JUGEMテーマ:詩
やけに長い流れ星に
明日の願いを託して
乾ききらないコンクリートの駐輪場を
鼻歌交じりに過ぎていく
少し ほんの少しでいいから
今日より良くなるようにと
振り返ればもういない流れ星に
託した願いを念押しして
鏡に反射したLEDに照らされながら
乾ききらない歩道橋を渡る
レインシューズが水しぶきを上げる
]]>JUGEMテーマ:詩
ほのかな梅の香り
雨上がりの夜に胸を弾ませ
憂鬱な気持ちを溶かしてくれる
並木の枝には小さな蕾
来月の今頃は満開になり
川沿いは桜を見上げる人で賑わうだろう
少しずつ 確実に 季節は入れ替わり
体を通り過ぎる風も柔らかくなっていく
橋から見える河川敷には
もうすぐ菜の花とタンポポが咲いて
蝶や鳥が踊るから 緑も鮮やかになるから
その日が来るまで顔を上げていよう
]]>JUGEMテーマ:詩
倉庫の隣 手入れのされていない空き地
南洋植物の隣に気の早い桜が立つ
寒い空に向かってピンクの色を投げ
白い雲と美しいコントラストを描く
コンクリートにはたくさんの花びら
それでもまだまだ枝は賑やかで
冷たい風をものともせずに踊っている
暦は春なのにしぶとく居座る寒気に我慢できず
気の早い桜が次の季節へ道を通す
]]>JUGEMテーマ:詩
変わり映えのない日々が感動を奪い
同じスケジュールの繰り返しが感性を鈍らせる
だけど稀に訪れる感動と 稀に尖る感性が
輝かしい気持ちに生まれ変わらせてくれる
同時に退屈なルーティーンへの耐性を失い
変わり映えのしない日々が苦しいと感じる
それを我慢し 感動も感性も忘れる頃
退屈への耐性が蘇り 苦しみからの解放と共に
夢も 憧れも 自分自身のことさえ
ただの石ころように なんの価値もないモノになり
心は本当に化石のようになっていく
人生は 古代の地層のように
そこで眠る恐竜やマンモスのように
ただ誰かに見つかるのを期待するように
またいつか訪れる感動と 尖る感性を
深い土の下で待ち続ける
]]>JUGEMテーマ:詩
夢は泥の中 希望は沼の底に
現実と挫折と後悔は水中を漂い
水面に浮かぶのは無気力と虚無感
体は浮かび 心は沈み
地球と月のように引っ張り合い
一定の距離で回り続ける
車の中は冬なのに蒸し暑くて
春の勢いに飲まれている
全部がてんでバラバラで
幸せでもなければ不幸でもないし
楽しくもなければ退屈でもないから
仕方なしにまだ生きている
また一日 夜まで歩いていくだけなのに
朝の布団を剥ぎ取るのは辛い
太陽の隠れた夜明けだから
余計にそう思うのかもしれない
]]>JUGEMテーマ:詩
どこにでも自分がいるように感じる
どこにも自分がいないようにも感じる
地に足を着いていても
どこにも立っていないような
だけど体は重く足が進まない
悲しい時はいつだってそうで
嬉しい時もいつだってそうなる
普段と違う状況になると
四方八方から強い力で引き裂かれるような
居心地の悪い気分になり
悲しかろうと嬉しかろうと
いつも通りに戻りたいと思う
何事もなく穏やかというのは
なんて幸せなんだろうと
引き裂かれるような状況の時は
相反する心身から目を逸らしたくなる
]]>JUGEMテーマ:詩
眠る龍のように
細長い雲が西へ横たわる
にわか雨は上がり
薄い虹が街を渡る
ぬかるみに誰かの足跡
植え込みに滴る雫の群れ
雨上がりは土と木々の匂いが強い
日が暮れる頃 あの龍は目覚め
太陽の光に染まりながら
遠くへ飛んでいくだろう
どこかに新しい雨を運んで
僕の見知らぬ誰かに
僕と同じように空を見上げさせ
土と木々の匂いを与え
ほんの少しの安らぎをもたらすだろう
]]>JUGEMテーマ:詩
魂の叫びは泥にまみれ
軋む心に体が追いつかない
彼は過去に囚われ
彼女は今に執着し
傍観者だったはずのあの人が
面白がって騒ぎ立て
彼と彼女の魂はより深い場所に沈み
