自由に、気ままに 第六話 母猫と子猫

  • 2010.12.07 Tuesday
  • 09:11
 夜になり、空には月が輝いている。
冷たい風が吹いて、ぶるっと身を震わせた。
住処にしている無人の民家の下から這い出してくると、私は月明かりで目を光らせた。
「お母さん、お腹すいたよ。」
「うん。
今から食べ物を探しに行こうね。」
私には二匹の子共がいる。
本当は三匹だったけど、そのうちの一匹は産まれてからすぐに病気で死んだ。
残った子供達を失うわけにはいかない。
その為にはまず餌が必要だ。
私は二匹の子共を連れ、夜の町に餌探しに出掛けた。
「お母さん。
餌が見つかるかな?」
「見つけないといけないのよ。
じゃないと死んでしまうから。」
「見つかるといいな。」
私の子共はビビとハロという名前だ。
ビビはメスで、聞き分けのいい子だった。
ハロはオスで、かなりやんちゃなところがある。
そんな二匹の子共を連れながら、夜の町を歩く。
私がまず最初に向かったのは、近所にある畑だった。
この畑にはよくネズミが出るのだ。
畑に着くと、闇夜に目をこらして辺りを見回した。
子共達はキョロキョロしている。
ネズミがいないか注意深く探す。
すると、微かな足音が聞こえた。
ネズミの足音だ。
「あんた達、ちょっとここで待ってなさいね。」
「うん。」
私は足音のする方に向かった。
すると5メートルほど先に三匹のネズミがいた。
私は足音を消し、慎重に近づいた。
だんだんとネズミに距離を詰めていく。
そして射程圏内に入った。
私は素早く飛び跳ね、ネズミに飛びかかった。
捕まえた。
残ったネズミ達は逃げて行った。
私は咥えたネズミを子供達の方に持って行く。
「やった!
お母さん、ネズミを捕まえた。」
ハロが喜ぶ。
「まだ生きてるね。」
ビビが言った。
私は強く噛んでネズミを弱らせ、生きたまま子供達の前にネズミを置いた。
弱ったネズミはよたよたと歩く。
「あんた達、狩りの練習よ。
このネズミを自分達で仕留めなさい。」
ネズミはふらふらと歩きながら逃げて行こうとする。
「ほら、早くしないと逃げられちゃうわよ。」
私がそう言うと、まずはハロがネズミを追いかけた。
続いてビビも追いかける。
ハロが弱ったネズミを噛んだ。
しかし暴れまわるネズミに手こずっているようだ。
ハロはネズミを放してしまった。
さらに弱ったネズミが逃げて行く。
そこへビビが飛びついた。
ビビは上手くネズミの急所を噛んだ。
暴れていたネズミが動かなくなった。
「お母さん、仕留めたよ。」
ビビが言う。
「よくやったわね。
じゃあその餌はあんた達で食べなさい。」
「はーい。」
子供達は美味しそうにネズミを食べていた。
「お母さんは食べないの?」
ビビが聞く。
「お母さんまで食べたら、あんた達の食べる分が無くなっちゃうでしょ。
いいからあんた達で食べなさい。」
「うん。」
とは言ったものの、私も空腹だった。
私は痩せている。
子供達に優先させて餌を食べさせている為、私の食べる分は少なくなる。
子供達に辛い思いをさせたくない。
私はいつも自分の食べる分を我慢してきた。
「ごちそうさま。」
ハロが言った。
子供達はネズミを食べ終えた。
「じゃあ次の餌を探しに行きましょう。」
しかしその夜は、もう餌は見つからなかった。
私達は寝床の無人の民家の軒下へと帰って行った。
あのネズミ一匹では、子供達も満腹にはなっていないだろう。
子供達にもっと餌を与えないと。
私は寝床に帰ると、朝になるまで眠った。
子供達は二匹でじゃれ合っていた。
「あんた達、餌を探しに行こうね。」
起きた私は、子共達を連れて外に出た。
「お腹減った。」
ハロが言う。
「昨日はあんまり餌が見つからなかったからね。
今日は見つけようね。」
「うん。」
私は子供達を連れて公園に向かった。
公園のゴミ箱に、人間の残していった食べ物があるかもしれない。
そして公園に着くと、私はゴミ箱を漁った。
そしたら運よく、弁当の残りを見つけた。
「あんた達、餌があったわよ。」
「やった!」
ハロが喜ぶ。
「お母さんも食べてね。
お腹すいてるでしょ。」
ビビが言う。
「うん、そうするわ。」
弁当は大半が残っていた。
私達は夢中で弁当の残りを食べた。
「あ!
ゴミ箱をちらかして!」
