竜人戦記 第二十五話

  • 2010.08.31 Tuesday
  • 09:20
 焚き木がパチパチと音を鳴らせながら明かりを灯していた。
魔女のいた廃村から旅立つこと二週間。
ケイト達は野宿をしていた。
簡単な食事を終えて、みんなくつろいでいた。
フェイはマルスと武道の話で盛り上がっている。
リンは眠いのか、横になって目を閉じていた。
ウェインは黙ってただ焚き木を見つめていた。
ケイトはウェインの横顔をじっと見ていた。
この人はいつも何を考えているのだろうと思う。
愛想は悪いし、素っ気ないし。
そこでケイトは思った。
ウェインさんのことを色々と聞いてみようかと。
思えばケイトは、何もウェインのことを知らないのだった。
一緒に旅をしているのに、ウェインのことは竜人という以外には何も知らない。
ケイトはウェインの横に座り、その横顔をじっと見つめながら話しかけた。
「ねえ、ウェインさんの故郷ってどんな所なんですか?」
ウェインはケイトの言葉が聞こえないかのようにただじっと焚き木を見つめている。
ケイトはもう一度尋ねた。
「ウェインさんの故郷ってどんな所ですか?」
また無視されるのかなと思っていると、ウェインは焚き木に枝を放り込みながら答えた。
「小さな村だ。」
ウェインが反応を示してくれた。
ケイトは少し以外だった。
いつもは魔人に関すること以外は口をきいてくれないのに、それ以外の質問に答えてくれたのだ。
ケイトはさらに聞いた。
「へえ、そうなんですか。
どんな村だったんですか。」
ウェインはケイトの方を見ずに答えた。
「人里離れた田舎だ。
山の奥にある。」
ケイトはだんだんと興味をそそられてきた。
竜人であるウェインは一体どうやって育ったのだろう。
そもそもウェインの両親はどんな竜と人だったのだろう。
竜人は、竜が魔人に対抗する為に、人間との間にもうけた子供だと聞いた。
一体ウェインを産んだ親はどんな人だったのだろう。
いや、もしかしたら産んだのは竜の方かもしれない。
「ウェインさんは両親のことを覚えていますか?
竜と人間のハーフだけど、お父さんが竜?
それともお母さんが竜?」
ウェインはさらに焚き木に枝を足しながら言った。
「父親の方が竜だ。
俺は父親の顔を知らん。」
「どうしてですか?」
「悪魔との闘いで死んだからだ。」
過去に起こったという竜と悪魔の大戦。
ウェインの父親の竜は、ウェインが産まれてくる前に悪魔と闘って死んだということだろうか。
「じゃあお母さんの顔は覚えているんですか?」
ケイトはウェインの顔色を窺うようにして尋ねた。
「ああ、今はもう死んだが、母親ははっきりと覚えている。」
ケイトはウェインの母親に強く興味をそそられた。
ケイトも焚き木を見ながら尋ねた。
「ウェインさんのお母さんって、どんな人だったんですか?
美人でした?」
ウェインは焚き木から宙に目をやり、何かを思い出すように答えた。
「母は綺麗な人だったよ。
それに優しかったな。
俺は父親の顔は知らんから、特別な感情は何もないが、母には感謝している。」
ウェインの口から感謝という言葉が出てくることが以外だった。
「ウェインさんでも、感謝っていう言葉を使うんですね。」
するとウェインはケイトの方に視線を向けた。
「お前はもしかして、俺が血も通っていない冷徹な奴だと思っているんじゃないのか?」
「そんなことありませんよ。
ただウェインさんが感謝って言葉を口にするのが以外だっただけです。
ねえ、もっとウェインさんの過去のことを聞いていいですか?」
ケイトはウェインの目を見ながらそう言った。
「お前、俺の過去なんかに興味があるのか?」
ケイトは二コリと笑って頷いた。
「だって私、ウェインさんのこと竜人っていう以外に何も知らないんですもの。
そう思ったら、急にウェインさんの過去に興味が湧いてきちゃって。
これ以上過去のことを聞かれるのは嫌ですか?」
ケイトが尋ねると、ウェインは再び焚き木に視線を戻した。
焚き木は相変わらずパチパチ音をさせながら燃え続けている。
「いや、そんなことはないが。」
ウェインは小さな声で答えた。
「じゃあもっと聞いてもいいんですね?」
ケイトが言うと、ウェインは軽く笑った。
「まあ、暇つぶしにはなるか。
いいだろう。
何でも質問に答えてやるよ。」
ウェインはケイトを見て言った。
「じゃあ最初から聞かせて下さい。
どんな子供だったか、どんなお母さんだったか。
どんなふうに育ったか。」
ウェインは頷くと、宙に視線をやりながら話し始めた。
「俺が産まれたのは名も無いような小さな村だ。
もの心がついた時には、母親しかいなかった。
俺はそのことを疑問には思わなかったな。
そういうもんだと思っていた。
母は村でも一番の美人でな。
俺は優しく育てられたよ。
まあ、たっぷり愛情を注いでもらったわけだ。
最初、俺は自分が竜人だとは知らなかった。」
ウェインはそこで一呼吸置いた。
ケイトはウェインの横顔を見ながら聞いた。
「じゃあいつ竜人だって知ったんですか?」
「母が教えてくれたよ。
あれは俺がまだ五歳くらいの時だった。
村にいた子供達と一緒に遊んでいたんだ。
その頃の俺は活発なガキでな。
村の子供達と一緒に、色んな遊びをしたよ。