傍観者だったあの人さえ
心と体が鎖で縛られる
人と人と人の繋がりは
蜘蛛の巣さえシンプルに見えるほど
まるで丸まった釣り糸のように
まるで川面の木にまとわりつく枯れ草のように
もはや解きようもなければ 元通りにすらならない
自分はただそれを見ていることしか出来ない
力になろうと近づけば
たちまち絡め取られてしまうだろう
呪いとは人のしがらみのこと
どんなに腕の良い魔術師でも
これを解くことは出来ない
]]>JUGEMテーマ:詩
朝霜を踏み砕き
昨晩の名残り雪をつまむ
今朝切ったばかりの爪の隙間に
冷たい冬の息吹が潜り込み
ポケットを探って
ハンカチを忘れたことを思い出す
取りに戻るには家から離れた
ジンジンとかじかむ指を揉みながら
もう一度雪をつまむ
寂しくないのに切ないのは
まばらに残った雪のせいで
深く積もった時よりも
哀愁が漂い 胸の中を撫でる
]]>JUGEMテーマ:詩
森は暗闇に閉ざされて
妖精のように 蛍のように
何かの光の球が飛び交う
それはただの埃であったり
月光の破片だったり
寝遅れた羽虫だったりする
半分瞼を閉じてボヤけると
妖精のようにさえ見えるし
魂のようにも見える
不思議で不気味で穏やかな森の夜
遠くに見える暖かい灯火は希望
だけどその光にはに背中を向け
妖精や魂の飛び交う暗闇に
気の済むまで立ち続ける
どうせ朝はやって来るから
無理に希望へ手を伸ばす必要はない
限られた夜の間に
好きなだけ悲しんで
思うだけ自分を慰めて
明日を生きる準備をしよう
]]>JUGEMテーマ:詩
月を映す茂みの川面に
獣の鳴き声と足音が響く
身を切る冷たい風が
火照った頬に気持ち良い
枯れ草の土手道は柔らかく
どこまでも歩けそうな気がする
感傷が溢れ出し
気の早い夜に感情を預ける
このまま時間が止まって
静かで暗い日没の中に
うずくまったまま埋もれていたい
]]>JUGEMテーマ:詩
瞼の裏に蝶が飛ぶ
モンシロチョウ アゲハチョウ
モンキチョウも飛んでいる
冬の寝床で春の光景を見て
寒さに耐えながら暖かさを待つ
雪に梅の香り 霜につくしの可愛らしさ
あられに桜の彩り 木枯らしに眠くなる陽気
春になれば入れ替わる
ギュっと堪えながら グっと食いしばりながら
いつ来るか分からない 本当に来るかも分からない
冬の先に待っているはずの春を
寒さに震えながら瞼の裏に見る
]]>JUGEMテーマ:詩
自分を苦しめる
それが必要だと信じて
自分を楽にする
頑張ろうと思っても限界になって
そうして苦楽を繰り返し
成長したかと思えばそうでもない
無駄に苦しんで 必要以上に休んで
長い目で見れば後退しているかもしれない
同じ苦しむなら価値のあることで
同じ休むなら次に役立てる為に
後になって振り返って
あれが無駄だった
これをやっておけばよかったと
また無意味に苦しむ
また今日も瞼が重い
]]>本年もヤカーブログをよろしくお願いします。
]]>
JUGEMテーマ:詩
シンクから溢れる水が廊下を濡らす
滑る足元に注意しながら階段を下り
曇った空の割に暖かい冬の日の国道で
車の流れをぼんやり眺めながら物思いに耽る
大掃除は終わり 弁当も食い 缶コーヒーを買って
予定の無い年明けまでの時間は物思いが続く
年の瀬は なんて暇で なんて忙しくて
中身があるようでない時間が続くのだろう
年齢と共に忘年の感慨は薄くなり
一年なんてあっという間に通り過ぎ
今まで何をして これから何をするのか
考えているうちにまた新たな年の瀬がやって来る
生まれてから時間が経つにつれ
特別な日がただの日常になっていく
感動の残量もあとわずかなことに
寂しささえ感じない
人はだんだんと草木のようになっていく
JUGEMテーマ:詩
草は土に眠る
虫は土中に眠る
風は山の向こうに
木々は太陽の影に眠る
朝陽が昇ると水辺の霜が光沢を放ち
