自由に、気ままに 第三話 猫達の闘い

  • 2010.12.04 Saturday
  • 09:01
 寒い風がぴゅうっと吹き抜ける。
空は晴れているが、風は冷たい。
冬の高い空を見上げて、俺は白い息を吐いた。
今日もいつもと同じように、俺は俺の縄張りを見回る。
侵入者がいないか見回らないと、縄張りは壊れてしまう。
俺はのしのしと歩いて、縄張りの一番端っこに向かう。
目の上が痛む。
昨日、縄張りに侵入者がいた。
グレーのトラ模様で、中々体の大きい奴だった。
俺は侵入者を排除すべく、そいつに闘いを挑んだ。
最初は威嚇からだ。
全身の毛を逆立たせ、鋭い声で相手を威圧した。
しかし敵は怯まなかった。
しばらく睨み合いが続いた。
そして先に手を出してきたのは向こうだった。
痛烈な猫パンチを顔面に受けてしまった。
俺はすぐさま反撃に出た。
俺も猫パンチを返した。
猫パンチの応酬が続いたあと、取っ組み合いになった。
闘いの結果は引き分け。
俺は目の上に傷を負った。
しかし向こうも鼻の頭に傷を負っていた。
完全に俺が勝ったわけじゃない。
敵は今日も俺の縄張りに侵入している可能性が高い。
俺は昨日の闘いに決着をつけるべく、縄張りをしっかりと見回ることにした。
俺はいつも縄張りの端っこに行って、そこから順に縄張りを見回って行く。
昨日敵と遭遇したのは縄張りの端っこだった。
俺は気合を入れる。
今日こそは闘いに勝利し、侵入者を追い出さねばならない。
俺は冬の空の下を歩いた。
そしてしばらく歩くと、シーナが現れた。
「もみじ、おはよう。」
「おう、おはよう。」
シーナは俺の彼女のうちの一匹だ。
俺の縄張りには三匹のメスがいる。
全員俺の彼女だ。
シーナは一番最初に俺の彼女になった猫だった。
「もみじ、目の上を怪我してるわ。
何かあったの?」
「ああ、ちょっとな。」
「また喧嘩?」
「まあそんなもんだ。」
「もみじはよく喧嘩をするね。」
「当たり前だろう。
俺はこの辺り一帯のボスなんだから。
侵入者がいたら喧嘩になるさ。」
「あんまり無茶しないでね。」
「心配するな。」
俺は尻尾を大きく振り、シーナに別れを告げると先を歩き出した。
そして昨日敵と遭遇した場所までやって来た。
俺は辺りを見回した。
敵の姿が見えない。
「今日はいないのか。」
俺はもっと注意深く辺りを見回した。
すると、10メートルほど離れた電柱の陰に、猫の尻尾が見えた。
俺はそちらに向かって「マーオ!」と鳴いた。
電柱の陰の尻尾が動く。
俺はもう一度鳴いた。
すると、電柱の陰から一匹の猫が出て来た。
奴だ!
昨日の侵入者だ。
敵は俺を睨むと、「ナーオ!」と威嚇しながら近づいて来た。
俺は全身の毛を逆立たせた。
敵も同じようにする。
だんだんと敵が近づいてくる。
そして俺の目の前まで来ると、敵は「シャー!」と鳴いて威嚇してきた。
俺も「シャー!」と返す。
しばらく睨み合いが続いた。
昨日は先手を取られてしまった。
今日は俺が先手を取る。
俺は敵の顔に猫パンチを放った。
敵の顔に命中する。
「フシャー!」と鳴きながら、敵も猫パンチを返してきた。
俺はそれをかわすと、さらに猫パンチを放った。
しかし敵もそれをかわす。
俺は連続で猫パンチを放った。
そのうちの一発が相手の顔面を捉えた。
敵は深くしゃがみ込むと、俺に向かって飛びかかって来た。
取っ組み合いになる。
「プルギャー!」
「ギシャー!」
俺は力には自信がある。
しかし敵の力も中々のものだった。
俺は上手く体を動かし、敵の体を押さえ込むことに成功した。
敵が暴れまわる。
俺は敵の頭にガブリと噛みついた。
「キシャー!」
今度は敵の鼻に噛みついた。
「ブシャー!」
敵は苦しんでいる。
俺はとどめとばかりに敵の首筋に噛みついた。
その瞬間、敵はのけ反るように飛び跳ね、俺の押さえ込みから抜け出すと、慌てて逃げて行った。
俺は追撃して、敵のお尻に猫パンチを何発か入れてやった。
今日は俺の勝利だ。
俺は侵入者を追い出すことに成功した。
「ふん、ざまあみろ。」
俺は敵の逃げて行った方に言葉を投げかけた。
「さてと、縄張りの見回りを続けるとするか。」
俺は歩き出した。
そして少し歩くと、俺の子分の楓が現れた。
「兄貴、おはようございます。」
「おう。」
「兄貴、毛が乱れてますよ。
喧嘩ですか?」
「まあな。」
「それで、勝ったんですか?」
「当たり前だ。」