でもその中でおかしいなと感じることがあったんだ。
それは俺の力が他の子供達より、いや、村の大人達より強いということだった。
一度村の子供達と一緒に、誰が一番力持ちか比べようということになった。
内容はどれだけの大きさの石を持ち上げられるかっていうことだった。
他の子供達は両手でなんとか抱えられるくらいの石を少し持ち上げられる程度だった。
しかし俺は、川の近くにあったでかい岩を持ち上げて見せたんだ。
他の子供達はびっくりしてたよ。
それに駆けっこをさせても速かった。
村の大人達より断然な。
他にもある。
村の大人達が火をおこそうとしていた。
俺はそれを近くで見ていた。
その時ふと思ったんだ。
いや、感じたという方が正しいかもしれない。
俺の手から火が出るんじゃないかってな。
火をおこそうとしている大人たちに近寄って、俺は右手を出した。
すると俺の手から小さな火が出たんだ。」
ケイトはそこまで話を聞いて言った。
「じゃあ火をおこそうとしていた大人たちは、みんなびっくりしたでしょうね。」
しかしウェインは首を振った。
「いや、それがそんなに驚かなかったんだよ。
大人たちは顔を見合わせ、そして俺の方を見た。
その晩、大人たちが村長の家に集まって何か話し込んでいるのを俺は見たんだ。
俺の母もその中に混じっていた。
一体何をしているんだろうと俺は思ったよ。
その次の日だった。
母から話があると言われた。
母はいつになく真剣な顔だったのを覚えている。
その時に言われたよ。
俺は人間ではない。
竜と人間のハーフの竜人なんだと。
俺は何のことだか分からなかった。
まだ五歳のガキだからな。
しかし母は真剣な顔で説明してくれた。
俺には重大な使命があること。
それは魔人を倒すことだと。
魔人は地獄の門を開こうとしていて、俺にはそれを止める使命があると母は言った。
俺はその日は何が何だか分からなかった。
だが、次の日から変わったんだ。
村の大人が俺に剣の稽古をつけるようになった。
あとから知ったんだが、俺に剣の稽古をつけてくれていた人は、有名な剣の達人だったんだ。
なんでそんな剣の達人が、名も無い村にいたのかって思うだろ。
全ては計算されていたことなんだ。
村にはいた大人は、みんな俺が竜人であることを知っていた。
そして村にいた大人は、みんな何かの達人だったり、偉い学者だったりした。」
「何でなんですか?」
ケイトは不思議に思いながら尋ねた。
「だから最初から計算されていたことだったんだよ。
母が俺を妊娠すると、俺の父親は俺を立派な竜人に育て上げる為に、剣の達人や魔法の達人、それに偉い学者を一つの村に集めたんだ。
そしてその人達に頼んだ。
これから産まれてくる自分の子供は、魔人を倒す使命を持っている。
その子はこの世の希望だ。
だから立派な竜人に育て上げて欲しいとな。
村に集められた大人達は、みんなそれを了承した。
それから俺は、毎日のように剣の稽古に励み、魔法の修行をし、学者から色んなことを学んだ。
俺の産まれた村は、俺の為だけに存在していたんだ。」
ケイトは息を飲んだ。
焚き木がパチっと弾ける。
ウェインは続けた。
「竜人は通常の人間より長生きする。
だいたい普通の人間の三倍の寿命はある。」
「そんなに!」
ケイトは思わす声をあげた。
「だから俺が一人前の大人になるには時間がかかった。
通常の三倍な。
俺が一人前の大人になる頃には、俺が子供の頃にいた大人達は全員亡くなっていたよ。
母も含めてな。
そして俺は思った。
もう俺には十分力がついたとな。
そう確信した。
そしたら自分の頭の中で声がしたんだ。
旅に出ろってな。
魔人を倒せという声が、俺の頭の中で響いた。
俺は旅に出る決意をした。
そして俺はその時の村長からある者を渡された。」
「それは何なんですか?」
ケイトは尋ねた。
「あの大剣と、破邪の石だ。
あの大剣は竜の牙を使って、有名な人間の刀鍛冶が作ったものなんだ。
そして魔人の行き先を教えてくれる破邪の石を渡された。
そうやって俺は、魔人を倒す旅に出たってわけだ。」
ウェインはそこまで言うと、脇に置いてあった水の入った筒をグイッと飲んだ。
「どうだ、満足したか?」
ウェインがケイトを見て言う。
本当はケイトは満足していなかった。
もっとウェインの母親の話を聞きたかったし、ウェインが大人になるまでの過程を詳しく聞きたかった。
ただ、これ以上聞くのは無粋な感じがして、ケイトは笑顔で「満足しました。」と答えた。
するとウェインは焚き木の火を消して言った。
「だったらもう寝ろ。
明日からまた旅が始まるんだ。」
そう言うとウェインは横になった。
ケイトはふと横を見ると、フェイとマルスも眠っていた。
ケイトはウェインの過去を知れたことを少し嬉しく思った。
そして自分も寝る為に横になった。
その時、ふとある疑問が頭をよぎって、ウェインに尋ねた。
「ウェインさんて、今何歳なんですか?」
するとウェインは軽く笑いながら答えた。
「さあな、何歳だと思う?」
それ以上返事はなく、ケイトはウェインって一体何歳なんだろうと考えた。
ケイト達より年上なのは間違いない。
でも、まあそんなことはどうでもいいかかと思い、ケイトはウェインの話を思い出しながら眠りについた。