夜中の寒さを抱えたまま街が照らされていく
自転車を漕いで仕事に向かう途中
冷たい匂いと寒い景色を受け止めながら
橋の向こうに理由のない希望を見る
]]>JUGEMテーマ:詩
北の空は少々暗くなり
山茶花は寒風に耐える
石畳には花弁が散り
裸足で歩くと冷たい
四季は飽きることなく巡り
いつでもどこでも光と色を与える
冬は見栄えのしない地味さが美しい
次の冬には自分は何を思うのか
倒木に腰を下ろして苔を撫でる
]]>JUGEMテーマ:詩
錆び付いたチェーン
取れかかった荷台
荒れた空き地に自転車が取り残される
パンクした山積みのタイヤ
古びて文字の読めない看板
絡まった網に割れたパレット
カモメは潮風に乗り
カニが慌てて身を隠す
砂浜の足跡は順番に消え
干潟の水たまりにたくさんの太陽が映る
暖かい砂の中 冷たい波打ち際
彼らは些細なことで喧嘩をして
口を利かないまま会わなくなった
片や悲しみ 片や怒っている
カモメが砂に隠れられたら
カニが空を歩けば
きっと全て解決する
そうはならないから
きっと彼らは元に戻らず
錆び付いた自転車のように
友情は寂しく取り残される
]]>JUGEMテーマ:詩
彼は心が弱い
だからちょっとしたことで落ち込み
そして来なくなってしまう
彼女は人見知りが強い
だから少しでも話しかけられると怖くなり
どこかに身を隠してしまう
あの人はプライドが高い
だから些細なミスで恥を感じ
焦って空回りする
彼も彼女もあの人も特別ではなく
それを見ている自分も特別ではなく
誰もが平均的に歪で壊れていて
人が増えてもやはりそれは同じで
歪んで故障して それでもそれなりに上手く回っている
人が機械と違うのは 歯車が噛み合わなくても機能すること
完璧になろうとするほど 人は機械に負けていく
歪で壊れていて そうやって回るのが人間同士
完璧は機械に任せて 不完全を人間の手に
]]>JUGEMテーマ:詩
暖かい服に包まれていても
サイフは軽くて心は寒い
暖かい言葉に囲まれていても
悩みにうなされ心は重い
暖かい風呂に浸かっていても
将来を考えて心が冷たい
悲観が温度を奪い
諦観が心身を沈める
景色は美しくても
足元は砂利道のように歩きにくい
白と黒 光と影に挟まれて
ただどこかへ逃げ出したく
でもお金も時間もなく
せめてもの現実逃避
夜空へ意識を飛ばす
]]>JUGEMテーマ:詩
熟れた柿を鳥がついばみ
地面に落ちて穴が空き
甲虫が潜り込んで果肉を吸う
落ち葉の隙間には銀杏と
たくさんのドングリが転がって
松ぼっくりが空を見ている
カマキリは獲物を待ち
色づいた丸い実が艶々と綺麗で
夕暮れに童謡が鳴り響く
あのベンチには誰が座るのだろう
振り返った土手の上では
若いカップルの自転車の陰が去っていく
]]>JUGEMテーマ:詩
冷たい海にボラが跳ねる
ベンチは潮風に晒されて
座ったお尻が冷たくなる
首元が寒くてジッパーを上げ
上着に顔を埋めながら
遠浅の海を眺める
景色は色を失くし
寂しく静かになった
木枯らしは孤独を
潮風は哀愁を運び
たった一人で冬の訪れに向き合う
海と風しかないこの景色が
寂しいはずの時間が
胸の隙間に染み込んで
空っぽな心を埋めていく
JUGEMテーマ:詩
目覚めに鳥の鳴き声
空模様は鈍くても
夜明けの風は心地よく
火照った頭と体を冷やし
一日の始まる新鮮な匂いと
街が起きていくたくさんの音で
昨日を乗り切り 今日を迎えた喜びを感じる
働くことは困難の連続
生きることは苦難の連続
それでも自分は幸せなのだと
暗示のように言い聞かせ
なんとか今日も乗り切ろう
胸いっぱいに深呼吸して
昇っていく光に背を向ける
]]>JUGEMテーマ:写真
秋には祭り。晴れ空に音が響き、人が集まる。
大人も子供も楽しんで、芝生で陽に当たりながら寛ぐ。
