自由に、気ままに 第一話 昼下がりの猫

  • 2010.12.02 Thursday
  • 09:09
 ぽかぽかと太陽の光が降り注ぐ。
今日は冬にしては暖かい。
昼寝をするにはとても気持ちのいい日だった。
俺は公園の植え込みの近くで昼寝をしていた。
いつも餌をくれる人間のおばさんに餌をもらい、お腹は満腹だ。
食後の昼寝ほど気持ちいいものはない。
昼寝は俺にとって至福の時間なのだ。
俺の友達は言う。
俺は昼寝ばかりしていると。
そんな時間があれば、メスを口説く為に時間を使った方がいいと。
俺の友達は年中メスの尻ばかり追いかけている。
しかしいつもふられてばかりだった。
俺から言わせれば、それこそ無駄な時間だ。
メスを口説く暇があったら、昼寝をしていた方がいい。
俺は太陽の光を気持ちよく感じながら眠っていた。
「お母さん、ここに猫がいるよ。」
しまった!
人間の子供に見つかった。
「にゃんこ、良い子良い子。」
人間の子共が俺の体を撫で始める。
俺は人間の子供を睨んだ。
「猫、起っきしたー。」
人間の子供が無邪気な声を発する。
「あら、本当ねえ。
猫がいるわねえ。」
子共の母親も来た。
「にゃんこ、良い子。」
人間の子共がぐしゃぐしゃと俺の頭を撫でる。
俺は人間の子共が苦手だった。
やつらは猫の扱い方というものを知らない。
無造作に体を撫で回す。
それに何より一番嫌なのは、昼寝を邪魔されることだ。
人間の子共は、こちらが昼寝をしていることなどおかまいなしだ。
俺はむくっと起き上がる。
そしてぐいっと背伸びをした。
「にゃんこ、立った。」
「そうねえ。立ったわねえ。」
母親が、子共を見ながら朗らかな声で言う。
せっかく見つけた気持ちのいい昼寝場所が、人間の子共のせいで台無しになってしまった。
人間の子共はなおも俺を撫で続ける。
俺はうんざりし、せっかく見つけた心地のいい昼寝場所から移動することにした。
「にゃんこ、待って。」
人間の子共が追いかけて来る。
俺は小走りになり、人間の子共を振り切った。
やれやれ、せっかく気持ちよく昼寝をしていたのに。
俺は新たな昼寝場所を見つけるべく、トコトコと歩いた。
さっきの公園の北にある坂を上れば、人間達がくつろぐ広場がある。
そこはどういうわけか、人間の子共はあまりやって来ない。
俺はそこで新たな昼寝場所を見つけることにした。
広場までやってくると、ベンチに人間の老人が二人座っていた。
あとは広場の中央で、絵を描いている人間がいた。
俺は広場をざっと見渡す。
どこか昼寝に適した場所はないか。
すると、広場の右奥の方に、草の茂った部分があった。
日当たりもよさそうだ。
俺はそこで昼寝をすることにした。
草の茂った所までやって来て、俺は寝転んで体を丸めた。
草がいいベッドになる。
これで落ち着いて昼寝ができる。
俺はうつらうつらとまどろみ始めた。
うん、ここは気持ちいい。
さっきの昼寝場所に負けてない。
俺は気持ちよく昼寝をすることが出来ると思った。
すると少し眠ってからだろうか。
パシャ、パシャという機械音が聞こえた。
パシャ、パシャ、パシャ。
機械音はうるさく俺の耳を刺激する。
一体何なのだ。
俺は目を開けてみた。
すると若い人間の男が、カメラを持って俺を撮っていた。
パシャ、パシャ、パシャ。
男はカメラのシャッターをきりまくる。
俺は無視して寝ることにした。
どうせすぐにどこかに行くだろう。
そう思っていたが、パシャ、パシャという機械音はやまない。
俺はだんだんイライラしてきた。
目を開けてみると、男はさっきより近づいて来ていた。
俺の顔の近くでシャッターをきる。
俺はそっぽを向いた。
「こっち向いてくれよ。」
男が言う。
俺は知らん顔をした。
すると男が俺の顔の正面に回り込んで来た。
パシャ、パシャ。
機械音がうるさい。
男はまったく立ち去る気配を見せない。
「うん、お前いい顔してるよ。」
男はそう言い、シャッターをきり続ける。
俺の耳にパシャ、パシャという音がこびりついてきた。
「ニャアーオ!」
俺は男にあっち行けと言った。
しかし男はシャッターをきり続ける。
ああ、なんてことだ。