味のり

  • 2010.08.31 Tuesday
  • 09:15
 味のりって美味しいですよね。
ご飯にも合うし、お酒にも合う。
でも私は、そのままバリバリと味のりを食べています。
もうおやつ代わりです。
気が付くと、小さな缶を一つあけてしまっています。
味のりって食べると止まらなくなります。

犬のシャンプー

  • 2010.08.31 Tuesday
  • 09:11
 外で飼っている犬は、だんだんと毛が汚れて臭くなります。
だからたまにシャンプーをしないといけません。
以前飼っていた犬は、シャンプーが大嫌いでした。
というより水が苦手でした。
でもシャンプーを終えた犬は、とてもいい匂いがします。
嫌がっていた犬も、シャンプーが終わったあとは気持ち良さそうでした。

竜人戦記 第二十四話

  • 2010.08.30 Monday
  • 08:36
 カーロイドの街でケイト達と別れてから、マリーンは西に向かって旅をしていた。
その方角からエリーナの気を感じたからだ。
カーロイドの街に滞在している時、ケイトから仲間に加わらないかと誘われた。
マリーンはそのことが嬉しかったし、真剣に考えた。
しかし結局ケイト達と一緒に旅をすることは辞退した。
その理由はエリーナを止める責任は自分一人にあると思っていたからだ。
マリーンには、ケイト達と一緒に旅をすることは、彼女たちに甘えることのように感じられたのだ。
マリーンは決意していた。
エリーナは必ず自分の手で止めてみせると。
西に向かってずっと歩いていると、途中で綺麗な池があった。
マリーンはそこで水浴びをした。
冷たい水が体に心地良い。
池の水は透き通っていて、中を泳ぐ魚達が見えた。
マリーンは水浴びを終えたあと、池の魚を一匹しとめた。
それを焼いて食べ、少し休憩してから再び歩き出した。
今頃エリーナはどうしているだろう。
また人間を殺しているかもしれない。
そう思うと、早くエリーナを見つけなければと心が焦った。
マリーンはひたすら西に向かって歩いて行く。
ほとんどは平坦な道のりだったが、途中で大きな川があった。
川には橋が架かっていて、マリーンはその橋を渡る途中、川の対岸のそばに数人の人間を見つけた。
何やら川に向かって祈りを捧げているようだった。
無視して行こうかと思ったが、何か気になったので、マリーンは橋を渡り終えると、川に下りて人間達の近くに向かった。
「失礼ですが、何をしていらっしゃるの?」
マリーンは人間達に声をかけた。
人間は五人いて、初老の男性一人に、若い男性が四人いた。
マリーンが声をかけると、初老の男性が訝ったような目でマリーンを見た。
マリーンは微笑み、初老の男性を見た。
「あんた、誰だね?」
初老の男性が聞いてくる。
「私はエルフのマリーンといいます。
橋の上からあなた達が何か祈っているのが見えたので、何をしているのかなと思って声をかけたんです。」
マリーンがそう言うと、初老の男性は手で顎を触りながら答えた。
「水神様に祈りを捧げている所だ。」
「水神様?」
マリーンは聞き返した。
初老の男性は頷くと、説明を始めた。
「私らの村では水神様を祭っているんだ。
この川には昔から水神様がいらっしゃってな。
村の守り神として崇めてきたんだ。」
マリーンはじっと初老の男性の顔を見ながら話を聞いた。
初老の男性は川に目を向けると、続けて言った。
「でもな、最近水神様を祭っている建物が壊されたんだ。
犯人を見たという人間がいる。
あんたと同じエルフで、浅黒い肌をして鞭を持っていたという。」
エリーナだ。
マリーンは思った。
「その水神様を祭っていた建物を壊したエルフは、その後どうしたんですか?」
マリーンは勢い込んで尋ねた。
「その犯人を見たという者によれば、これでこの村の人間は全員死ぬとか言って去って行ったそうだ。」
エリーナはまた人間に危害をもたらした。
そう考えると、早く彼女を止めなければという思いが強くなった。
「水神様を祭る建物を壊されると、何か不都合でもあるんですか?」
マリーンは尋ねた。
すると初老の男性は力強く言った。
「何かあるなんてもんじゃない。
そんなことになれば、水神様がお怒りになって村を襲うんだ。
実際に、水神様を祭る建物が壊されてから、何度か村は水神様に襲われたんだ。
その度にわしらは避難しとる。
怪我をした者もいるし、命を落としかけた者もいる。
だから今は急いで水神様を祭る建物を修復している所だ。
その間、水神様がお怒りにならないように、こうして川に祈りを捧げに来とるんだ。」
初老の男性はそう言うと、また祈り始めた。
「水神様はこの川にいるんですか?」
初老の男性は祈りながら「そうだよ。」と言った。
マリーンは思った。
これはエリーナが引き起こした事態だ。
ならばその責任は自分が取らなければいけないと。
マリーンは祈りを捧げている初老の男性の傍に寄り、話しかけた。
「その水神様の建物を壊したのは、もしかしたら私の妹かもしれません。」
その言葉を聞くと、「本当か。」と言って初老の男性は振り向いた。
「はい。
実は私はその妹を追って旅をしているんです。
妹のやったことは姉である私に責任があります。
だからどうか力にならせて下さい。」
初老の男性は他の人間達と目を見合わせ、頷いた。
「分かった。
しかし責任を取ると言ってもどうやって取るんだ?」
マリーンは顔を引き締めて言った。
「その水神様は村を襲うんですよね。
だったら、私が村を水神様から守って見せます。
こう見えても、弓矢の腕には自信があります。」
マリーンがそう言うと、初老の男性はしばらく考え込んでから頷いた。
「分かった。
あんたの言葉を信じよう。
わしはクックという。
今から村に戻ろう。
水神様はたいてい夕方頃になると村を襲いに来る。」
マリーンは頷き、そしてクック達と一緒に村へと行った。
村はメイルの村という名前で、クックはマリーンを村長の元へ連れて行き、事情を話した。
村長は頷き、マリーンに「よろしくお願いします。」と言って頭を下げた。
マリーンは夕方になるまで村の子供達と遊んで過ごした。