あちこちから賑わう声がする。ヤギは身を乗り出して餌をねだる。
すぐに冬になるから、その前にうんと楽しむ。
秋は祭りのようにすぐ過ぎ去ってしまう。
]]>JUGEMテーマ:写真
秋にしては暑い。パーカーの下が汗ばむ。
カメラがなければ歩かないだろう。
それでも街を行く人は多く、土曜を楽しんでいる。
街の空気は静かだけど暗くはない。
映画館へ向かう人、渋滞で待つ人、ビルの隙間を縫う人。
街の中に群れが出来て、群に紛れてシャッターを押す。
電車は遠くへ行き、遠くから帰って来る。
乗る人、降りる人、駅に用は無いけど陸橋を歩く人。
自分もずいずいぶん歩いた。
気づかないうちにパーカーの袖を捲っていた。
暑いけど光は薄く柔らかい。
街はほのかに冬へ向かっている。
]]>JUGEMテーマ:詩
風に揺れる静かな光景
白 薄紫 ピンク
細く薄い緑の茎
今は使われていない田んぼや
道路脇の空き地 民家の庭の一画に
ふわふわ ゆらゆら 風に踊り
花弁は陽の光を透かして綺麗で
通勤中の朝 帰宅中の夕暮れ
どちらも風情に彩られている
秋桜の傍を通る度
淡く儚いイメージに包まれる
JUGEMテーマ:詩
言葉は棘のある薬草
チクチク刺さり
時には血を流すほど深く食い込む
だけど傷を癒し 痛みを消し
時には暗い感情さえ治してしまう
人が言葉を使う以上
傷つき 癒され
落ち込み 元気になる
山脈と渓谷のように
複雑な浮き沈みは避けられない
あの人は傷つき あの人は足を止め
あの人は力を貰い あの人は立ち上がる
そこらじゅうに棘と薬草が茂り
道なき道にあの人も自分も立っている
]]>JUGEMテーマ:詩
日暮れの光
夜明けの匂い
過去の自分が去っていく切なさと
新しい自分がやってくる嬉しさと
過去の自分にお別れできる気楽さと
新しい自分を迎えるプレッシャー
光は記憶を呼び起こし
匂いは感覚を刺激し
日暮れと夜明けにはどこにも現在がない
過去と未来に挟まれて行ったり来たり
進むでも戻るでもなく
ただひたすらグルグル回り続ける
まるで月と太陽のように
何かの目的で回り続けている
その目的は何なのか
当の本人は知らないままでいる
いつの間にかこの世にいて
いつかあの世へ旅立つまで
大事なことは知らされず
何かの力で回り続けている
]]>JUGEMテーマ:詩
10月の終わり
雨上がりの午後は
土も空気も冷たく湿り
木枯らしを待つ木々と
どんよりした曇り空と
人のいない球場とで
モノトーンのように寂しく
コントラストの薄さに感動を消される
胸を掻き立てるものは何もない
おかげで胸の中は穏やかになり
水滴の残ったベンチにさえ哀愁を感じる
薄着の寒さが眠気を覚まし
浮かれた気分を凍らせていく
]]>JUGEMテーマ:詩
ソメイヨシノは葉を落とし
あんなに青々と茂っていたのが嘘のよう
土手を見上げれば隙間だらけの枝
向こうの雲までよく見える
寂しい景色なのに心を打たれ
夕暮れにはこんなに綺麗な絵はないと思える
少し寒い風に吹かれて
僅かに残った葉は落ちていき
土に転がってカサカサ走っていく
寒くなればなるほど
一日の終わりを強く感じて
時間が貴重なモノだと思い出す
]]>JUGEMテーマ:詩
手枷足枷に加えて糸を付けられ
囲われた庭の綺麗な一画の
ほんの一筋の光が当たる所だけを
これでもかと美しく見せてみても
一瞬の油断でヘドロが垣間見えて
見る者が見ればそれが紛い物だと見抜かれる
人生は濁流のようで
あちこちに尖った石が転がり
誰もその人の声を知ることはない
弱い者は生まれながらに
必要以上に現実の重荷を背負わされ
糸を手繰る者に踊らされる
その魂はいつ解放されるのだろう
感動の裏には地獄がある
]]>JUGEMテーマ:詩
黄金色の田園が広がる
畦には彼岸花が咲き
稲穂と混じって彩り豊かで
祭りのノボリが風にはためき
草から草へショウリョウバッタが飛び跳ねる
