自由に、気ままに 第四話 あの子は俺のもの

  • 2010.12.05 Sunday
  • 09:16
 恋にライバルはつきものだ。
俺は今恋をしている。
しかし、俺にはライバル達がいた。
俺の好きな猫の名前はジャスミンという。
雑種だが、とても綺麗な毛並みをしている。
グレーのトラ模様に、青い瞳。
長い毛はいつもふわふわとしている。
「なあジャスミン。
今度はいつ会える?」
「うーん、分かんない。」
「俺は毎日君に会いたいな。」
「うふふ。
またそんなこと言って。」
「本当だよ。」
ジャスミンは毛繕いを始めた。
ジャスミンはいつも俺をじらす。
しかしそこがまた、俺にとって魅力的なところだった。
「今日のデートは楽しかったわ。」
「明日も会いに来ていいかな?」
「うーん、ちょっと無理かな。
明日はミクと会う約束だから。」
ミクか。
ミクは俺のライバルの一匹だ。
歳のわりに老けた顔をしている。
お世辞にもカッコイイ猫とは言えない。
しかしジャスミンは、ミクは性格が可愛いと言う。
あんな猫のどこの性格が可愛いのか。
俺には理解出来なかった。
「じゃあまた今度ね。
さようなら、ゴマ。」
そう言うとジャスミンは去って行った。
夕方の光が辺りをオレンジ色に染めている。
俺は去って行くジャスミンの後ろ姿を見送っていた。
「明日は会えそうにないな。」
俺は独り言をぼやき、いつもの寝床へと帰ることにした。
その日の夜、俺は考えた。
ジャスミンと知り合って、もう一年になる。
最初に彼女を見た時、俺は体中に電気が走った。
こんなに可愛い猫がいるのかと。
俺はすぐにジャスミンに話しかけた。
彼女は笑顔で喋り返してきた。
彼女の話し方、仕草、全てが俺の心を掴んだ。
俺は彼女のことがすぐに好きになった。
それから彼女をデートに誘い、豪華な餌を探してきては彼女にプレゼントした。
ジャスミンはそれをいつも喜んで受け取った。
ジャスミンが喜ぶと、俺も嬉しかった。
彼女の笑顔を見るだけで、心がふわふわと空を飛んでいるような幸せな気持ちになる。
しかし彼女と出会って一年。
ジャスミンとの間には何の進展も無かった。
彼女を好きな猫は俺だけではないと気付いたのは、彼女と出会って一ヶ月ほどしてからだった。
俺の他に二匹、ジャスミンを好きな猫がいる。
そのうちの一匹がさっき言ったミクだ。
もう一匹はハチという。
こちらは若い猫で、中々凛々しい顔をしている。
ジャスミンは、ハチのカッコイイところが好きだという。
見た目だけでなく、性格もカッコイイと。
確かにハチは性格も男前だった。
そして俺。
ジャスミンは、俺のどこが好きかというと、優しいところが好きだと言う。
俺はいつもジャスミンに優しくしていた。
当然だ。
彼女に気に入られようと努力しているのだから。
明日はジャスミンはミクと会う。
俺は思った。
このままでいいのか。
ジャスミンと出会って一年。
彼女との仲は進展が無い。
明日、ジャスミンに会いに行こうか。
ミクと会うと言っていたが、そんなものは関係なしに、彼女に会いに行ったらどうなるだろう。
決めた。
明日もジャスミンに会いに行こう。
俺は心にそう決めて、丸い月の輝く空を見上げた。
そして翌日。
俺はいつもジャスミンがいる場所へと向かった。
もしかしたら、今日は修羅場になるかもしれない。
なにせ恋のライバルが顔を合わすのだから。
俺はいつもジャスミンがいる場所へとやって来た。
辺りを見回す。
すると俺から離れた木の木陰に、ジャスミンとミクがいた。
二匹は楽しそうに喋っている。
俺は二匹の方へと近づいて行った。
「やあ、ジャスミン。」
俺は声をかけた。
振り向く二匹。
「ゴマ!