そしてだんだんと陽が沈みかけた頃、クックがマリーンに近づいて来て言った。
「もし今日水神様が村を襲って来るとすれば、もうすぐだ。」
マリーンは川のある方向を眺めた。
それから三十分ほど経った時、遠くに何かの影が見えた。
クックは言った。
「来た!
あれが水神様だ。
みんなを避難させなければ。」
クックは大慌てで村の人々に水神様が来たぞと言って回った。
村人達はみんな、村の外へと避難して行った。
「じゃあ後のことは頼んだぞ。」
クックはそう言い残し、自分も避難して行った。
遠くの影がだんだんと大きくなる。
その影が近づいて来るにつれて、水神様はかなりの大きさだと分かった。
そして村の入り口に水神様がやって来た。
とても奇妙な生き物だった。
ヘビと魚を混ぜ合わせたような格好だ。
水神様は奇妙な声をあげると、村を見回し、近くにあった家に体当たりをくらわした。
家は半分ほど壊れてしまった。
マリーンは水神様の前に立ち、大声で言った。
「あなたはこの村の守り神でしょう。
ならもう村を襲うのはやめて。
あなたを祭る建物は、今は村人が直そうとしているわ。
だからどうか怒りを鎮めて。」
水神様はマリーンに目を向けると、また奇妙な声をあげて襲いかかってきた。
マリーンはとっさにそれをかわす。
どうやら説得が通じる相手ではなさそうだった。
マリーンは弓矢を構え、水神様に向けた。
水神様はまたマリーンに襲いかかって来た。
マリーンは水神様に向かって矢を放った。
矢は水神様の顔に命中し、苦しそうな声をあげた。
すると水神様はぶるぶると体を震わせ始めた。
何が来るのだろうとマリーンは弓矢を構えた。
水神様は口から凄い勢いで水を放った。
マリーンは横へ飛んでそれをかわした。
その威力は凄まじく、水神様の放った水は地面に当たり、地面は大きくえぐれていた。
こんな攻撃をくらったらひとたまりもない。
マリーンはそう思いながらまた矢を放った。
また水神様の顔に命中する。
再び苦しそうな声をあげ、水神様はまた口から水を放った。
マリーンは必死にそれをかわした。
水はマリーンの後ろにあった家に当たり、その家を破壊してしまった。
マリーンが次の矢を構える。
その時だった。
水神様の振った尻尾がマリーンに当たり、マリーンは大きく後ろへ飛ばされてしまった。
マリーンは家に体をぶつけ、そのダメージで苦しんでいると、水神様がまた水を放ってきた。
マリーンは慌ててそれを回避する。
マリーンの後ろにあった家は壊されてしまった。
マリーンはもう手加減するのはやめようと思った。
相手が村の守り神の水神様ということで、少し手加減していたが、そんなことをしていたらこちらがやられてしまうと思った。
水神様はまた水を放ってきた。
マリーンはそれをかわすと、連続で三本の矢を放った。
それが水神様の体に突きささり、苦しそうに身悶えした。
マリーンはすかさず次の矢を連続で二本放った。
矢は水神様の体に命中し、苦しそうな声をあげながら、たまらず倒れ込んでしまった。
「これでとどめよ。」
マリーンは矢を構え、水神様の頭に狙いを定めた。
その時だった。
「水神様を殺さんでくれ!」
クックがマリーンに走り寄って来た。
「危ないわよ。
避難していて!」
マリーンはクックに言った。
しかしクックは首を横に振った。
「水神様は自分を祭る建物を壊されて怒っているだけなんだ。
悪いのは水神様を祭る建物を壊したあんたの妹だ。」
そう言われて、マリーンは弓矢を下げた。
確かに悪いのはエリーナだ。
彼女が水神様を祭る建物を壊さなければ、こんなことにはならなかった。
クックは倒れている水神様の前に近寄って、跪いた。
「水神様。
どうかお怒りをお鎮め下さい。
水神様を祭った建物はすぐに元通りに直します。
だからどうか、どうかお怒りをお鎮め下さい!」
クックは頭を下げた。
気がつくと、避難していた村人全員が戻って来ていた。
そして村長も、女も子供も水神様に向かって頭を下げた。
「どうかお怒りをお鎮め下さい。」
村人全員がそう言った。
マリーンは黙ってその光景を見ていた。
やがて水神様は倒れていた体を起こし、村人全員を見渡すと、奇妙な声をあげながら傷付いた体を引きずるようにして村を去って行った。
「これでよかったの?」
マリーンはクックに向かって言った。
「ああ、水神様は今までに何度も村に現れた魔物を倒してくれたんだ。
この村には教会が無いから、水神様だけが頼りなんだ。
私ら村人は何度も水神様に魔物から助けて頂いた。
これからも、この村を守って頂きたいんだ。」
クックはそう言うと、マリーンに向かって笑って見せた。
マリーンはクックの言葉に納得し、弓矢を背中におさめた。
「あんたには礼を言うよ、ありがとう。」
クックがマリーンに向かって頭を下げた。
「そんな、元はと言えば私の妹がやったことだわ。
お願いだから頭をあげて。」
マリーンはクックに言った。
「水神様はわしらの気持ちを分かってくれたであろう。
もう村が襲われることはないと思う。」
村長がそう言うと、クックが頷いた。
そしてマリーンに向かってクックは言った。
「確かマリーンさんだったな。
あんたにはお世話になった。
どうか今日はこの村で泊っていってくれ。」
すると村長も言った。
「あんたのおかげで水神様はわしらの気持ちを分かってくれた。
クックの言う通り、どうか今日はこの村に泊っていってくだされ。」
マリーンはその好意を受けることにし、その晩は村に泊った。
翌日、マリーンが旅立ちの準備を終えて村を出て行こうとすると、クックが言った。
「わしらの村のことに巻き込んで済まなかったな。」
マリーンは首を振った。
「そんな。
元はと言えば私の妹がやったことだし、それに村を守ると言ったのは私だもの。
気にしないで。」
マリーンは微笑んだ。
「これからのあんたの旅の無事を祈っとるよ。」
クックはそう言うと、二コリと笑って見せた。
マリーンは「ありがとう。」と言うと、村を後にした。
エリーナは相変わらず人々に危害をもたらしている。
一刻も早く止めなければ。
マリーンは強くそう思い、エリーナの気がする西へと旅立って行った。