10月にもヒマワリは咲いていて
向かいにはコスモス畑が賑わい
田んぼの傍を小さなカエルが横切っていく
少しの変化がたくさんあって
小さな秋がたくさん集まって
細かい刺繍のように季節を描く
じっくり日が傾いて
夕暮れの寂しさがギュっと胸を締め付ける
]]>JUGEMテーマ:詩
少しのことで不安になる夜
何も無くても希望を抱く朝
昼には雑事に追われて雑念を忘れ
夕暮れには感傷的に過去に浸り
早朝には空っぽなほど全てがどうでもよくなり
一日通して穏やかな日はなく
昨日は昨日で人生に悲観し
今日は今日で妙に楽観的で
明日にはどっちへ転ぶか分からない
平穏無事なんて夢のまた夢
心はいつだって四方八方に引っ張られ
張り付けにされた虫のように余裕がない
この胸の内はなんて薄っぺらいのだろう
厚く強くしても引っ張られて薄くなるだけで
伸びた分だけ不安定になる
吹けば飛びそうなほど弱かった頃の方が
よほど自由で楽だった
]]>JUGEMテーマ:詩
絶え間ない白波
乾いた砂浜には尖った貝殻
砂漠かと思うような遠景に
手を繋いだ仲睦まじい影が二つ
こんなに晴れているのに頭が痛く
こんなに海は綺麗なのに眠りそうで
暑いわけでもないのに喉が渇く
そもそもこれは現実の記憶か
夢で見た記憶か
立ちっぱなしのルーティワーク
退屈と飽きが押し寄せ
海もないのに波が聴こえそうなほど
潮風を感じそうなほど
記憶の景色が形を成していく
]]>JUGEMテーマ:詩
にわか雨 汗と混ざり
熱気が立ち込め 不快感が強くなり
逃げるようにエアコンの効いた店内へ駆け込む
磨りガラスにカマキリの影
灯りに寄って来る獲物を待ち構える
アイスは家に着くまでに溶けるから
すぐ食べきれる小さなやつにしよう
疲れているからエナジードリンクも買って
小腹を満たす為に見切り品のパンも一つ
夜道の光には強烈なニオイのカメムシ
ぼんやりと照らされる畦道に
彼岸花が沈黙し 収穫を待つ稲が眠る
秋の夜は長く 寂しくて切ない
だけど夏の寂しさとは違って
孤独を愛するようになる
]]>JUGEMテーマ:詩
何の用もなく街を歩き
信号待ちの群れを越えて
新幹線の高架下で無性に寂しくなり
自分勝手な黄昏に酔いしれる
振り返れば沈みゆく太陽が街を照らし
何を願うわけでもないのに祈りたくなる
駅前では派手な民族衣装を着た人が笛を吹き
遠いアンデスの情緒を感じさせる
何も欲しくないのに 何もかも欲しいような
生きていて楽しくないのに 生きているだけで充分なような
もどかしい気分も夕陽と一緒に沈めばいいのに
そうすればきっと 誰かと感情を分かち合えるのに
街はとても静かで
夕陽がたった一人の影を伸ばしていく
]]>JUGEMテーマ:詩
北国の彼岸頃
山間の棚田にはすでに葉っぱが色づいて
青々しい木々の中に黄色やオレンジが目立つ
アキアカネもじょじょに赤く染まり
収穫の終わった田んぼの畦では
ヘビがカエルを追いかけて
食物連鎖の一幕を見せる
遠い世界に還る命もあれば
命を頂いて長らえる命もある
命が謳歌した夏 命が巡る秋
喜びと悲しみが積み重なるにつれて
山は全てを飲み込むように
黄色く赤く色めいていく
]]>JUGEMテーマ:詩
簾が揺れて 温い風が隙間を通る
モクモクとよく育った雲が流れていき
晴れと曇りを繰り返す
セミは静かになり
コオロギやツユムシが代わりに歌う
熱気はあるが陽射しは丸くなり
昼間は暑いが朝晩は過ごしやすく
気まぐれに涼しい風を運ぶ
夏の終わりはいつだってホっとして
いつだって寂しく いつだって思い出が強くなる
窓の外から子供のはしゃぐ声が聴こえる
]]>JUGEMテーマ:詩
自由に生きている
不自由なほど自由に生きている
余計なモノを削ぎ落として
無駄な悩み 要らない重荷
捨ててしまって軽くなって
これでもかと自由になったのに
なぜか不自由に感じてしまって