「さすが兄貴だぜ。
見回り、お供します。」
「おう。」
「兄貴は本当に喧嘩が強いですね。」
「まあな。」
「俺も兄貴みたいになりたいぜ。」
楓は俺にとって可愛い子分だ。
喧嘩は強くないが、いつも俺を慕ってくる。
「そう言えば兄貴、向こうの縄張りでここら辺じゃ見かけない猫を見ましたぜ。」
「メスか?」
「いや、オスでした。」
「だったらそいつも追い出さないと。」
「真っ黒で、えらくいい体をした奴でしたぜ。
鋭い眼光を放ってました。
ありゃあかなり手強いですぜ。」
「俺が負けるとでも?」
「いえ、そんなことは思ってません。」
「その猫を見かけた所に案内しな。」
「はい!」
そして俺は、縄張りの中央までやって来た。
「さっきはこの辺にいたんです。」
俺は辺りを見回した。
「今はいないようだな。」
「俺、ちょっと見回って来ます。
兄貴はここにいて下さい。」
そう言って楓は、畑の向こうの茂みの中へと走って行った。
それから数分待つと、茂みの向こうから楓の鳴き声が聞こえてきた。
誰かを威嚇している声だ。
俺は走って茂みの向こうへ行った。
すると、楓と対峙して、真っ黒い大きな猫がいた。
「マーオウ!」
楓が威嚇する。
しかし相手は全く怯んでいない。
「マーオウウ!」
楓がさらに威嚇する。
すると敵の黒猫は、楓に近づいて来た。
そして楓に飛びかかった。
「フシャー!」
取っ組み合いになる。
しかし勝負はあっさりと終わった。
楓は尻尾を丸めて俺の方に逃げて来た。
「あ、兄貴!
俺じゃ奴に敵いません!」
黒猫は俺の方を見た。
そしてゆっくりとこちらに近づいて来る。
「楓、下がってな。」
俺も黒猫の方に近づいた。
「ナーオ!」
俺は威嚇した。
すると黒猫は鋭い目で俺を睨んできた。
俺も睨み返す。
どうやら威嚇で引き下がる相手ではないらしい。
俺は気合を入れ、その黒猫に近づいた。
そしてお互いの手が届く距離で止まった。
睨み合いが続く。
確かに手強そうだ。
俺は先手必勝とばかりに、黒猫の顔に猫パンチを放った。
俺のパンチが命中する。
すると黒猫も猫パンチを返してきた。
鋭く、強烈なパンチだった。
俺は負けずに猫パンチを返す。
黒猫はそれをしゃがんでかわすと、俺に飛びかかってきた。
「キシャー!」
「フシャー!」
俺と黒猫は激しく取っ組み合った。
辺りに俺達の毛が散乱していく。
黒猫の力は強かった。
俺は黒猫に押さえ込まれてしまった。
黒猫が俺の前足を噛む。
「シャー!」
俺は叫んだ。
黒猫の押さえ込みから逃れようと、俺は暴れた。
しかし黒猫の力は強く、俺は抜け出せなかった。
黒猫が俺の首筋を噛む。
俺は必死に抵抗した。
しかし黒猫はびくともしない。
やばい。
このままでは負ける。
「兄貴!
負けないで下さい!」
楓の声が聞こえた。
黒猫は噛む力を強めていく。
まずい。
このままでは大怪我を負う。
俺は必死に暴れたが、黒猫は強く俺を押さえ込んでいた。
このまま負けるのか。
俺は半分ほど諦めかけた。
すると、目の前を黒い物がよぎった。
黒猫の尻尾だった。
俺は咄嗟に尻尾に噛みついた。
「プルギャ!」
黒猫が叫ぶ。
俺は黒猫の押さえ込みからなんとか逃れると、尻尾を噛む顎に力を入れた。
「プギャ!プギャ!」
黒猫が痛そうに苦しむ。
俺は尻尾を放し、黒猫の鼻に噛みついた。
黒猫は飛び上がって痛がり、「フシュウ!」と鳴くと俺の前から逃げて行った。
「やった!
兄貴の勝ちだ!」
楓が喜ぶ。
俺は黒猫の逃げて行った方を見ていた。
「兄貴、やりましたね!」
俺は噛まれた前足をペロペロ舐めながら、楓を見た。
「手強い奴だった・・・。」
「そうですね。
俺、兄貴がやられるかと思いましたよ。
でも勝ちましたね。
さすが兄貴だ。」
「俺が負けるはずないだろう。
さあ、見回りを続けるぞ。」
「はい!」
縄張りを守るのも一苦労だ。
そしてしばらく歩くと、もう一匹の子分の三太がやって来た。
「兄貴、向こうでここら辺じゃ見かけない猫を見ました。」
「オスか?」
「はい。
兄貴と同じ茶トラ模様で、右目の上に傷のある猫でした。」
やれやれ、また侵入者か。
今日の俺の闘いは、まだ終わりそうになかった。

                                  第三話 完
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