かき氷

  • 2010.08.30 Monday
  • 08:33
 夏の風物詩の一つ、かき氷。
夏祭りなんかでは絶対と言っていいほど売っていますよね。
あれって元はただの氷なのに、どうしてあんなに美味しいんでしょう。
口いっぱいに頬張って、頭が痛くなった記憶があります。
夏は一度はかき氷を食べたいですね。

夏休みの宿題

  • 2010.08.30 Monday
  • 08:30
 もうすぐ8月も終わりですね。
ということは、子供達の夏休みも終わりということです。
夏休みの終わりといえば宿題ですね。
私はいつもい最後までため込んでいました。
最終日に必死になりながら夏休みの宿題をやったのは、いい思い出です。

竜人戦記 第二十三話

  • 2010.08.29 Sunday
  • 09:15
 廃村を吹き抜ける生温い風がケイトの頬を撫でた。
ケイトは教会の扉の前に立ち、魔女のレインに対峙するウェインを見つめていた。
竜人と魔女の闘い。
一体どんな闘いになるのか、ケイトは予想も出来なかった。
魔女のレインは周りにいたゾンビ達に目をやり、「行け!」と合図した。
十数匹のゾンビ達がウェインに襲いかかる。
ウェインは大剣を振りかざし、ゾンビ達を斬りつけた。
一気に四匹のゾンビが真っ二つになる。
残りのゾンビがウェインに襲いかかる。
ウェインは大きく後ろにジャンプし、右手を前に出した。
その右手から光の球が放たれる。
光の球をくらった二匹のゾンビは溶けてしまった。
ウェインは残ったゾンビをあっという間に斬り裂いていき、ものの一分たらずで十数匹のゾンビ達を倒してしまった。
「さすが竜人だな。
ゾンビでは相手にならんか。」
レインは呪文を唱え始め、両手を大きく上にあげた。
すると両手の上に巨大な炎の球ができ、それをウェインめがけて放った。
ウェインは上に飛んで巨大な炎の球をかわした。
炎の球は地面にぶつかると、大きく弾けて辺り一面に炎が広がった。
その熱風がケイトの方にまできて、ケイトは思わす手で顔を覆った。
ウェインは地面に着地すると、一気にレインに距離を詰め、その体に斬りかかった。
そしてウェインの剣がレインをとらえたと思った瞬間、レインは消えてしまった。
次の瞬間、レインはウェインの後ろにいた。
レインはまた呪文を唱え、右手を前に出す。
その手から衝撃波が放たれ、ウェインはそれをまともにくらった。
ウェインは大きく後ろに吹き飛ばされ、レインはさらに呪文を唱えた。
ウェインは衝撃波のダメージをあまり受けてはいないようだったが、レインの強さには驚いているようだった。
レインは両手を前に出すと、その手から雷を放った。
ウェインはまたもレインの攻撃をまともにくらい、今度は少しダメージを受けたようだった。
「どうした、その程度か、竜人。」
レインがせせら笑う。
するとウェインは本気になったようだ。
魔人と闘う時のように全身を光の膜で覆い、大剣は黄金の光を放ち始めた。
ウェインは素早く駆けてレインに斬りつける。
しかしまたもレインは消えてしまった。
今度はレインはウェインの後ろの宙に浮いており、ウェインを見下ろしながら言った。
「もっと本気でかかってこい、竜人。」
レインは呪文を唱え、両手を広げた。
すると分身の術のようにレインが五人になった。
「さあ、行くぞ、竜人。」
レインが言う。
ウェインは大剣を構えた。
宙に浮いた一人のレインを残し、四人のレインがウェインを囲んだ。
そして四人それぞれのレインが呪文を唱え始めた。
ウェインを囲んだ四人のレインは、その手から一斉に炎を放った。
ウェインがその炎に包まれる。
「ウェインさん!」
ケイトは叫んだ。
魔人以外にウェインがここまで圧倒されるのを、ケイトは初めて見た。
ウェインは炎に包まれている。
このままウェインはやられてしまうのかとケイトは思った。
するとウェインは炎の中で、大剣を大きく上に向かって振り上げた。
するとウェインを包んでいた炎が竜巻のように巻き上がり、どんどん周囲に広がって行く。
ウェインを囲んでいた四人のレインはその炎の竜巻に飲み込まれ、消滅した。
「ふふふ、やるな、竜人。」
レインがそう笑った時、ウェインが宙に浮かんでいるレインの近くまで飛び上がり、レインの体に剣を突きさした。
そして剣を引き抜いて着地するウェイン。
ウェインは炎によるダメージを受けていなかった。
ケイトは思った。
おそらくウェインを包んでいる光の膜が、彼を守ったのだろうと。
体を突きさされたレインは、その傷から赤い血を流していた。
「私は魔女。
この程度の傷では死にはしない。」
レインはそう言うと、また呪文を唱え始め、右手をウェインに向けた。
するとレインの右手から巨大な獣の魔物が現れた。
獣は大きな口をあけてウェインに襲いかかる。
ウェインは後ろへ飛んでその攻撃をかわした。
すると、ウェインのすぐ後ろにレインがいた。
レインは右手から衝撃波を放ち、ウェインを獣の方へと吹き飛ばした。
獣は大きな口をあけて、ウェインを待ちかまえる。
ウェインは獣の口のすんでの所で止まり、獣に斬りかかった。
斬られた獣は苦しそうに声をあげた。
すると今度はレインはウェインの真上にいた。
呪文を唱え、さっきよりも強烈な雷を落とす。
ウェインは黄金に光る大剣でその雷を受け止めた。
そこに獣が襲いかかる。
ウェインは獣の口に咥えられてしまった。
獣はウェインを噛み砕こうとする。
レインは呪文を唱え始め、両手を上に向けた。
ウェインは大剣を獣の顔に突き立てた。
獣はまた苦しそうな声をあげて、ウェインを離した。
そこへレインの呪文が炸裂する。
レインが上に向けていた両手を下に向けると、その両手からゾンビの群れが現れた。
ゾンビはウェインに襲いかかる。
ウェインはレインに、獣、そしてゾンビの相手をすることになった。
ウェインはゾンビを斬り裂き、上へジャンプしてレインに斬りつけようとした。
するとまたレインは消えた。
今度はレインは獣の後ろにいた。
ウェインは襲いかかってくる獣とゾンビの両方を相手にした。
ゾンビを斬り裂き、獣の攻撃をかわして、上へジャンプした。