無駄に悩み 重荷を背負い
捨てられずにいた頃の方が
足掻く力と 抗う情熱が強かった
どう望んでも人は雲になれないから
どう頑張っても風にもなれないから
自由になったが最後 寿命までの人生は監獄になる
不自由だから充実して たくさんの夢を見ていた
自由という足枷が重い
]]>JUGEMテーマ:詩
北の森は秋になり
ほんの少し夏の香りを残しながら
色付いた葉っぱや鮮やかな木の実で
大人びた暖色の装いになる
木の板で作られた道は池の上を伸びて
甘い匂いのする落ち葉と
甘い味のする透き通った湧水と
甘い空気が包む大樹と緑が茂る
深い森の奥へ誘う そして風が吹き
気の早くなった太陽が夕方には地平線を目指す
色と香りと甘さを吸い込み
苔の生えたベンチに座り
たった一人 気配を消して
光の森の中 秋の一部になる
]]>JUGEMテーマ:詩
青のような 緑のような
ガラスのように透き通る清流
苔の生えた岩の奥からやって来て
ゴウゴウと滝の音に乗って
サンダルの足をすり抜けていく
風は冷たい 水はもっと冷たい
小魚が足の指をつついてくる
遠い空からヘリの音がする
水に潜り 目を閉じて
いっときだけこの世から離れる
ここは生まれる前の場所
]]>JUGEMテーマ:詩
一匹の龍神と
四匹の聖獣が
星の並び 太陽の光
月の満ち欠け 海の干潮に感応して
自然を活かし 命を生かし
自然を溶かし 命を還す
果てしない循環は地球の血液
気の動く道 龍脈の流れ
様々な命は一つ一つの柱でありながら
己の命の主にして 己の物語のナレーター
北の玄武 南の朱雀 東の青龍 西の白虎
そして中央の黄龍
地球の吐息 命の巡りは神獣の鼓動そのもの
]]>JUGEMテーマ:詩
暑さあえいでもがく蛾
迷い込んだ屋内で空腹に弱るアブ
飛んでぶつかって触覚と前脚を失ったコガネムシ
干からびたミミズ 潰れたアシナガバチ
小さな命の抵抗と終焉
一つ一つ命が消えて
知らないどこかで一つ一つ命が増える
また目の前で虫がもがき ひっくり返っている
今日はやけに体が重い
飲みかけのジュース
ペットボトルの中で温くなっていく
]]>JUGEMテーマ:詩
おやすみするのは怖い
二度と目覚めないかもしれない
おはようするのは辛い
夢から覚めてしまう
こんにちわ こんばんわ さようなら
挨拶が嫌い
一人の時間が終わってしまって
一人の時間が始まってしまう
右みても左みても敵だらけ
上みても下みても罠だらけ
だから歯をくいしばって生きる
作り笑いで生きぬく
大丈夫さ きっとみんないっしょ
]]>JUGEMテーマ:詩
車に付いた異物
葉っぱだと思っていた
摘んで捨てると指先が濡れ
よくよく見るとカメムシだった
臭いは嗅がない
近くの葉っぱで手を拭い
青臭い汁で悪臭を打ち消す
投げ捨てられたカメムシは知らん顔
当然のことをしたまでだと
仁王立ちで明日の方を向いている
悪いのは俺らしい
カメムシを避けながら車を出し
己の不注意を戒めるため
あえて指先を嗅ぐ
]]>JUGEMテーマ:詩
田園と鉄塔と変電所
間を縫う細道の側溝に鹿の頭蓋骨
ここで死んだわけじゃなく
どこかから流されてきたんだろう
根元から折れた角 目の空洞が切ない
泥に汚れ 歯はキレイに残り
不気味ながらも美しくて
耳元でうるさい蚊を払いながら
しばらく見入り 最後に手を合わせた
まだ興味津々の犬は時々振り返る
リードを引き 100メートルも歩いた頃には
マーキングにオシッコにと忙しくなっている
生きていれば後ろのことよりも
目の前の用事が大事になる
生き物は生きている限り進むように出来ている
残した足跡は時間の缶詰 自分じゃない誰かが開けて
前に進む糧にするだろう
]]>JUGEMテーマ:詩
盛り土は大陸
畦道は渓谷
根は山脈 茎は森
葉は屋根であり雲
夕立は隕石 陽光はレーザー