せっかくいい昼寝場所を見つけたのに、ここも落ち着いて寝られない。
俺は立ち上がり、広場から去ることにした。
男が俺を追いかけてくる。
パシャ、パシャ、パシャ。
カメラの音がうるさい。
俺は走り出して、ついて来る男を振り切った。
やれやれ、また昼寝の邪魔をされてしまった。
どうして人間はこうも昼寝の邪魔をするのか。
俺は苛立たしい気分で次の昼寝場所を探すことにした。
さっきの広場から、西に向かう道路を進んで行くと、駐車場がある。
そこの駐車場の奥は、草の茂った空き地になっている。
そこで昼寝をしよう。
俺は空き地までやって来た。
空き地の隣に建っている三階建ての人間の家が、空き地に降り注ぐはずの太陽の光を遮っている。
日当たりはよくない。
しかしここなら人間は来ないだろう。
この際日当たりが悪いのは我慢しよう。
俺は空き地の左奥で、丸くなって昼寝を再開した。
静かだった。
静かだというのは、昼寝にとってとても大事なことなのだ。
日当たりが悪くてちょっと寒いが、まあ仕方ないだろう。
これでゆっくり昼寝ができる。
俺はだんだんとまどろみ始めた。
草が俺の体温を保って、少し暖かくなってきた。
うんうん、いい感じだ。
これでやっと落ち着いて昼寝ができそうだ。
そう思って目を閉じていると、何かが近づいて来る気配がした。
「トラちゃんたら、やだあ。」
「だってタマがあまりにも可愛いからさ、つい。」
猫だった。
猫が二匹、こちらに近づいて来た。
「トラちゃんてほんとに口が上手いわよねえ。」
「そんなことないさ。
タマがあまりにも可愛いからつい言っちゃうんだ。」
二匹の猫は、空き地の中央で喋っている。
「トラちゃん、私トラちゃんのことが大好きよ。」
「俺もだよ、タマ。」
どうやら猫のカップルらしい。
俺は気にせず昼寝を続けることにした。
「もうちょっと空き地の奥に行ってみようよ。」
「そうだな。」
二匹の猫がこちらに近づいて来る。
「うわ、誰か寝てるぞ。」
トラちゃんと呼ばれる猫が言った。
「ほんとだ。
どうしよう、せっかく誰もいない場所に来れたと思ったのに。」
「そうだな。
どうしようか。」
俺はチラッと目を開けて二匹の猫を見た。
二匹とも俺を見ている。
「俺、言ってくるよ。
どこか別の場所で寝てくれないかって。」
「うん、そうして。」
トラちゃんとやらが俺の近くに来て言った。
「あのう、寝ているところを悪いんですが、俺達二匹でゆっくりしたいんですよ。
どこか他のところで寝てもらえませんか。」
なんて図々しいやつだ。
先にこの場所に来ていたのは俺だというのに。
「あのう、聞こえてます?」
俺は知らんぷりをした。
「ちょっと、聞こえてるのか?」
トラちゃんが俺の頭をパシパシと叩いた。
「何するんだ!」
「いや、俺達二匹でゆっくりしたいから、どこか他の場所で寝てくれません?」
「ここは俺が先にいたんだぞ。
なんで後から来たお前にそんなことを言われなければいけないんだ。」
「だって、昼寝なんてどこでもできるでしょ。
俺達は二匹でゆっくりできる場所を探してここに来たんです。
譲ってくれてもいいじゃないですか。」
「なんて屁理屈だ!」
するとタマという猫が言った。
「トラちゃん。
この猫私達を見て妬いてるのよ。
きっと彼女のいない寂しい猫なんだわ。」
「な、何を言う!」
「ああ、そうか。
俺達を見て妬いてたんだな。
俺達ってベストカップルだから、それも仕方ないか。」
俺はだんだん馬鹿らしくなってきた。
「分かったよ。
この場所は譲ってやるよ。
せいぜいイチャついてろ。」
俺はそう言って空き地をあとにした。
「やっぱり私達に妬いてるんだわ。」
そう聞こえたが、無視して俺は去った。
やれやれ、せっかく見つけた昼寝場所が、また台無しになってしまった。
今日は厄日だ。
心地よく、静かに昼寝できる場所はどこにあるのか。
人間の家の塀の上で、俺は大きく欠伸をした。

                                  第一話 完

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