そして下に向かって右手を突き出し、先ほどより大きな光の球を放った。
ゾンビの群れの大半はその光の球を受けて消滅した。
ウェインが地面に着地すると、獣が襲いかかってきた。
ウェインは大剣を大きく振りかぶって縦一閃に振ると、獣は真っ二つになって倒された。
残ったゾンビもウェインは難なく倒し、残るはレインのみとなった。
「さすがだな、竜人。」
レインがウェインに賞賛の言葉をのべた。
「雑魚だと思ってたら以外にやるじゃないか。
でももうそろそろ終わりにしよう。」
ウェインはレインに斬りかかった。
レインは素早く呪文を唱えて強烈な炎を放ったが、ウェインは黄金に光る大剣でその炎を斬り裂いた。
そしてレインに斬りかかろうとした。
レインはまた消えようとした。
その時、ウェインは目から強烈な光を放った。
レインは消えることが出来ず、ウェインの剣をくらった。
体を大きく斬られ、レインは大量に赤い血を流した。
しかしレインが呪文を唱えると、流れる血は止まり、ウェインに斬られた傷も癒えてしまった。
ウェインはさらにレインに斬りかかろうとした。
その時レインが「待て!」と言った。
ウェインは大剣を振り上げたまま止まる。
レインは「ふふふ」と笑ったあと、呪文を唱えて石に変えていたフェイ達を元に戻した。
「あれ、俺どうなってたんだ?」
フェイがわけが分からないというふうに言う。
「これはどういうことだ。」
ウェインがレインに尋ねた。
するとレインは不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「簡単なことだ。
この勝負、竜人であるお前の勝ちだ。」
レインはそう言うと、宙に浮いて後ろにさがりながら言った。
「私の攻撃では、お前を倒す決め手がない。
私のどの攻撃でも、お前に深刻なダメージを与えることは出来そうにない。
このまま勝負を続けても、私は負けるだろう。」
レインは素直に負けを認めた。
「なあ、竜人。
この勝負はもう終わりにしよう。
お前の勝ちだ。
私はまだ死にたくないのでな。」
その言葉を聞いて、マルスが怒った。
「勝手なことをいうな!
俺たちに危害を加えてきたのはお前の方だろう。」
するとレインはマルスを見ながら言った。
「それは申し訳なく思う。
ただ私は、この村で静かに暮らしたいだけなのだ。
侵入者が入って来たので、それを排除しようとしただけだ。
許せ。」
マルスは怒っていたが、それ以上何も言わなかった。
「竜人よ。
その剣をおさめてはくれないか。」
レインが頼むように言うと、ウェインは大剣をおさめた。
それと同時にウェインを覆っていた光の膜も消え、大剣の黄金の光も消えた。
どうやらウェインは、レインの敗北宣言を受け入れたようである。
「一体何がどうなってんだ。」
石になっていて、まったく事情を知らないフェイが不思議そうに言った。
「ウェインさんは魔女と闘っていたのよ。
でも魔女がウェインさんには敵わないって言ってるの。」
フェイが目をぱちくりさせ、ウェインとレインの方を見た。
「随分と弱気だな。」
ウェインが言った。
するとレインは自嘲気味に笑い、「長く生きると保身のことを考えるようになるだけだ。」と答えた。
「これからもこの村に人間が来たら襲うのか?」
ウェインが尋ねた。
「もしそうだと言ったら?」
レインが返す。
「この場でお前を叩き斬るだけだ。」
ウェインは大剣に片手をかけながら言った。
するとレインは顔を伏せて笑い、「それは勘弁願いたいな。」と言った。
「約束しよう。
この村に誰か来ても、もう襲わない。
但し、私に危害を加えない限りはな。
それでいいか?」
その言葉を聞くと、ウェインは大剣から手を離して頷いた。
どうやら竜人と魔女の決着はついたようである。
ケイトは一安心して、自分にしがみついているリンに笑いかけた。
リンはキョトンとした目で見返していた。
「お前達は魔人を追っていると言ったな。」
レインが言う。
「おうよ、魔人をぶっ倒す為に旅をしてるんだ。」
フェイが答えた。
「魔人は地獄の門を開こうとしている。
それを止める為に竜人であるお前は魔人を追っているのだな。」
レインの質問に、ウェインは頷いた。
「ならいいことを教えてやろう。」
レインはケイト達を見回して言った。
「通常地獄の門を開くには、悪魔の石板と地獄の門の鍵、そして地獄の門を開く魔法が必要だ。
しかし、例外がある。
ある特殊な魔法と使うと、悪魔の石板か地獄の門の鍵、どちらかがあれば地獄の門を開くことが出来る。」
「それは本当か!」
ウェインが勢い込んで尋ねる。
レインは頷いた。
「その特殊な魔法がどういうものかは分からないが、今言ったことは本当だ。
もしお前達が魔人が地獄の門を開くを止めたいのであれば、一刻も早く魔人を倒すことだ。」
そんな。
ケイトは思った。
せっかく悪魔の石板を真っ二つにして、もう魔人は地獄の門を開けないと思っていたのに。
もし魔人がその特殊な魔法を覚えれば、地獄の門の鍵さえ手に入れれば、地獄の門は開くことになってしまう。
「魔人は強敵だぞ。
果たしてお前達に止めることが出来るかな?」
レインは笑いながら言った。
「何としても止めて見せるさ。
それが俺の使命だからな。」
ウェインは答えた。
レインは「ふふふ」と笑い、そして言った。
「もうお前に達に危害は加えない。
今晩はこの村で泊っていったらいい。
竜人よ。
お前と闘えて中々楽しかったぞ。」
そう言うと、レインは消えてしまった。
「なんだか薄気味悪い奴だったな。」
フェイが吐き捨てるように言った。
「しかしこれで安心して眠ることが出来る。
今日はここで泊って、また明日から旅を始めよう。」
マルスの言葉でみんなは教会に戻り、再び眠りにつくことになった。
あの魔女は一体いつからこの村にいるのだろう。
ケイトは思ったが、考えても意味のないことだと思い、眠ることにした。
リンは怖いのか、やっぱりケイトと手を繋いで寝ていた。
明日になったらまた旅が始まる。
何としても魔人を止めなければ。
ケイトは決意も新たに、十字架を握りしめて目をつむった。