一つの田んぼから向かいの大樹まで
イモ虫にとっての試練が始まる
過酷な旅を乗り越えた者の影が
イモ虫の足元にヒラヒラと踊る
]]>JUGEMテーマ:詩
置時計と腕時計がズレている
どっちが正しいのか
スマホを見るとハッキリするけど
どちらもそのままに放っておいて
ズレたまま 何が正しいのか分からないまま
家を後にして 遅刻するかどうか知らないまま
土曜にしては車の多い国道を走る
正しいことを知らない方がいいことだってある
憂鬱な土曜出勤に無駄な緊張感を味わうことで
職場に着くまでの間 緊張が憂鬱を押さえ込んでくれる
]]>JUGEMテーマ:詩
ひと粒の雫 大粒の雨
バチバチと屋根を弾き
熱気を包んで辺りを蒸し風呂にする
体内に浸透する気温は危険を感じるほどで
暑い冷や汗が額を濡らす
たまらずスポーツドリンクを流し込むも
すでに熱を持った体は恐ろしく怠く
湿気に息苦しささえ覚える
どうしてこんな日に重いダンボールを運んでいるんだろう
どうしてこんな暑さの中で周りに愛想を振りまいているんだろう
誰も教えてくれないから
暑い冷や汗を拭って人生の導を探す
]]>JUGEMテーマ:詩
この世との別れを惜しむセミ
力を振り絞ってバタバタと羽ばたく
セミより短い寿命のカゲロウ
窓明かりに張り付いて尻尾を動かしている
入道雲はもっと寿命が短く
雷と夕立を撒き散らして
一日と経たずに消えていく
大木はそれらに比べて不死身のごとく長らえ
たくさんの記憶を葉に宿しては落としていく
虫や雲のように短い生
大木のように悠久の生
中途半端な人間の時間は
迷いと悩みに足を取られ 手を絡められ
一瞬と永遠の両方に憧れを抱きながら
得ることも捨てることも難しいまま
透明でも鮮やかでもない命と共に
窓明かりの傍に立ち セミの声を聴き
大木の陰で雲を眺め 半透明のままに
ひたすらどこまでも夢を見る
]]>JUGEMテーマ:詩
花火の音に犬が怯える
子供は喜び 大人も童心に返る
マンションの向こう 橋の向こう
ドンドンと空を叩き 夜を明るく染めるけど
人の歓喜を尻目に 僕は車に犬を乗せて遠ざかる
垂れていた尻尾が元に戻っていく
離れても大輪は見えるけど
音はずいぶん小さくなった
犬は上機嫌に歩き 草を嗅いではマーキングをし
もってきた水を美味そうに飲み
エアコンの効いた車内で心地よく眠る
気づけば自分も隣で寝落ちして
目覚めた頃には花火は終わり
日付も跨いだ後だった
犬は喜んで家に戻り
僕は白む空に目を擦る
花火の音と人の喧騒が去った朝はとても静かで
犬の寝息がよく聴こえる
]]>JUGEMテーマ:詩
春の陽射しを忘れた頃
夢中だった夢も忘れてしまう
暑い夏の空気に気力と体力を奪われ
秋には疲れを癒そうとあらゆることを捨て
冬には春に備えて引きこもる
そして春には短い夢が始まり
目的を成し遂げる暇もなく終わりを告げる
繰り返す不遇の回転
抜け出せない落下の引力
台風の目のように
頭上だけが清々しく晴れていて
叶わない夢を見せつける
悲しくはあるが それでも光は希望を与えてくれる
タンポポの群れの中
ヒマワリのように振る舞うことで
人生の罠から目を背ける
]]>JUGEMテーマ:詩
草葉の陰に少年の影が走る
小川で戯れる小魚を飛び越え
青い稲のなびく畦道を駆け抜け
太陽の暑さをものともせずに
網とカゴと プラスチックの水筒を肩に掛け
岸部にそびえる大木に見守られながら
一緒に遊ぶはずだった友達にすっぽかされた悲しさを
まだ始まったばかりの夏休みの嬉しさで打ち消し
ポケットに入った100円で
ジュースを買おうかアイスを買おうか迷いながら
橋向こうの土手の下 虫の楽園を目指す
やがて少年の影は陽射しの中に消失してしまう
これは思い出か あるいは夢を現実と錯覚しているのか
手を伸ばしても触れることの出来ない 夏の幻
]]>JUGEMテーマ:詩
