか私に為に気を遣わせてしまっているみたいでごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。
べつに俺は佳恵さんに気を遣っているわけじゃないからさ。
明日はみんなで遊ぼう。
ね、決まり。」
「はい。
楽しみにしています。」
そして俺は木原と美保に連絡を取り、明日はみんなで遊ぶことになった。
そして翌日の朝、俺は佳恵さんと一緒に学校に出掛けた。
「遅いぞ、健太郎。」
木原と美保はもう来ていた。
「ごめんごめん。」
俺は二人に駆け寄った。
「佳恵さん、大丈夫?」
美保が心配そうに聞く。
「はい、大丈夫です。
皆さんに気を遣わせてしまってごめんなさい。
それから木原君と美保さんにはちゃんとお礼を言ってなかったですね。
隆行君のところへ一緒に行ってくれてありがとう。」
「お礼なんていいよ。」
木原が言った。
「そうそう、私達は佳恵さんの力になりたかっただけなんだから。」
美保も言った。
「じゃあ遊びに行こう。
どこにする?」
俺は聞いた。
「遊園地なんていいんじゃない。」
美保が言った。
「そうだな。
じゃあ遊園地に行こう。」
俺は言った。
そして俺達は電車で三十分ほど離れた所にある遊園地に行くことにした。
電車に乗っている間、美保がしきりに佳恵さんに話しかけていた。
佳恵さんにそれに笑顔で応じていた。
「なんか仲の良い姉妹みたいだな。」
木原が言った。
「私、佳恵さんのことお姉さんみたいに思ってるもん。」
美保が言う。
「私も美保さんのことを可愛い妹みたいに思っていますよ。」
「本当?」
「本当です。」
「嬉しい!」
美保は笑顔になった。
そして俺達は遊園地にやって来た。
「遊園地といえばジェットコースターだよな。
みんなで乗ろうぜ。」
木原が言う。
「俺、高い所はちょっと・・・。」
俺は言った。
「何言ってんだよ。
健太郎も一緒に乗るんだぞ。」
そういうわけで、俺達はジェットコースターに乗ることにした。
俺は後ろの席がよかったのに、木原が前の席に座ろうと言った。
俺達は最前列に近い場所に座った。
俺の隣の席は係員の人に言って空けてもらった。
佳恵さんに座ってもらう為だ。
俺は隣にいる佳恵さんの手を握った。
「健太郎君、怖いんですか?」
佳恵さんが笑いながら聞いてくる。
「そ、そんなことはないよ。」
俺が佳恵さんの手を握ったのは、物に触れない佳恵さんの体が、ジェットコースターをすり抜けて置いていかれないようにする為だ。
しかしそれとは別に、俺の膝は震えていた。
「やっぱり怖いんじゃないですか。」
「そ、そんなことないって。」
ジェットコースターがだんだんと頂上まで上ってくる。
「や、やっぱり怖い・・・。」
俺がそう言うのと同時に、ジェットコースターは下り始めた。
一気に加速していく。
「うわあああ!」
俺は叫んでいた。
前の席から木原と美保の叫ぶ声が聞こえてくる。
俺は叫びながら横を見た。
佳恵さんは楽しそうに笑っていた。
「楽しかったな、ジェットコースター。」
木原が言う。
「もう一回乗ろうか。」
美保が言った。
「また乗るのか!」
俺は叫ぶように言った。
俺達はもう一回ジェットコースターに乗った。
俺は怖くて目をつむっていた。
「いやあ、楽しかったな。」
木原が言う。
「次はどこで遊ぼうか?」
美保が聞いた。
「お化け屋敷なんていいんじゃないかな。」
もうジェットコースターに乗りたくない俺は言った。
「よし、じゃあお化け屋敷に行こう。」
木原がそう言って、俺達はお化け屋敷に入った。
だけどちっとも怖くなかった。
「私達、本物のお化け知ってるもんね。
なんか全然怖くない。」
美保が言う。
「そうだな。
本物の悪霊だって見たしな。」
木原が言った。
それからも様々なアトラクションを、みんなで楽しんだ。
佳恵さんはとても楽しそうだった。
「遊園地は満喫したな。
次はどこに行こうか?」
俺は言った。
「お腹すいたね。
ご飯でも食べに行こうよ。」
美保が言った。
俺達は遊園地を出て、牛丼屋でご飯を食べた。
「次は映画でも観に行こう。」
木原が言った。
俺達は映画館にやって来て、最近公開されたばかりのカンフー映画を観た。
俺は隣に座っている佳恵さんを見た。
佳恵さんは、映画を楽しそうに観ていた。
映画の次は、ボウリング場へやって来た。
木原が三回連続でガーターになり、みんなで笑った。
ここでも佳恵さんは楽しそうだった。
ボウリングを終えて外に出ると、陽は沈みかけていた。
近くに大きな公園があるので、俺達はそこを散歩をしてから帰ることにした。
公園の中の林の遊歩道を歩いていると、佳恵さんが言った。
「今日はとっても楽しかったです。」
「俺達も楽しかったよ。」
木原が言った。
「佳恵さん、元気は出た?」
俺は聞いた。
「はい、とっても。」
佳恵さんは笑顔で言った。
そして遊歩道をしばらく歩くと、池のある広場に出た。
そこで佳恵さん俺達に言った。