エアコンの温度設定

  • 2010.08.29 Sunday
  • 09:11
 エアコンの温度設定を上げました。
27度から28度にしました。
最初は暑く感じたけど、慣れればそうでもありません。
エアコンの温度はなるべく低くしない方がいいですもんね。
でも本当に暑い時は、やっぱり27度に設定しています。

  • 2010.08.29 Sunday
  • 09:07
 鏡って不思議ですよね。
自分がカッコよく見えることもあれば、不細工に見えることもあります。
風呂上りに鏡を見ると、やたらと自分がカッコよく見えます。
でも朝起きた時に鏡を見ると、物凄く不細工で老けて見えます。
鏡に映る自分、一体どれが本当の自分なんでしょうね。

竜人戦記 第二十二話

  • 2010.08.28 Saturday
  • 09:28
 カーロイドの街を旅立って一週間。
例のごとく、体力の無いケイトは疲れていた。
この一週間は野宿ばかりで、そろそろ村か町の宿屋に泊りたいなと思っていた。
「ケイト、疲れてるね。
大丈夫?」
リンがケイトの顔をのぞき込んでくる。
「ちょっと疲れたかな。
でも大丈夫。」
ケイトは笑顔で返した。
するとフェイがケイトの傍に寄って来て、「おんぶしてやろうか。」と言ってきた。
確か前にも同じことを言われた気がする。
ケイトはそれを丁重にお断りし、自分の足で歩いた。
「ウッズベックまでは長い道のりだからな。
途中に村か町があれば、そこで一晩泊ろう。」
マルスがそう言う。
ウェインはそんな会話を無視してどんどん歩いて行く。
ウェインと違って、マルスは優しい。
ケイトはそう思いながら、疲れた足を踏み出しながらマルスを見た。
どうしてウェインはあんなにも無愛想なんだろう。
話しかけてもろくに返事もしてくれないし、ケイトが疲れた様子を見せてもおかまいなしだ。
まあ、ウェインには魔人を倒すという使命があるから、細かいことにはかまっていられないかもしれないが。
それでもケイトは、もうちょっと愛想良くしてれてもいいじゃないかと思う時がある。
勝手に旅について来ている身なので、偉そうなことは言えないが。
そうして歩くこと一時間。
ケイト達はある村に到着した。
「お、こんな所にむらがあるじゃないか。
今日はここで泊ろうか。」
マルスが言う。
ウェインは不服そうな顔をしたが、他の全員が賛成したので、この村で一晩泊ることになった。
村の入り口にには、朽ちかけた板が立っており、コペルの村と書いてあった。
村の中に入ると、誰も人がいなかった。
そしてどの建物も古く、朽ち果てた様子だった。
どうやらここは廃村のようだった。
「なんでえ、誰もいねえな。」
フェイが手を頭の後ろで組みながらそう言った。
「きっともう誰もいない村なんだよ。
廃村だね。
私、こういう所ってちょっと気味が悪いな。」
リンが言った。
「なんだ、お前怖いのか?」
フェイがからかうように言うと、「違うもん。」とリンがほっぺたを膨らまして怒った。
確かにちょっと不気味な感じのする廃村だった。
かすかに、本当にかすかにだが、邪気のようなものも感じる。
「まあ、とりあえず陽も沈みかけていることだし、今日はここに泊ろう。
あそこにある古びた教会なんかちょうどいいだろう。」
マルスは言った。
そういうことで、ケイト達はこの廃村で一晩泊ることにした。
教会であったであろう建物の中に入ると、朽ちた椅子と、そこらじゅうにクモの巣があった。
「もう大分昔に廃村になったって感じだな。」
マルスが教会の中を見回して言った。
「そうね。
なんで廃村になったのかしら。」
ケイトは呟いた。
誰もそれに答えず、ただしばらく教会の中を見回していた。
そしてボロボロになった教壇の前に少しスペースがあったので、そこで寝ることにした。
みんなで食事を取り、陽が完全に沈んだ頃、そろそろ寝ようかということになった。
しかしケイトは中々寝つけなかった。
リンはやっぱりこの不気味な廃村が怖いのか、ケイトと手を繋いで寝ていた。
ケイトはマリーンのことを考えていた。
一人で旅立ったマリーン。
彼女は大丈夫だろうか。
妹を止められるだろうか。
そしてまたケイト達と出会うことが出来るだろうか。
そんなことをずっと考えていた。
どうしてマリーンのことがこんなに気になるのかは、自分でも分からなかった。
でもマリーンには、どこか寂しさを感じさせる所がある。
あの美しい瞳の奥に、常に悲しみをたたえているからかもしれない。
そうやってずっとマリーンのことを考えているうちに、ケイトは眠っていた。
ケイトは夢を見ていた。
とても気持ちのいい夢だった。
空を自由に飛び、雲の上をふわふわと歩いていた。
なんて気持ちいいんだろう。
そう思っていると、突然夢の中に暗い影が射し込んできた。
ケイトはハッとして目を覚まし、体を起こした。
寝る前は感じなかったのに、今は村じゅうに邪悪な気を感じていた。
ふと横を見ると、ウェインも目を覚ましていた。
「ウェインさん、何か邪悪な気を感じます。」
ケイトが言うと、ウェインは頷いた。
ケイトとウェインが起きた気配で、フェイとリン、そしてマルスも目を覚ました。
「何だ。
何かあったのか?」
マルスが尋ねる。
「村じゅうに邪悪な気配が漂っているの。」
ケイトがそう言うと、「本当か。」と言って、マルスは剣を取った。
全員が起き上がり、教会の扉を開いてみた。
すると、村はゾンビでいっぱいだった。
「きゃああああ!」
リンが悲鳴をあげる。
それに気付いたゾンビ達がこちらに視線を向け、ゆっくりと歩いて来た。
ウェインは大剣に手をかけ、マルスも剣を抜き、フェイは拳を出して構えていた。
リンはゾンビが怖いのか、ケイトにしがみついた。
ゾンビはゆっくりとこちらに歩いて来ると、その口をあけて襲いかかって来た。
ウェインはゾンビを斬り裂いた。
次々にゾンビが襲いかかってくる。
ウェインもフェイも、そしてマルスも教会から出て、ゾンビを倒しにかかった。
ウェインが大剣を一振りすると、一瞬で三匹のゾンビが斬り裂かれた。
マルスは次々に襲ってくるゾンビを一体ずつ斬っていた。
しかしあまりにゾンビの数が多く、マルスは劣勢を強いられた。
そこにフェイが加勢した。
フェイが強烈な蹴りを放つと、ゾンビの顔はもげてしまった。
フェイの後ろから別のゾンビが襲いかかる。