私達が餌を食べていると、ほうきを持った人間のおばさんが怒鳴った。
「公園を汚すんじゃないよ、あっちに行きなさい。」
餌を食べいる途中で、人間のおばさんに追い払われた。
「まったく、せっかく掃除したのに。」
人間のおばさんはぶつぶつ言いながら、私達が食べていた弁当の残りをゴミ箱に入れた。
「ほら、あっちに行きな!」
ほうきで払うように、人間のおばさんが私達を追い払う。
「あんた達、行こう。」
せっかく見つけた食べ物だったのに。
私はがっかりしていた。
子供達もしょんぼりして、とぼとぼと歩いている。
「お腹すいた。」
ハロが言う。
「ごめんね、満足に餌を食べさせてあげられなくて。」
私は子供達に申し訳なかった。
「ハロ、お母さんも餌を見つけるのは大変なんだから、我慢しよう。」
ビビが言った。
「分かってるよ。」
ハロが言う。
「本当にごめんね。」
私は子供達に謝った。
「次の餌を探しに行こう。」
「うん。」
それからあてもなく歩いた。
そしてある民家までやってくると、餌の匂いがした。
私は民家の庭を覗き込んだ。
すると、餌を食べている野良猫がいた。
お皿が二つ置いてある。
そのどちらにも餌が入っていて、そのうちの一つを茶色い猫が食べていた。
私は民家の庭に入り、餌の入っているお皿に近づいた。
「あんた達、ここに餌があるよ。」
「本当だ。」
ハロが嬉しそうな声を出す。
「今度はお母さんもしっかり食べてね。」
ビビが言った。
そして私達がお皿に入った餌を食べようとすると、茶色い猫が怒った。
「お前ら、人の縄張りの餌を勝手に食べるな!」
「あの、私達お腹がすいているんです。
子供達に餌を食べさせてあげたいんです。
この餌、食べさせてもらえませんか。」
私は茶色い猫にお願いした。
「ダメだダメだ!
それは俺の相棒が食べる分の餌なんだ。
お前らはあっちに行け。」
「でも・・・。」
「さっさと失せろ!
でないと痛い目に遭わすぞ!」
「お母さん、行こう。」
ビビが言った。
私達はその場をあとにした。
「餌、見つからないね。」
ハロががっかりしたように言う。
「ごめんね。
諦めないで、餌を探そう。」
私がそう言って歩いている時だった。
前から小さな女の子を連れた、人間の親子が歩いて来た。
その親子は私達を見つけると、近寄って来た。
「ママ、猫がいるー。」
「ほんとねえ。
子共を連れてるわね。」
母親の方がハロとビビを撫でた。
「ママ、私猫が欲しいー。」
「えー、そんなこと言ったって・・・。」
「欲しい欲しい!」
「そうねえ、こっちの子は可愛いから、どうしようかしら。」
母親の方がビビを見て言う。
「ママ、この子飼いたい!」
子共の方も、ビビを撫でながら言った。
「一匹くらいなら何とかなるかしら。」
母親の方がそう言うと、ビビを抱き上げた。
「家に連れて帰って、パパに聞いてみようか。」
母親が言う。
「うん!」
子共は元気よく返事をした。
ビビが人間の親子に連れて行かれる。
「お母さんー!」
ビビが叫ぶ。
「お母さん!
ビビが連れて行かれちゃうよ!」
ハロが慌てたように言う。
私は連れて行かれるビビの方を見て言った。
「いいのよ、これで・・・。
人間に飼われた方が、あの子は幸せになれる。
餌に苦労することもなくなる。」
「お母さんー!」
ビビがまた叫んだ。
「ビビー!
その人間と一緒に行きなさい!
その方があんたの為だから!」
「嫌だよー!
お母さんー!」
私はビビと別れるのが辛かった。
しかしこれでいいのだ。
この方が、ビビは幸せになれる。
「ハロ、行こう。」
「でも、ビビが!」
「いいから。
行こう・・・。」
「お母さんー!」
叫ぶビビに背中を向け、私は歩き出した。
「ハロ、これからはお母さんと二匹で生きていくんだよ。」
ハロは悲しそうに黙っていた。
子共が幸せになってくれるならそれでいい。
私はビビを振り返ることなく、ハロと一緒に歩いて行った。
どうかビビが幸せになれますように。
そして、どうかハロをきちんと育てることができますように。
私は心の中でそう願い、餌を求めて歩き続けた。

                                  第六話 完



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