「皆さん、今日は私の為にありがとう。
とっても楽しかったです。」
「俺達も楽しかったよ。」
木原が言う。
「またみんなで来ようね。」
美保が言った。
すると佳恵さんは、池の方を見ながら言った。
「私、もう皆さんと遊ぶことは出来ません。」
「どうして?」
俺は聞いた。
「健太郎君の言う通り、私は隆行君のことが心残りで成仏出来ませんでした。
でも隆行君に会って、言いたかったことは言えました。
もうこれで心残りはありません。」
「佳恵さん、もしかして・・・?」
俺は聞いた。
「私、最後に皆さんと一緒に遊べてとても楽しかったです。
私、もう成仏することにします。」
いつかくると思っていた別れの時がやってきた。
「佳恵さん・・・。」
美保が泣き声で言った。
「悲しまないで下さい。
私、皆さんと一緒にいれて、本当に幸せでした。
最高の思い出ができました。」
「嫌だよ、佳恵さん。
行かないで!」
木原が言った。
「私も出来れば皆さんとずっと一緒にいたいです。
でも、私は死んだ人間なんです。
いつまでもこの世にいるわけにはいきません。」
「そんな、佳恵さん・・・。」
美保が泣き出した。
「木原君に美保さん、私の友達になってくれてありがとう。
私、成仏しても二人のことは忘れません。」
「佳恵さん・・・。」
木原も泣き出しそうになった。
「健太郎君。」
俺は名前を呼ばれて佳恵さんの顔を見た。
「健太郎君、いつも私に優しくしてくれてありがとう。」
「そんな・・・、俺は何もしてないよ・・・。」
「いえ、そんなことはありません。
健太郎君は、本当に私に優しくしてくれました。
私、健太郎君に出会えてよかったです。」
「それは俺もだよ。
俺も、佳恵さんに出会えてよかったと思ってる。」
俺の頬を涙が伝った。
「健太郎君はまるで本当の弟のようでした。
私は健太郎君に会わせてくれた神様に感謝しています。」
「佳恵さん・・・、俺・・・、佳恵さんと離れたくないよ!」
すると、佳恵さんが俺を抱きしめてきた。
「健太郎君、一緒にいれて本当に幸せでした。」
俺も佳恵さんを抱きしめた。
「健太郎君は夢がないと言っていましたね。
でもいつか、きっと夢が見つかりますよ。」
「佳恵さん・・・。」
俺は佳恵さんを抱きしめる腕に力を込めた。
「健太郎君。
いつか健太郎君にも、愛する人ができます。
そしたら、その人を大切にしてあげて下さいね。」
そう言うと、佳恵さんは俺から体を離した。
「皆さん、私は皆さんのことを忘れません。
だから、皆さんも私のことを、心の隅っこでもいいから置いておいて下さい。」
「佳恵さんのことを忘れるわけがないだろ!」
木原が言った。
「そうだよ!
絶対に忘れないから!」
美保も言った。
佳恵さんは笑って頷いた。
佳恵さんの体が光に包まれていく。
「健太郎君。」
俺は涙を拭いて佳恵さんを見た。
「健太郎君に出会えて、本当によかったです。
私、空から健太郎君のことを見守っています。
そして、健太郎君が幸せになれるように祈っています。」
「佳恵さん・・・、俺・・・、本当に佳恵さんに出会えてよかった。」
佳恵さんは優しく微笑んだ。
「もう時間です。
皆さん、本当にありがとう。
健太郎君、さようなら。」
そう言うと、佳恵さんの体は光になり、空へと昇って行った。
「佳恵さんー!」
俺は空に向かって叫んだ。
「俺、忘れないからー!
佳恵さんと過ごした日々を、絶対に忘れないからー!」
光はだんだん空へと昇って行き、やがて見えなくなった。
「佳恵さん・・・、さようなら。」
俺は空に向かってそう呟いた。
翌日、俺は目を覚ますと、ベッドの上で大きく背伸びをした。
昨日の佳恵さんとの別れが思い出される。
また泣きそうになった。
それをこらえて、俺はベッドから降りようとした。
そこで俺は固まった。
俺は目の前にいる人を見て言った。
「佳恵さん!」
佳恵さんは二コリと微笑む。
「どうしたの!
成仏したんじゃなかったの!」
すると佳恵さんは言った。
「実はあの後、私は天国に行ったんです。
そしたら神様が現れて、私に言ったんです。
まだ健太郎君と一緒にいるようにって。」
俺は信じられない気持ちで、佳恵さんに言った。
「じゃあまた一緒にいられるっていうこと?」
「はい、そうです。
またお世話になります。
よろしくね、健太郎君。」
俺は笑った。
笑いながら佳恵さんの手を取ってジャンプした。
「こちらこそよろしく!」
俺は言った。
「今日は良い天気ですよ。
散歩にでも行きましょう。」
俺は嬉しくなり、すぐに着替えると言った。
「じゃあご飯を食べたら、また一緒に川沿いの道を歩こう。」
「はい、行きましょう!」
佳恵さんは笑顔で頷いた。
幽霊との生活は、もうしばらく続きそうだった。

                                  最終話 完


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