フェイはジャンプして回し蹴りを放ち、そのゾンビを吹っ飛ばした。
「フェイ、中々やるな。」
マルスがフェイに向かって言う。
「そっちこそ、大した剣さばきだぜ。」
二人はお互いに褒め合い、次々に襲いかかってくるゾンビを倒していた。
ウェインはいうと、余裕の表情でゾンビを倒していた。
ゾンビがウェインの周りを囲み、いっせいに襲いかかった。
するとウェインは回転して大剣を振った。
ウェインを囲っていたゾンビ達は、真っ二つにされてしまった。
そうやってウェイン達の闘いを見ていると、一匹のゾンビがケイト達に近づいて来た。
どうしよう。
ケイトは焦った。
リンはゾンビを怖がって震えている。
ゾンビは口をあけてケイトに襲いかかって来た。
ケイトは思わず聖者の腕輪を前に突き出した。
すると聖者の腕輪が光り出し、その光に当てられたゾンビは溶けるようにして倒されてしまった。
この腕輪、こんな力もあったんだ。
ケイトは感心しながら聖者の腕輪を見た。
「わ、私も闘わなきゃ・・・。」
リンが震えながら言う。
「無理しなくてもいいのよ、リン。
私が守ってあげるから。」
ケイトは胸を張ってそう言った。
しかしリンは首を横に振った。
「こ、怖がって逃げてるだけじゃ修行にならないもん。
私は立派な武道家になるの。
ゾンビくらいで怖がってちゃダメだわ。」
そう言ってリンはゾンビと闘いに行った。
二匹のゾンビがリンに襲いかかる。
リンは素早く動いてゾンビの攻撃をかわし、一匹のゾンビには強烈なひざ蹴りを放ち、もう一匹のゾンビには数発のパンチを放って倒した。
リンは立派に闘っていた。
そんなリンを見ているうちに、また一匹のゾンビがケイトに襲いかかって来た。
ケイトは聖者の腕輪を前に出した。
聖者の腕輪から放たれる光が、ゾンビを溶かしていく。
ケイトは、自分も闘いに参加出来ていることを誇りに思った。
やっと私も闘いの役に立っている。
そう思うと嬉しかった。
ウェインは圧倒的な強さで、次々にゾンビを倒していった。
ウェインが大剣を振る度に、少なくとも三匹のゾンビは真っ二つにされていた。
フェイとマルスも奮闘していた。
フェイはジャンプして空中で連続で蹴りを放つと、二匹のゾンビを同時に倒した。
マルスは一匹ずつ確実にしとめていった。
そしてみんなの奮闘によって、村に現れたゾンビは全て倒されてしまった。
「ふう、何とか終わったな。」
フェイが息を吐き出しながら言う。
「こいつら一体何だったんだ。」
マルスは剣を鞘におさめながら言った。
リンがケイトの傍によって来て、しがみついた。
「ケイト、怖かったよ。
怖かったけど、私負けずに闘ったよ。」
ケイトはリンの頭を撫でた。
「何でえ、やっぱり怖かったんじゃねえか。」
フェイが笑いながら言った。
「もう、うるさいわね。
お兄ちゃんは黙ってて。」
リンはケイトにしがみついたまま、フェイにあかんべえをして言った。
ケイトもリンも、そしてフェイもマルスも全てのゾンビを倒したことに安堵していた。
しかしウェインだけは違った。
村の奥をじっと見つめている。
そして言った。
「まだ終わっていないぞ。」
ウェインがそう言うと、村の奥からまたゾンビが出て来た。
「うげえ、またかよ。」
フェイが声をあげる。
ゾンビはさっきより数は少なかった。
しかしその中に、一人の女性がいた。
黒い服に身を包み、白い肌に長い黒髪をしている。
そしてその瞳は暗黒のように深い闇をたたえていた。
その女性は宙に浮いていた。
とても美しい女性だった。
しかしとても邪悪な気を放っていた。
その女性は宙に浮いたまま少しこちらに近づいて来ると言った。
「お前達は何者だ。
あのゾンビ達を全て倒すとは。」
女性の声は甲高く、耳に突き刺さるようだった。
「俺達は魔人を追って旅をしてるんだ。
お前こそ何者だ。」
フェイは問い返した。
するとその女性は「ふふふ」と笑い、宙から地面に降りた。
「私はレインという。
この村を仕切っている魔女だ。」
「魔女だと?」
マルスが声をあげる。
「お前達は魔人を追っていると言っていたな。
何の為だ?」
レインは尋ねた。
「そんなもん、魔人をぶっ倒す為に決まってんだろうが!」
フェイが言った。
するとレインは声をあげて笑った。
「魔人を倒すと?
お前達人間ごときでは無理だ。
まあそこにいる竜人ならば、分からないかもしれないがな。」
ケイトは驚いた。
レインはなぜウェインが竜人ということを知っているのだろう。
「あなた、どうしてウェインさんが竜人だって分かったの?」
ケイトはレインに尋ねた。
「そんなものは一目見れば分かる。
お前達人間とは放っている気が違うからな。」
そう言うとレインは一歩こちらに近づいて来て言った。
「ここは私の村。
邪魔する者は容赦しない。
死にたくなければ今すぐに出て行け。」
そう言った瞬間、レインの体から凄まじい邪悪な気が放たれた。
「うるせえ、死ぬのはてめえだ。」
フェイがレインに向かって飛びかかった。
するとレインは何か呪文のようなものを唱え、右手をフェイに向けた。
次の瞬間、フェイは石になってなってしまった。
ゴトリと音を立てて地面に落ちる石になったフェイ。
「お兄ちゃん!」
リンが叫ぶ。
するとウェインがレインに近づいた。
「さっきの奴を石から戻せ。」
ウェインはレインに言った。
「断る。
どうせなら他の奴らも石に変えてやろう。」
レインはそう言うと、また呪文を唱え始め、上に向かって手をあげた。
するとマルスが石に変わり、そしてケイトにしがみついていたリンも石に変わった。
ケイトにも何か邪悪な力に全身を覆われ、ケイトは自分も石に変えられると思った。
その時、聖者の腕輪が強く光った。
ケイトは石にならなかった。
きっと聖者の腕輪が守ってくれたんだと、ケイトは思った。
「ほお、聖者の腕輪か。
面白い物を持っているな。」
レインはケイトを見て言った。
するとウェインはレインの前に立ちはだかって言った。
「石に変えた奴らを元に戻せ。
さもなくば叩き斬るぞ。」
ウェインは全身の気を高めながらそう言った。
「面白い。
竜人の力、どれほどのものか見せてもらおう。」
レインは笑いながら言った。
ケイトは固唾を飲んで、レインに対峙するウェインを見守った。
竜人と魔女の闘いが始まろうとしていた。

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