車道のど真ん中
ひっくり返ったセミはまだ生きている
可哀想だと思ってつまみ上げ
草地へ寝かせてやろうとしたら
ミミミミ ジジジジと音を立て
羽をばたつかせて抵抗する
何をする気だ 静かに眠らせろと
あるいは命を終わらせるな
寿命は残っているんだと
怒りのアピールをして
つまんだ指から逃れようと
わずかな力を振り絞っている
草地に寝かせると しばらく鳴いてから
落ち着きを取り戻したのか大人しくなる
翌日 どうなったのかは見ていないけど
良いことをしたのか 余計なお世話だったのか
人間の自分には分からない
まだまだこれからのセミが
蒸し暑い夏夜に鳴いている
道路にはまたセミが転がっていた
]]>JUGEMテーマ:詩
誰に頼るわけでもない
かといって一人でこなせるわけでもない
一人が好きでも 一人では寂しく
誰かといたくても 誰かといると息苦しくなる
うだる暑さの午前一時
月は心なしか近く感じて
星さえ傍に思える
なのに手の届くモノほど遠く見えて
そこにあるのに離れていく
孤独と群れの狭間で幸不幸の波に晒され
生き方の定まらないまま歳だけ重ねていく
]]>JUGEMテーマ:詩
遠くで空が光る
雷鳴に犬が吠え
風が強くなって熱気を払う
期待する この灼熱を冷ましてくれと
山の向こうから迫る真っ白な要塞
地上をすっぽり覆う巨大さ
早く来てくれ 涼しくしてくれ
その願いは虚しく裏切られ
入道雲は西へ進み
たまに光と雷鳴だけを飛ばしてくる
心なしか流れる汗が増えた
シャツの襟元は濡れ
背中はじっとりと張り付き
羨ましく空の要塞を見送る
]]>JUGEMテーマ:詩
眠い目をこすっても
朝に抗えるわけじゃない
昨晩の思索 ふと思いついた真理は
ただの妄想 一時の思い過ごし
朝になれば眠気にボヤけ
なんてことない孤独な夜の暇つぶしだと覚める
冷凍庫に入れたジュースが
ちゃんとシャーベットになっているかの方が
よほど気がかりで重大な問題になっている
シャリシャリの甘い塊で口を冷やし 飲み下すと
昨晩の思索も腹に沈んでいく
そして夜にはまた 少し形を変えて脳みそに登って
朝にはガラクタの破片になり リサイクルされる夜を待つ
自分を励ます希望 自分を蝕む不安 命を動かす想像と妄想
気づかぬうちに ナメクジの速度で生まれ変わっていく
]]>JUGEMテーマ:詩
アリは細胞 群れて脳と体
一匹一匹は小さく 知能も微々たるもので
何百何千何万と群れを成して
一匹一匹が細胞のように機能して
群れで一つの生き物になる
人と変わらない やっていること
動く仕組み それぞれの役割を背負っていること
一匹一匹はそんなことも知らず生きている
群れで見ればまったく変わって
一匹一匹に意味があって それを理解していなくても
細胞のように仕事をこなし
群れて脳と体を形成する
アリに限らす 虫は独自の言語と知能を持ち
恐竜より前から滅ぶことなく生きている
とても頭の良い宇宙人から見たら
人と虫は同じ生き物に思えて
区別する意味がないと言われるかもしれない
]]>JUGEMテーマ:詩
陽が落ちてもコンクリートは容赦なく
裸足にジンジンと熱を突き上げる
手のひらを着けばさらに熱く
寝苦しい夜の原因がここにある
無機物も涼しくなりたいと
太陽が顔を隠せば放熱を始め
スクワットをするお前の足裏が邪魔だとばかりに
こいつをどかせと怒りをぶつけてくる
みんな暑がっている あご先から汗が垂れ
コンクリートに染みを作ってはすぐに消えていく
]]>JUGEMテーマ:詩
夏の夜空にいくつもの星
金星は明星 明け方にも宵い時にも輝き
北斗七星は逆さまに空を回る
北極星は動かず天に鎮座して
カシオペア座も北に眠る
温く不快で肌にべたつく空気
鋭く透明に夢を投げかける星空
真っ暗な駐車場に一人立ち
辛い現実を胸に仕舞い
星の夢に吸い込まれる
]]>