どうしてここに。」
ジャスミンが驚いて俺を見る。
「君に会いたかったからさ。」
「そんなこと言われても、今日はミクと・・・。」
「分かってるよ。
でも会いたかったんだ。」
するとミクが俺とジャスミンの間に割って入って来た。
「今日は俺とジャスミンがデートする日だぞ。
お前は帰れよ。」
ミクが怒るように言う。
「いや、俺は帰らない。
そろそろ決着をつけた方がいいと思ったんだ。」
「決着?
何の?」
「恋の決着に決まってるだろ。」
ジャスミンは困った顔をしていた。
「ジャスミン、こんな奴ほうっておいて、どこかに行こう。」
ミクがジャスミンに言う。
「待てよ、ミク。」
「何だよ。」
「俺はジャスミンに聞きたいんだ。
結局誰が一番好きなのか。」
ミクはジャスミンを見た。
「ゴマ、私を困らせないで。」
ジャスミンが悲しげな声で言う。
「ジャスミン。
俺は君のことが好きなんだ。
だからそろそろはっきりさせたいんだ。
一体君は誰が一番好きなのかを。」
「急にそんなことを言われても・・・。」
ジャスミンは顔を伏せた。
「やめろよ、ジャスミンが困っているじゃないか。」
「ミク、お前はこのままでいいのか?
ジャスミンが誰を一番好きだと思っているのか、知りたくないのか?」
「それは・・・。」
俺とミクはジャスミンを見た。
するとジャスミンは、伏せていた顔を上げて言った。
「私、今日は帰るわ。」
ジャスミンが去って行く。
「待ってくれよ、ジャスミン。」
ミクがジャスミンのあとを追いかける。
俺も追いかけた。
そしてしばらくジャスミンを追いかけていると、ジャスミンは急に立ち止まった。
「どうしたんだ、ジャスミン。」
俺は彼女の傍に寄って聞いた。
ジャスミンは真っすぐ前を見ている。
俺は彼女の視線の先を見た。
するとそこにはハチがいた。
もう一匹のライバルだ。
「ハチ・・・。」
ジャスミンが言う。
「やあ、ジャスミン。」
ハチはジャスミンの方へと寄って来た。
「どうしたんだい、困った顔してるけど。」
ハチは聞いた。
「ゴマが私を困らせるの。」
ハチは俺の方を見た。
「ゴマ、どういう理由があるのか知らないけど、ジャスミンを困らせるなよ。」
「いや、俺はそんなつもりじゃないんだ。
ただジャスミンの本当の気持ちが知りたかっただけなんだ。」
「ジャスミンの本当の気持ち?」
「ああ、一体ジャスミンは誰のことが一番好きなのか。
俺はそれを知りたいんだ。」
ハチはジャスミンを見た。
「それは俺も知りたいな。」
ジャスミンはますます困った顔になった。
「なあ、ジャスミン。
俺達が知り合ってもう一年になる。
でもその間、君との間には何の進展も無かった。
そろそろ教えてくれないか。
君は誰が一番好きなんだ?」
みんながジャスミンを見る。
「そんなことを言われても・・・。」
するとハチが言った。
「ジャスミンは俺達の気持ちを知っているはずだ。
ゴマの言う通り、そろそろ誰が一番好きなのかはっきりさせてくれてもいいと思うんだ。」
「私・・・、私・・・。」
「ジャスミン。
俺のことが一番好きだよね。」
ミクが言う。
「黙ってろよ、ミク。
ジャスミンの答えを待つんだ。」
俺は言った。
「私・・・、私・・・、誰が一番好きなのかなんて決められない!」
「ジャスミン・・・。」
ハチが呟くように言った。
「私、みんなのことが好きよ。
でも、誰が一番かなんて決められない。
みんな、ごめんなさい・・・。」
そう言うとジャスミンは走り去ってしまった。
「ああ、待って、ジャスミン。」
ミクがジャスミンを追いかけて行く。
俺とハチは顔を見合わせた。
「まだ俺達の恋の闘いは続きそうだな。」
ハチが言う。
「そうだな。
でも最終的にジャスミンの心を射止めるのは俺だけどな。」
俺はそう言い、曇った空を見上げた。
必ずジャスミンを俺に振り向かせてみせる。
心にそう誓い、俺はジャスミンのあとを追いかけた。

                                   第四話 完
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